この30年の小説、ぜんぶ ; 読んでしゃべって社会が見えた (河出新書)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 322
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631455

感想・レビュー・書評

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  • 高橋源一郎と斎藤美奈子のそれぞれの補助線の違いが面白かった

  • ロッキング・オン社長、渋谷陽一責任編集の雑誌『SIGHT』(1991年〜2014年)の年末恒例特集として組まれていた高橋源一郎・斎藤美奈子対談の再録(2011年〜14年)、19年の『すばる』誌での対談、21年の語り下ろしを収録。
    『サイト』誌上の書評対談といえば大森望と北上二郎の「読むのが怖い!」が名物企画であったが、当時の編集者曰く「取り上げられている本を一切読まなくてもおもしろい」つまり、「読み物を論評する」を超えて、「これ自体がおもしろい読み物である」というわけだが、この本にも十分当てはまる。副題にある「読んでしゃべって社会が見えた」気分にさせてくれる。
    【蛇足】高橋「2009年に民主党政権が発足した後の言論空間は明るくてポジティブでした。支持率が70%を超えていた、信じられない時代です。」斎藤「政治の話が楽しかったですよね。」中略
    斎藤「だけど、結局全然変わらない。」高橋「それで、2012年末に民主党政権が退いて、また安倍政権になって……。」
    呪詛を吐いてるだけで、リベラル陣営の失敗には言及しない女々しさ。

  • 何故か平成のものはピンとこない。小説に限らずなのだが、昭和だと思っていた、というのが大半なのだ。
    それはさておき、巻末にある作品選書一覧を見ると、知らない本や作家が多い。それは仕方がないのだが、知っているし持っているのに読んでない本があるのは、なんだか悔しい。
    「小説には間違いなく時代の空気、言いかえれば「社会」がつまっている」と著者の一人、斎藤氏が言っているし対談を読むと確かにその通りだと思う。
    ただ、自分が時代の空気がわかるほど読み込められるかは疑問だが。
    今まで同じジャンルや作家の本をまとめて読むことあったが、今度からは発売された年月日、時代に注目して読んで見るのもいいかもしれない。

  • 雑誌『SIGHT』の年末定例企画「ブック・オブ・ザ・イヤー」に掲載された高橋源一郎と斎藤美奈子の対談を収録した本です。

    高橋はいつものように、同時代の文学や社会状況に対して批評的なことばをさしはさみつつも、やわらかい態度でつい彼自身の気に入った小説にかんしてはわたくしなどはいくぶん好意的にすぎないかと感じてしまうような語り口で、作品の魅力を解き明かしています。そしてあいかわらず、中原昌也に対しては、手放しといっていいほどの賞賛ぶりです。

    単著では舌鋒の鋭さを見せる斎藤も、基本的にはそうした高橋の調子にあわせているようですが、赤坂真理の『東京プリズン』については、「主人公が女の子なのにすごい」という趣旨の発言を高橋がしていたことに切り込んでおり、予定調和ではないおもしろさをあじわえました。高橋は斎藤の切り込みに対して、受け太刀ながらも着陸点をさぐっていますが、高橋の示した回答にも「あまりにもそっちに行くと「女は世界を救えるか」という話になりますけど」ときっちり釘を刺していて、そのあたりもたのしんで読むことができたように思います。

    上の問題にも多少かかわるところではあるのですが、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の作品評では、「最後の家父長制」という指摘がなされており、また千葉雅也の『オーバーヒート』の作品評では、斎藤が「ある種のマチズモから解放されきっていない」と述べています。しかしこうした批判は、けっきょくのところ宇野常寛のサブカルチャー批評と軌を一にするほかなく、おそらく千葉はそのことを理解しているからこそ、身体と意識がたがいに切れあうような場所でことばをつづったのではないかと、わたくしには思えます。そういえば、本書で斎藤は高見広春の『バトル・ロワイヤル』や白岩玄の『野ブタ。をプロデュース』などの作品をえらんでおり、宇野のいう「決断主義」的なリアリズムにずいぶん無防備に肩入れしてしまうものだなあ、と慨嘆せずにいられません。高橋が「身体性」に無防備なのは、内田樹の影響なのでしょうか。

  • [図書館]
    読了:2022/10/10

    1冊1冊の論評が短いからかなぁ…「読んでみたい!」と思える本はあまりなかった。

  • その年に、発表された小説を語ることで社会が分かる、ここで取り上げられた小説は、読んだことがない作品がほとんどでしたが、大変興味深く読みました。

    感動した、面白かった、意味不明だった、不快で受け付けられなかった…など、小説を読むと、色々な思いが去来しますが、こんな読み方もあるんだと新たな視点を得ることができました。

    今は、この企画、毎年なされていないようですが、今後も機会があれば、お二人の対談を是非読みたいです。

  • 2011年から令和まで、計6回おこなわれた本をめぐる対話から、日本社会が浮かび上がる。思いもよらない解釈や、意外な作品との繋がりなど、驚きと発見に満ちた、白熱の対談集!(アマゾン紹介文)

    紹介文通りというか、小説に対する熱量や想いが高すぎて、ついていけなんだ。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055866

  • どちらも好きな作家、評論家でそれぞれの書く文章も好きなのだが、対談となるとまた違った趣を呈する。「この30年」というのは平成の総括であり、最後に現在のコロナ禍の状況についても述べられている。元々は「SIGHT」に掲載されていたものだそうだが、休刊したらしい。これは私自身が高校時代に読み耽った「ロッキング・オン」の雑誌らしい。「SIGHT」を読んだこともないが休刊は残念である。本題に戻ると、共に職業柄か多読の著者で、しかも読み込みが深いというか、好みである。掲載された小説はほとんど読んでないが、このような物を読む事で読んだ気になるのは本当はいけないのだろうが。ただ、ここでも書かれているように小説は時代を移す鏡であると言われるが、それぞれ単独ではわからない。このように、まとめて書評をすることで見えてくる部分もある。本書は書評のようでありながら、社会評論と読めるものだと感じた。

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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