アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709505

作品紹介・あらすじ

老いて堕落したヨーロッパにノンを突きつけ、灼熱の地アデンへ旅立った二十歳。憤怒と叛逆に彩られた若者の永遠のバイブルを、三島由紀夫賞作家による新訳で紹介(『アデン、アラビア』)。若き日の深い悲しみを胸に、悲劇を乗り越えて豊かに生きたマリーおばちゃんを中心に、第一次大戦に倒れた無名の犠牲者たちの思い出を掘り起こし、繊細な文体で甦らせたゴンクール賞受賞作(『名誉の戦場』)。

感想・レビュー・書評

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  • たぶん、10年後のわたしはこれを読んで眉をひそめるだろう。だからこそ、いま読まなきゃダメなんだ。

    高校時代、北海道はとにかく遠かった。世界中でもあんなに遠い場所、いまでは存在しないのではないかと思う。金さえ払えばどこでも行けるし、きっとそういう問題じゃない。もう、あの場所はどこにも存在しない。

    アデンの地はその距離に関わらず遠い場所で、彼は能書きを垂れるだけで社会に反抗できた。少なくともそう信じられた。

    反抗する意味を疑うか?反抗のどうしようもなさを笑うか?

    20歳を前に読みたかった本。

  • その出だしの一文で有名な「アデン、アラビア」だが、綿々と綴られる各界の巨匠達への批判には少し面食らってしまう。自分自身それら思想家達の業績に詳しい訳ではないので、理解できる部分は少ないは、当時の植民地の実態を描くことで欧州を批判し、、苦悩していいるということは理解できる。
    「名誉の戦場」はまるでおとぎ話のように家族の歴史が語られていく。ユーモアの混じった温かみのある文章が続いたあとで、後半部で突然リアルな闘いの描写が挿入されて、前半がその伏線であったことに気づく。著者が戦後生まれであることを考えると、見事としか言いようがない構成と描写だと思う。

  • 『アデン、アラビア』
    これを文学全集に採るか、とも思ったが、解説でこの作品が与えた影響を説明されると、それもありかもしれないと思う。
    (ちなみに上の文は、作品に対する批判ではなく、あくまで「文学」に対するスタンスを問題にしている。文学において物語性を重視する立場としては受け入れにくい作品なので。ただし、作品自体には途中で読むのをやめられないくらい引き込まれた。)

    『名誉の戦場』
    はじめはシーンがうまく繋がらない。ところどころおもしろいけれど、同じくらい退屈でもある。言葉の選び方も個人的には好きになれない。
    だけど、後から少しずつ少しずつ、じわっとくる。たまにこういう変な小説がある。

  • アデン、アラビアのみ。
    僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。

    ロジカ·ドラマチカでこの一文をもじった文があったので気になって読んでみる。
    悶々と思考するあたり1つの青春だと思うのだけれど。
    二十歳にして、著名な教授の娘との結婚をもくろむ。P.7
    二十歳で、お稽古事程度の知識を持たされて、融通のきかない世界におっぽり出されたのだ。P.13
    二十歳そこらじゃ個々の事象や特異な出来事なんて把握できっこない。でも、息が詰まりそうになるくらいには、そうしたものを予感している。P.14

    物理的な旅と思考的旅がり混じった感じで、物理的な旅の描写がもっとあればいいのに。
    最終的にそこに行き着くのか。

  • 221212*読了
    「アデン、アラビア」は難しい。
    これ、小説?と思いながら読んでいたけれど、違ったんだな。
    当時のヨーロッパ、フランスを全く知らない身からすると分からない部分が多かった。
    各章によって論じる項目ががらりと変わるので、ついていくのが大変。
    これもまた、文学なのだな。

    「名誉の戦場」は前者と比べると読みやすい。
    自伝的小説の第一部で、第二部以降はこの時点では翻訳されていない…!今はどうなのだろうか。
    自分の祖父母のこと、父のこと、大叔母のことを語っているんだけれど、そこにいるであろう「ぼく」の存在がほとんどない。
    こんな風に自身の存在を消しながら、情景を描写でき、それもかなり緻密に描けるのはすごい。
    細かなエピソードがたくさん重なり、章ごとに時系列が変わる目まぐるしさと、何かが起こっているようで大したことは起こっていないごく普通の家族の様子との織りなし方がとてもよかったです。

  • 有名な「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」という書き出しは知っているが、そういえば全編は読んだことないなと手に取り(「アデン・アラビア」のみ読了)。多くはヨーロッパ批判、文明批判で、旅先の描写はわずか、決意をもって帰還し、「僕は敵たちの中で生きるつもりだ」と覚悟を決め、と。以下備忘録◆ここがアデンだ。着いた。得意がるほどのことはない。◆本当の無のなかでは、どんな儀式にも口実などないからだ◆(狂気は)死者のために生者が負けてやるチェスの試合だ◆詩と女は通りすぎていく。でも革命が過ぎ去ったことは一度もない。◆以下は、澤田直の解説より◆「泣かないでくれ。僕はいま、二十歳で死ぬために、ありったけの勇気を奮い起さなければならないのだから」(ガロワ)

  • 「僕は二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」

    世界一美しい書き出し。

    「恋は雨上がりのように」の抜粋を機に読みたいと思った。

  • 『アデン・アラビア』
    20歳から21歳になる境目で読んだ。世界への鬱屈とした眼差しに共感はしたが、それだけで終わってしまったので少し物足りなかった。

    『名誉の戦場』
    母方と父方の家族をユーモラスに綴りつつ、第一次世界大戦への記憶へと移っていく織り目が、繊細で丁寧だった。戦争のやりきれなさが語り口から伝わってくる。後半は切なくも次の作品へと繋がっていく予感があったので、続きも翻訳してほしい。

  • 「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。」
    自分も含めて、若者には共感を、壮年以上には青春への回顧を呼び起こす美しい冒頭の言葉をどこかで目にし、本書が気になっていたという人は多いのではないだろうか。
    自分はこの言葉を沢木耕太郎の文章(エッセイか深夜特急だったと思う)で目にし、長らくこれがニザンの「アデンアラビア」のものだと忘れていた。

  • 文学

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