女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334038144

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  • 現状は、行政や民間の支援者より、よほど裏社会の大人たちの方が女子高生たちと関係を築き、支援を提供し(但し、自分たちの商品として囲って搾取するために)、居場所をつくることに成功している。支援の窓口に来るのを待っていては、必要な支援を手元に届けられない。彼女たちのほとんどは生活に困窮して生きるために「JK産業」で働いている。「寂しさ」や「好奇心」といった類の動機ではない。
    支援を届けるために積極的にSOSをキャッチして、繋がりをつくり、切れ目のない支援を行う必要がある。1つの支援機関で生活支援、就労、メンタル、家族関係などフォローすることは到底できるものではない。支援の網を広げていくことが必要。そして、1番重要なのは、子どもが「助けを求めてもいいんだ(SOSを出してもいいんだ)」「信頼できる大人って居るんだ」と思って貰えることではないだろうか。そこがスタートラインなのだと感じられた。


    以下、心に残った言葉の抜粋。

    「『ぐ犯少年』に対する措置はあるのに、なぜ、売春する
    おそれのある男性や、少女を利用し違法に搾取しようとする大人たちに対しては何の対処もないのだろうか。少年たちは補導され、家庭や学校に連絡が行くのと同じように、犯罪予備軍の大人たちにも注意と家族や職場への連絡をしてほしい」

    「日本では、学校教育における性教育やDV防止教育がほぼなされていない」「子どもや女性が性被害や暴力に遭わないための教育、身を守る方法を教育するだけでなく、男性が加害者にならないための教育や、被害に気付ける人を増やすための教育をしなければならない」

    「厳しい状況にある人は大人も子どもも『人に頼る勇気』
    がもてず、社会保障に繋いでくれる人とのつながりもない」

    「子どもが『助けて』と言えない社会はおかしい」

    「子どもを利用しようとする大人たちは、『困っている声』を敏感にキャッチし、アプローチしている。(中略)裏社会の大人たちは、具体的に彼女たちを支える仕組みを作っている。生活が困窮し、食事や住まい、託児所付きの生活支援をうたう風俗店で働く若年女性が増えている」

    「彼女たちに必要なのは、①生活が困窮していても教育を受けられる状態にすること、②安心して過ごしたり眠ったりすることができる家、③安定して働ける仕事、の3つだ。それに加えて、『そこに繋いでくれる大人との出会いや関係性』」

    「中高生は世間知らずで当たり前だ。世間知らずのまま裏社会へ流れ、そこで出会った大人に教育され、関係性も狭められていくケースは後を絶たない」

    「『JK産業』に取り込まれていくような少女は、行政や若者支援者が窓口を開いているだけでは自分からは来ない」「表社会は彼女たちへの声かけをほぼまったく行っていない」

    「裏社会のスカウトは、少女を最後まで見捨てない。一度
    店に繋いだら終わりではなく、困ったことがあれば相談ののり、合わなければまた別の店を紹介し、少女の生活と成長をサポートし続ける」「一方、行政も民間も、卒業したら終わり、支援機関に繋いだら終わり、就職先が決まったら終わりという関係性や制度が多い」
    →「一見、裏社会のスカウトは良いことをしているように見えるかもしれないが、商品として扱っているに過ぎない」

    「どんなに社会保障が充実しても、そこに繋がることができなければ利用されるまでには至らない。社会保障の目的は『1人でも生きて行けるようにすること』ではない。人と人とが支え合い、知恵を出し合いながら生きて行くことができる社会をつくり、ほっとできる時間や笑顔になれる瞬間、気持に余裕をもてるような生活を誰もが送れるようになるための保障であるべきだ」

    「少女たちに必要なのは、特別な支援ではなく、『困ったときに相談できる、信頼できる大人との関係性』」

    「私にできないことなら、できる人につなぎたい。誰もいないより、ともに歩むほうがいい。だから、1人で抱えず声に出してほしい。声を出してもらえるような大人でありたい」
    「一般論ではなく、あなただから、目の前のその子に
    だからかけられる言葉をかけてほしい」

  • 裏社会、性的もしくはそれに近い仕事を、未成年の女子高生が行っている現場を、インタビューを通じて読者に訴えかけています。彼女たちは、行っている内容についてはしっかり把握しているのに、その意味や深刻さについては無知に近い。なぜそのような状態が発生するのか、関係性の貧困という答えにはっとなりました。もっとこの問題に対して関係していかなければならないと思わせれます。そしてその接し方、態度についても書かれています。
    今までの人生の中で、この本に書かれているような状況に接したことは何回かあります。そのときに、どうすればよいか分からず、無関心を装ってしまいましたが、今後はせめてこの本を教えることぐらいはするべきかと思いました。

  • 思春期の子供は、本当に大人から見たら些細なことで傷つき、疎外感を覚え、一歩間違うとあっという間に今いるコミュニティからドロップアウトしてしまう。だから、この本の内容は他人事ではなく、自分の子供、自分の孫の話だと思ったほうがいい。
    自分の子供、自分の孫がそうなったときに、だれが手を差し伸べるか。裏社会の人間が手ぐすね引いて待っているのに負けないだけの、表社会の人間の手ぐすねが必要だ。

  • 先日読んだ『日本の風俗嬢』にもあったのだけど、摘発を経て見えないところにどんどんもぐっていっているというのが本当に怖い。
    無店舗型になることによって、より犯罪の温床となっている事実。
    家庭の事情などが特には無い、普通の高校生がたくさん身を置いているということ。
    見た目だけが一般化されることの怖さを感じる。

    援交おじさんのようにねばりづよく声をかけ続けることの大切さと難しさ。
    裏社会は少女たちを「商品」だから大切にしているのだが、表社会ではどんどん零れ落ちていく。
    誰か一人でも、寄り添ってくれる大人がいたら。

    また、自分の子供以外の子と関わることがないということ。地縁そのほかがなくなっている今現在、確かに無い。
    身内に子供がいないと仕事を始めた段階で自分の生活範囲は大人だけの社会になるので、なんだか嫌だと感じていた。

    子供がいるとかいないとかそういうことは関係なく、一度読んだ方がいい。

  • 女子高校生はいろいろあると聞いて読んでみた。秋葉原のJK産業で働く少女たちにインタビュー。仕事で秋葉原に行くことが多いが、通りが違うのかあまりJKが立っているのを見たことがなかったが、こんなことになっているとは。JK産業のスカウトマンや、きもい客は熱心にあきらめずにJKの心をつかもうとしているのに、大人達はなぜ、それができないのかと。ここに登場するだけでも、学校の先生、親など「関係性が貧困」な高校生のケアがちゃんとできていない人が多い。子供がいないのでよくわからなかったが、考えさせられる一冊。

  • 今の時代を事細やかに写す本。
    どれだけ技術が発展しても、
    どれだけ便利になったとしても、
    人らしさの関係は必要。

    そんな関係性の難民になる、
    全てはそれが原因。
    この日本社会を構成する大人として、
    男として、何ができるか、それが問題。

  • 最後まで読み切ることができなかった

  • 色々と思うところはある。

  • 週刊誌のような、浅い内容だった。
    途中で読むのをやめた。

  • この本のように社会の実情を発信していくことがとても大切、貴重な情報源。それでもなお、別世界に生きている想像力に乏しい人たちは心ない言葉を投げかける。

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著者プロフィール

一般社団法人Colabo代表理事。おもな著書に『難民高校生』(筑摩書房)など。

「2022年 『性売買のブラックホール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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