「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
3.72
  • (12)
  • (23)
  • (21)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 289
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334038281

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 良書。
    英文を直訳した教材は、いけてない。自分の言葉にしなければ、人の心に届かない。コミュニケーションは、人の心に届くことが重要。
    日本では、やりましたで満足する傾向がある。チームを作って会議をするだけ。結果を得ることが目的だ。

  • 冷静で現実的な示唆に富む良書。感染症、医学を取り上げての対処策を示しているが一般化することでビジネスや日常生活にも活かせる。

  • 感染症によって起こるパニックと対峙するためのリスク・コミュニケーション入門。
    感染症のリスクをどう捉え、伝えるべきかを考える。
    医療を題材の中心に据えているけれど、パニックを誘発する災害も視野に入っているので、医学に関わらない自分でも学ぶところが多かった。
    以下、気になったところのまとめ。

    1 聞き手の存在を意識したコミュニケーション
    コミュニケーションは手段であり目的。
    六何八何の原則のような一方方向の情報伝達の原則やテクニックにばかりこだわるよりも、聞き手は何者でどこまで知っていてどのような情報を必要としているかといったような相手の存在を意識することが重要だ。
    ⑴ 効果的なコミュニケーションを行うための3つのポイント
    (ア) 聞き手の対象分野への理解・知識、問題意識の把握。
    (イ) 本質を捉え、妥当性の高い状況把握
    東京駅の描写
    「レンガがある。隣にもレンガがある。その隣にも」
    よりも、
    「目の前に大きなレンガ造りの駅がある」
    (ウ) 目的を意識する
    アウトカム(結果)の設定。
    (2) メンタル・モデル・アプローチ
    聞き手の明確化。
    聞き手がどのようにリスクを捉えたかを明らかにし、そのメンタル・モデルと専門家のモデルを比較することでリスクに対する意識のギャップを埋める。

    2 三位一体
    (1) リスク・アセスメント
    リスクの見積もり。
    「リスクが起きる可能性」と「起きたときの影響の大きさ」
    (2) リスク・コミュニケーション
    (3) リスク・マネージメント
    具体的対応。
    を三位一体で行う。
    予測が外れる可能性を考え、アセスメントは幅を、マネージメントは複数の選択肢を用意すること。

  • 本書はパニック時にいかに効果的に情報を伝えるかということを考えた「リスク・コミュニケーション」の入門書。感染症を題材としているが、リスク・コミュニケーションが応用できる範囲は医療分野に限らず、企業広報やパニック時の友人とのコミュニケーションなど多岐にわたる。また逆に、パニック時に聞き手としてどのような情報に着目すればいいかということを本書は教えてくれる。広報担当者のみならずすべての人にお勧めしたい本。

  • 新書なのに,想定読者が医療者…?不思議なコンセプトではあるけど,リスコミ全般についてまとまってるので一応一般にも有益。正しい情報を伝え,パニックを回避し,リスクそのものを減らしていくコミュニケーションの方法論。
    日頃のコンセンサス・コミュニケーションと緊急時のクライシス・コミュニケーションを区別すること。科学的に正しいことを言うだけではなく信頼を勝ち取ること。感情的になる聞き手を否定しないこと。マスコミと良い関係を築き,うまく利用すること。リスクへの対処という目的を見失わないよう常に心掛けること。
    どれもごもっともな指摘。ただいちいちちょっとウエメセなのが気になる人もいるかも。あと,度々出てくるSTAP批判批判は要らないんじゃないかなぁ,とか。
    第一章のリスコミ総論がほとんどの分量を占めていて,第二章の各論が実践編。ここ20年話題になった六個の感染症についてケーススタディするという寸法。扱うのは,エボラ出血熱,西ナイル脳炎,炭疽菌,SARS,新型インフルエンザ,デング熱。

  • プレゼンのノウハウといった戦術面もかなり丁寧だが、それよりも、戦略、すなわちコミュニケーションの確立といった目的を重視した書籍であり、医療関係者のみならず、組織において対外的な役割を担っている人には読む価値が大いにある。

    些末情報に翻弄されて本質がおろそかになる例:
    「レンガがある。その横にレンガがある。その隣にも、その上にも、そのまた上にもレンガがある」→東京駅

    恒常的な問題に無関心である喩え:
    人が犬を噛んだ場合の対策マニュアル、講演、チームの立ち上げがされ、その間、犬は人を噛み続ける

    P246-247.トンデモ主張における一定の戦略
    「ワクチンは100%安全とは言えない」(ゼロリスク追求)
    「私には効かなかった」(アネクドータル(逸話的))
    「ワクチンはナチュラルではない」(天然、自然志向)
    「病気にかかって免疫をつける」(複数リスクの相対的評価が出来ない)
    「ガリレオだって異端」(ガリレオ作戦)
    「ある学説によると」(情報の出所の不確かさ)
    「彼はいい人だ」(情に訴える)
    「業界の陰謀だ」(陰謀論)

    日本人だけ特別ダメ、という論調はたいてい間違ってる。日本人だけ特別優秀、という論調がたいてい間違ってるのと同じくらいに。

  • リスク・コミュニケーションで必要な考え方、スキルなど幅広く網羅。普段から使用可能なスキルもあり、医療に関わる人だけでなく、多くの人に読んで欲しい一冊

  • 根幹の部分は全くブレがなくて、でも読む毎に勉強になる内容を、分かりやすく平易な文章で表現されていて、今回も一気に読んじゃいました。プレゼンの方法とか目的とかについては、分かっちゃいるけど実践できてないことばかりで…かといって一朝一夕に出来るもんじゃないから、ひたすら鍛錬あるのみ、ですね。対象の大小を問わなければ、生きている以上、何らかのリスコミが必要になる場面は数多ある訳で、そういうときに、ここで読んだ内容が少しでも活かされるよう、心に留めて生きたいと思います。

  • 感染症をテーマにして、リスクコミュニケーションを実践的に解説しています。
    著者さんはリスクコミュニケーションの専門家ということで、「自分は優秀ですごいことを言っているんだぞ」ということを全面的に押し出しながら、効果的なリスクコミュニケーションの方法を解説しています。
    具体的なアドバイスが多数散りばめられていて、かなり実践的です。
    リスコミに限らず、記者会見とか不特定多数の方に話をする機会がある人には、なかなかに役立つ内容です。

  • 14/11/22。
    11/27読了。あとがきで、岩田先生が書きやすかったと述べていましたが、読む方もたいへん、読みやすかったです。医療におけるリスクコミュニケーションのまさに入門書。

全37件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。著書に『コロナと生きる』(朝日新書、内田樹との共著)、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)、『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル新書)ほか多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩田健太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
佐々木 圭一
ウォルター・アイ...
佐藤 優
トマ・ピケティ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×