長い長い殺人 (光文社文庫 み 13-3)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334728274

感想・レビュー・書評

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  • 財布目線で書かれていて‥
    それぞれの持ち主の事とか面白かった。
    それと次々と起こる事件も良かった。

  • 宮部みゆき作品で初めて読んだのがこの「長い長い殺人」殺人事件と言えば、人間が起こすものだが、その殺人をいろいろな角度からの財布が見つめ、語っていくという異質さがおもしろい。1章が1話という短編で進めながらも、最終章で一気に事件を解決に導く手法は見事。

  • 10個の財布。
    それぞれの持ち主について
    財布が語り、
    断片的だった殺人事件の
    全体像が浮かぶ…。
    見事なストーリー仕立てに脱帽!
    数ある著者の傑作のひとつ
    …と、言わせてもらおう。

  • ミステリ(探偵小説)を特集する展示をつくるにあたり、人間以外の主人公から描かれた作品を探していた時にであいました。
    物語の語り手は「財布」。
    刑事の財布、証人の財布、強請屋の財布、死者の財布、目撃者の財布……。
    それぞれの持ち主のポケットやカバンの中で、漏れ聞こえてくる音やちらりと見える風景から状況を考察する財布たち。

    「人」が主人公でなくとも、ここまで密度のあるミステリ作品が描けるのか、と驚きました。4件の殺人事件がおこり、さも疑わしいと思われた不倫カップル。保険金目当ての凶悪な犯行がマスコミにも報道されますが決定的な証拠がなく、捜査も行き詰まっています。そんな中、持ち主と常に行動を共にする財布だからこそ知っている真実があります(が、「財布」ですからそれを人間に伝えるすべはありません…)。
    ミステリ作品としての完成度、エンタテインメント性、そして様々な人物の「財布」を通して語られる短編形式の構成と、非常に質の高いエンタテインメント体験でした。


    1999年の作品ですが、ここでも描かれる過剰なマスコミの「物証のない」状況証拠に基づく容疑者批判や過剰なバッシング報道という、メディアのモラルについての作者の批判的な視点も感じました。それに対して、純粋な「正義」感から反発する登場人物もいましたし、そのあたりの書き分けも見事であったと思います。

  • そうなるか!と、「犯人の財布」を読み出してすぐに思わず目を瞠った。
    何となく、別に犯人が居るだろうことは予想してたけど、それでもまさかそこに繋がるとは…
    毎度びっくりさせられるけど、今回もやっぱりやられました。

  • 久しぶりに宮部みゆき読んだけど、面白いのと、読みやすいのと、飽きさせないのとで、サスガな安定感。また借りてこよう。

  • 面白かった!
    伊坂幸太郎さんの『ガソリン生活』を読んでから、意識のあるはずない『物』が語りながら話を進めて行くのが大好物になって(笑)
    しかもそれぞれのキャラがちゃんと確立してて素晴らしいと思いました!

  • 面白い視点から展開する。凄く面白かった!あっという間に読み終えた。

  • 『別冊小説宝石』1989年12月初冬号~『小説宝石』1991年2月号にかけて掲載され、1992年9月に刊行された本だそうです。1987年のデビューから2年後、まだまだ初期の頃。文庫も普通に入手できますが、初出は27年も前なのですね。

    そんな時代に書かれた作品で、携帯電話があればおびき出されることもなかったのに…とか、予約してあったゲームソフトを恐喝されて強請り取られてしまうのは時期的にドラクエ3(http://www.gamegyokai.com/history/dq3.htm)かな、今では考えられないな、そう言えば宮部みゆきゲーム好きだもんな…、とか、愛車がトヨタのセルシオだとか、ところどころに時代を感じさせる表現がありますが、全体としては今でも違和感なく読み進めることができると思います。

    「ロス疑惑(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B9%E7%96%91%E6%83%91)」を思い起こさせる劇場型犯罪を、探偵役、真犯人、被害者、証人などの【財布】を語り手とした色々な視点から浮き彫りにした作品です。
    事件や犯人は後の「模倣犯」を、語り手が意表を付いていることは「パーフェクト・ブルー(http://booklog.jp/users/hanemitsuru/archives/1/4488411010)」を、そして一つの事件を様々な視点から語る手法は「理由(http://booklog.jp/users/hanemitsuru/archives/1/4022642955)」に通じるなど、初期の宮部みゆきの、何というか「典型的」な作品です。あ、誰もに好感を持たれそうな女性が被害者になるのもパターンですね。

    何よりも語り手が「財布」であることがまず目にとまりますが、でも、読み進めていくとそれ自体はあまり重要な要素ではありません。持ち主がよくお金以外の「大事なもの」を財布にしまうのですが、財布自身にはそれが何か分からない、という形での伏線に使われているくらいです。
    どちらかというと、ミステリの三人称の語り口が神の視点で進むことに作者が抵抗を感じていたんでしょう。だから初期の作品は財布視点だったり、犬視点だったり、インタビュー構成だったりと、神の視点が登場しないよう工夫されているのではないでしょうか。
    「登場人物の名前を紹介するのに気を遣う」という主旨のインタビューを「改訂文庫版 まるごと宮部みゆき(http://booklog.jp/users/hanemitsuru/archives/1/4022643331)」で読んだ覚えがありますが、読者も登場人物も知らないことが地の文に出てくることが、ミステリとしてルール違反に思えて仕方がなかったのだろうと思います。最近の作品では、ここまで凝ったことをせず、ほぼ一人称で語られているようですね。

    楽しみで人を殺し、証拠がないことをいいことに、そのことを世間に得意げに語る犯人像は、上にも書いた「模倣犯」だけでなく、「クロスファイア」にも登場します。これに関しては、しかし、最近の現実社会が虚構を凌駕してしまっています。自分とは何の関係もない、何の落ち度もない他人を傷つける事件がしばしば発生する現実に比べ、「他人を痛めつけて楽しむ」「自分を大きく見せる」という理由があるだけ、この犯人たちはまだ理解の範囲内に止まっています。

    こんな人たちは、今では実力行使に及ぶことなく、ネット弁慶になっているんじゃないかなあ。「黒子のバスケ脅迫事件(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%AD%90%E3%81%AE%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%B1%E8%84%85%E8%BF%AB%E4%BA%8B%E4%BB%B6)」の犯人なんかまさにこのカテゴリに分類される人だと思います。

    個人的に面白かったのは解説です。作品の解説ではなく、いきなり「直木賞」批判から始まり、「火車」が落選した時の選評を引いてその無理解を怒るこの解説は「そうそう」とうなずきながら読みました。好きな作品をDisる人の悪口が書いてあるのはすっきりしますね。

    ついでに、「火車」が落選した第108回の選評を「直木賞の全て(http://prizesworld.com/naoki/)」というサイトで見つけてしまいました。頓珍漢なことを書いているのは黒岩重吾さんと渡辺淳一さんだったようです。
    一般の読者とずいぶん読み方のズレが大きくなってしまっているようですし、ある程度のご年齢になったら選考委員をご卒業していただけばいいのにと思ったりします。でも御大はご自分から言い出さない限り、周りが辞めさせることは難しいんでしょうね…。

    (あと、北村薫が直木賞を受賞した時の選考委員が宮部みゆきだったんですね。恐縮しながら選評を書いている作者の姿が何となく想像できます)

  • 財布が主人公

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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