弥勒の月: 長編時代小説 (光文社文庫 あ 46-1 光文社時代小説文庫)
- 光文社 (2008年8月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334744564
作品紹介・あらすじ
小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之介の眼差しに違和感を覚える。ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之介に関心を覚えた信次郎は岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める…。"闇"と"乾き"しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは?哀感溢れる時代小説。
感想・レビュー・書評
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満月の夜。
小間物屋・遠野屋の若おかみ、おりんが身を投げた。
死体検分に立ち会った、遠野屋主人、清之助の態度に、違和感を覚えた、同心、小暮信次郎。
ただの飛び込み事件と思われるが、清之助の態度が気になり、事件を追う。
信次郎の父親、右衛門の代からの岡っ引の伊佐治目線で、信次郎と清之助の丁々発止が語られる。
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弥勒シリーズ第一弾
時代小説+ミステリーという感じ
ストーリとしては
小間物屋の遠野屋の若おかみのおりんが水死体で発見されます。
ただの飛び込み事件なのか?
調べてほしいと願いでる主人の遠野屋清之助。この清之助には何か商人と思えない雰囲気があります。
その違和感を感じながら、同心の木暮伸次郎は岡っ引きの伊佐治と共に事件を追い始めます。
さらに殺人事件が発生!
犯人は誰?
といったミステリ展開です。
岡っ引きの伊佐治が良い味をだしています。
そして伸次郎の清之助へのこだわり
清之助の秘密..明らかになるその過去
それぞれの人物描写が深い..
続編楽しみ.. -
読みやすかった一冊。
月夜の晩。発見された女性の水死体。
事件性はあるのか真相を追う時代ミステリ。
初めてのあさのさんの時代小説は想像以上に読みやすかった。
謎めいた小間物問屋の主人を軸に、彼の素性はもちろん、先を早く知りたくなる展開、描き方が巧い。
そして情景描写の美、文章に吸い込まれる感覚、ハッと心を足止めされる感覚を味わえたのも良かった。
真相はせつない。
人が持つやるせない心も垣間見た。
良くも悪くも言葉が人を変えるんだな。
同心二人の関係もバランスが良い。
伊佐治がブレーキ役なのかな。
もう少し知りたくなる二人だ。 -
あさのあつこさんの時代ミステリーのシリーズだ。弥勒と言えば菩薩で社会の教科書に写真が出ていたと思う。スマートで足を組んでいたかも、どことなくゴロゴロの実の能力者に雰囲気が似ている。ヤハハハハって笑う。それだけに月なのか?
さて、同心の木暮信次郎と、岡っ引きの伊佐治が謎解きをしていく。重要人物は小間物問屋の遠野屋清之介。清之介の妻りんが飛び込み自殺をするところから始まる。
登場人物にはそれぞれ過去の闇がある。それがまたミステリアスを演出している。朝顔の種はどんな結末を開いてくれるのだろう。そして、月が意味することは・・・ -
キャラが濃ゆくてよい。
ちょっといっちゃってる感じの同心様。
仄暗い何かを持つ容疑者の商人。
2人のやりとりがよい。
事件はなんかブツって切られた感じがしてちょっと辛い。続きがあるようなので早く借りよう。
2022.9.11
128 -
10冊以上続く「弥勒シリーズ」の最初の一冊。同心・木暮信次郎と、少し引いた感じで仕えている岡っ引・伊佐治の関係が面白い。
多忙な中で細切れで読んだので、人物と関係性の理解が甘く、最後はよく分からず。同じシリーズで、もう一冊くらい読んでみるか? -
読書配信の視聴者さんに勧められて。
あさのあつこさんは初めて読む。
時代物は普段ほとんど読まないのだが、ミステリテイストなので話には入りやすかった。
ただ、私は途中からは完全にミステリだと思って読んでしまい、期待とは少し違う結末になってしまった。
殺人犯に関する伏線は序盤から張り巡らされており、それを追っていけば順当に犯人にたどり着く。
そしてその推理をひっくり返すような仕掛けもあって、そこまではいい。
しかし、その後に唐突で非科学的な結末が提示される。
とはいえ、本書はもともとミステリを謳っていないし、時代物は勢いが大事だからこれでいいのだと思う。
見どころは情景描写と人物描写だ。
同心の信次郎に対する清之介のひりついた雰囲気と得体の知れない感じとか、終盤の清之介とおりんの出会いのシーンの切なさとか、場の空気がよく表現されている。
清之介はおりんへの思いを直接的に口にすることはなくて、彼の過去のエピソードや振る舞いで感情を表現するのがまたうまい。
キャラクターがよく作りこまれている。
本作は同心の信次郎と岡っ引きの伊佐治が主人公かと思いきや、清之介の生い立ちや江戸に来るまでの過去を読むと気づけば彼が物語の中心にいた。
シリーズが続いているようだが、今後は信次郎たちにもスポットライトが当たるのだろうか。
機会があれば読み進めてみる。 -
シリーズ第一弾
遠野屋の若女将おりんが身投げ、背後に隠された秘密を直感で感じる同心小暮信次郎、そして配下の伊佐治親分
清之介が清弥だった頃の父と兄の関係
この伏線で展開か -
読み終わった後もじっとりと残る後味の悪さ。スッキリハッピーエンドではない、人間の暗くてどろどろしたものにスポットライトが当てられた物語のように感じた。そういうところがとても人間味があって、リアルに感じられて面白い。登場人物の癖も強い。もうちょっと優しい物語を欲していたので私には少し闇が強すぎたかもしれない。あとこれは完全に個人の好みだしこの時代をだと当たり前なんだけど、「女は馬鹿だから」「浮気をされても女の度量の見せ所」みたいな言葉はかけられた登場人物はどれほど悲しかったろうと思ってしまって胸が痛かった。