ラットマン (光文社文庫 み 31-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334748074

感想・レビュー・書評

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  • 久々の道尾作品。

    姫川亮は高校時代に同級生3人とともに結成したアマチュアバンド“Sundowner”のギタリスト。
    変化も特にないまま細々と続けて14年になる。唯一の変化はドラムが恋人のひかりから彼女の妹・桂に交代したぐらいだ。
    だが、姫川とひかりの関係には変化が生じていた。
    そんなある日の練習中に事件が起きる。それは、姫川の過去の記憶を呼び覚ますのだった。。。

    相変わらずミスディレクションがたっぷり用意してある物語である。
    騙されまい、と思っていても結局最後には驚かされてしまうので、もう構えて読まない方が良いのかもしれない。
    『ラットマン』という題名も、これしかないと言わんばかりのモノである。
    ちなみにこの“ラットマン”とは、簡単に言うと物事を見るときにその前後の出来事で見方が左右されてしまう現象の事。
    この物語では過去と現在で2つの事件が起きるのだが、それらがまさしくこの現象を示している。

    話を読み進めて行くうちにどんどん重く苦しい話になっていくのだが、
    最後の最後で何だか救われる形になる。
    起こってしまった事は悲しい出来事なのだが、結末は考え得る限りの最良の物だったという感じ。

    途中途中で散りばめられていた謎も全て解決して話は終わり気持ちは良いのだが、
    まあ多少モヤっとする点もある。
    例えば、姫川の過去の事件。彼の父は本当にそこまで考えていたのか。
    現在に起きた事件では、わずかな時間で姫川はとても多くの事を考えているが、実際問題可能なのか。
    まあ姫川がとても頭の切れる人物であるならばアリなのかと思うが…。

    そんな疑問点はあるものの、単純にミステリーとして非常に面白いし
    バンドメンバーの友情も暖かくて気持ち良い。
    谷尾はちょっと可哀想だけど。
    今のところ、道尾に外れ無しという感じ。


  • 奥の奥の奥があった。

    面白かった。

    勘違いで過ごした時間があまりにも長すぎて
    哀しい話でした。

  • 凄い。捲る手が止まらず、食事も忘れてしまう程に読み耽ってしまった。
    巧みなストーリー運びに丁寧な登場人物の心理描写が温度を与え、まるで自分が体験させられているようにも感じて息苦しさを感じる。
    加速する緊迫感もありながら、反してゆっくりと胸が締めつけられもする。道尾先生の作品は読むたびに抉り尽くされるようで、目を逸らしたい事を許してはくれない真っ直ぐさで切り込まれる。
    甘えを許してくれないこの感覚に魅了されてやまない。
    真相の真相に真相と、呆然と驚愕する連続のトリックと、繋がるタイトルが巧みすぎる。こんなの見破れないって!
    何が正しかったのか。何が過ちだったのか。先入観、思い込みの恐ろしさを見せられて恥ずかしくもなる。
    やるせなさの残る中にも、人と人とが思いやる心の温かさもあり、姫川を取り巻く優しき人達に触れる柔らかさに、じわりと胸が熱くなった。
    どれだけ好きな作品が増えるのか、道尾先生ワールドに嵌りまくり。ああ、凄かった。

  • 道尾秀介さん初読
    こんなに何度もひっくり返るの!?

    どでかい一発が最高と思ったが、このジェットコースター感はすごい!
    スピードに付いていけず頭混乱しました(笑)
    他の作品も是非読みたい!!

  • 「見る」とか「聞く」行為は、その前後の刺激に影響を受け結果を変化させてしまう。

    前半部で語られる心理学用語「ラットマン」の説明。
    それは作者道尾秀介から読者への挑戦状でもあった。

    前半から幾重にも張られた伏線と二転三転する話の展開にグイグイと引き込まれていく。

    騙されまいとすればするほど、自分の思い込みが邪魔をする。
    なるほどと思った次の瞬間、また騙される。

    最終章で全てが明かされ、自分は何を読んでいたのかと思わずページを遡る。

    作者の挑戦に気持ちよく完敗。

    何年か後、忘れた頃に再挑戦したい。
    そしてまた、気持ちよく騙されたい。

  • 序中盤まではいたって平凡な物語であり特に起伏のある箇所はなかったように思える

    が、この作品は道尾秀介作
    お得意のどんでんがえしが無い訳がない
    終盤からはあれよあれよという間に二転三転して予想の180度変わってしまっていた

    物語も家族とは?に重点を起き拡げられる人間ドラマは色々考えさせられる内容だった
    ラットマンの意味も最後まで見れば分かるでしょう

  • 最後まで話の展開に変化があり続けます。特に終盤はまんまと自分もラットマン状態で思い込みの連鎖になりました。
    変に考えて読むのではなく、これぞ道尾ワールドの大小の波に任せて読み続ければ、たっぷりとミステリーに浸り充実した読後感が得られました。

  • どんでん返しミステリー。
    300ページほどの短めな話。
    登場人物もさほど多くなくて、読みやすかった。
    伏線とその回収という点では、伏線自体が少ないので、少し物足りなさがあったかな。

    最初と後半に登場するエレベーターの小咄が、必要性がよくわからなかった…。
    そして、死んでも誰からもさほど悲しんでもらえないひかりが、可哀想でありました。
    過去の姫川の姉の死と、ひかりの死はかなり共通点がある。
    そうすると姫川の姉の死も、さほど悲しまれなかったということなのか。大人は隠蔽ばかりでね。何の罪もない小さな女の子の死が悲しまれない、それ、すごく悲しいな。

    誰かをかばおうとする気持ちってのは分かるものの、みんなテキパキ行動しすぎだよね。
    それはそれで道尾秀介作品らしいなと思いました。

  • この作品も面白かった。
    どんでん返しがすごい。

  • 読んでからこの感想を書くまでだいぶ時間が空いてしまった為、大雑把ですが書きます。

    まず読み終わった時、「すごい!」というのが素直な感想。タイトルにもなっているラットマン(の騙し絵)に相応しく、二転三転と感情を振り回される内容には感服させられた。

    自分を犠牲にカッコ良く愛する人を庇っていたつもりが、結局は思い込みで皮肉な結末。あの時の何とも言えない感情は、読書経験の浅い自分にとってはかなり新鮮だった。

    素晴らしい作品だったが、出てくる歌詞には入り込めず、文字列を目でなぞるだけになってしまった為、星4つ。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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