- Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751371
感想・レビュー・書評
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1830年の七月革命の勃発を予感させる時代。その時代背景としての身分・階級や党派の確執や思想を色濃く受けるなかで、人間関係と恋愛の策略とスリルを克明に描いた小説。
私は、小説を、いかに共感できるか、という視点で読み、評価することが多いが、この作品はそうした普段の視点とは別に物語の筋自体を楽しめた。ジュリアンの持つ、強烈な自尊心と偽善と情熱と崇高な精神は、時代中でかなり個性が強く共感しがたいが、そのこころの動きを一貫して丁寧に克明に描いている、その作者の抜かりのなさが素晴らしい。そして一瞬で移ろう人間の普遍的な心理を細かに、そしてリアルに描けている。上巻の野崎氏の解説で、歴史的背景への理解が深まり、また「この小説は『史上初の、サラリーマンを主人公とする小説』だと述べる研究者(Yves Ansel)もいる」との話と、その解説に納得し、最近流行りのビジネス小説(ハゲタカとか?)のさきがけなのかもしれない、とも思い興味深かった。恋愛という観点から言うと、手練手管の要素が多い中で、男女の心の微妙な変化、機微の中の表層的な部分をよく描いていると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んだ理由:レビュー一覧に文学作品を載せたかったw
感想:階級社会における抑圧と葛藤、許されぬ恋を圧倒的な内面描写で表現している。プロット自体はよくできた昼メロのような感じ。「情熱の文学」という表現が見事に当てはまる一冊。
野崎氏の新訳は難解なところもなくすらすら読めた。「文学を読む!」というふううに肩肘を張らなくても、エンターテイメントとして楽しめるものに仕上がっていると思う。