シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫 Aロ 4-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751715

作品紹介・あらすじ

ガスコンの青年隊シラノは詩人で軍人、豪快にして心優しい剣士だが、二枚目とは言えない大鼻の持ち主。秘かに想いを寄せる従妹ロクサーヌに恋した美男の同僚クリスチャンのために尽くすのだが…。1世紀を経た今も世界的に上演される、最も人気の高いフランスの傑作戯曲。

感想・レビュー・書評

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  • 即興で素晴らしい詩を詠み、音楽家として美しい歌を披露、熱血漢な剣客でもある知的で多才なシラノ・ド・ベルジュラック。しかし唯一特徴的な鼻が災いして恋には後ろ向きな男性でもある。シラノは従妹ロクサーヌに想いを寄せているが、ロクサーヌが容姿端麗なクリスチャンに心奪われていることを知り、ロクサーヌとクリスチャンの恋がうまくいくようとことん脇役に徹する――。

    シラノというキャラクターに惹かれる理由は、日本の古き良き武士道のような気風を感じるせいかもしれません。表向きは豪気に振舞いながらも、心のなかでは不器用なほど素直でまっすぐな想いを抱えている。自分の心を偽り、男女の恋の成就に尽力する。彼女の喜ぶ顔が見たいから。彼女に幸せを掴んでほしいから。すべては愛するロクサーヌのために。

    個人的に「かっこいい男」の代名詞と言えば映画『紅の豚』のポルコ(マルコ)がぶっちぎりの首位なのですが、シラノもまた、ポルコに迫るほどの良い男ぶりを発揮しています。よくよく考えると飛行機を乗り回しパイロットとして他を寄せ付けない腕を持ちながらも、親友への遠慮からジーナとの関係に踏み込めずにいるポルコと本作主人公のシラノは、どこからしら近い気質を感じるのは私だけでしょうか。

    戯曲ならではの印象的なフレーズも多く飛び交います。冒頭は注の多さのとっつきにくさも感じましたが、次第に一つの舞台で、客席から出演陣の熱のこもった演技を追っているかのようにストーリーに没頭できました。
    今回は光文社版を読みましたが、いつか岩波版も読んで訳の違いを楽しんでみたいです。

  •  前から気になっていた本。
     初めてのフランス劇。シェイクスピアに慣れているので、最初の群衆劇に「一体どう始まるのか??」と不安になりながらも、言葉の選び方・翻訳の仕方はシェイクスピアに負けず劣らず。
     若干のネタバレをしていたので、シラノの態度(あるいはツンデレにも見えるような?!)に悲しみを持ってしまった。報われないのにそばにいるって言わないけど素敵だな。
     

  • 慣れない形式、慣れない時代設定だったけどとても読みやすく、長台詞も読んでて気持ちいい。構成も隙がなく、第五幕が圧巻だった。

  • シラノになりたい。完全無欠の彼の唯一の不幸は、容姿に恵まれなかったことでなくロクサーヌを愛したこと。しかし、それでもやはり彼女ゆえに生の喜びもあったのだ。
    シラノの最も優れた性質は、帽子の羽飾りに象徴される「気高さ」。それゆえに愛する人と友人の幸せのために、自分を捨てて尽くす。姿ではなく魂だけが惹き合う至上の愛は、俗世では報われることはない。
    クリスチャンという自分で拵えた幻想を愛していたロクサーヌだが、それでは果たしてシラノはロクサーヌという幻想を愛していたのではないと言い切れるか?
    このストーリーは、こういう結末以外にはない。しかし、ロクサーヌは自分で意識していないものの、死んだ男しか愛せない気位の高い女のような印象も受ける。きれいだがわがままで、見る目も真心もない、とまでいっては云い過ぎだろうか。しかし、失った恋から14年も経てば、そろそろ自分にとって誰が真に大切な友人であり恋人であるかくらいわかってもよさそうなものではないか。とこういうことを云っているうちはシラノにはなれない。シラノはただ愛するひとの声を聴き、その笑顔を引き出すためだけに毎週ロクサーヌを訪問していたのであって、あわよくばおこぼれにあずかろうなどという邪なことは考えたこともないにちがいないのだから。

  • 2022年2月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99105060

  • 戯曲ということで読みづらいが、ストーリー、台詞回しはとても良かった。

  • 舞台観劇後改めて戯曲読む。シラノがタイトルロールだが、クリスチャンの苦悩も実はしっかり描かれている。現代アレンジでも見てみたい名作。

  • 類稀なる才能を持ちながら、その容姿が原因で好きな人に想いを伝える勇気の持てないシラノ・ド・ベルジュラックは、容姿端麗だが文才のない友人クリスチャンに代わって恋文を綴ってゆく。
    あらすじはなんとなく知っていたけど初読。あらすじから想像していたシラノより粗野な口調だったけど、読みやすい翻訳だった。しかし注釈は読んでない。ラスト、手紙を書いたのがシラノだとわかるシーンは、手紙に書かれたクリスチャンの状況と瀕死のシラノがオーバーラップしてきて、結末を知っていても泣ける。

  • 舞台も映画も見た事があったけど、スクリプトを本で読んだのは初めて。まったく違う経験。
    そして、文字だとより深く染み入る。素晴らしい。
    1897年の作品なのに、その台詞の息吹はいまもなお瑞々しい。後の全ての舞台、映画脚本のモデルになっているのだろう。特に思い起こすのは寅さんで、映画の中の筋書きは完全にシラノだ。

  • 〝9月の恋と出会うまで〟を読んで知りました!

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著者プロフィール

エドモン・ウジェーヌ・アレクシ・ロスタン(Edmond Eugène Alexis Rostand)
1868年4月1日 - 1918年12月2日
詩人・劇作家。マルセイユに生まれる。1890年、2歳年長の詩人ロズモンド・ジェラールと結婚。そのときの代父はルコント・ド・リール、後見人は、アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)。1891年長男モーリス、1894年に次男ジャンを得るが、モーリス(Maurice)は、後に作家。ジャン(Jean)は、後に生物学者となる(藤田嗣治の作品に『ジャン・ロスタンの肖像』"Portrait de Jean Rostand" がある)。
29歳で書いたコクラン主演の『シラノ・ド・ベルジュラック』が大当たりし、翌年レジオン・ドヌール勲章叙勲。その後、『鷲の皇子』(サラ・ベルナール主演)で再び大成功を収め、わずか33歳でアカデミー・フランセーズに選出される。第一次世界大戦で従軍を志願したが健康上の理由でかなわず、地方の前線を視察後戻ったパリでスペイン風邪をこじらせ逝去。

エドモン・ロスタンの作品

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