傍迷惑な人々: サ-バ-短篇集 (光文社古典新訳文庫 Aサ 2-1)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752545

作品紹介・あらすじ

子どもの頃から不器用で、工作すれば傷だらけ、車は毎度エンストの「なんでも壊す男」。思わずくすりと笑わせるイラストを、作者自ら大真面目に分析する「本棚のうえの女」。味のあるイラストと軽妙な文章で愛され続ける作家の実像を掘り起こす、絶品短篇集。本邦初訳2篇を含む。

感想・レビュー・書評

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  • とぼけた風でいて「神経症気味に暴走」する文章がユーモアある絵と合わさり何とも言えない雰囲気。解説のジョン・レノンが影響されたというエピソードに納得。『ツグミの巣ごもり』『マクベス殺人事件』『本棚のうえの女』が印象に残る。

  •  河出書房『はじめて読む!海外文学ブックガイド』(十四歳の世渡り術シリーズ)で、芹澤恵さんが紹介なさっていたので知り、読んだ。
     九十八セントの買い物に一ドル紙幣を出したウィルマ伯母さんに対し、細かい釣り銭がないのでもう三セント出せないかと雑貨屋の主人が頼んだことを端緒とする世紀の一騎打ちを描いた「ウィルマ伯母さんの損得勘定」、ある市の名前が思い出せないことがどうしても気になって眠れないぼくが、夜中の三時に、寝ている父親にニュージャージー州の市の名前をとにかく挙げてくれと頼みに行く「今夜もまたまた大騒ぎ」など、少年時代の家族や地元の人々との思い出がベースになっている掌編たちがとても面白かった。思わず吹き出してしまう。
     「ツグミの巣ごもり」は他とはちょっと毛色が違うように思われたが、これはこれで見事に、気に入らない女を“消す”話。「虹をつかむ男」は「Life!」というタイトルで映画化もされているらしく、これは日常の隙間時間についつい一人妄想に耽ってしまうあるある(?)で共感を覚える人も多いのでは。時々挿しはさまれるゆるいイラストも楽しい(サーバーは雑誌『ニューヨーカー』で漫画も描いていた)。
     冒頭に書いた『〜ガイドブック』を再び読んでみたら、芹澤さんはコロナ禍での暮らしの変化を受け「今のわたしたちのおたおたぶりをサーバーならどんなふうに見て、どんなふうに描いただろう」と述べられていた。おたおた、どたばたして参ってしまいそうなとき、サーバーのことを思い出すのも良いかもしれない。

  • 家族の絆:傍迷惑なのは疑いようもないが、退屈はしなさそうな家族。しかし夜は静かに寝て欲しい。傍迷惑な人々:家庭だけでなく職場にも面倒な人々が。ツグミの巣ごもりは、勤勉実直な社員の密かなる復讐劇で、バローズ夫人には悪いがスッとする。妄想暴走族:マクベスをミステリー脳で妄想すると、考えすぎて突飛なことになる。そういうぼくが実はいちばん……:なんでも壊す男は、もはや機械に嫌われる宿命を背負っている。

  • 長らく積読で失敗した。素晴らしくクールでモダン。

  • 家族、友人・隣人、同僚、そして「ぼく」自身。ちょっとじゃすまないお騒がせな人々が続々と登場する20篇。きまじめな中年男性社員が、新入りで傍若無人の女性社員に耐えきれずついに彼女を”消そう”と決心する。小心者にはたして復讐などできるのか?の「ツグミの巣ごもり」や、モンスター・クレーマーすれすれの「当ててごらんと言われてもねえ……」、「第三九〇二〇九〇号の復讐」など、少し意地の悪いユーモアがたまらない。10代のジョン・レノンの絵に〝サーバー化”の影響を与えたという、いたずらがきみたいな挿画が楽しい。本書での犬成分は少なめ。訳者と青山南によるダブル解説

  • 文学
    古典

  • 気になったので読んでみた次第なのだが、笑いに満ちた一冊だった。
    「家族の絆」パートはエッセー集。どの物語も「なんでそうなるの!www」ってツッコミまくりだった。でも、ダム決壊の話は冗談抜き、いつだってありそうだから自戒自戒。
    「傍迷惑な人々」パートはありそうな変な人シリーズ。少しホラーなところもあったり、周りがかわいそうだと思ったり。今でもいませんか、こういう人。
    「暴走妄想族」パートはどこまでが事実か分からなくなるものばかり。マクベスは推理小説じゃないので!
    「そういうぼくが実はいちばん……」パートもエッセーパート。実は鉄面皮なのかもとか穿った見方をしてみる。

  • 20世紀アメリカの作家・イラストレーターにして雑誌『ニューヨーカー』の執筆者でもあったジェイムズ・サーバー(1894-1961)のエッセイ風ユーモア短篇集。

    「ウィルマ伯母さんの損得勘定」の頭のよじれるような面白さは傑作。「ダム決壊の日」のなぜかほのぼのとしてしまっているユーモラスなドタバタぶりも愉快。機械音痴でクルマに疎く取扱説明書恐怖症である「なんでも壊す男」(作者自身のこと)のぼやきは、仕組みのよく分らない情報機器にやたらと取り囲まれてしまっている現代、そうした機械類への絶対的な苦手意識に捕われている私と同類の人々に、共感の笑いとともに読まれるに違いない。個人的にはこの3篇が出色。

    「そう言えば、ぼくは暖房機の自動温度調節装置というやつをいじるのも好きではない。毎晩ベッドに入るまえに、室温を十三度に落とすたびに、真夜中に爆発が起こって、屋根を突き破って吹っ飛ばされるのではないかと、びくびくしながら眠りに就いている」

    「おかげで今ではぼくも、車というものはギアがニュートラル・ポジションのままでは、エンジンがかからないということを知っている。でも、どうしてそうなるのか、その仕組みはいまだにわからない。始動機がついている場合は、ギアがニュートラル・ポジションでもエンジンはかかるそうだが、そんなことはぼくの知ったことか、である」

    「このソーダ・サイフォン、見たところ、使う人の十人ちゅう九人までの言うことはちゃんと聞きそうだが、ぼくが使うとなると、おいそれとは言うことを聞いてくれそうになく、さんざんねばられて、結局は引き分けということになるのではないか、という嫌な予感がするからだ」

    その他、シェイクスピアの戯曲を探偵小説として読んでしまう「マクベス殺人事件」の、ちぐはぐさを面白がらせるところもいい。なお、「なんでも壊す男」「放送本番中、緊張しないためには」の2篇はここに収められているものが本邦初訳。紹介してくれた訳者に感謝。

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  • まさに「傍迷惑な人々」ばかりがでてくる。迷惑と言い切るのも違う、読んでいる限りでは笑えるけれど、傍迷惑な人々。今回は<暴走妄想族>の章が一番楽しかったかも。個人的には、さらっとしすぎてて休憩本にするにもちょっと物足りない感じ。

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