崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫 Aア 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752828

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  • アフリカ伝統社会が西欧文明の流入により壊れてゆく様子を描いた小説。前半は伝統社会の描写で入り込むまで時間がかかるが、それでも読み進むねうちはある。映画「セデック・バレ」や、明治日本の近代化、さらには高度経済成長以後の日本の変化にも重ね合わせて読んでみたい。

  • 小説の前半に描かれる、呪術と迷信が跋扈する19世紀のアフリカ社会を描く筆致、その異様な迫力に圧倒される。年代的にはアチェベはそれら時代から少し隔たっており、本書を読むことは、作者が自らの拠り所としてのアフリカ社会の伝統を手繰り寄せる行為に立ち会う作業とも云えそう。
    旧社会を代表するオコンクォの破滅を描くところで小説は終わるが、その先を描かないところにアフリカの深い自問があるのか、と思う。アフリカ現代を知りたいと感じる。
    新訳を出版した光文社に拍手。

  • チヌア・アチェベ『崩れゆく絆』光文社古典新訳文庫、読了。呪術と慣習の根深い伝統社会で生きる人々とそこに忍び寄る「文明」としてのキリスト教の植民地支配。

    伝統的な価値観の崩壊と変化に抗あらがう男の悲劇を描く本作は、「アフリカ文学の父」と呼ばれる著者の代表作。

    著者のコンラッド批判は有名だが、ただ著者の筆致は単純な否定と肯定でもない。カウンターとは違うそのたたずまいに多元主義の徴が光る。

  • キリスト教の流入と植民地化により、アフリカの部族社会が崩壊していく様子が、1人の男の目を通して描かれる。
    とは言え物語が大きく動き出すのは半ばを過ぎてからで、前半は馴染みのない風習や儀礼に代表される土着文化が生き生きと描かれ、非常に興味深い。
    余談だが、久々に登場人物の名前がなかなか覚えられない……という体験をしたw

  • なかなか気軽に文庫で読む機会のないアフリカ文学。昨年亡くなったナイジェリアの作家アチェベの長編が古典新訳文庫に!(嬉)。とりあえず日本人からは想像もつかない異文化の風習や文化、儀式など、彼らの暮らしぶりを知れるだけでも興味深い。母親が子供に語って聞かせる昔話や、ちょっとした会話に登場することわざなんかも、アジアともヨーロッパとも違って独特の味わいがあります。そして彼らの神様や呪術、託宣する巫女など、宗教観もやはり独特。しかしやがてそんな彼らの元へ白人たちがやってきて、キリスト教による布教という名の宗教侵略を手始めとして、本格的な植民地侵略が始まり・・・

    怠け者で臆病な父親を反面教師にして逞しく育った主人公オコンクウォは、勇敢で強い戦士であると同時に、横暴で向こう見ずな面もあるきわめて人間的な男。3人の妻と大勢の子供たちを従える家長として、誰にも自分の弱さを見せることのできない彼が、可愛がっていた養い子を自らの手にかけてしまうくだりや、最終的にオコンクウォ自身が新勢力と旧世界の狭間で力尽きてしまう結末などは、ギリシャ悲劇かシェイクスピアかというドラマ性もあって、民族誌としてだけではなく小説としてもとても読み応えがありました。

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