- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334753726
感想・レビュー・書評
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ヒトラー『我が闘争』に対する「民主主義からの返答」として高く評価される。という書評が気になってしょうがなかったので、「ちいさな王子」に続いて読んでみた。
1940/5/23の、電撃戦直後のフランス軍偵察飛行1日のお話。
両世界大戦とも早々に降伏しておきながら、戦勝国然としたフランスには、決していい感情は持ってなかったが、負け戦ながら、懸命に抵抗する姿勢に感銘を受けた。また、「民主主義陣営の中でも最強のやつ」としてアメリカの参戦を待ち望む雰囲気が、よく分かった。
P302 最後の一文
明日も、われわれはなにも言わないだろう。明日も、傍観者たちにとっては、われわれは敗者だろう。敗者は沈黙すべきだ。種子のように。
P296
私は信じる。《人間》の優越こそが唯一意味ある《平等》を、唯一意味ある《自由》を築きあげるものだと。私は《人間》の権利が各個人を通じて平等であると信じる。《自由》とは《人間》の上昇にほかならないと信じる。《平等》とは《同一性》ではない。《自由》とは個人を《人間》よりも賞揚することではない。したがって私が戦うのは、それが誰であれ、《人間》の自由をある個人にーあるいは個人からなる群れにー隷従させようとする者だ。
P67
ある女性を美しいと思うとき、私には言うべきことはなにもない。ただその女がほほえむのを見るだけだ。インテリ連中はその顔を説明しようとして、分解してからそれぞれの断片を分析するが。もはやほほえみそのものは見ていない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いつかの『新潮』で山内志朗が面白いって言ってたから読んだ。
第二次世界大戦下で敗北が決定的なフランス。そのなかで敵地での偵察非行に向かう主人公。負けがわかっている(何も守るべきものがない)中で「何のために死ぬのか」という命題を問い続けた筆者の葛藤を自伝的に描き出した小説。
自分には内容が少し難しかったけれど、「人間は関係の結び目である」とか身体ではなく行為の中にその人が宿るみたいな印象に残るフレーズが多くて面白かった。 -
著者の実体験に基づく小説。フランス軍の偵察機パイロットとして戦争に参加する。海外文学の翻訳本としては読みやすいと思います。「光文社新訳文庫」。
「人が死ぬことができるのは唯一、それなしでは自分が生きられないもののためにだけだ」
印象に残った言葉です。
「ちいさな王子」が表の名作ならこちらは影の名作といったところでしょうか。 -
第二次大戦における作者の操縦士としての体験に基づきながら、自由な精神性が失われる「戦争」に対する強烈な批判と理不尽さに対して行動=戦う情熱を示している。「したがって、私が戦うのは、それが誰であれ、… 他の思想に対してある個別の思想だけを押しつけるものだ」(P296)のくだりが響く。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/742361 -
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敗北感漂うWWIIの戦禍を掻い潜り
「なぜ自分が死ななければならないのか」と問い続ける自伝的小説
目的を意識して行動する昨今の私達とは違い、志願して上記の命題に辿り着き、戦線でその問題の解答を得た作者の知見に胸を打たれました -
偵察機パイロットの話。作者の小説の中で総合的にいちばん好きです。昨今の情勢を見るに、この本の平和の定義が染みます。ラストの締め方には賛否あるみたいですが、個人的には秀逸だと思います。
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感想は後で書く