死刑囚最後の日 (光文社古典新訳文庫 Aユ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753900

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  • ある男性が死刑判決を受け、ギロチン刑にかけられる寸前までを書いたもの。手記のような形式。男の名前、罪の内容は明らかにされず、人間的な部分は一切排除されている。死刑という未来のなさをより際立たせる感じだった。

    ユゴーの死刑反対の論考もある。死刑の目的は社会に害をなす者の排除、罰を与え被害者の復讐を果たす、見せしめによる犯罪の抑制の3つがあげられている。しかしユゴーは排除するならば終身刑でよい、復讐は神の領域であり、社会や人間がするものではない、また社会は矯正に努めるべき、そして死刑に犯罪の抑止効果はない、と主張している。死刑制度は日本では賛成派が多い。「日本では死刑は当然」と思考停止に陥ることなく、死刑について目をそらさずにいたい。群衆のエンタメにも使われるから難しいよなぁ…

  • 昔家で豚が飼われていた。当時一番チビだった私の自転車も当然一番小さく、豚のいる柵の手前に止めるよう父親に言われていた。毎回暗闇から威嚇され、私はガチガチに恐怖に震えていた。ある日、知らない人にロープに繋がれ、豚が引っ張られているの目にする。当然のように抵抗し、悲痛な叫び声をあげる豚。「やっとあのジャイアン野郎がいなくなる!で、でもあいつ豚だから、殺されちゃうんだよね。。。」と衝撃な光景を目の前に「なぜ殺してしまうものをわざわざ飼うのか。可哀想ではないか。人生とは非情であり無情だ」わからないながらも思った。

  • 平野啓一郎氏の「死刑について」にて取り上げられていた本。読んだ後ずっしりと気持ちが重くなる感覚。日本では存続している死刑制度だが、その存在について改めて考えさせられる一冊だった。
    またこの作品をユゴーが20代のうちに書いたといのには驚いた(出版時26歳だという)。本当に死刑囚の手記を元に書いたのかと思うほどに責苦に溢れた主人公の心情を細かく表現し、読んでいると心が苦しむ場面も多くあった。
    死刑囚も一人の人間であり人権がある。これとどう向き合っていくのか、自分なりに考えたい。

  • 或る死刑囚の死刑台に登るまでの苦悩、戦慄を描き、死刑制度反対を唱えた作品。解説と訳者あとがきが厚く、時代背景、同時代の識者の考え方がよくわかった。日本ではまだ死刑は続いており、社会的排除や見せしめではなく、被害者の気持ちを慮っての意味合いが近いのであろうが、被害者の復讐の代行という意味であればおこがましい。キリスト教国との風土が異なるのだろうが、死刑制度にメリットは無く反対である。2022.10.8

  • ◇死刑囚の日記という体裁をとったユゴーの小説。

  • 『レ・ミゼラブル』の作者であるユゴーの、死刑廃止を訴えることを目的として執筆された手記形式の小説。主人公は囚われ死刑囚となった男で、彼の心情を交えながら裁判の様子、監獄の様子、国民の犯罪者に対する目線、死刑執行の瞬間などを極めてリアリティの溢れる描写で明晰に綴られている。
    当然であるが、犯罪者も千差万別で、全員が悪党に身を染めた極悪人ではないのだ。我々と同じ喜怒哀楽の感情を持ち、情愛を持っている。彼らのような人間を短絡的に「悪」と断定し迫害することは果たして正しいことなのであろうか考えなければならないと私は感じた。勿論、当時ギロチン刑が当たり前で、犯罪者にたいする情状酌量の余地が認められていないような人権意識の希薄な時代に書かれたものであるから今と照らし合わせるのは少し問題があるのも事実だが、ユゴー はこの小説の中でこう書いている。

    「自分(作者)の作品から読み取ってほしいと願うのは、あれこれの選ばれた犯罪者や特別の被告にたいする、特殊で、つねに容易で一時的な弁護ではない。現在および未来のあらゆる被告に向けられた、全般的かつ永続的な擁護である。」

    つまり、今の我々にもこの問題に対して考えて欲しいとユゴーは言っている。今日本では未だに死刑制度は存続している。しかし闇雲に扇動されて廃止すべきであるとは私は思わない。大切なのは犯罪者に対する人権意識であったり刑罰の適切さのようなもの、そして国が人の命を奪うということをしているのだのいう現実を「考え」ることが大切であると私は思う。 世の中で起こっている制度を短絡思考のみに容認するのでは無しに、一人一人の考えるという行為が大切なのだと私には読み取れた。その上で賛成なのか反対なのか、そこが重要であろうと思う。

  • 1832年に書かれたらしい、死刑廃止を訴える論文、ととらえることができよう。死刑存続を唱える人にも読んでもらいたい。死刑について知らないことがとても多いのだと思う。

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