バスカヴィル家の犬 (光文社文庫 ト 2-7 新訳シャーロック・ホームズ全集)
- 光文社 (2007年7月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334761806
作品紹介・あらすじ
急死したサー・チャールズ・バスカヴィルの死体のそばには、巨大な犬の足跡があった。ダートムアのバスカヴィル家に伝わる魔犬伝説は、ほんとうなのか?遺産相続人サー・ヘンリーの依頼で、ホームズは捜査を開始する。はたして、先に現地に乗りこんだワトスンを待ち受けていたものは?これまで何度も映画化された、最も有名で人気のある長編。
感想・レビュー・書評
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「最後の事件」でホームズが(仮に)死んでから書かれることのなかったホームズシリーズ、8年ぶりの新作が本作。とはいえまだホームズは生還したわけではなく、ワトスン執筆による過去の事件となっている。そして解説によると本作にはドイルではない別人の原案的なものがあり。ドイルの友人バートラム・フレッチャー・ロビンソンが、自身の故郷ダートムアの黒い魔犬の伝説をドイルに話し、さらに彼自身が執筆したこの題材の小説をドイルに見せたことがホームズ復活のきっかけとなったそうで。世界中のシャーロキアンはこのバートラムくんに足を向けて眠れまい(笑)
さて内容のほうですが、今回活躍するのはホームズよりむしろワトスン君。非道なご先祖が働いた悪行により代々呪われた黒い魔犬に怯えてきたダートムアのバスカヴィル家の当主。当代の当主が不審死を遂げ、主治医がホームズに助けを求めてやってくる。しかし多忙のホームズは別件で忙しく、とりあえずワトスン君を現地に派遣。ワトスンはダートムアで事件を調査しホームズに報告書を送るという形。
バスカヴィル家では、唯一の血縁ヘンリーが跡継ぎとして戻ってくるが、何か隠しごとをしているらしき執事夫婦、ご近所のうさんくさい昆虫学者ステイプルトンとその美人の妹、なぜかダートムアに潜伏している脱獄囚など、次々怪しい人物が登場。ワトスンは翻弄されるがさらに怪しい男が近辺に現れ…。
まず嵐が丘ばりの荒涼とした英国の地方村という舞台だてに魔犬の伝説というのがちょっとロマンチックというか不穏というかで好み。事件の展開は二転三転、ネタバレだけれどワトスンにすら内緒でこっそり隠れていたホームズが突然現れてワトスンをびっくりさせるところなど、人が悪いが面白い。
ツッコミどころとしては、魔犬がほんとにただのバカでかい犬なとこと、やや奇人としか思えない、冴えない犯人が美女二人を手玉にとっているところは納得いかなかった。美女たち、なんでその男にひっかかったんだ。とはいえホームズシリーズ長編の中では、これがいちばん好きかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この作品は、1901年に発表。
即ち、著者が42歳の頃に書かれた作品である。 -
シャーロック・ホームズ・シリーズは、光文社の新訳文庫版で言うと、コナン・ドイルさんの執筆順に並べると以下のようになります。
①緋色の研究(長編)
②四つの署名(長編)
③シャーロック・ホームズの冒険(短編集)
④シャーロック・ホームズの回想(短編集)
⑤バスカヴィル家の犬(長編)
⑥シャーロック・ホームズの帰還(短編集)
⑦恐怖の谷(長編)
⑧シャーロック・ホームズ最後の挨拶(短編集)
⑨シャーロック・ホームズの事件簿(短編集)
で、これは⑤。
光文社新訳シリーズは、もともと盲信してる上に、ホームズ・シリーズの面白さに開眼してしまいました。多分、このまま全て制覇すると思われます。
さて、シャーロック・ホームズ・シリーズは、もう、ルパン三世みたいなもの、と思います。ホームズとワトソンのキャラクター、まあ特にホームズですが、で楽しめちゃいます。別に卑下ではなく、ヒーローモノなんで。まあ、それが乱暴すぎるとすれば、加えて、結構ダークで無秩序な、犯人たちの欲望の世界だとか。1900年前後のロンドン、イングランドの風俗的描写だとか。ホームズが最後に全てを持っていく前提で、お決まりでも難事件感を盛り上げる娯楽的な構成とか。あと、何より、一応は正義の味方だけど、人情派ではないし、どこか、虚無的でドライで、全くニンゲン的にブれず、ある種、即物的な主人公の在り方ですね。これは、ほとんどゴルゴ13みたいなものです。また、ブラック・ジャック的ですね。
手塚治虫さんは、三つ目がとおる、でもっとわかりやすくホームズシリーズを取り込んでますけど。でもブラック・ジャックとピノコ、も、ホームズとワトソンなんですね。
(ちなみに、短編のほうが多いこととか、ヒーローが解決できなかった挿話も多い事。そういうのも、ホームズとブラック・ジャックの共通点です。
さすが手塚治虫さん、とも言えるし、シャーロック・ホームズ・シリーズが、いかに物語を娯楽的に語るか、ミステリーや探偵モノの黄金率を作ってしまったスゴイ作品、とも言えますね)
バスカヴィル家の犬。再読です。
以下、ネタバレします。
お話のタネは、金持ちの遺産目的の殺人事件。
イングランドの田舎町の、魔の犬の伝説に便乗して、燐で恐怖演出した獰猛な犬で人殺しをする。それが、動機も手口も犯人も、かなり後半まで隠して進みます。
毎度おなじみ植民地帰りの金持ち。
怪しい兄妹が実は夫婦だったり。
偶然絡む別線の事件。
殺人犯の逃亡者、が実は弟。匿う姉。
いろいろありまして豊穣なミステリーですが、何と言っても舞台となる地域の描写が白眉ですね。 ブロンテの「嵐が丘」そのものみたいな、田舎の荒野ですね。沼や林。映画「007スカイフォール」を観た人は、あれを想像するといいですね。
その風景描写が恐怖演出とか、不安なワトソンの心理描写になります。面白いです。
また、今回シリーズを通読してみて、ドイルさんなんか、新訳なのか、冒険活劇アクション部分の描写も、上手いんですよね。エンターテイメントとしても、客は全員、ホームズとワトソンが死ぬことはない、勝つに決まってる、と、分かっていても、手に汗握らせちゃう。ここんとこ、力量というか、解ってるなあ、と思います。
ホームズでいちばん、金田一耕助っぽい話だと思いますね。もちろん、横溝正史さんは、ゼッタイにホームズ・シリーズは意識してると思うので、母胎という意味でもホームズ・シリーズは計り知れない価値と影響力があるんですね。
考えたら、シャーロキアンとかベイカー街クラブみたいなお遊びも、つまりはオタクや非リア充(言葉の使い方有ってるか不安ですが)な楽しみの原型ですよね。
資本主義、都会のアノミー、救いきれない主人公、田舎町の恐怖。キャラ魅力に細部の楽しみ方。。。
いや、ほんと、奥の深い楽しみ方ができますねえ。ゼッタイこれ、子供向きじゃないですね。大人向け、それも多分、基本は男性向けかなあ。。。いや、ホームズをイケメンと考えて、ワトソンとの擬似ボーイズラブと考えれば、女性も楽しめるのか?ただ、主役は一切、ラブしないからなあ。。。
でも、見方によっては、シャーロック・ホームズ・シリーズの延長線上に、確実に池井戸潤さんも、「半沢直樹」も、あるんですよね。
電子書籍、スマートフォンで読了。合間で読めるから便利でしたが、唯一、ちょっと寂しかったのは、電子書籍だと、挿絵は見れないんですね。。。 -
バスカヴィル家に伝わる、祟りの魔犬伝説。現実にバスカヴィル家の主が亡くなったそばには巨大な犬の足跡が残されていた。そんなことから依頼を受けたホームズは、ワトスンと共に捜査を始めることにする。
さすが一番シリーズで人気の高い本とあって、謎が多く、ホームズすらてこずり、ボリュームのある1冊だった。
犯人も犬も影は常に感じるのに、なかなか姿を現さず、ついに!と思えば……という展開が待ち受けていたり、読み物としてはとてもよくできていると思う。
しかし、本書において致命的だったのは注釈で犯人が推測できてしまったこと。 -
有名な作品を遂に読破。人間関係が複雑に絡み合い謎が謎を呼ぶ大事件。クライマックスにもう少し盛り上がりが欲しかった。
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再読。中学生のときに新潮文庫で読んだ。これで『シャーロック・ホームズの誤謬 (『バスカヴィル家の犬』再考?』が手に入ったら読めるな。でも、たぶん読まないだろう・・・
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最も有名であるという一冊を読破。面白かったw