炎蛹 新装版: 新宿鮫5 (光文社文庫 お 21-20 新宿鮫 新装版 5)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767648

感想・レビュー・書評

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  •  3つの事件が複雑に絡み、事件を解決していく鮫島。
     他の本を平行して読んでいる為、ちょっと間を置くと、登場人物が多くて、登場人物の名が分からなくなる。
     しかし、読み始めると、ぐいぐい引き込まれる。さすが、大沢在昌だ。
     今回は防疫管とタッグを組んで事件を解決していくが、防疫管の甲屋さん、
    なかなか、良い味を出している。
     最後に、謎の不動産屋の社長?という大物らしき人物が海外へ逃げて行き、
    この人物が容易ならざる人物だという含みを残して終わり、次回作に含みを
    残している。気になるところだ。

  • このシリーズは、「訳アリ」な新宿署の鮫島警部が、各作中での様々な事件に向き合って奮戦するという内容だ。シリーズの各作品で各々の味わいが在る。「各々の味わい」としたが、鮫島と一部の劇中人物達が共通する「各々の雰囲気が在る」のが好いのだ。
    シリーズ各作品は、基本的に鮫島の目線で綴られるが、事件関係者等の目線で綴られる部分が適宜入り込んで切り替わりながら展開している。何処か「クールな映像作品」にでも触れているような気分になる場合も在る。
    本作の題の『炎蛹』であるが、作中に登場する(架空)の害虫の名を和訳した字を宛てている。害虫の件が鍵にはなるが、次々と起こる様々な出来事がスピーディーに、複雑に絡み合いながら進む。続きが気になって、頁を繰る手が停められなくなってしまう。
    物語は、深夜の道路でハンドルを握る鮫島が或る車を密かに追っている場面から起こる。“尾行”をしながら様子を観ているのだ。
    鮫島が追っているのは、大規模な窃盗と盗品売買を展開するイラン人グループであった。新宿周辺で、多くの家電製品等が密かに多数売られている様子が見受けられた。そういう様子を内偵し、やがて窃盗と故買に携わるグループ関係者と見受けられる者達を見出した。彼らを追い、盗品を保管する倉庫のような場所を割り出そうというのである。
    やがて鮫島が追う車は東京都の境を越えて埼玉県内に入り込んだ。そして倉庫と見受けられる場所に到着した。鮫島は慎重に様子を伺った。
    そんな頃、新宿では複数の事件が殆ど同時に発生してしまっていた。路上で外国人娼婦が刺殺され、ほぼ同時にラブホテルが火災に見舞われた。ラブホテルの火災は放火と見受けられた。
    新宿の様子を知らない鮫島が倉庫を注視していれば、そこに別な一団が乱入した。イラン人グループと対立していた中国人グループと見受けられた。後者が前者を襲撃したのだ。双方に死傷者が生じる大混乱となってしまっていた。
    娼婦の刺殺の件と、窃盗と故買のグループの件に彼らが絡む抗争の件、放火の件と様々な事案の狭間で鮫島は活動しようとする。
    そうしていると、今度は管轄内のアパートで別な外国人娼婦が刺殺されてしまった。殺害されたのは、アパートの部屋の住人ではなく、自身のアパートに入る迄の間に身を寄せていたという女性で、玄関扉の前の通路で遺体が見付かったのだった。部屋の住人は、警察への通報をするのでもなく姿を消した。そして姿を消した女性はイラン人男性と交際していると見受けられた。
    深夜の出来事であった。翌朝からの捜査に備えるという段に至り、鮫島はもう1件の娼婦刺殺や、イラン人グループの件等に想いを巡らせながら現場を見詰めていた。そうしていると、現場保存の意図で警備に立っていた署員と何者かが言い争う声がした。
    深夜が寧ろ早朝になって行く時間帯に、見慣れないやや年配の男が、警備に立つ署員と押し問答し、アパートの部屋の中を見せろと強く主張していた。鮫島は押し問答に割って入り、男の話しに耳を傾けた。
    男は甲屋(かぶとや)と名乗った。植物防疫所の技官であるという。アルゼンチンの研究機関に問い合わせた結果、深刻な農業被害をもたらす危惧が在ることの判明した害虫の繭が付着したモノが持ち込まれているという。その情報を得て、直ちにと現場に飛んで来たのだと甲屋は説いた。
    殺害されてしまった外国人娼婦の妹が少し遅れて来日していた。コカインの所持が見付かり、拘束され、強制送還ということになっていたのだという。その外国人娼婦の妹が、植物防疫の規則で持込が厳しく禁じられている稲の藁で出来た民芸品を持っていた。それには赤く小さなモノが多数付着していた。それが未だ日本国内に入っていない種類のゾウムシの繭だった。そして甲屋は「出身地の縁起物なので、先に日本に入国した(殺害されてしまっていた)姉が同じモノを持っている筈」だと聴いたというのだ。
    鮫島は甲屋の話しを聴き、一緒にアパートの部屋を調べたが、該当するモノは見当たらなかった。姿を消した住人の女性が、殺害された女性が妹と住もうと用意したアパートにでも持って行ってしまったと推測された。しかし、その場所の情報は無い。更に、その姿を消した女性は、鮫島が追うグループに関わるイラン人と行動を共にしている可能性も在る。
    結局、甲屋は鮫島に同行し、捜査活動の中で問題のモノを何とか回収して、植物防疫所で処分することを目指すということにしたのだった。
    こうして鮫島と甲屋という、異色な臨時コンビが登場した。2件の殺人、放火の件、窃盗と故買の件、外国人グループが抗争状態のようになっている件、加えて害虫の件と、様々な出来事が錯綜しながら展開する。明らかになるような、同時に謎が深まるようなという展開である。
    異色な臨時コンビは、日頃の活動分野も違い、経歴も年代も各々に異なる訳だが、共に「護るべきモノを護るために力を尽くす」という生き方を択んでいるような一面が在る。そういう共通項の故に、互いに気持ちを開いて、難しい事件の中で力を合わせる様子が凄く面白い。また本作は、御馴染の桃井課長や鑑識係の藪の他、消防庁の吾妻、機動捜査隊の野本というような人達、加えて鮫島の交際相手の晶(しょう)という面々に甲屋が絡んで、被疑者が何者が推論を重ねるような場面も在って、それも凄く愉しい。
    大都市では、同じ日の殆ど同じ時間帯に、一つの警察署の管轄区域で複数の事件が起ってしまう場合も在るであろう。そういう状態で展開するスピーディーで重厚な本作はかなり面白い。

  • 事件が多すぎる上に、解決はほとんど新宿鮫ばかり。植物防疫官の語りを半分にして、その分、女装したり家を燃やしたりする犯人の背景について、もうすこし丁寧に分かりやすく描写してほしかった。ただ、この頃に流行ったジェットコースータードラマ(https://thetv.jp/program/finder/drama/?free=%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E)に展開が影響されているのかな?と感じた。

  • 娼婦殺しと窃盗団を追っていた鮫島が、植物防疫官の甲屋と共にフラウメス・ブーパという害虫の行方も追うようになる話。
    たくさんの事件が絡み合ってるのにややこしくはない。
    甲屋さんのキャラがめちゃくちゃ良かった。新宿鮫シリーズでは割とおなじみの鮫島の相棒役としては今のところ一番好きかも!

  • 窃盗団を追いかけていたはずが、外国人娼婦殺害につながり、外国人娼婦殺害の目撃者は…。盛りだくさんの事件も、そこが「新宿」というだけで、そういうものかもしれないと思わせる土地の説得力が新宿にはある。防疫官に消防官、鮫島が協力をする相手は組織は違えど、プロで、互いの知恵と経験が絡み合う。そして因縁の仙田が登場する巻でもある。個人的には仙田の得体のしれなさと、警戒心の強さに惹かれる。

  • 新宿鮫シリーズ第5弾。当シリーズは毎回、手を変え品を変え何かに挑戦する姿勢が楽しみ。
    本作の特徴ははいつも単独行動の鮫島にバディがいることだ(防疫官の甲屋、消防庁の吾妻)。
    玄人と素人、計画性と衝動性が入り混じった複数の事件が収斂していく展開は面白く、そういう意味でもシリーズ中もっともオーソドックスな作品といえるかもしれない(シリーズ中では異色?ややこしい)。
    ちゃんと確認してないが、たぶん本作から鮫島が携帯を所持した。

  • 今回も面白かった。キャラクターを生かすのが本当に上手い。晶との関係が前巻からどうなるのか、不安だったけど大丈夫だった。

  • あまり馴染みのない消防官というキャラクターがよかった。

  • 新宿鮫シリーズ5巻、炎蛹。
    面白い!面白かった!…でも何かが物足りなかった…。
    んー?なんだろ?
    そうか、思わず心惹かれてしまう犯人!笑

    消防司令の吾妻、植物防疫官の甲屋、藪、上司の桃井。鮫島のまわりの登場人物が賑やかで、いつもとは違う雰囲気で話が進んでいく。
    甲屋は、職人気質で堅物かと思いきや、好奇心いっぱいのマイペースな言動に笑ってしまう。

    イラン人窃盗グループの商売の先に見え隠れする南米麻薬組織。
    ラブホテルで起こる連続放火。
    外国人娼婦殺害。
    外国人娼婦が知らずに持ち込んだ日本の稲を全滅させてしまう繁殖力の強い害虫の捜索。

    いくつもの事件が1つの流れになって
    つながっていく!
    最後の1ページまで事件が続く、ドキドキ。

    でも1番気になったのは…、
    鮫島の裏をかき外国に逃亡してしまった、
    日系ブラジル人と偽る仙田。
    あぁ、ここは次回に"続く"なのかぁ!くぅ!と堪らない気持ちで読み進める。
    仙田…次は何巻で出てくるのかなぁとワクワクが止まらない。

    あっ、あと晶と鮫島が
    前巻の事件でお互いの足枷になってしまったのではないかと悩み、お互いを大切に思う気持ちから別れを考えたけれど、
    やっぱり別れないぞって確認しあう場面、
    良かったなぁ!(^^)

    • 土瓶さん
      まっちゃん、こんばんはー。
      そうそう、そんなお話でしたね。
      そうかー……あの仙田が登場したのはこの巻でしたかー。
      もちろん奴はこのあと...
      まっちゃん、こんばんはー。
      そうそう、そんなお話でしたね。
      そうかー……あの仙田が登場したのはこの巻でしたかー。
      もちろん奴はこのあとも鮫島にからんできますよ。
      お楽しみに^^
      2022/03/13
    • 松子さん
      どんちゃん、こんばんは(^^)
      仙田と鮫島のからみ、楽しみです♪

      仙田と愛人の関係や、仙田の片腕モハムッドが仙田を尊敬する様子を見ても、ど...
      どんちゃん、こんばんは(^^)
      仙田と鮫島のからみ、楽しみです♪

      仙田と愛人の関係や、仙田の片腕モハムッドが仙田を尊敬する様子を見ても、どんな犯人なんだろうって気になってます。続きが楽しみです!
      2022/03/13
  • またハラハラドキドキさせられました。次の展開、展開が気になって仕方ないです。相棒とのやりとりも楽しく読めました。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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