御城の事件 〈東日本篇〉 (光文社文庫 に 18-10 光文社時代小説文庫)

制作 : 二階堂黎人 
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334779825

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ『御城の事件<西日本編>』がなかなか面白かったのでこちらも読んでみた。

    この<東日本編>はどちらかと言えば時代物という枠を超えた感があるが、『御城の事件』という枠は守っているので良いか。

    高橋由太「大奥の幽霊」
    <もののけ>シリーズで有名な作家さんだが読むのは初めて。
    『大奥で赤子の幽霊が泣いておる。成仏させてくれぬか』
    将軍家綱の命により大奥を探ることになった主人公の忍びが行き着いた真相とは。
    てっきり明るいもののけ物だと思っていたら、意外な顛末だった。

    山田彩人「安土の幻」
    幻の安土城を描いたという襖絵を写しとるために絵師の芳永がやって来たのは、豊臣方の軍勢に水攻めを受けている最中の大志城。
    写し取った安土城の姿絵を水没しつつある城からどう持ち出すのかという作戦を立てるのが、盲目でツンな姫君というのがワクワクする。
    この姫君と芳永のやり取りの楽しさでテンポ良く読めるが、そこに輪をかけて興味を引いたのは安土城の姿を写し取った芳永の、安土城は城ではないという結論。
    では安土城とは何だったのか、そして信長の狙いは。
    この作品が一番印象に残った。

    松尾由美「紙の舟が運ぶもの」
    幽霊物やファンタジー物がお得意の作家さんだが、時代物は初めてらしい。
    藩主の妻からの依頼で城内の野鳥を調べている主人公が出会ったのは、子供の幽霊。
    そして朝になると堀に紙の舟がどこからともなく現れる事件が起きて…。
    幽霊と主人公の交流が、距離感が程よくてほのぼのする。謎解きの方も大ネタではないが、松尾さんらしくて面白かった。

    門前典之「猿坂城の怪」
    石垣修理中の城内で、堀に渡した仮橋に座って城を描いていた絵師が殺される事件が発生。
    当時は霧が立ち込めていて橋の手すりや床板の夜霧の粒に乱れはなかった。つまり橋の上には殺された絵師以外はいなかったことになるのだが…。
    変則的密室事件にもそそられるが、それ以外にも読んでいて色々違和感がある。その謎は終盤に一気に明らかになる。
    何とも様々な仕掛けが施された作品だが、最後の一文で更に違和感が。結局これは時代物ではなかった?

    霞流一「富士に射す影」
    城内の六地蔵の一つが持ち去られていたり、牢から逃亡した罪人が殺されて山の穴の中で餓死させられていたり、小姓頭が石垣に激突死していたり、男の生首とイタチの胴体が繋げられた死体が見つかったり、連続する奇怪な事件の意味は…。
    肝は何故こんなことをしたのか、ということだが、今も昔も宮仕えは大変だなという印象。


    全体的にはもう少し史実と絡めた話を読みたかったかなという感想。単純に御城と事件という組み合わせを読みたい方には良いと思う。

  • 贅沢なアンソロジー。
    お城好きにはたまらない。
    特に、冒頭の高橋由太さんの作品が私好み。
    大奥という特殊な世界で繰り広げられるドラマ。
    あのラストはたまらない。
    くぅぅぅ。
    他の作品も、バラエティに富んでいる。
    伝奇的なものあり、アリバイ崩し的なものあり。
    これがアンソロジーの醍醐味。

  • 時々読みたくなる時代もの。それのミステリーってことで少しワクワクしながら読み始め…面白かった!
    お城に関する知識が楽しく得られて良かった。西日本編も楽しみ。

  • 【収録作品】「大奥の幽霊」高橋由太/「安土の幻」山田彩人/「紙の舟が運ぶもの」松尾由美/「猿坂城の怪」門前典之/「富士に射す影」霞流一

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著者プロフィール

1959年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。映画会社に勤めながら、94年に『おなじ墓のムジナ』で第14回横溝正史ミステリー大賞に佳作入選し、作家デビュー。主な著作に『パズラクション』(原書房)『死写室 映画探偵・紅門福助の事件簿』(講談社)など。

「2023年 『エフェクトラ 紅門福助最厄の事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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