屑の結晶 (光文社文庫 ま 26-2)

  • 光文社文庫
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334794347

感想・レビュー・書評

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  • 二人の女性を殺し、ピースサインをしながら逮捕された楠生。詐欺師のように複数の女性に寄生し養われ、弁護士にも本心を全く見せない。事件の真相はどこにあるのか。
    意外な真相と言えばそうだけど、なんというかもやもやが残る…これはまさにイヤミスというやつなのだろうか。
    しかし…全ての登場人物の考えが浅くてイヤになる…。
    この人たちとは関わらない世界線で生きていたいと思った。

  • まさきとしか『屑の結晶』光文社文庫。

    イヤミスのような展開からスタートした物語は少しずつ通常のミステリーに変貌し、二転三転と新たな展開を見せる。しかし、おおよその真相には途中で気付いてしまい、様々な仕掛けも物語の本筋をぼやかすだけで、真相の裏付けも弱いと感じでしまった。

    短期間に女性2人を殺害し、逮捕された小宮山楠生は身柄送検の際に笑顔でピースサインを送り、7人の女性と交際していたことが明らかにされると『クズ男』とバッシングされる。

    そんな『クズ男』を守るために交際していた女性たちで結成された『小野宮楠生を救う会』からの依頼で、彼の弁護を引き受けることになった宮原貴子は調査を続けるうちに彼の行動に違和感を覚える。次第に明らかにされる『クズ男』と2人の被害者との接点と『クズ男』の過去……

    本体価格760円
    ★★★★

  • 殺人事件の容疑者 小野宮楠生は、逮捕後に「誰を殺そうと俺の自由だろ」とコメント、送検される時は満面の笑みでピースサインをし、世間から「クズ男」と呼ばれた。

    楠生は何故殺したのか、本当に殺したのか、その背景に何があるのか。
    その切ない真実が、この作品の核なのだと思うが…


    楠生に金を貢いでいた沢山の女たちや、弁護人となった宮原貴子、またその他にも登場する女性たちが、誰も彼も苦しみながら生きていて、でも、何故かどの女性も感じが悪い(ように描かれている?)。
    そのように思ってしまったからか、楠生だけが純度の高い結晶で、周りの全ての人は濁っている(ように描かれている?)と感じました。

  • 派手に惹きつけてくる序盤から、何やかんやありながら予想出来ないところに着地する。結局はまさきとしか作品ならではのテーマだった。弁護士を主にしながらも、何人かの視点を重ねて徐々に真相に迫る展開は次々読み進めて行きたくなるもので、逆に気分的にはどんどんドロドロしたものが溜まっていく。終わったと言え全くすっきりとならず、もっとばっさりして欲しくもあるが、納得で面白い作品だった。

  • 誰を殺そうと自由だと言い放った小野宮楠生。
    元交際相手である山本若菜、清掃員である亀田礼子を殺害したとして逮捕された小野宮。その弁護を頼まれた宮原貴子。

    小野宮に亡くなった弟の姿を重ねながら、貴子は小野宮の過去や動機や事件の真相を追っていく。

    二重人格、ツギハギだらけの性格。
    小野宮という人物は、一体どういう人間なのか。

    クズ女のメンバー、そして小野宮の幽霊時代を知る宍戸真美が出てきてからは一気に先が気になって、一気に読み進めてしまった。

    小野宮は幸せだったのかな。
    宍戸真美は、クズ女のメンバーは、山本若菜は、亀田礼子は、そして貴子自身は、幸せだったのかな。

    なんだか複雑な心境で読み終えた。

    たった一人にだけ心を開いていた小野宮。
    殺させてくれてありがとう。
    なんて、たった一つの約束を、ずっと大切にして生きてきたんだろうな。
    やるせなくて、切なかった。

  • 後味の悪い話が好きだった昔。
    後味悪いけれど不幸の詰め合わせなだけでつまらない話が多いな、と思い始めた今。

    本作、個人的には後味悪い話なのだが、最近読んでた後味悪い話って何なの?と思うくらい、とても面白い。こんな凄い話書いて作者誇らしくないの?と構文使うくらいに面白い。

    面白い要素その1。クズ?クズ男のことかな?違う人かな?いや、お前だよ!! と、頭をぶん殴られる気分になること。
    面白い要素その2。王道を複雑に積み重ねているため、分解したら定番の展開だけれども、一見して奇を衒った話のようで新鮮に感じること。(本当にそんな上から目線で語れるのか?)
    面白い要素その3。おっかちゃん…おとっちゃん…。長すぎたり、一瞬だったりするお別れを描いていること。
    面白い要素その4。何でこんなとこに?マジでいらないし駄作だわ…と思ってしまうほどミステリー作品として、他者視点描写を入れるタイミングがネタバレすぎて致命的。でもそのネタバレは多くの謎の内のほんの一つであって「この先の展開読めましたわ、ドヤ」とか思っていたら、物語の全体の謎を見落としていて、ドヤった自分が恥ずかしくなること。

    要するに、自尊心がズタボロにされて、他人に優しくしようと思えた。
    今日、自身としては悪意を感じる回答をされ、表面上は相手を上にあげて返すも、内心腸煮えくり返ることがあった。
    でも、後々その人がめちゃくちゃ大変な目に遭っていて私と連絡している暇なんてないのに連絡をくれたことを知ったし、その人が悪意なしに回答してきた事も他人から聞いた。
    世の中ってそんなもん。そんなもんだから、自分の余裕のある範囲内で前向きな考えをしていきたい。なんか違うけれど、そんな話。

    まあ、自分の意思で人は殺しちゃいけないと思うけどね。

  • Amazonの紹介より
    女性二人を殺したとして逮捕された小野宮楠生。逮捕後「誰を殺そうと俺の自由だろ」と開き直る供述をし、身柄送検時には報道陣にピースサインをして大騒動となった。この「小野宮楠生を救う会」から依頼され弁護を
    引き受けることになった宮原貴子は、小野宮と接しているうちに独特の違和感を覚える。違和感の根源は何か、そして、小野宮は女性二人を殺した真犯人なのか――。



    こういったストーリーを読んでいると、

    絶対何か裏がある。
    もしかして犯人ではない!?別にいる?

    と予想してしまうのですが、やはり様々な事情が絡まっていました。

    読了後、犯人に対する印象がだいぶ変わりました。最初は余裕のある「顔」を見せていて、良い印象がなかったのですが、段々と真相がわかるにつれて、犯人が抱えている心の闇に納得感があったと共にやるせない気持ちにもなりました。

    被害者側の視点も登場するので、結果的に全体的な真相がわかるのは、読み手側だけです。事件の裏側に潜む読み手にしかわからない本当の真相に複雑な気持ちでいっぱいになりました。

    それにしても、登場人物達の裏の顔といいましょうか、憎悪や妬みなどといった心理描写がとてもよく表現されているなと思いました。
    理解に苦しむところもありましたが、如実にそれぞれの人物から滲み出てくる感情が表現されていて、読み手としても心を動かされました。
    まぁ「屑」が多かったです。

    まさきさんの作品は、あっと驚く展開と伏線回収が凄いイメージなのですが、この作品でも健在でした。

    バラバラだと思っていた要素が、次第に一つの線となって繋がれていく過程は面白いと同時にちょっとした爽快感もありました。

    犯人の笑顔に隠された真相。なかなかハードな真相でしたが、なぜこのようなことが起きてしまったのか?背景にあるのは、歪んだ愛情かなと思いました。
    どうすれば良い方向に導けるのか?
    色んな意味で考えさせられたなと思いました。

  • メインになる登場人物みんなうまく掘り下げられているから語り出すと長くなってしまいそう。

    貴子の弟が過去に自殺したという設定がより一層物語を切なくさせているように感じだ。

    登場人物みんな、とても多面的で奥が深い。
    普段テレビや新聞で報道されて適当に聞き流している事件にもこんなふうにさまざまな事情が絡み合っているのかもと思わされた。

    楠生にとって真美は全てだったけど真美にとってはそうじゃなかったのが切ない。
    でも楠生は見返りなど求めていなかったからそれで良かったのに、あまりにもやりきれない結末。

    楠生も貴子も死ぬまでに少しでも笑える出来事があったらいいのにと願わずにいられなかった。

  • 前半はモヤモヤしていて、なんだか入り込めず、読み進めるのが難しかったが、後半は一気読みw

    でも、読み終わってみれば、ただただ悲しくて切ないやり切れなさと、割り切れない感情が残るのみなのだった。

  • 3.6

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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