光文社コミック叢書SIGNAL 『 歩くひと PLUS 』 THE DIRECTOR’S CUT EDITION

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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334901684

感想・レビュー・書評

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  • 文庫本の感想は2020年12月に既に書いた。本書は、「歩くひと」17編に全面オールカラーの1編を加え判型を大型にして、以下の諸編を加えた豪華版である。とても読み応えあった。
    ・サスケとジロー(94年発表のエッセイに大幅な加筆をした作品。飼い犬と自身のこと等を綴ったエッセイ)
    ・夢のつづき(95年発表)
    ・夏の空(06年発表)
    ・月の夜(06年発表)
    ・彼方から優しき声が聞こえる(01年発表)

    値段の関係で長いこと手が出せなかったが、最近漫画は所蔵しない方針の県立図書館に置いていることが判明。手塚治虫「アドルフに告ぐ」など、司書の判断で入れているのもあるそう。だとしたら私のリクエストした「考古遺跡発掘ワーク・マニュアル」なども拒否しないで欲しい。

    ‥‥それは兎も角、
    台詞が少ない本作は、国際的にも評価が高く、谷口ジローはコスモポリティカルな価値がある。図書館蔵書として相応しいということなのだろう。

    全面カラーの「川を遡る」。時期は、ちょうど春の始まりのこの頃。大通りから外れてちょっと路地に入り、やがて広い川原に出る。小鳥を眺め、渡り鳥の傍らをゆき、「なにもかからんほうがいいです」という老人の釣り人と言葉を交わして、ただただ川原をゆっくりと歩く。淡いグリーンの川原。淡い水色の川。淡い空(←そういえば、表紙の色が殆どソレ)。それだけの作品です。

    日本でも、ヨーロッパでも、そういうひと時がどんなに貴重なものか、多くの人が、読んだらおそらく感じる、つい昨今だと思う。
    (2010年3月25日発行)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      > 手塚治虫の初期作品は有害図書運動との戦いでした。
      その話はよく聞きますが、いつ頃までなんでしょうね?

      猫...
      kuma0504さん
      > 手塚治虫の初期作品は有害図書運動との戦いでした。
      その話はよく聞きますが、いつ頃までなんでしょうね?

      猫の憶測ですが、手塚治虫作品への許容は
      TVマンガ「鉄腕アトム」からじゃないかな?
      恐ろしく社会性のある作品を輝かしい未来を映している。と誤解させた張本人は、主題歌を作った谷川俊太郎と高井達雄。。。
      この二人のお蔭で明るく健全な作品として認知された?
      2022/03/16
    • kuma0504さん
      猫丸さん、
      確かにアニメ「鉄腕アトム」から急速にマンガの知名度は上がったのでしょう。私の生涯Bestの一つである「ジャングル大帝一巻」を買っ...
      猫丸さん、
      確かにアニメ「鉄腕アトム」から急速にマンガの知名度は上がったのでしょう。私の生涯Bestの一つである「ジャングル大帝一巻」を買ってもらったのもその頃ですし。でも、確か「不思議なメルモちゃん」は、裸の表現が良くないとアニメ打ち切りになったという記憶があります。手塚治虫は巨匠になっても、いつも人気を気にしていました。最後まで少年マンガにこだわったのもそのためです。

      この前「ジャンプ」を立ち読みしたら、その過激な表現に私なんかとてもついて行けませんでした。50年前の親たちに見せてあげたいくらいです。
      2022/03/16
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      「メルモちゃん」打ち切りだったんだ、、、知りませんでした。
      年代的にどの程度離れているか判りませんが(調べろよって...
      kuma0504さん
      「メルモちゃん」打ち切りだったんだ、、、知りませんでした。
      年代的にどの程度離れているか判りませんが(調べろよって言わないで)永井豪の「キューティーハニー」も際どかったけど、、、

      > 50年前の親たちに
      子どもには読ませないけど、親たち自身はコッソリ?読むかも。。。
      2022/03/16
  • 『歩くひと』そのものより、他の谷口作品が読んでみたくて手に取った。"絵"だけで物語が読み取れる『歩くひと』が面白のはもちろん、中原中也や夏目漱石の作品を基にした『夏の空』、『月の夜』も余韻が深くてとてもよかった。谷口氏が描く『坊っちゃんの時代』シリーズも読んでみたい。

  • 『犬、少年と少女、海辺の街、男と女、過去と現在――まるで小津作品のような味わいを堪能する1冊。名作「犬を飼う」の原点にあたる「歩くひと」をはじめ、海外向けコミックなど、多くの単行本未収録作品を含む谷口ジロー珠玉の作品集。カラー50ページ以上、カバー/口絵イラスト描下ろし。』
    近所のなんでもない風景の中に美と癒やしを感じる。いいマンガですね。マンガ力が半端ではない。
    ・サスケとジロー(94年発表のエッセイに大幅な加筆をした作品。飼い犬と自身のこと等を綴ったエッセイ)も素晴らしい。69歳で亡くなってるんですね。

  • 世田谷文学館の谷口ジロー展で購入。

    この漫画家を知ったのは、週刊アクションに連載された「坊ちゃんの時代」。
    文学館のロビーで上映されていたビデオで関川さんが「事件屋家業」や「坊ちゃんの時代」でコンビを組んだ経緯やこれらの作品が漫画家の転機になったと語っていた。
    その後の作品は、さらに洗練されてくる。

    物語性は薄いけど、淡々と時間が過ぎていく。夜のプールに忍び込んだり、酔って自宅に入れず集合住宅の非常階段を駆け上がったり、ちょっとコラコラなシーンもあったけど。

    「ふらり」も好きな作品だけど、あの作品の方がコマの中に空気があるような印象。本作の線とふらりの描線の違いだろうか。
    展示の最後に、追随者どころか模倣者すら現れない存在と評した言葉があった。本当にそう思うよ。谷口ジローというジャンルを堪能した。

  • 歩くひとの見る景色が胸にしみる

  • あまり本を読まない父親のボックスの中に仕舞われてた本が『歩く人』。小さな頃からたまに読むことはあったが、読み出すと最後まで読みきってしまう。セリフがあまりない漫画だったから小さな頃から読めていたのかもしれない。自分の経験と重ね合わせて読める本だと思う。歩く(風景を眺める、移動する)事は普遍的なこと。自分の思い出を一緒に辿ることもできるかもしれない。
    東京旅行の際に、その新装版を見つけてしまい、自分用に購入。親の存在は偉大なり。

  • 台詞が少なくても成立する表現の力強さ。

  • 新聞の訃報記事で谷口ジローさんが亡くなったと知り、びっくり驚いてしまう。
    ワタクシは、以前から「坊ちゃんの時代」のシリーズの愛読者だった。
    それ以外の彼のコミックの本を、あまり読んではいなかったような気がする。
    これから順番に彼の他の本も読んでみたい。
    「歩くひと」は昨年末に手に入れていた。
    合掌

  • 主人公がただひたすら、歩く。
    仕事の帰り。休みの日。犬を連れて。一人で。妻と。
    歩く。歩く。
    物語性ではなく、主人公の、登場人物たちの感情が、少ないセリフの中で、間の中から、溢れ出すような。そんなストーリー。
    映画を観ているような、そんな漫画だ。

    「なぜだろうとふと思った。
    なんとなくこの川原に漂う空気は、他の場所と違うもののように思えた。
    あまりにも時間が緩やかに流れる。
    何気ない日々のちょっとした隙間。
    急ぐ理由など何もなかった。
    私は道のない川原をゆっくりと歩く」

  • 久しぶりの谷口ジロー 主題の作 歩く人の様に余裕を持って人生を過ごして行こうと思う。
    全編既読作品は、なかった。

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著者プロフィール

1947年、鳥取県鳥取市出身。アシスタントを経て、1975年『遠い声』で第14回ビッグコミック賞佳作を受賞。『「坊っちゃん」の時代』シリーズ(関川夏央・作)で手塚治虫文化賞マンガ大賞、『遙かな町へ』『神々の山嶺』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。アングレーム国際漫画祭最優秀脚本賞など、海外でも数多くの賞を受賞。

「2022年 『サムライ・ノングラータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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