しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 672
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334915285

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーを愛して止まないのに小バカにした感じが最高 #しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人

    ■きっと読みたくなるレビュー
    またやってくれましたね、さすがは早坂吝先生。
    いつも変態的なミステリーをありがとうございます。

    ミステリーを愛してやまない癖に、小バカにした感じが最高なんすよね。いい塩梅で読者をおちょくってくるですよ。こんな作家先生、唯一無二だと思うんだよなぁ。

    読みやすく楽しい作品なのでたくさんの人に読んで欲しいですが、正直ミステリー初心者には本作の渋みが分からないかもしれません。

    どんな小説なんだと思われるかもしれませんが、しっかりとした本格ミステリーです。迷宮牢というトンデモ館をはじめ、癖のある魅力的な登場人物ばかりだし、実はプロットも出来が超イイ。謎解きも伏線も二重三重によく練られているし、なかなかの読み応えです。

    タイトルがまず奇妙なんですが、内容もその通りでびっくり。どんだけやりたい放題のミステリーにするんだって感じで、作者が一番楽しんでるに違いない。

    本作、いろいろ推しどころありますが、まずはキャラクターも癖がスゴイ。特にお気に入りは汚野ですね。癇に障る言動と人生舐め切った態度が憎々しいのよ。正直やり過ぎで、人によっては合わないんでしょうが、これがイイんですよ。やり切ってくれるところが素晴らしい。

    そしてメイントリックも癖スゴで、まぁ一筋縄ではいきません。入り組んだ奥深い仕掛けで、もはや宗教とか思想のレベルで騙しへの思いが強すぎ。真面目なのか冗談なのか判別不明。でもカラっとしていて、読み終わった後は晴れやかな気分にさせてくれるんです。

    世の中には社会へのアンチテーゼやカタルシスが深い重厚感たっぷりの作品はいっぱいあります。本作も重厚感はありますが、ベクトルの向きが全く違う面白さなんですよね。

    ■ぜっさん推しポイント
    褒めてるのか貶しているのか…といったレビューでしたが、なかなかの力作です。
    一見ライトに書かれたミステリーのようにも読めますが、構成がめっちゃ上手で、導入から最後まで一気読めてしまう。トリックもシンプルながらも挑戦的なことをやってるし、かなり精魂こめて書かれたんでしょう。

    今年のミステリーの中でも爪痕を残す作品だと思うので、ミステリー好きは絶対読みましょう!

  • 実によくできた推理小説だと思う。
    最初の事件から急に飛んで迷宮に入り込む。
    この迷宮でのゲームも未解決事件の犯人を集めたと言うが、年齢も性別も違う7人。
    1人ずつ殺されていくのだが…。
    伏線を回収しながら行き着いた先は、全ては何だったのかと完全に騙される。
    何が自分に合わないのかと言うとキャラの濃い登場人物の中での迷惑系ユーチューバーの台詞である。
    今どきなのかもしれないが、どうも馴染めない。
    軽くなってしまう感が残念。

  • '23年9月11日、読了。早坂吝さんの小説、初体験でした。

    面白かった、ですが…ちょっと期待が大きすぎたかな。

    正直、「迷宮牢の殺人」の章の最後は、迷宮の図案を見ながら、「???」でした。でも…「捜査」の章の最後で、なるほど!と納得。そうくるか!と…でも、なんかなぁ┐⁠(⁠´⁠ー⁠`⁠)⁠┌

    以下、ネタバレを含むかも…未読の方、ご注意を!


    冒頭からラストまで、良く練られているなぁ、とは思います。繰り返しますが、面白かった!

    でも…その「病気」を、今まで全く知らなかったので…読みながら、大事な箇所を、作者の誤りだと思っていました。そして、それをどんでん返しのタネとするには、ちょっとなぁ…なんというか、ズルくない?僕が知らないだけで、一般的には知られた症状なのかな?

    あと、聴覚障害者に暴行をしようとするシーンは、読んでいて吐き気がしました。最悪です(⁠ ⁠⚈̥̥̥̥̥́⁠⌢⁠⚈̥̥̥̥̥̀⁠)

    以前から、早坂吝さんの超有名な、メフィスト賞受賞作を読みたいと思いながら、未だ未読でしたが…これを機会に、そろそろチャレンジしてみようかな…。

  • 後半、wwwの描写が多すぎて、ちょっと読みにくかったが、トリック的には緻密で、読み終わった後、何度も読み返して、男女だったり左右だったりを確認した。読者の思い込みを上手く利用しててすごい!

  • 楽しい。
    もはや、推理とか真犯人は誰?とか、動機は?
    クローズドサークルでのとか言ってる場合じゃない。そもそも、騙されないぞなんて、この早坂さんの本を前にして思ったことなんてない。
    これだけやらかされたら、笑うしかない。

  • 最後の一行まで目がそらせなかった。
    迷宮牢に集められた七人の男女。彼らに命じられたのはデスゲーム。真犯人によって一人また一人と殺されていくが。
    あちこちに散りばめられた伏線の数々は見事だし、クライマックスはすでに快感の域ですらあった。この謎が解けるか!

  • サイコパスによる一家惨殺事件。殺人犯達が集う迷宮牢のなかに閉じ込められた名探偵。過去の迷宮入り事件に準えた狂気で次々と死体が生まれる。
    2つの事件がどう繋がるのかな?と思いながら読んでくと、アレよあれよという間に、ストーリー自体が迷宮入りしていく不思議な小説。この作者ならそういう展開もあるか?ややハズレかなと思いきや、、、というミステリ。
    有栖川有栖さんに捧ぐミステリでしょうか?綾辻さんに言及するのは多いですが、珍しいなと感じました。

  • いきなり残忍な事件から始まり、どうなるかヒヤヒヤして読み進めましたが、この作者特有のとんでも展開で驚きでした。

    あまり後味の良いストーリーではありませんでしたが、エキセントリックな感じは面白く読めました。

  •  ミステリーというジャンルは、殺人事件が発生するものが圧倒的多数である。ろくでもない人間が、ろくでもない理由で人を殺す。殺人という行為をあまりにも軽く描くきらいはあるし、少なくとも「良書」とは言えないよなあ。

     と、『殺人犯 対 殺人鬼』の感想に書いたのだが、早坂吝はまたまたろくでもない作品を世に送り出した。冒頭の殺人事件から胸糞が悪いし、下劣な犯人像が腹立たしい。早坂作品と承知していなければ、壁に投げつけただろう。

     場面は飛び、迷路牢で目覚めた女名探偵を含む7人。ゲームマスター曰く、6つの未解決事件の犯人が集められたという。殺し合って生き残った1人だけを開放するというのだが、誰一人自身の犯行を認めない。もちろん女名探偵も。

     さらっと書いているが、6つの未解決事件の内容が酷い。中には現実の事件を彷彿とさせるものもある。ゲーム的な設定といい、ふざけすぎだ。クローズド・サークルのお約束として、集められた面々がどんどん死んでいくのだが、展開が雑すぎる。6人+1の人物描写は薄っぺらいし、序盤は早坂吝の意図が読めない。

     残り人数が少なくなり、いよいよ解決編という段階に至っても、益々雑になっていくではないか。根拠としては弱すぎる。迷路牢の平面図を確認するのも面倒になってくる。そんな聞いてねえ情報を唐突に出しても、辻褄合わせになっていない。

     ところが、この雑さは、構成上計算された雑さであることが、最後の最後に明らかになる。本作は、いつもの早坂吝らしいふざけた作風ながら、緻密さも持ち合わせていたのだった。帯によれば、有栖川有栖氏さえも騙されたのだ。

     というか、犯人が実はそんな症状だったなんて、わかるわけないだろうがっ! あまりにご都合主義すぎる。だが、ご都合主義を楽しむのが早坂流ミステリーなのだ。本作はまさに、曲者作家・早坂吝の神髄が詰まった作品と言えるだろう。

     正直、賞賛するのが癪な早坂吝に敬意を表し、星5つを捧げよう。

  • ある意味では期待通り、ある意味では期待を裏切る良作。
    早坂作品三作目の読了。
    いろんなパターンを書ける溢れんばかりの才能に脱帽。
    最後のオチまで完璧。

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著者プロフィール

早坂 吝(はやさか・やぶさか)
1988年、大阪府生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学推理小説研究会出身。
2014年に『○○○○○○○○殺人事件』で第50回メフィスト賞を受賞し、デビュー。
同作で「ミステリが読みたい! 2015年版」(早川書房)新人賞を受賞。
他の著書に『虹の歯ブラシ 上木(かみき)らいち発散』『RPGスクール』『誰も僕を裁けない』
『探偵AI(アイ)のリアル・ディープラーニング』『メーラーデーモンの戦慄』などがある。




「2019年 『双蛇密室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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