カフカの父親 (文学の冒険シリーズ)

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336035912

作品紹介・あらすじ

文豪ゴーゴリの愛妻は、吹き込まれた空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった。グロテスクなユーモア譚「ゴーゴリの妻」。オペラ歌手の歌声の重さや固さ、色、はては匂いや味についての怪論文「『通俗歌唱法教本』より」。ある朝突然口から飛びだしてきた言葉たちが意味の配分をめぐって大論争を繰り広げる、ナンセンスな味わいの「騒ぎ立てる言葉たち」など、奇抜なアイデア、日常生活にぽっかり開いた裂けめを完璧なストーリーテリングで調理する、現代イアリア文学の奇才ランドルフィ、初の作品集。

感想・レビュー・書評

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  •  15編からなる短編集。
     その殆どが奇想天外なアイディアに基づいて書かれている。
     例えば、自分以外理解出来ない言葉で詩を創作してしまった男……、あのカフカの父親は実は……、声というものには重さや匂い、堅さなどを持つという報告……、ゴーゴリの妻はゴム人形だった?……、殺人を犯しておきながら堂々巡りの思考を繰り返し……、ある朝言葉が口から飛び出してきて「意味」の変更を要求する……などなど。
     ショート・ショートのようなオチがある話もあれば、正直よく判らない話もある。
     残酷な話もあれば、ユーモアたっぷりの愛嬌のある話もある。
     もしかしたら寓話的な意味合いが隠れていて、素直に面白がるだけではダメそうな話もある。
     ちょっと理屈っぽく感じるところがたまにきずなのだが、概して面白く読み進めることが出来た。

  • ハヤカワの異色作家アンソロジー『エソルド座の怪人/世界編』に収録されていた音痴の夫とその妻の話こと「ジョヴァンニとその妻」がなんとも言いがたい味だったので、こちらの短編集も読んでみました。なんだなんだこれは。以下いくつか感想。

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    「無限大体系対話」…不幸な偶然により、じぶんにすら分からない言葉で美しい詩を創作してしまった男の悲劇。
    世界中のだれひとり理解できない言語で書かれた美しい詩に意味はあるのか。森のなかの木の倒れる音、みたいな話だなあ。

    「泥棒」…まのわるい泥棒が家主のささやかな秘密を目撃する。ネジがゆるゆるの振る舞いながら、こういう感じ、わからなくもない。案外みんなひとりきりだと身に覚えがあったりして。

    「カフカの父親」…「扉あけたら巨大な虫がね、部屋の中に鎮座してたんだけど、」「あー(カフカか…)」「それがカフカの父親だったんだよ!」「えっあれっ」

    「『通俗歌唱法教本』より」…発声というのは重さや固さや匂いを持つものなので、声を出す方向、大きさ、声音にはじゅうぶん注意しなければなりません。おおまじめな顔で法螺を吹く。本書はオペラを通しての研究の記録です。

    「ゴーゴリの妻」…「ゴーゴリの奥さんというのは生涯秘密にされていたのだけど、」「はあ」「実はゴーゴリの奥さんはゴム人形だったんだよ!」「またかー」

    「幽霊」…幽霊のふりをして主人を散々こわがらせる友人の群れ。なんといういやなお客たち…しかし気付かない主人も主人。

    「ころころ」…分け入っても分け入っても出口のない精神的樹海をぐるぐるするうちに機をのがす。本人的にはしごくマトモな思考の流れとおもっていそうなところが危険信号。狂う、というのはこういうことかも。

    「騒ぎ立てる言葉たち」…突如あらわれ、じぶんの音の響きに似合う「意味」はむしろこっちじゃない? と口々に「意味」の変更を希望する言葉たち。もっさりした意味は言葉同士おしつけあい、オシャレな意味が争奪戦になっているところが笑える。これはドイツの言葉たちバージョンが読みたい。

  • そこそこ頭のいい人間が屁理屈をこねまくる、あるいは埒のない考えを展開しまくる、そんな感じの短編集。

    この世に存在するのか分からない言語で書いた詩を巡って展開される途方もない言語・芸術論が楽しい「無限大体系対話」、切羽詰まった状況で一つの決断を下そうとして逆に関係ないことにばかり意識がいってあれこれ考えているうちに手遅れになる男の話「ころころ」が特に気に入った。

    作者の暴走気味の世界に乗っかって行けばそれでよろし。

  • 2008/1/28購入

  • 昨年この作家の「月の石」に魅了されたが、びっくりのゴシックテイストからナンセンスまでの短編。表題の「カフカの父親」には「あっ!」

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著者プロフィール

1908-1979年。イタリア中部の町ピーコの名家に生まれる。フィレンツェ大学でロシア文学を学び、奇想や言語実験、超現実的手法を駆使した作品で高い評価を得る。短篇集『無限大体系対話』『ゴキブリの海』『剣』『幽霊』『不可能な物語』『ア・カーゾ』(ストレーガ賞受賞)、長篇『月ノ石』『秋の物語』等の他、詩集やゴーゴリ、ドストエフスキーなどの翻訳もある。

「2018年 『カフカの父親』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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