空飛ぶ広報室

著者 :
  • 幻冬舎
4.14
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本棚登録 : 11129
感想 : 1274
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022171

感想・レビュー・書評

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  • 2017(H29).8.4読了
    ・有川小説は「短編連作集」的な要素が強い?

    ・「自衛隊を広報する人たち」に焦点を当て、その人たちの生き方から、国民と自衛隊の距離感やら認識の違いやらをあぶり出している

    ・しかし、軽妙な文体と誠実で前向きな登場人物の生き様に助けられ、エンタメとして読み進めることができる

    ・本作も、主人公のロマンス的な物語も絡められているが、甘々ではなく程よい距離感で話が進んでいくので、全然苦にならない

    ・というか、「有川作品に胸キュン」とか「激甘」などと、恋愛の要素を中心に評価が大きく分かれているが、個人的には、登場人物たちは、ベタ甘の恋愛感情をメタ認知してて、そういった感情をある意味客観的に認識してる(=作者がそう書いてる)ように読み取れるので、その客観さが小気味よく感じます

  • ドラマを先に見て、小説の方も気になったので読んでみました。
    ドラマ版は脚本が信頼の野木亜紀子さんですし、
    有川さんも撮影現場に出向かれておられましたし、
    小説と異なる展開があっても無理がなく、ドラマらしく脚色されていて、
    小説の良さを損なわない内容で、改めて素晴らしいドラマだったなと思いました。
    兎に角キャスティングがどの方も素晴らしく、ドラマを見てからでも楽しめる小説だと思います。

    他の方のレビューを見ていて、ご本人や近しい人が自衛隊の方だ
    というレビューを多く見かけ、
    どの方も「リアルだ」と書かれているところが印象的です。
    一般人から蔑まれがちという点もリアルなのだろうと思うと
    一般人の一員である自分としては申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

    マスコミサイドで、かつ左巻きな恩師を持ち学校でもそう習ってきた世代なので
    自衛隊に対して大した悪気もなくナチュラルにネガティブであるリカが
    自衛隊担当になり広報室の面々と関わる内に自衛隊に対する知識共々人間的に成長していく姿が描かれています。

    一方、悲運に見舞われたにも関わらず周囲が心配するほど泣くこともできなくなっていた空井も、
    詐欺師鷺坂の采配で見事に爆発、リカに先んじて立て直し新しい道を見出します。
    諦めたらもうそこから余生になってしまう、という台詞は、ドラマでも印象的でした。

    私は空井というキャラクターがとても好きで、綾野さんにはまった役だったと思っています。
    彼はとても優しく、そしてとても強い人です。
    犬のように懐っこいところもあり、パイロットを志しただけあって空が好きで責任感も強く
    男の人としてまた人として、とても魅力的な人です。
    辛い中でも自分の気持ちを押さえ込み、きっかけを得て整理し、
    新しい目標に向かって進み続ける姿に尊敬の念を覚えました。

    ”あの日の松島”は、当時の色々なことを思い出しながら読みました。そしてまた、これを丁寧にドラマで取り上げてくれたこと
    とても良かったなと改めて思いました。
    悲惨なところばかりを取り上げるマスコミ、
    それでもネットの普及で真実の一端を知ることができたものの
    ネットニュースの中ですら自衛隊のみなさんへの感謝はあっても
    彼らも被災者だという点についての言及は少なかったように感じます。
    それをドラマというメディアで、しかもメディアの一員であるリカの視点で描いたことは貴重なことだったと思いますし
    この小説できちんと言及してくださったこと、日本人として嬉しく思います。

    ラストはドラマ版の方がわかりやすくドラマチックでもありましたし
    このまま続いていくという感じがしてハッピーな終わり方で好きでしたので
    小説版のラストは少し寂しさが残りました。
    無理に恋愛で終わらせないという点では良いのですが。

    有川さんの小説は図書館戦争シリーズの後半などもそうですが
    恋愛要素が激しいものは一昔前のラブコメのようで
    苦手な人は苦手なのだと思います。
    自分は恋愛振りの書き口も嫌いではない方なのですが
    一点だけこの本の中でどうしても気になってしまったのが
    頭ナデナデのシーン。
    ドラマを見ていて「それはないだろう」と思ったのですが
    小説でも頭ナデナデがあり、しかも空井が「なでてて」とおねだりまであったので
    ここは自分の中ではどうしても納得のいかないところでした。
    他に人がいないとは言え恋仲でもない女性の前で
    図らずも泣いてしまうのまでは良いのです。
    男の人相手に頭を触るのは自分の中では非礼にあたるという認識なのでまずここで驚き。
    そこで冷静になるのではなく号泣はまだしも、おねだりはどうなのでしょうかと思ってしまいました。

    慰めるなら腕に触る、背中を撫でる、思わずハグしてしまう方が自分の中では納得いったのですが。
    ドラマ版でも見ていてこちらが恥ずかしくなってしまうシーンでした。
    礼儀とか人の関わり方によって考え方や感じ方が異なるところだとは思うので
    単に甘々なシーンと受け止められる人の方が多いようなので良いのですが。
    小説では見て見ぬふりをしてくれる上司たちが、ドラマでは派手にいじってくるのも笑い話になっていて良かったです。

    またドラマを見直したくなりました。

  • 復習したくて、何度目かの読了です。
    甘々、有川ワールド。

    ダイレクトに広報の仕事をしたことがあるわけではないけれど、少し関わる機会はあったので、共感しながら読める部分が多いのです。

    報道班と広報班との立ち位置の違い、それでも共通のミッションをしっかり持てている広報室のメンバーたち。それを自由気ままなフリをしながら、的確に導き、ベクトルを正す広報室長。小説だけど(だから?)、この組織力は見習うべきところがあるなぁと感じます。

    一番好きなのは、鷺坂室長の『一番大変な思いをする現場が一番いい格好をするべきだ』というスタンス。それが一番格好いい♪

    おまけのような、最終章の「あの日の松島」。ブルーがようやく松島に帰れたとニュースで見たときのことを思い出して、ぐっとくる。

  • いろんな立場にある人が、それぞれ置かれた立場で自分の役割を果たそうとしている。自衛隊で働く人も皆同じ。思いや志、気持ちを持って頑張って汗かいているんだなと感じた。読み終わった後に気持ちが残る作品!

  • ようやく読みました。
    有川さんは、カッコいいおっさんと意外と子供っぽいところもある中堅書くの上手いですよね。
    鷺坂室長みたいな上司欲しい~

    ブックデザイン / カマベヨシヒコ
    カバー写真 / 藤岡雅樹(小学館)
    初出 / E★エブリスタ2010年6月~2011年5月連載、書下ろし1本

  • 題材は自衛隊の内部の組織の姿を描いていて、非常に興味深かった。しかし、これを小説として読むには、いささか違和感がある。綿密な取材が重ねられ、読ませる内容のお話しが語られている。特に、最後に付け加えられた「あの日の松島」は、東北の大震災を取り上げていて、自衛隊の救援活動の実際と、本来あるべき報道とは、という問題意識を明確に提示している。しかしながら、これを小説として読もうとすると、骨格というか構成があいまいで、ふにゃふにゃと捉えどころがなく、気持ち悪い。取材で拾ったたくさんの、そして非常に良質なネタを並べていった、そういう気がして、いわゆる小説を読んだ、という気がしない。ということを言いたかったのだが、内容は非常によいので、あまりけなさない方がいいか。ただ、作者の小説家としての力量がどのへんにあるのか、ちょっと批判的な印象を持ってしまった。例によって図書館で借りたのだが、別作品(三匹のおっさん)も借りているので、そちらを読むまでその評価は保留しよう。ちなみに同じ作者だと知らずに借りたんだけど。

    本書の内容に話を戻すと、自衛隊という、普段、あまり知る機会がない世界を取り上げているのは大変貴重で読む価値はあった。登場人物たちのキャラや会話内容など、軽妙すぎるような気がしないでもない。誇張があるのだろうか?まあ、世の中のどんな職場でも、軽口や冗談が飛び交うものだし、どのあたりを描いたかの問題か。

    この作品が伝えている重要なメッセージは、自衛隊の存在意義、それがいかに多くの人から偏向して捉えられているか、について、広報室という組織の活躍を描くことで、できるだけちゃんと伝えよう、というものだろう。兵器や武器は確かに人間を傷つけるための道具ではあるが、自衛隊は専守防衛、あくまで護身術のようなものだと捉えればよい、というメッセージは分かりやすいかも知れない。また、「あの日の松島」で触れられている、自衛隊の救助活動の際に存在する様々な制約。法律上、ここまでしかやってはいけないという線引きに対するジレンマも、もっと広く議論され、改善の検討がされていく必要があるだろう。松島基地の自衛官たちが、自分たちも被災者であるにも関わらず、民間人の救援に誠心誠意尽力した、という話は決して作者のセンチメントと捉えてはいけない、本当の真実なのだろうと思う。また、それに対する報道のされ方についても、登場人物リカの言葉を通して、きちんと問題提起されている。

    まったく、この国のテレビ局のニュース報道の在り方については、ほんとうに低俗すぎて、普段からうんざりしきっているのだが、なんとかならんかと心から思う。正確な情報を中立的な立場で平易に知らしめる、という姿勢と大きくはずれて、単なる下世話な野次馬が集まってわーわー言ってるだけの放送ばかり。ビジュアル的にいかにも刺激的に見えるだけの映像に飛びつき、何度も何度も繰り返すだけ。目撃者や関係者のまったく内容のないインタビューなど、まさにただの野次馬目線でなんの価値も意味も伝わってこない。できるだけ観ないようにしているのだが、目にするたびに、少しはなんとかしようと思わないのだろうかと首をかしげてしまう。もはや完全に斜陽産業というか、そのうち存在自体がなくなっていくのではないだろうか。

    いずれにしても、小説としてはあまり高く評価しないが、内容はとてもよかった。

  • 4.0 ドラマを見た後なのですが楽しめました。

  • とにかく面白い!
    最初から最後まで一気に読めます。

  • 不慮の事故で空井が広報室に配属され、最初は事故の喪失感を感じながら仕事をしていたが、TV局のリカと出会い、周りの広報室の隊員らと業務に取り組む内に、リカとの信頼関係が深まり、仕事にも誇りを持てるようになる。自衛隊広報の仕事において、パイロットの経験が役立つこと、出世に興味ないが、広報のベテラン比嘉の存在が要で、責任ある大事な存在だと感じる。同様に、世間の自衛隊に対するイメージは想像よりも低いものだというのは驚き。あの日の松島の話は平時と有事の自衛隊の覚悟と支えられている存在であること、感動に包まれた話。

  • 自衛隊三部作を読んだ時も思ったけど、自衛隊のことが本当によく分かる。
    三部作よりも、職業として自衛官を選んだ人達の思いや気持ちにたくさんハッとさせられた。
    自衛隊に対するイメージや知識は一番最初のリカと変わらないくらいだったので、新たに知ったことも多く、私の中のイメージを変えてくれた。
    そういう意味でも読んで良かった1冊。
    自衛隊の話を重くさせず、胸キュンも交えながらしっかり心に叩き込んでくれる有川サンの小説が好きです。
    陸自や海自のことももっと知りたいな。

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著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

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