啼かない鳥は空に溺れる

著者 :
  • 幻冬舎
3.68
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本棚登録 : 691
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344027954

作品紹介・あらすじ

愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、母と二人助け合って暮らしてきた。千遥は公認会計士の試験に受かった年下の恋人と、亜沙子は母の薦めるおとなしい男と、結婚を決める。けれどその結婚が、それぞれの"歪んだ"母娘関係を、さらに暴走させていく。

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛ものはあまり得意ではないけれど、
    唯川恵さんは大好きでよく読みました。
    この本もてっきり恋愛ものと思って手に取りましたが、
    違ってましたね…。

    これは”母と娘”の呪縛と依存の物語。
    終始、心がひりひりしました。

    親、それは子供にとって一番近くにある権威。

    幼い頃から母の辛辣な言葉に傷つけられてきた千遥。
    過干渉な母の愛情を重たく感じている亜沙子。

    一見反対のように見える二人。
    でもどちらも母親の呪縛から解き放たれたい思いは同じ。

    好条件の結婚相手を見つけ、初めて母に褒められ「勝った」と喜ぶ千遥。
    そもそも勝ち負けではないはずなのに。
    そう思わずにいられない千遥が痛々しくて…。

    最後は背筋がぞくっとするくらい怖かったです。

    そして親孝行は親のためばかりではなく、
    ある意味、自分の心のためにする。
    それくらいの気持ちでいたほうがいいのかもと…。

    娘として思うところの多い一冊でした。

  • 「王様のブランチ」で紹介され、読みたいと思っていた本。
    母娘関係がテーマ。

    母娘の関係を指す言葉ですぐに頭に浮かぶものは、「友達母娘」、「一卵性母娘」でしょうか。
    この言葉を頻繁に聞いていたころは、友達のような、姉妹のような母娘の関係が絶賛されていたような気がする。
    それがいつしか、母と娘の関係には危険性がはらんでいるという認識に。
    でも、母と娘の関係は家庭内のことで、なかなか表に出ず、声を出す人もいなかったのでは…
    それが最近、小島慶子さんが母との確執を語ったり、NHKの「あさイチ」で特集されたり。
    少し前に、篠田節子さんの「長女たち」を読んだ時にも、長女って生きにくい面を持っているんだなぁ…と感じた。
    かくいう私も実は長女。それも兄弟は弟だけという。
    とっても興味深く、読み切りました。

    千遥は官公庁の外郭団体の契約社員。
    母から逃れたくて、大学から実家を離れてくらしている。
    亜沙子は父を病気で亡くして以来、母と二人暮らし。
    まったく違うタイプの二人だが、母との関係に縛られている。
    結婚を機に、母との関係を変えたい二人だったが…

    • azu-azumyさん
      まっき~♪さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      こちらこそ、いつもいいね!をありがとうございます。

      ほんとに、最近、...
      まっき~♪さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      こちらこそ、いつもいいね!をありがとうございます。

      ほんとに、最近、母娘関係がテーマのものが多くなっていますよね!

      私もまっき~♪さんの本棚に遊びに行かせていただいて、素敵な本に出会っています。
      これからもよろしくお願いします(^^♪


      2016/01/24
  • 一筋縄ではいかないんですよね、母と娘。血が繋がっていてもうまくいかないものはいかないし、血が繋がっているからなぜ? どうして? が止まらないこともある。表面上うまく関係を紡げているように見えても実際は違うのかもしれない、それが母娘。

    唯川恵さんの作品久しぶりに手に取りました。さすがですね。あらわすことが難しいどろどろな嫌悪をじつにうまく描写されている。途中吐き気までした。巧いなぁ。

    プロローグはひとりの女性のブログからはじまる。毎週末のランチを娘と過ごす日々を書き綴ったブログであり、ちょっと贅沢をし、早くに夫をなくした母一人子一人の女のブログだ。
    それを読んで鼻白む母と不仲な【千遥】と、そのブログの筆者の娘である【亜沙子】のふたりの目線で物語は並行し、進む。
    単に母娘の関係の難しさを描いているだけではないのが素晴らしいと思った。ここにあるのはもはや狂気。ラストにかけて恐ろしすぎて鳥肌立った。うわー、唯川さん意地悪いなぁ、腹黒いなーと、思わず苦笑い。でもそれがこの小説を際立てて良くしているし、そう簡単にはうまくまとまらない、それが母娘よねとも。

    以下ネタばれあり。

    わたしは二人の女性どちらにも肩入れすることなく物語を読み進めました。言葉という虐待で幼いころから苦しめ娘をトラウマに追い込んだ千遥の母親よりも、娘にべったり依存、ブログを使い第三者へやんわりと屈折した愛情を見せつけ、次男とのお見合いを無理やり設定し、やがてその男が小児性愛者であることがわかり婚約を破棄した娘を慰めるのではなく、なんとかしてその男との結婚をさせようとすること、ブログに書いちゃったしなんとかして、、、と手首まで切っちゃうこと、それから仮病を使って娘の気を引こうとすること、そしてそれに気づいた娘が海外へいってしまった、しょ気てるのだろうけどそこに最後のエピローグでのブログ内容はぞっとしました。

    脳梗塞で母が倒れたことで大嫌いな母を介護することになった千遥。排便した母に臆することなく献身的な世話をするたび母に「ありがとう」とつたない言葉で感謝され、しだいに過去のトラウマと向き合った千遥。婚約も破棄し、大嫌いだった母と毎日向き合い、ブランド服も脱ぎ捨て地元の友達とつるみ、ようやく幸せだなって、愛があふれかえってた瞬間に、幼いころから母に言われ続けた「泣けば許されると思うな」と後遺症が残る現在の母から言われたところで千遥の話は終わった。
    ほんと意地悪いなぁ、唯川さん笑。ぞっとするよ。読者に想像させるのは構わないけど、もう破滅だよね。せっかくいい感じにまとまったのに、それ言われたら千遥はどうするんだろ。殺しちゃうんじゃないだろうか、母親を。

    いろいろ考えさせられる小説でした。これはもうホラーそのもの。久々にぞっとするいい小説が読めたなと個人的には大満足です。

  • ホラー
    (重たいので感想は後日)

  • 2組の母と娘の物語。
    女ならではの作風。女が女を描いている小説だと感じました。
    二人の女性、千遥と亜沙子の心情は、どこかでわかる気がする女性が多いと思います。全く違う人生であれ、どこかで母親がライバルであったり、友達であったりするもので、それは心の中に潜んでいるもの。良くも悪くも母娘とはそんな関係なのでは?
    最後に千遥の母親の言葉に背筋冷たくなりました。でも、もしかしたらこれは一方的な娘の言い分。
    母親の視点で描いたら、全く違うかもしれません。
    深読みするとひどく疲れますし、親子愛を悲しく感じます。
    世は、円満な母娘ばかりじゃないということ。そして、いくつになっても娘は娘でしかなということ。
    それをジンワリと感じた作品。

  • 愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。
    一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、母と二人助け合って暮らしてきた。

    千遥は公認会計士の試験に受かった年下の恋人と、亜沙子は母の薦めるおとなしい男と、結婚を決める。
    けれどその結婚が、それぞれの“歪んだ”母娘関係を、さらに暴走させていく。

    お名前はよくお見かけしますが、初めて読む作家さんでした。
    母と娘の関係性に焦点を描いたこの作品、ものすごく、おもしろかったです。

    そもそも、母と娘の関係って、ちょっと特殊ですよね。
    母は娘を同一視しやすく、一方でライバル視しやすい。
    そして娘にとっても母は幼少の頃から一番近く、承認を得たいと思う相手なのかもしれません。
    互いに自立していたらこんな軋轢も生じないのかもしれないけど、良くも悪くも母親は無視できない存在だったり、距離の取り方が難しい。

    特に毒親というわけでもなければ、過保護すぎるというわけでもない、普通の母親に育てられたと思っていましたが、読みながら思わず親との関係性を省みることになりました。
    結婚とか、介護とか、親子の関係性が変わるきっかけってきっとあるんだろうし、当たり前かもしれないけど、いつまでも同じじゃないんだなぁと噛み締めながら読みました。

    きっと子どもへの愛情を一瞬でも持ったことのない母親なんていないと信じたいけど、それでもすれ違いが生じるのは、どちらかに、あるいは互いに相手への甘えがあるからなんじゃないか、なんて風に思いながら本書を読み終えました。

  • 愛人の援助を受け贅沢な暮らしをする32歳の千遥は、
    幼い頃から母から精神的虐待を受けていた。
    一方、中学の時父を亡くした27歳の亜沙子は、
    母と二人助け合って暮らして来た。
    千遥は、母に気に入られそうな公認会計士の彼と、
    亜沙子は母の勧めるおとなしい男性と結婚を決める。
    その結婚がそれぞれの歪んだ母娘関係を暴走させていくー。


    物心付いた時から、母は常に千遥に苛つき腹を立て
    感情を剥き出しにして攻撃した。
    母に疎まれて育った記憶からいつも母にどう思われるか気になる千遥。
    一方母に愛され、母が大好きな亜沙子は母との週末のランチが習慣だ。
    しかし、母の思いが重く感じてる。相互依存から抜けられない亜沙子。

    全く違う、相反する関係の二組の母娘。
    母親に愛されずに育った千遥。
    母親に愛され過ぎて育った亜沙子。
    しかし、母親が亜沙子をコントロールしてた。
    亜沙子が我慢する事で一見穏やかな仲良し親子に見えている。
    愛して欲しい!解放して欲しい!
    母と娘の関係は近すぎても遠すぎても難しい…。

    物語の展開は思いもよらない方向に進んでいく。
    成長した二人の娘
    しかし、母は変わっていなかった。
    ラストはゾッとしたなぁ。

    正しいのは母だろうか、娘だろうか。
    間違っているのは、娘だろうか、母だろうか。
    応えはきっと、母と娘の数だけある。

    内容を知らずに借りた本書
    物語の展開も良くってドンドン読み進みましたが、
    自分の中に共感できる思いがないので感情移入は出来なかった。

  • 2組の母娘の呪縛と依存の物語。

    面白くて一気読みです。
    母であり娘である私には、心当たりはないと自分では信じたいけれど、娘はどう思っているか、若干の不安も感じます。

    子供に対して、自分の思い通りにしたいと思ってしまう過ちは、多くの親が犯してしまう事なのかも。
    心しておきたいと、自分を戒めようと思いました。

    それぞれの母娘の最後が怖いです。
    呪縛はずっと続くのでしょうか。

  • 母と娘、と言うより親子間でのよくある心理描写。
    親サイドから見たら気持ちは良くわかり、又、子供サイドからも良くわかる。結局決めるのは自分、と言うこと。

  • 母と娘。どうして一筋縄ではいかないのだろう、この関係は。
    愛情と憎悪。保護と束縛。多分はじめは「一方的に与える愛」のはず。無防備な生まれたての娘を胸に抱いたときには無限の愛を感じるはず。それが少しずつ変わっていく。愛の形も、そしてその関係も。変わっていくのは母か娘か。
    ここに出て来る二組の母娘。関係がうまくいっていない千遥と母、そして一見仲睦まじく見える亜沙子と母。愛してほしい、受け入れて欲しい、けれど束縛しないでほしい。母親がコントロールしていられる間は娘が我慢することで均衡を保っていた。けれどその関係が少しずつずれていく、その様子に読みながら安定と安心の光を見つける、のだが。そのままでは終わらないところが唯川さんの唯川さんたるゆえんか。
    どこまでいってもこの関係は終わらないのだろうか。娘であり母である自分はどうだ、と考える。母は重荷か。娘を飲み込んではいないか。答えはいつでるのだろう。
    最後にずぶりとやられる。いつまでたっても勝てないのだな、母親に、娘は。

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