AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032606

作品紹介・あらすじ

AI(人工知能)・BI(ベーシック・イカンム)論の決定版!人類史上初、我々はついに「労働」から解放される-。この歴史的大転換をどう生きるか!すべての生産活動をAIが行い、生きていくためのお金はBIで賄われる働く必要がない世界はユートピアか、深い苦悩の始まりか-。

感想・レビュー・書評

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  • AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book) 幻冬舎

    予てから注目していたBIだが、AIの普及によってその有用性が高まることを説いており、非常に腹落ちした。全体を通して論旨がわかりやすく、AI、BIに馴染みのない方にもわかりやすいと思う。
    AIの技術的な壁よりも、既得権益層の反発により、AIとBIの普及に時間がかかると思うが、方向性としは納得感がある。もしかしたら、人類史上の中でも有数の大きなパラダイムシフトの入口に今いるのかもしれない、そんなことを感じさせられてワクワクした。


    人工知能AIの進化により、遠くない未来に人は食うための労働から解放される。AIの所有者に集中する富を再配分するための仕組みとしてベーシックインカムBI(全国民への一律給付)が大変有効だ。BIは制度が単純かつ恣意性がないことが特徴だが、ここで重要なのは、「働かざる者食うべからず」から「働かざる者食ってよし」への規範の変化だ。必要な生活財が全てAIで賄えるようになった時、働くことの意義は変わり、やりたいことを通して、貢献意識、自尊の念を得るために人は働くようになる。



    ◯AI 人工知能
    ・シンボルグラウンディング問題: 言葉と概念を結び付けられない。
    ・フレーム問題: 数ある情報から目的に関連した情報に絞り込んで考察することは難しい
    ・ディープラーニング: 膨大なデータから、学習する手法。シンボルグラウンディング問題を解消。
    ・解が一つに定まらなかったり、正解がない場合に見解を示す、ということは難しい
    ・人が気付きにくい相関関係の判断は得意だが、因果関係の判断は苦手。人によって最適解が異なる時こそ人の出番。

    ◯BI ベーシックインカム
    ・全ての国民に対して、生活を賄えるだけの一定額を無条件で給付する制度
    ・長所
    1. シンプルで理解しやすく運用コストも小さい
    2. 恣意性と裁量が入らない。生活保護は制度が複雑で対照的。
    3. 働くインセンティブが失われない
    4. 個人の尊厳を傷つけない
    5. 将来に対する不安を抱える必要が無いため、消費が活発化
    6. セーフティーネットとして機能するため、解雇しやすくなる。
    ・懸念
    1. フリーライダー問題: 働かない人を増やす。社会実験ではむしろ逆の結果が出ている。就労の動機と社会の関わり方が良き方向に変化する。
    2. 財源問題。生活保護とほぼ同じ1人8万円とすると、1.27億人で122兆円必要。年金から半分、もう半分は国民負担をフィンランドに違い60%(42.2 now)まで上げれば捻出可能。消費税を15%にして、半分の32兆円、資産税1%を企業と家計に課せば補える。
    ・障壁
    1. 官僚の抵抗、仕事を減らされる。
    2. 働かざる者食うべからずの社会通念
    ・日本で導入すべき理由
    格差が世界的に大きい。
    ジニ係数が高く、相対的貧困率の割合もOECD平均よりかなり高い。格差は富める人も不幸にする。高齢化により現役世代の負担が増加しており、社会保障制度が社会構造に合っていない。、

    ◯AI+BIの世界
    ・AIが生産活動のほとんどを担うようになると、AIの所有者に富が集中してしまう。他の人は失業。こうなると経済も回らなくなる。そこで再配分が必要なためBIが有効。人の役割は消費。
    ・16世紀の宗教革命以降、経済活動が認められるようになった。
    ・働かざる者食うべからずの規範は私有財産の尊重に裏打ちされて納得感を持って受け入れられてきた。
    ・生きるために働く必要がなくなった時、人は働かなくなるのか?否
    ・労働から解放され、やりたいことをやり楽しみや満足、自尊の念を得、学問、芸術、他者への貢献をする活動に向かう。
    ・かつてギリシャでは、奴隷が労働を行う中、市民が現代まで続く学問と芸術のルーツを生み出した。
    ・生き抜くための条件は、やりたいことを自ら持つこと。
    ・「退屈の不幸」:哲学者も悩むテーマで、何をしても良い状態は何をすれば良いか迷わせること。
    ・やりたいことを見つけるために必要なのは、経験と修練。やってみて、ある程度上達して初めてわかる。
    ・人は、身体的にも、感情的にも、肉体的にも持てる能力をフルに発揮することが快いと感じるメカニズムを持つ。
    ・新しいステージでは、やりたいことをやり、楽しみ、貢献意識、自尊の念を得ることが人生の意義になる。

  • AIの発展した未来、BIに対する疑問、それぞれで自分なりに漠然と考えていたことについて、また読みすすめるうちに湧く疑問について、ちょうど良いタイミングで答えてくれる構成だった。

    - クリエイティブ系、マネジメント系、ホスピタリティ系
    - 働かなくても良くなった社会で、人間はどう生きれば豊かな人生を送ることができるのか

  • AI技術は近年急速に進歩し、応用分野を徐々に広げてきている。
    研究・実験から実用のステージに移っており、かつて機械化の進歩がブルーカラーの肉体労働をリプレイスしてきたように、AIがホワイトカラーの知的労働を大幅に奪うのは明らかだ。
    都合よく言い換えると、人間の代わりにより早くより正確に仕事をしてくれるということ。
    つまり、生きるために人間がする仕事量が減る(究極はゼロ)のは必然。

    まだまだ実現は先の話だが、その時の収入源は何? の答えがBI(Basic Income)だ。
    現在の社会保障は年金や失業保険や生活保護などだが、これらに替わるのがBIだ。
    BIに関しては今まで真面目に考えたことがなかったが、導入の効果や問題点が分かりやすく述べられていて役に立った。
    AIについては人間と比べて圧倒的に劣る欠点も明確に述べられており、恐れることはないという安心感も与えてくれた。

    本書はBIの実現を望んでいる著者が、AI技術の進歩による社会生活の変化と絡めて近未来にどう適応していくかを推敲したもの。

    「働かざる者食うべからず」の時代から「働かなくても食って良し」の時代に向かっている。
    生きるために働くのではなく、生きるための労働以外の活動を行うために生きる社会になる。
    そんな社会が30年~50年後に来る可能性が現実的に今見えてきている。

    その時、「食うための心配をしなくて良い収入」と「日常の活動に支障がない健康状態」の人間が陥りがちな「何をすれば良いのか分からなくて不幸」が問題になる。
    現代の資本主義の存在感が大きな時代は「金を稼ぐ能力」を身につけるためにあらゆる努力をする。
    AIとBIがもたらす「働かなくてもいい時代」になると、「金を稼ぐ能力」から「やりたいことを見出す能力」が必要になる。

    と、こんな社会も頭の片隅に入れておいた方がいいよ!ということでしょうか。

  • 私はベーシックインカムについては賛成派で、あらゆる社会保障はぜんぶやめてベーシックインカムに一本化したい、という立場です。

    ベーシックインカムのメリットについて、もっと触れてほしかった点を補足します。

    ・運用コストが小さい
    本には行政のコストについて書いてありますが、実は民間もかなりのコストを負担しています。企業の管理部門は、企業にとって一円の儲けにもならない社会保険の事務等を国のかわりに行っています。日本企業は生産性が低いと言いますが、複雑な制度の運用を無償で行うことを強制されている点は見落とされてはいないでしょうか。また、控除などの制度が複雑なので、家族の年収や障害などのデリケートな情報もいちいち詳細に勤め先に提出しなければなりませんが、個人情報の管理がしっかりしている会社ばかりではありません。
    ベーシックインカムを導入すると、行政だけではなく民間企業もコストカット、さらに雇用される人の手間も省けてプライバシーも守られます。

    ・個人の尊厳を傷つけない
    本で語られていたのは生活保護手続きの過程で心ない言葉を浴びせられる等の話でしたが、仮に職員が親身に対応してくれるとしても、そもそも生活保護を受ける、または受けようとする、ということに対して恥ずかしいとか情けないとか後ろめたいとかの気持ちを持ってしまう人が多いのではないかと思います。本当は生活保護を受けられるはずなのに受けられない人がたくさんいる、ということですが、生活保護を受けるくらいならブラック企業でも我慢して働く、というような潜在的な対象者はもっとたくさんいるのではないでしょうか。
    生活保護という制度は「恥」の文化があると有効に機能するとは言いがたいのです。なんとか審査に通って生活保護を受けられることになっても、自己肯定感が低くなってしまいます。
    ベーシックインカムならこの点も克服しています。



    AIとBI、というコンセプトはとてもキャッチーでいいですね。

    私はどちらも好きなテーマなのでこの本の内容がすごく新鮮というわけではないのですが、ベーシックな内容だからこそ、いろんな人に読んで欲しい一冊です。


    ユートピアが実現した「後」に我々がどう生きるべきかまで言及されているのも良いです。

    AIの方に興味がある方には、松尾豊さんの本もおすすめです。

  • AIによる知的労働価値暴落と感情労働価値向上の時代、BIによる働かなくても食ってよしという規範が、格差や貧困という構造問題に対する解決策として、資本主義と民主主義を救う処方箋となる。

    最初、ゴロ合わせ的なBIってナニ?と思いましたが、本文を読むとなるほど、AIとBIはセットであるべきだなぁと納得しました。

  • AIにより多くの人が収入を失う。その対策として考えられるものがBIである。
    BIの導入で多くの人が働かなくなる、という考えは正直言って強く、実現されることはないと思ってしまう。でももし導入されれば世界は今とはがらりと変わる。そういう世界を見てみたいと思った。
    自分の場合は、BIが導入される・されないに関係なく、50歳くらいには仕事を辞めたい。

  • AIとBIによって社会がどのように変化していくのか。
    人類にとって「新しいステージ」の社会の特徴
    1.AIを活用することで実現できる圧倒的な生産性向上によって、産業革命以上のインパクトで経済的算出量が拡大する。
    2.民主主義が名実ともに完成されて社会である。
    3.AIとBIによって人間が生きるために働くことから解放されて生きるための労働以外の活動を行うために生きる社会になるということ。

  • AI時代到来による未来予測はいろんな場面で目にするけど、この本が一番深い考察をしていると思う。

    自分自身もそうだし、子ども達に対してもどんな準備をしていく必要があるか、しっかり考えて行動しないといけない。

  • AIとBI、すなわち人工知能とベーシックインカム。ダジャレなタイトルですが、こらからの近未来社会についてなかなか考えられた内容でした。人工知能とベーシックインカムについてそれぞれ知りたい人にも役立つ内容だし、それぞれについてある程度知識がある人にもその関連性について、そして、これからの社会について考える良い機会を提供てくれていると思います。未来の予測については客観的な内容というより、著者の希望的観測だとか本書を作るためのこじつけも強い気もしますが、AIを活用し、高い税金とベーシックインカムの導入された社会を生きている間に体験してみたい気がします。

  • 主張に対して私が思いつく反論について、さらに説明があってよかった。想像以上に足元から議論が積み上げてあって参考になった。

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう):1957年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業。マッキンゼーを経て、88年㈱XEEDを設立し独立。戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方で、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目される。著書に、『プロフェッショナル原論』『成熟日本への進路』『論理的思考のコアスキル』(以上ちくま新書)、『知識人の裏切り』(西部邁との対談、ちくま文庫)、『経営戦略概論』『戦略策定概論』『組織設計概論』『思考・論理・分析』『リーダーシップ構造論』(以上、産能大学出版部)、『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎)ほか多数。

「2021年 『文学部の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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