白鳥とコウモリ

著者 :
  • 幻冬舎
4.20
  • (1222)
  • (1526)
  • (458)
  • (52)
  • (6)
本棚登録 : 12982
感想 : 1210
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037731

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 久々に東野圭吾らしい作品を堪能した。
    “らしい作品” は、2019年7月の「希望の糸」以来かな? 
    その後に出た「クスノキの番人」と「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」は、そういう意味では感触の違うものだった。

    この作品では、三つの立場の違う登場人物たちによる絶妙な掛け引きが披露され、
    被告人の複雑な心理構造が解き明かされてゆく。
    何としてでも真実を突き止めたい被害者の遺族と加害者の家族。
    真実の追求よりも裁判で勝つことに策を弄する検察側と弁護側。
    そして、その間を行き交いながら揺れ動く、
    捜査一課のベテラン刑事と所轄の若手刑事のコンビ。

    物語は意外な展開をしていく。
    相手への同情と好意による嘘がボタンの掛け違えとなり、波紋が大きく広がって、
    思いもかけないところにまで及んでしまう。
    殺人の動機についても、最後は想像もしなかったところに着地する。
    被害者と加害者の息子と娘(あるいは娘と息子)が、
    真実の追求という目的を同じくして協力し合うという発想も面白い。
    そして、この二人の最後のシーンはとても味わい深い。
    果たして、白鳥とコウモリは一緒に空を飛ぶことになるのか。

    途中、「あれ?」と東野ファンの心をくすぐる箇所もあった。
    被害者の娘の勤務先は、帝都大学医学部付属病院内にある会員制の総合医療機関。
    帝都大学といえば、あのガリレオ先生が在籍するところだ。
    そして、事件解決後にベテラン刑事が若手刑事に食事をおごるのは、
    日本橋人形町にある日本料理屋。
    加賀恭一郎と松宮修平が活躍した町。

    最後に装丁について。
    本のカバーや装丁が好きなので、ちょっと わくわくした。
    外側は、墨田川越しにスカイツリーと高層ビルの描かれた現在の東京。
    二つ目の事件の「現場」ということか。
    カバーを外すと、高い建物が一つもなく広い空の下にある民家と空き地。
    おそらく、もうひとつの「現場」三河安城の篠目であろう。
    こちらは現在なのか、それとも初めの事件が起こった1984年のものなのか。
    東京で起こった事件をはがすと、その裏には三河安城の事件があって…。
    想像力が掻き立てられて楽しい。

  • 読み応えのある長編作品でした!
    昼と夜、光と影、白鳥とコウモリ、被害者と加害者、相反する2人が出会い、事件の真相を確かめるため謎を追っていくお話し。
    『容疑者Xの献身』を彷彿とさせる作品だなぁって思いました。

  • 1度うっかり予約を流してしまい、再度1年予約待ちをしてやっとの読了!
    いやー。
    再予約して良かった。

    今回の作品はある殺人事件の被害者家族と、加害者家族に焦点を当てたストーリー。
    練り込まれた構成にうなる。

    事件って。
    犯人が捉えられ裁かれることで、一旦被害者家族の心の区切りが着くものだと思ってた。
    いかに浅はかな他人事な心理だろう。
    被害者にも加害者にも。
    そしてその家族にも、その人を知っているからこその計り知れない葛藤が秘められているのだ。

    自分の家族が事件に巻き込まれたとして。
    自分が知ってるその人のする行動とはとても信じられない報道がされたらどうだろう。
    世間は好き勝手な想像で面白おかしく書き立てる。
    警察も検事も弁護士も、事実としてどんどん進めて片付けてしまう。
    当事者はこんなにも違和感があるのに…。
    結果、事件の幕が引かれても、それで心の区切りは付けられるだろうか。

    白鳥(被害者家族)とコウモリ(加害者家族)は世間の好奇の目に晒されるという点で紙一重だ。
    現実的ではないけれど、シンパシーを感じる1面があるのも頷ける。
    双方の、そして関係者それぞれの心の機微にフォーカスした巧みな描写に圧倒された。

    白石健介の最期の行動には心が震える。

  • 東野圭吾さんは初めてでしたが、すごくおもしろかったです。100ページ位で容疑者が捕まりどうなるかと思ったら、そこからめくるめく展開が待ってました。被害者、加害者の心理描写が見事で、その息づかいが伝わってくるようで胸がいたくなるほどでした。読みやすい文章と相まって一気読みしてしまいました。「白鳥とコウモリ」はじめ伏線の回収もやられました。
    東野さんの作品はたくさんあるのでこれからが楽しみです。

  • 大手広告代理店に勤務する倉木和真の父親・倉木達郎が殺人事件の犯人として捕まった。
    しかも、30年以上も前の公訴時効を迎えた事件の犯人でもあるという。

    被害者は、弁護士・白石健介。
    達郎は「自分が犯した事件で、冤罪により捕まり、獄中で自殺した・福間淳二の遺族に遺産を渡したい」と、相談したが「自分が真犯人だと、その家族に告白すべきだ」と諭され、逆上して、殺害に及んだ。

    達郎の自供内容は、理路整然としており、矛盾点も見つからないことから、検察も起訴する方針でいた。

    ところが、倉木の息子・和真と、被害者の娘・白石美令は、達郎の自供内容に疑問を持ち、事件を調べ始める。

    敵対する両人であるにも関わらず、いつしか惹かれあいながら、お互いに協力して、真相に向かい合う。
    そして、思いもかけない結末へ。

    522頁のボリュームだったが、一気に読み進めた。

    達郎が感じた「罪と罰」
    自分が良かれと思い、犯した罪により、冤罪で不幸にした、事件加害者遺族の過酷な人生を救う為、自分の息子を同じ犯罪者遺族の立場にしょうとする。
    家族が迫害を受ける恐怖がこそが、自分に課せられた運命だと言う。

    自分は、それで良いかも知れないが、罪もない、息子の人生は、どうだろう。
    子供は、自分の所有物では無いと思うのだが。

  • 人の心の内なんて、ことの真相なんて、当事者以外正確に知ることなどできない。
    警察や裁判を通して真実を明らかにしようだなんて、難しくて夢みたいな話なんだなと思った。

    人間関係や事件の内容が重厚で、いくつもの層になっていて、読み終わった後はどうなっていたのか思わずメモして整理した。

    「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」(391ページ)
    このセリフを見て、ああ、この本で書きたかったのはそういうことなのかと合点した。
    光と影も、昼と夜も、そして白鳥とコウモリも、どちらも反転した関係だ。

    「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」(521ページ)
    本当に、その通りだ。

    • アールグレイさん
      こんにちは♪衣都さん

      この本、私も読みました。
      読後感がしっかりとあり、厚い本でしたが先も気になる、読んで良かったと思いました。
      「まるで...
      こんにちは♪衣都さん

      この本、私も読みました。
      読後感がしっかりとあり、厚い本でしたが先も気になる、読んで良かったと思いました。
      「まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」
      これは、私も響きました。レビューにも書いています!
      東野圭吾さんは久しぶりでしたが、今年のベスト5に入ることは間違いない本だと思います。
      (@^▽^@)
      2021/12/13
    • 衣紅*海外在住さん
      ゆうママさんこんにちは。
      分厚い本でしたね!図書館本だったので期限内に読み切れるか不安でした。笑
      東野圭吾さんの長編を読むのは実は初めてでし...
      ゆうママさんこんにちは。
      分厚い本でしたね!図書館本だったので期限内に読み切れるか不安でした。笑
      東野圭吾さんの長編を読むのは実は初めてでした。ドラマや映画ではよく知っていて。
      とても重厚で複雑に絡み合っていて、読み応えがありました。
      2021/12/14
  • 濃厚な作品。
    東野圭吾風「罪と罰」との謳い文句だったが、ドストエフスキーの「罪と罰」とは良い意味で比較しない方がいいかと思った。別物の作品だと感じた。

    人の恩情みたいな物も強く感じた。
    被害者•加害者も当然だが、よりその家族•遺族の状況や心情が鋭く刺さり、読んでいて考えさせられる。
    美令は被害者でも加害者でもある父親の遺族となるが、そこも鋭く突き刺さった。。

    なんにせよ自分も同じ立場に立てば、やはりまず真実を知りたいと思うだろう。

    そして問題なのは家族なのだろう。
    情報過多の世界ではひとつの事件でその家族まで影響が存分にでてしまう。
    もちろん真実だけではなく、同情や煽りや中傷の類いも含めて。
    これが現代の罪に対しての罰なのだとしたらと考えると行き場を失う、とてつもなく重い重圧だと感じる。
    親が子に、子が親にと与える影響は計り知れない。
    ゆうに連帯性を帯びて容赦ない。
    そう考えると怖い世界だとも思う。

    昨今のニュース等で色んな事件があるが、その背景には必ずその家族がある。
    再認識させられた、そんな作品。

  • 1.この本を選んだ理由 
    東野圭吾ファンとしてずっと読みたかった作品。図書館で予約したけど半年しても、まだ20組待ちぐらいでした。そんな中、会社の本募集制度に応募したら、買ってもらえてラッキーでした!


    2.あらすじ 
    弁護士の男性が殺害された後から話しが始まる。
    その事件と30年前に起きた2つの事件の犯人だと名乗る男性が現れる。
    単純に解決するはずの事件が謎を帯びていき、真実がわからなくなっていく。
    事件に関わる加害者の家族、被害者の家族が、事件の真実を明らかにするために歩み出す。
    白鳥とコウモリぐらい立場の違う2人が同じ道を突き進む。


    3.感想
    522ページ。久々に400ページこえる作品を読みました。いきなり、「顔の造作は派手だった」なんて表現があり、最初の方から作品に惹き込まれました。
    さくっと読み終わった感想は、すごいよい作品でした。展開が面白い。登場人物のキャラがいい。終わり方もいい。
    ある程度、事件の真相は途中で想像できたけど、なぜという考えがクリアにならないまま、話しが進んでいく感じでした。
    白鳥とコウモリに例えられた2人が、個人的にはよかったです。


    4.心に残ったこと
    結局、ダメな奴にみんな振り回されるわけで、そういう人間になってはダメだなと、、、つくづく思う。


    5.登場人物  

    (白鳥とコウモリ)
    倉木和馬 達郎息子
    白石美令 健介娘


    (刑事)
    五代努 38歳
    中町 28歳
    筒井
    桜川

    片瀬 愛知県警


    (被害者関係)
    白石健介 殺害された人
      綾子 妻
      
    永井節子 事務員

    佐久間梓 弁護士


    (東岡崎駅前金融業者殺人事件)
    福間淳二 逮捕された後、自殺

    灰谷昭造 殺害された人
    坂野雅彦 灰谷妹の息子

    村松重則 担当刑事
    山下 取り調べ
    吉岡 取り調べ


    (参考人)
    山田裕太 白石に世話になった人

    倉木達郎 66歳
      千里 達郎妻 病死
      
    堀部孝弘 弁護士
    雨宮雅也 和馬友達

    浅羽洋子 福間の下妻
      織恵 洋子娘

    安西弘毅 織恵元夫
      知希 子ども

    藤岡 あすなろ常連

    天野良三 弁護士

    6.用語
    首肯 しゅこう
    うなずくこと。もっともだと納得し認めること。

  • 4.5
    分厚かったけど、中弛みする事なくグイグイ読めた。
    少しずつ明らかになっていく真実に読む手がとまらず。
    面白かった〜!

    読後感は、言われてる方多いけど「容疑者Xの献身」に似てる気がした。
    読後のなんともやるせない気持ちが残るあたり。
    だけど容疑者Xみたいに泣く事はなかったかなww

    自分の息子の将来はほんとにそれでいいと思ったのだろうか?
    そうまでして守ろうとしたのに、動機があれでは、、。
    当たり前の事だけど、やっぱり何があっても真実をねじ曲げてはいけない。
    それがまた新たな罪を生む。

  • 東野圭吾先生の本、長編物多いですが、何故だか引き込まれてスラスラ読み終えてしまう不思議なマジック!
    話は、1人の殺人犯の周りを取り巻くストーリーから始まります。
    加害者の息子、被害者の娘、殺人犯の過去に起きた事件に関連する人たち。
    謎解きが進むにつれて、読み始めたら止まりません。
    この世の中のSNSの恐怖さにもハラハラします。
    この本の題名の名言も出てきます。
    『光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうと』決めゼリフも。
    話が進むにつれて、謎も解き明かされ、真犯人もかなり意外で度肝抜かれた。
    読み切って、やり切った感と疲労感が半端無かったです。

全1210件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

東野圭吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×