脱北航路

著者 :
  • 幻冬舎
3.72
  • (42)
  • (69)
  • (52)
  • (16)
  • (3)
本棚登録 : 449
感想 : 88
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344039452

作品紹介・あらすじ

「彼女は無理やりこの国に
連れてこられただけなのだ」

この女性(拉致被害者)を連れて、
日本に亡命するーー。

祖国に絶望した北朝鮮海軍の精鋭達。
45年前、島根の海岸で拉致された日本人女性。
彼らを乗せた潜水艦が辿る壮絶な運命とは?


「お父さん、お母さん……日本に帰りたいよっ」

北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。国の威信をかけたこの行事で、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。しかも、拉致被害者の女性を連れて--。だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして……。息つく間もなく送り込まれる殲滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか? 極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。超弩級エンターテインメント!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 泣いた。
    自分と自分の仲間たちのために戦うその姿に。
    お父さん、お母さんの元に帰りたい、その思いの強さに。
    今度こそ彼女を助ける、自責の念を振り切り突き進む姿に。
    泣いた。

    人の心を揺り動かすのは情だ。
    人には情というものがあるからこそ、譲れない信念が生まれるのだと思う。
    ときには、誰かの生き様を目の当たりにすることで、自分のなかの大義が揺れ動くことがある。
    その誰かを目の前にすることで、心に葛藤が生まれ苦しむことだってある。
    けれどもその誰かのひと言によって、人は救われることもある。

    祖国で地獄を見た北朝鮮海軍の精鋭たち。
    潜水艦11号に乗艦し、日本を目指す彼らの行手を阻むのは彼らの祖国。北朝鮮軍の特殊部隊、爆撃機、特殊任務船などが間髪入れずに襲いかかる。何度も訪れる危機は手に汗握る展開で、戦闘はクライマックスにかけて激しさを増していく。
    それでも、彼らの何よりも仲間を信じる姿、生きることを諦めず壮絶な運命を闘った、その姿に胸が熱くなった。

    45年前、島根の海岸で北朝鮮に拉致された女性。
    当時13歳だった少女に突然訪れた闇。微かな希望の光を遠くに見続けながら孤独に生きることは、どれほど心細く淋しかったことか。
    45年という気の遠くなるような時間のなか、彼女のなかの時計は、13歳の頃から一秒たりとも動いていなかったのだろう。
    大好きなお父さん、お母さん。一緒に遊んだお友だち。生まれた家の住所、電話番号……
    毎日毎日、何度も何度もそれらを思い出し、忘れることを恐れながら生きてきたのではと想像しては胸が痛む。

    この45年間。拉致事件の端緒を掴みながら少女を救えなかったことに、今も自責の念を抱くものたち。
    今度こそ、今度こそはと命をかけて彼女を助けに向かう。相容れない国家間の駆け引きも、それぞれの国が勝手につけた海の名称も、なにひとつとして彼らの信念を妨げることはできない。
    彼らは目の前で助けを求めているものを全て助ける。その情に、その信念に、心は震えた。

    目の前で助けを求める人に手を差しのべること。
    どうか、そんな当たり前のことが出来ない「見て見ぬふり」の国にはならないで。
    彼女を、彼女の家族を、そして私たちを失望させる国にならないで。
    私たちを騙したりしないで。どうか、私たちを悲しい気持ちにさせないで。
    情で国は動かせない。それは理解できるけれど、情を忘れた国にはならないで。

    人のあり方を人の人生を、それぞれの視点から書ききった作品からは、熱いものがストレートに伝わってくる。それは怒り、それは願い。
    これは物語のなかだけの出来事ではないのだと。
    愛する人を奪われた家族の闘いは今も続いてるのだと。

    くるたんさんのレビューから読んでみたくなりました。ありがとうございました♪

    • hiromida2さん
      地球っこさん、
      本当です!家族の元へ帰ってこられること
      願わずにはいられません。
      誰もが、自分のこととして捉えてゆくのが
      大事ですね。
      また...
      地球っこさん、
      本当です!家族の元へ帰ってこられること
      願わずにはいられません。
      誰もが、自分のこととして捉えてゆくのが
      大事ですね。
      またいい本紹介してくれてありがとうございます。
      2022/07/14
    • アールグレイさん
      こんにちは(^_^)/
      フォローバック頂きありがとうございます!

      地球っこさんはフォロワーさんのつもりでいました。
      この本、松子さん?ao...
      こんにちは(^_^)/
      フォローバック頂きありがとうございます!

      地球っこさんはフォロワーさんのつもりでいました。
      この本、松子さん?aoiさん?にお薦め頂きました。私が泣ける本をと言ったのです。
      2023に絶対読みたい本です。
      お薦めがありましたら、よろしく(^-^)#
      2023/01/12
    • 地球っこさん
      アールグレイさん こんにちは。

      フォローありがとうございます。
      この本は泣きました。熱い涙とでもいいましょうか。

      オススメですか~
      私は...
      アールグレイさん こんにちは。

      フォローありがとうございます。
      この本は泣きました。熱い涙とでもいいましょうか。

      オススメですか~
      私は最近は全然国内の小説は読んでいないので、少し古いのですが…
      私が泣いた小説は、

      『鉄道員』 浅田次郎 集英社文庫
      『聖の青春』 角川文庫 大崎善生(ノンフィクション)
      『ランドセル俳人の五・七・五 いじめられ行きたし行けぬ春の雨--11歳、不登校の少年。生きる希望は俳句を詠むこと。』 小林凛 ブックマン社(こちらもノンフィクションかな)
      『八朔の雪―みをつくし料理帖 』 高田郁 ハルキ文庫
      『慟哭』 貫井徳郎 創元社推理文庫
      『悪人』上下 吉田修 朝日文庫
      『恋文・私の叔父さん』 連城三紀彦  新潮文庫「私の叔父さん」

      かな。機会があればぜひ~
      2023/01/12
  • 現代日本を国際問題に切り込むエンターテイメント長編の傑作 人の希望と国の建前の歪み… #脱北航路

    かつて北朝鮮が拉致した日本人とともに、潜水艦で日本への亡命を企てる北朝鮮の軍人たち物語。もちろん簡単には亡命させてくれるはずはなく、朝鮮人民軍からの追撃は激しく、海底で必死な戦いが始まる。彼らと拉致被害者の運命はいかに…

    我が国日本が抱える大きな国際問題に切り込んでいる傑作!

    潜水艦での緊迫したバトルや日本側の関係者たちの必死さの表現も抜群。
    そのまま映画で見たいと思える、エンターテイメント性もたっぷりの内容でした。今年のミステリーランキングには入ってきそうな大作ですね。

    本作の読みどころとしては、やっぱり人ですね。

    北朝鮮の軍人たちの歪んだリアルが、当たり前のように淡々と綴られています。恐らくは80年前の日本と変わらない地獄のような価値観、怖いというよりも胸が苦しかったです。

    また登場人物の全員が超絶カッコいいのよ。
    信念とプライドをもって、時には生命をかけて邁進していく様は、もう惚れちゃう!

    日本からの目線でも人の描写が語られていますが、こちらもなんとも言えない感情が襲ってきます。日本の現実をまざまざと見せつけられることになります。

    潜水艦の戦いといえば、私の世代だと、映画Uボートや漫画沈黙の艦隊を思い出します。できれば潜水艦独特の閉塞感、窮屈さや、死と隣り合った海底の静寂さ等をもう少し感じさせてくれると、さらに緊迫感や必死さがでて良かったと思いました。

    さて本作の推しポイント。

    海上自衛隊巡視船 鈴木船長の「覚悟」ですよ。
    本気で解決しようとしていない政治家を筆頭に、ひいては我々国民ひとりひとりの問題意識の低さを痛烈に指摘するような行動に痺れました。

    我が国日本には他にも山積みの問題があります。少子化対策、経済問題、コロナ対応など、やることはたくさんあるのに、何もかも対応がクソ遅い。50年後、100年後の日本の未来のため、いま自分にできることを責任をもって行動すべきと戒めをもって痛感しました。

    • autumn522akiさん
      aoi-soraさん、コメントありがとうございます。

      またもや見殺しにする国に対して、救助に向かう日本人の怒りと覚悟も凄かったですね。...
      aoi-soraさん、コメントありがとうございます。

      またもや見殺しにする国に対して、救助に向かう日本人の怒りと覚悟も凄かったですね。45年間感じていた想いが、強烈に胸に刺さりました。
      ほんと、素晴らしい作品です。

      松子さん
      あらま、みなさん仲良しでいいですね!
      涙活動なんて超素敵じゃないですか~

      自分は読む力なんて、たいしてないですよ^^
      なんとか自分なりに読み取っているだけでして。

      松子さんやaoi-soraのレビューを拝見しましたが、本作への愛情がガッツリ感じられました。いやー素敵!
      2022/08/16
    • aoi-soraさん
      akiさん、(と呼ばせて頂きますね^_^)
      まっちゃん、おはようございます!

      「ロンドンアイの謎」
      すごく面白そう♪
      海外ミステ...
      akiさん、(と呼ばせて頂きますね^_^)
      まっちゃん、おはようございます!

      「ロンドンアイの謎」
      すごく面白そう♪
      海外ミステリーって、どれを読んでいいか迷うので、教えてもらって嬉しい♪
      うちの図書館では、すでに順番待ちだった!
      でも20番だから予約しちゃった(。•̀ᴗ-)✧
      2022/08/16
    • autumn522akiさん
      あおさん~
      こんばんはです!
      こちらこそ、あおさんと呼ばせていただきますねmm

      ロンドンアイの謎 も超おすすめですよ。
      もうね、...
      あおさん~
      こんばんはです!
      こちらこそ、あおさんと呼ばせていただきますねmm

      ロンドンアイの謎 も超おすすめですよ。
      もうね、子供たちの頑張りが… あとは読んでのお楽しみ。
      予約20番目なんて大人気ですね、びっくりです。
      楽しんでください~
      2022/08/16
  • とても良い読書時間でした。 
    これこそ読書の醍醐味!と言っても過言ではありません。
    北朝鮮の軍人たちが、四十五年前日本から連れ去られた拉致被害者を連れて脱北し潜水艦で日本を目指す。
    それだけでも読み応え十分ですが、そこに発覚せずに作戦は成功するのか?発覚してしまったあとは追っ手をかわせるのか?といったハラハラドキドキでページを捲る手が止まりません。
    さらに軍人たちが何故脱北しようと思ったか、その一人一人の人間ドラマ、そして四十五年前連れ去られた少女を助けることができなかったことをずっと悔やみ続けている日本人たちのそれぞれの思い、それらが丁寧に描かれていてすっと感情移入できます。
    また追う側、追われる側になってしまった男たちの友情物語としても、そして潜水艦内の緊迫したやり取りはある意味ではお仕事ドラマとしても楽しめると思います。
    そして何よりも読後のこの爽やかさ!
    どの方向からも満足させられた一冊でした。

    • アールグレイさん
      こっとんさん(^_^)/

      脱北航路、私も興味が出てきました!
      直ぐには読めませんが、読みたい本メモに加えておきます。
      (*^.^*)
      こっとんさん(^_^)/

      脱北航路、私も興味が出てきました!
      直ぐには読めませんが、読みたい本メモに加えておきます。
      (*^.^*)
      2022/10/16
    • aoi-soraさん
      こっとんさん、こんばんは^⁠_⁠^

      この作品、私もすごく心を揺さぶられました。
      本当に、一人一人の人間ドラマが沁みるの。
      最後の場面、巡視...
      こっとんさん、こんばんは^⁠_⁠^

      この作品、私もすごく心を揺さぶられました。
      本当に、一人一人の人間ドラマが沁みるの。
      最後の場面、巡視船の船長の覚悟も涙でした。
      潜水艦の緊迫感の描写は見事だし。


      こっとんさんのレビューを読んで、また蘇ってきました!
      2022/10/19
    • こっとんさん
      aoi-soraさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます♪

      この作品、私も本当に引き込まれました。
      あちら側にもこちら側に...
      aoi-soraさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます♪

      この作品、私も本当に引き込まれました。
      あちら側にもこちら側にも人間ドラマ、事情はある‥‥ということが実によく描かれていますよね。
      そして、ページを捲る手を止めさせない緊迫感!
      これぞ、エンタメ!と思いました。
      こういう重いテーマこそ、エンタメ感たっぷりに描いて、たくさんの人に読んでもらえたらいいなぁと思いました。

      2022/10/20
  • もちろん虚構である

    おそらく大変綿密な調査により北朝鮮軍の描写もかなり正確なんじゃないかと思われます
    筆力と信頼感のなせる技

    だが語られる中身は虚構であり
    実際には決して起こりえないこと

    小説なんだから当たり前だと笑いたければ笑ってくれて構わない
    だけど信じたいじゃないか
    人を
    人のけがれなき魂を
    それが北の人であっても


    前にまっつんが高評価してたのが薄ら記憶にあったので、久しぶりに月村了衛さん読んでみました
    いやー今回も体力気力を削ってそうなお話し書いてるな~思いましたよ
    力作ってのはこういうんを指すんやな

    • 松子さん
      ひまさん、こんばんは(^^)
      ひまさんの本棚に脱北航路がっ
      ウキウキしてレビュー読んだら泣いてしまった
      ( ; ; )
      『小説なんだから当た...
      ひまさん、こんばんは(^^)
      ひまさんの本棚に脱北航路がっ
      ウキウキしてレビュー読んだら泣いてしまった
      ( ; ; )
      『小説なんだから当たり前だと…』のところが心に響いちゃって。
      ひまさんと、また機龍警察読める日を楽しみにしてます。
      2023/04/05
    • ひまわりめろんさん
      お、まっつん
      こんばんは!

      響かせちゃいましたかw
      ただもしそういうことができたのだとしても9割以上は月村了衛さんの素晴らしい作品あっての...
      お、まっつん
      こんばんは!

      響かせちゃいましたかw
      ただもしそういうことができたのだとしても9割以上は月村了衛さんの素晴らしい作品あってのことだね

      早く『機龍警察』の新作が読みたいね!
      2023/04/06
  • 読み終えた今、熱いものが私の体の中をぐるぐると駆け巡っている。
    感情が溢れ出して、胸が苦しい。

    祖国に絶望した北朝鮮海軍の精鋭達は、老朽艦である潜水艦11号と共に日本への亡命を決行する。
    亡命を成功させる切り札として、日本から拉致した日本人女性を連れて…
    “拉致被害者の象徴である彼女を犠牲にするような決定を日本人は絶対に認めない”

    しかし日本という国をそこまで信じて良いのだろうか。
    日本人である自分がそんな疑問を抱くのが悲しい。

    でもでも、最終章!
    45年前の日本・島根で、少女が拉致される現場にいながら、助ける事が出来なかった人々がいる。
    長い時間その思いに苦しんできた人々が、今度こそ助けに応じるべく立ち上がる。
    もう私は心が揺さぶられ、頁を捲る手が止まらない…

    この作品、心が揺さぶられっぱなし。
    亡命している11号と、朝鮮人民軍の9号。
    潜水艦同士の命を賭けた戦いは緊迫感がハンパなく、読者であるはずの私も乗組員の一人となり、息が止まりそう。
    壮絶な読書体験でした。


    この「脱北航路」、ブク友さん達との“涙活”で、地球っこさんが提案してくれた作品。
    涙活にふさわしく、涙涙…
    私の一番の号泣は、拉致被害者の女性が無線で日本に向けて助けを求める場面。
    ここはもう、どばっと涙が出て止まらなかった。
    電車の中では危険ですよ。:゚(;´∩`;)゚:。

    • いるかさん
      aoi-soraさん おはようございます。

      素敵なレビューをありがとうございます。
      この本 面白かったですね~。
      人間関係が深くっ...
      aoi-soraさん おはようございます。

      素敵なレビューをありがとうございます。
      この本 面白かったですね~。
      人間関係が深くって面白い。。。
      日本にはもっとしっかりしてほしいけれど。

      涙活 みんなで一冊を読むって、本当に楽しいです。
      ありがとうございます。
      2022/07/11
    • 松子さん
      あおちゃん、こんばんは♪

      やっとあおちゃんのコメント読めたぁ‼︎
      うん、やっぱり無線の場面は号泣だったよ
      声出して泣きそうになった(^^;...
      あおちゃん、こんばんは♪

      やっとあおちゃんのコメント読めたぁ‼︎
      うん、やっぱり無線の場面は号泣だったよ
      声出して泣きそうになった(^^;
      電車の中は…って教えてくれて、ありがとう!

      うん、潜水艦どうしの戦闘場面、本当にすごかったね。魚雷長のジュウクの最後の最後までの行動にただ『あぁぁぁー!』って泣いた

      そして、最後の救助の場面。なかなか行動に移さない場面…、すごく考えさせられちゃった。
      はぁ、すごい読書体験しちゃったね(^^)

      ほんと、みんなで一冊の本を読むって楽しいね
      また、次が楽しみだっ♪
      2022/07/13
    • aoi-soraさん
      まっちゃん、私まだこの世界から抜け出せていない。
      本当にすごい読書体験で…

      みんなで一緒に同じ本を読むのって、ホントに楽しい♪
      そ...
      まっちゃん、私まだこの世界から抜け出せていない。
      本当にすごい読書体験で…

      みんなで一緒に同じ本を読むのって、ホントに楽しい♪
      それぞれの場所で、同じ作品を読んでいる。って、想像しただけで震えるほどワクワクするっ!
      2022/07/13
  • 一気読みした、超傑作の迫力ある長編である。

    45年前、北朝鮮に拉致された被害女性を連れて日本に亡命する。
    それは、祖国に絶望した北朝鮮海軍の精鋭達だ。
    彼らを乗せた潜水艦は、特殊部隊や爆撃機、魚雷艇などの幾つもの攻撃を潜り抜けながら日本を目前にする。
    極限状況がゆえに生まれるさまざまな人間ドラマもありながらもひたすら日本へと向かう。

    日本の巡視船は、近くで潜水艦同士が交戦中を目にし、沈没しつつあるのを見ても接触せず。
    船の舵取りは許されていても、国の舵取りではないと。
    だが、民間の小型漁船が突き進む。
    自衛隊が救助に行かせまいと何隻も迫ってくる中、避けきれないのを覚悟のうえで猛然と進む。

    見て見ぬふりして何もできない国よりも…信用できるのは彼らなのかと思ってしまう。

    似たような光景が、どこかで起こっていても不思議ではない。
    国民もマスコミも、もはやそのことに慣れきっている。
    そして追求もしないのだ。
    何もかも揉み消されてしまうのだから。
    不正や隠蔽が、あたりまえのようにあり、司法さえもまともに機能していない。
    そのような中で、拉致被害者のことなどまるで関心のない事かのよう…。

    感涙しながら読んだあと、これからの日本はどうなるのだろうと思ってしまった。



  • 心が溢れている一冊。
    これは物語の中だけであって欲しい、そう思うことが多々有るけれど、これは現実にあって欲しい、そう願ってやまないストーリーだ。

    北朝鮮海軍と45年前に拉致された日本人女性。共に絶望を背負い、潜水艦で共に目指す日本の地。

    臨場感溢れる描写に緊張感溢れる幾度もの瞬間。

    漂う幾人もの祖国で抱えた思いが胸を打つ傍ら、圧力や日本という国の姿を改めて見せつけられた気分。

    終盤は随所に心、人としての心が溢れているのを感じた。

    あの時の思いをバネに重なる幾人もの心情。

    人の心の大きなうねりなるものが涙へと変わる作品。

    • 地球っこさん
      くるたんさん、こんばんは☆

      この本、読み終わりました。
      一気読みでした。

      私は、こういう生きるか死ぬかギリギリのところで、仲間と壮絶な運...
      くるたんさん、こんばんは☆

      この本、読み終わりました。
      一気読みでした。

      私は、こういう生きるか死ぬかギリギリのところで、仲間と壮絶な運命を闘う物語、胸が熱くなって大好きです。

      そして今回、あの女性が無線で当時の思い出を語るシーンで涙がぶわっと、そこからもうダメ、ちょっとしたことで涙が~

      とても心に響く作品でした。
      くるたんさんのおかげで出会うことができました。ありがとうございました。

      だけど悲しかったのは、日本の歌が好きなあの青年……
      2022/07/08
    • 地球っこさん
      あ、やだ、大事なことを忘れてました。

      涙活メンバーさんたちが、たくさんオススメ本を紹介してくださったこと、とても喜んでおられました。
      あり...
      あ、やだ、大事なことを忘れてました。

      涙活メンバーさんたちが、たくさんオススメ本を紹介してくださったこと、とても喜んでおられました。
      ありがとうございました(’-’*)♪
      2022/07/08
    • くるたんさん
      地球っこさん♪おはようございます♪

      わ、早速読了ですね!
      良かった、胸熱になれて良かった♬


      あの無線のシーン、泣きますよね〜。まさにこ...
      地球っこさん♪おはようございます♪

      わ、早速読了ですね!
      良かった、胸熱になれて良かった♬


      あの無線のシーン、泣きますよね〜。まさにこんな思いでいられてる人がいるんじゃないかって思うと。


      あ、こちらこそメンバーさんにご紹介ありがとうございました♬

      aoi-soraさんと相互フォローできました♬
      ご縁をありがとうございます♡
      2022/07/09
  • これを書くにあたって筆者は相当の覚悟と責任を負って書いたのではないかと想像してしまう。
    『レッドオクトーバーを追え』を想起したが題材が題材だけにより身近に感じてしまう。
    物語は冒頭から不穏な空気を出しつつ、最後まで緊迫感を伴って進んだので手に汗を握り続けて読むことができた。
    最後の方で政治家どもを一蹴するかの如くサラッと描いている部分があったが、それが逆に現状をよりリアルに表している様に思えて痛快と思うと同時に情けなくも感じた。責任と覚悟のない政治家なんてホコリ以下だね。
    あくまでフィクションだけど絶対にあり得ないとは言えないと思うので、あらゆる可能性を考慮しつつ、即対応できるように法改正等をするべきだと感じている。

  • これと同じような事が今起こってくれないかと思う。いや、もしかしたら僕らが知らないだけで既に起こっていたかも。北朝鮮の暴走は一層進んでおり、脱北者が増えているのではないだろうか。最後の山場、もし今同じ事が起こったら日本政府はどういう対応をするのだろうか。

    かわぐちかいじの名作「沈黙の艦隊」を彷彿させる息をのむ潜水艦戦闘シーンは秀逸だし、北朝鮮の実情の一部を垣間見れるのも面白い。

  • <良>
    僕の場合 月村了衛の作品はご多分に漏れず『機龍警察』から読み始めたものであった。最新刊の『同 白骨街道』まで読み終えて さて次はどれを読んでみようかしら と少し迷っていた時に目の前にはこの『脱北航路』があった。

    北朝鮮軍では「中佐」にあたる軍人階級のことを「上佐」と呼ぶらしい。少佐/上佐/大佐 って感じだ。で,あまり視力の良くない僕は この物語に時々出て来る「上佐」という語句を色々となじみが深く字面のよく似ている「土佐」という字に間違えて読んでしまう。まあ話の筋からすると急に ”土佐高知” の話であろうはずはないのだが その度に,あ またか,と思って苦笑いしている自分がいて面白い。もちろん「土佐」びいきなのであって「上佐」などはどうでもよいことは言うまでもないのだが。すまぬ。

    さて物語だが,これはもうメガトンいやギガトンいやいやテラトン?級に面白い。後半の息もつかせぬ展開はワクワクし通しだし,感動的な場面は文句なく泣ける。果たして今作は映像化できるのではなかろうか。僕は読んだ小説が映像化されたものは基本観ない事にしているが なんだかこの作品だけは観てみたい気分になった。まあ,ラストシーンがあまりにもそっけない,とか 書きたい感想はまだ山ほどあるけれど ここはひとつグッと我慢して月村の次作を楽しみにしておこう。すまぬ。

    それにしても月村は北朝鮮事情に詳しい。どうしてこんなに詳しいのだろう。月村についてネットで深く調べれば何がしかは分かるのかも知れないけど,ちょっと面倒なり。ここは月村に敬虔な読者諸兄姉の方で 上手くまとめて短く説明して頂ける方がおられると大変嬉しい。おねがいします。

全88件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

月村了衛の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×