かんむり

著者 :
  • 幻冬舎
3.36
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本棚登録 : 969
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344040175

作品紹介・あらすじ

「私たちはどうしようもなく、別々の体を生きている」夫婦。血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人。かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに、今はーー。夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。「私のかんむりはどこにあるのか」著者四年ぶり書き下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • 愛するということは大変だし難しいものだなと感じました。
    愛に限らず、何かを貫き通す事は何かを諦める事ではあるし(諦めた自覚がない場合もあるが)、
    後悔が全くないと言い切れる人なんてごく僅かだと思います。

    しかし子どもがいつのまにか自分を毛嫌いするようになって、小さい頃は一緒に遊んで楽しかったと思う日が来る可能性もあると思うと切ない…
    せめて大切に日々を過ごそうとも思えました。

    官能的な部分も含めて、愛することに関しての主人公の考えが見えやすかったです。

  • 虎治と光は元同級生。
    この夫婦が、子どもを持ち家族になり、そして時を経て夫婦2人の生活になり、やがて独りになるまでを描いている。
    生活環境や育てられ方によって違ってくる2人の子育て論。
    虎治がリストラにあい、再就職を繰り返しても
    それでもなんとか波風立てずにやってき。
    こんなはずではなかったと…どちらも思ったのかもしれない。
    何が正解であるのかも曖昧なまま過ごしていく。

    うまくいってもいかなくても、愛は素晴らしくて、でもとても難しくて重たい一事業だ。
    どのようなかたちであれ、ともかくそれが終わった。始まったものをきちんと終わらせた。
    このことばに全てが集約されていた。

    しんどいなぁ、と思った。
    つつがなく夫婦という関係を維持して家庭生活を送ることは、いろんな意味でしんどい。
    逃げ出せば楽になるのかもしれない…が、逃げ出したところで先は見えない。
    ぐだぐだ文句を言いながら時に無言で圧をかけながら一緒にいるのかもしれない。
    そうやって維持してるのかもしれない。

  • かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに今は、、
    夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。
    こんなはずじゃなかった、正解がわからない、何もわからない。
    「私のかんむりはどこにあるのか」
    ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

    中学の同級生だった虎治と光の、出会いから別れまでを描いたお話。

    とてもリアルな感じがしたな〜。
    初めは同じ思いだったはずなのに、子育てや仕事をするなか、考え方の違いを感じ嫌悪感を抱いてしまう。
    多かれ少なかれどんな夫婦にもあるんじゃないかな。

    1番の理解者だと思ってた相手との、時を経て変わっていく関係性。
    読んでいると少し寂しい気持ちになってしまった。
    満たされていないと、選ばなかった別の人生がきらきら輝いて見えるってよく分かる。
    自分のかんむりはどこにあるのかと思う気持ちも。

    別の人間であると認めて、それでも一緒に生きていくのか。
    そうだとしたら、それこそ愛なんだろうなと思う。
    水が弾けるとかんむりが出来る。
    あの人を連れて、のラスト、泣けてしまった〜。

  • かんむり|彩瀬まる - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/series/crown

    Keiko KONISHI | tumblr
    https://keikokonishi.tumblr.com/

    かんむり | 株式会社 幻冬舎
    https://www.gentosha.co.jp/book/b14571.html

  •  光と虎治は、中学の同級生として知り合い、その後結婚、新という名の息子も産まれ、子が自立し、別れるまでを描いている。

    彩瀬まるさんの本は何冊か読んでいるけれど、今までにないトーンの一冊でした。性描写も多く、時系列も小刻みに行ったり来たりするので、少し鬱々となりながら読みました。

    登場人物の誰も好きになれないながらも、夫婦が年齢や状況でその関係性を変えていく様が興味深く、そして感慨深かった。

    私には夫がいないので、あまり自分とは結びつかなったけれど、それでも、夫や妻という他人と一生添い遂げることの、しんどい面と素敵な面を感じとりました。

    心に色々とお互い負の感情も溜め込んで、心を開けない部分も持ちながらずっと一緒にいるって、私にはハードすぎて耐えられないかも。でも、恋愛云々でなく生活となれば、諦めが心の多くを占め、それなりに続けていけるものなんだろうか?…想像するしかないので、よくわからない。

    心に残った文
    ○大人として生きていくのは、誰だって苦しいよ。新はまだ、誰かのせいだって思える年齢なんだ。でもそれも永遠じゃない。

    一番好きだった場面。
    ○お母さんと新は保育園の帰りにしりとりをする。「アイス」「すいか」「かっぱ」パ・パ…とお母さんが考えていると、「ママ、パイナップルって言ってもいいよ」「ありがとう。じゃぁパイナップル」

    「パイナップルって言ってもいいよ」って可愛すぎます。新君にキュンキュンになっていたのに、成長して淡々と親を責める言葉を投げつけるようになったのはショックだった。現実はそんなものなのだろうか…。私にも息子がいるけれど、こんな時が来るのなら何を励みに育てていけばいいのかわからなくなりました。

    それでも夫婦愛は美しく尊く、やはり添い遂げたいと思える人は、きっと結婚生活が上手くいくんでしょうね。私には厳しいかな。色々と考えさせられる、ずっしりと心に重くのしかかる一冊でした。

  • 中学時代に出会った、光と虎治。結婚し息子が生まれ、時を重ねていく夫婦。年を経るほどに変わっていく心と体。仕事や育児に翻弄され、軋んでいく夫婦関係。
    生と性に正面から真摯に向き合い、それぞれの世代で私たちがスルーしがちな、ジェンダーの違和感を浮かび上がらせる。ぶつかり合うことが面倒で、すっきりしないままに飲み込んだことの何と多いことか。いつも彩瀬作品を読むと、そんなかさぶたを剥がされるような気持ちになるのだけど、それは必要な痛みなのだとその都度思い知らされる。
    女性が背負わされる理不尽さのみならず、マチズモの弊害についても触れており、「~らしさ」から脱却できそうでできないもどかしさ。そして、光がとあるチャンスを逃したことから抱えてしまう淀んだ感情。その吐き出し方にはちょっと引いてしまうけど、ままならなさからどうしようもなく黒い気持ちになってしまうこと、生きていればあるよなぁ…。
    様々なテーマを内包し、コロナ禍~その先まで描いており、色々と試みているなと読みながら感じた。光はアパレル会社勤務だが、彩瀬作品にはデザイナーなど服飾に携わる人物がよく登場し、洋服を扱う場面がとても好きなのだ。衣食住描写が生き生きとしている作品は好ましいな。
    そして、彩瀬さん独特の、生々しい触感の描写。体のコミュニケーションについても今回はすごく考えさせられた。自分の体をどう捉えるかについても。そして、自分の「かんむり」を見つけたい。

  • 読書備忘録755号。
    ★★★。

    かんむり。う~ん。かんむりって何か褒められたり達成したりして他人に認められた時に頭に載せるもの?
    結局それは形のないものであって、自分がこれで良いんだ!と心から思えた時に、他人の頭の上に載っていると思い込んでいるかんむりも消えるんだと思います。

    光と虎治。幼馴染みで結婚した二人は自ら納得するかんむりを得ることはできたのだろうか・・・。

    光はアパレルメーカーの店舗販売員。虎治は老舗時計メーカーの社員。
    育った家庭も環境も違う二人の価値観は・・・、やはり違う。授かった息子の新の子育ての考え方でもずれる。
    それでも二人は愛し合っていた。
    身体を重ねれば、なんとなく明日に向かうことが出来た・・・。

    そして二人を襲う大きな転機が訪れる。多分コロナ禍。二人は40歳。
    虎治の会社は立ち行かなくなる。虎治のリストラ。
    光も店舗規模縮小の中で、お世話になった店長から新しい会社の立ち上げるから店長待遇で来ないかと誘いを受ける。結局、夫の収入減の不安から、今の会社にしがみ付く道を選んだ光。誘いは危ないギャンブルと判断した訳ですね。
    一方の虎治。男は、夫は、一家の大黒柱として強くあらねばならない。弱いと負ける。という固定観念に囚われた虎治は精神的に不安定となり、転職を繰り返す。
    光はそんな虎治に負担を掛けまいと、育児に仕事に奮闘する。

    そして二人はどうにかこうにか50代に。ひとまず虎治の転職も落ち着き、息子はいよいよ独立。一見無事子育てを終え、これからは二人で楽しく、という構図だが、光は自分のかんむりがなんなのか苦しむ。
    店長待遇で誘ってくれた元上司のブランドが大成功の成長をしている現実から、選ばなかった道が正解だったと無意識に感じてしまう。その道にはかんむりがあったのではと。正解の道を無かったことにするために、そのブランドに悪意の書き込みを続ける光・・・。
    そして、そもそもその原因を作ったのは虎治だと無意識に恨む・・・。
    でも二人は愛し合う。

    そして二人は70歳に。虎治は病でこの世を去る。
    光は振り返る。どうしようも無いくらい別の個体であった二人。それでも愛さずにはいられなかった二人。その時々で後悔する二人だっと。

    だから?と読後に思ってしまう。
    光の物語の逆側に虎治の物語があり、どう光との一生を思っていたのかと考えてしまう。

    フィクション小説でありながら、どこにでもあるリアル。やっぱりフィクション小説はサスペンス、冒険、スリラー、SFとか現実逃避感が強い方が良いなぁと感じる。

    • ほくほくあーちゃんさん
      私、彩瀬まるさんの作品で、「これが好きだー!!」って思える作品に、まだ出会えてないんですよねー…。
      これ読んだら、好きになるかなー…。
      んー...
      私、彩瀬まるさんの作品で、「これが好きだー!!」って思える作品に、まだ出会えてないんですよねー…。
      これ読んだら、好きになるかなー…。
      んー、ならないかも…って思っちゃいましたー(-_-;)
      個人的に小説でコロナ禍の状況の話って好きじゃないんですよねー。
      なんか、せめて小説の中では、コロナがないあの時の時代を生きていたいと思ってしまうんです。
      でも、この作品、いつか読むんだろうなー笑
      2023/08/10
    • shintak5555さん
      彩瀬さんの作品でこれっていうのに出会ってない!
      全く一緒です!ホントにそうですね。
      現実逃避したいのに物語が現実なんです。笑笑
      彩瀬さんの作品でこれっていうのに出会ってない!
      全く一緒です!ホントにそうですね。
      現実逃避したいのに物語が現実なんです。笑笑
      2023/08/11
    • ほくほくあーちゃんさん
      「物語が現実」!!
      まさにそうなんです!!
      わぁー、私の語彙力のなさをキレイにshintak5555さんがカバーしてくれましたー!!
      はぁー...
      「物語が現実」!!
      まさにそうなんです!!
      わぁー、私の語彙力のなさをキレイにshintak5555さんがカバーしてくれましたー!!
      はぁー、スッキリー笑
      2023/08/11
  • 覚えておこう。忘れないようにしよう。光と虎治、そして新。【文句のつけようのない経歴や、誰にも頼らずにやっていける強い立ち位置よりも先に、喜びを祈ってもいいのかもしれない。どんな道筋であれ今の、そして大人になった新が、誰からも脅かされず、喜びを感じられる状態で生きていけますように。】【最善はわからない。三人とも宙ぶらりんだ。】【ああ、彼は二人でたくさん散らかした欠片をなるべくきれいにスーツケースにしまおうとしている。話し合って、なにかを変えようとする時間の終わりがとうとうきた。】【水のかんむりはどれも美しかった。私も新もきっと同じだ。握りしめて生まれた性質のまま完成していると思いたい。】飾らず隠さず生々しいほどに、夫婦と家族の物語だった。私はまだその中間地点。"なにかを変えようとする時間の終わり"がくるまで。

  • Amazonの紹介より
    「私たちはどうしようもなく、別々の体を生きている」
    夫婦。血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人。
    かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに、今はーー。
    夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。
    「私のかんむりはどこにあるのか」



    ある夫婦の出会いから別れまでを描いた作品で、しっとりとした雰囲気があって、改めて「幸せ」においての難しさを感じました。

    ふと振り返ってみると、他人で出会って、恋人から夫婦。そして家族へと変わっていく中で、愛を持続することの大変さを感じました。そう思うと、長年連れ添っている親って凄いなとしみじみ思いました。

    子供が成長する節々で、その後の夫婦が描かれているのですが、もしかして離婚!?とか思う描写もあって、ヒヤヒヤしました。恋人でしか見られない一面、夫婦でしか見られない一面など、年齢を重ねるにつれて、価値観も変わっていく中で、よく我慢していられるなと思うばかりでした。

    時折、性描写が描かれるのですが、一歩間違えれば官能小説⁉︎と思うくらい、赤裸々に描かれていて、正直ここまで必要かなとも思ってしまいました。
    その反面、リアルに描くという意味では、あってもおかしくないかなとも思いました。

    何が起こるかわからない人生。後で振り返って後悔したところで、何が正解かわかりません。
    その選択が間違っていたのか?良かったのか?
    自分も色々選択を間違えたんじゃないか?と何回も思ってしまった経験がありますが、あまり振り返りすぎず、進むがままに人生を送っていきたいなと思いました。

  • 虎治と光の出会いから別れの話。夫婦ってホントに色んな形、色があるんだな。結局光が家族を養うことになるのに、虎治は今だに昭和の男。これだと今どきの夫婦は成り立たないよね。重いタッチではなかったので読みやすかった。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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