55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.59
  • (73)
  • (173)
  • (206)
  • (20)
  • (8)
本棚登録 : 1567
感想 : 181
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421875

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読んでいる間に、自分自身の55歳の誕生日が過ぎていった。
    これまで生きてきた道のりと、まだこれから先に続くであろう道のりに思いをはせると、少し息苦しさを感じてしまった。
    5編の中編小説は一遍一遍が重く、どれをとっても心にのしかかる気がした。
    幸か不幸かテレビドラマは観なかったので、主人公の姿かたちからイメージの世界に入っていく。それも少し苦しい作業だったのかもしれない。なぜなら、あまりにも現実的で自分のすぐ近くで起きている出来事のようにも思えるし、近くと言うより、もしかしてこれは私の別の面?と思えるような描写にゾッとしないでもなかったから。
    私らの世代のように夫婦で連れ添ったり、時には一人になって、また初めから一人っきりで年月が過ぎていくと、そろそろこれまでを振り返り、これからの生き方を決めていく世代なんだと当たり前かもしれないこんなことに改めて気づかされた。

  • 自分はまだ55歳になってないが、あと数年したらこういう話も強ち無くはないと思った。
    それぞれの話に登場する【飲み物】が、富裕層や貧困層の象徴になっている。自分はどの飲み物かと考えながら読むのもいいかも。

  • 「55歳からのハローライフ」読了。
    NHKの土曜ドラマで放送された5話の原作本。
    テレビでは面白いなと思って見ていたが2話しか見られなかった。
    最終回・第5話の「空を飛ぶ夢」で主人公を演じていたイッセー尾形がドラマの最後に「救われたのは俺の方だ」というのを聞いて、なぜそう言ったのかがわからなかった。
    はじめはインターネットでイッセー尾形の撮影インタビュー記事などを読んでみたがどうにも納得できなかった。どうしても原作を読んでみたくなり本屋に行ったところ、文庫本となって平積みされていたので買ってきた。
    話は出版社が倒産し再就職先もなく日雇いのアルバイトで働き、ホームレスになることを恐れる主人公があるホームレスと会う。そのホームレスは中学で仲の良かった同級生だったが40数年ぶりの再会である。ある日、病気がかなり重く山谷の旅館から宿代を滞納しているので追い出すと連絡が入る。主人公は苦労して山谷から彼を連れだし母親に会わせに行くことになるが、腰の悪い主人公とともに途中で力尽きて救急車のお世話になり入院する。同級生は母親に会うことはできたがしばらくして死んでしまう。
    同級生は死ぬ間際に母親に「すばらしい友人に恵まれた。それだけで生きた甲斐があった」と言っていたことを知らされる。それを聞いて「救われたのは俺の方だ」と主人公がつぶやくのだが、ここがどうにも良く理解できなかった。
    本を読んでみてようやく納得することができた。
    ドラマと本ではいくつか設定が違うところもあるのだが、なんと言っても本では主人公の考えたこと、感じたことが文章になっている。一方、ドラマでは役者の演技ですべて表現されている。よほどよく見ていないと細かな表情、仕草から人物の感情を読み取ることはできない。また、カメラワークも重要なポイントだろう。つまり、テレビでは視覚情報、音声情報を正確に汲み取ることが必要で、文章による文字情報あるいは概念を理解することとは違うということについて改めて気づかされた。
    最近はテレビの中で言ったことが文字で表示されることが多いことが少し納得できたような気がする。
    本の5つの話はどれも興味深く、面白く、悲しくて辛いが、希望も感じられる。主人公たちの年代に近いと言うこともあって印象に残る話ばかりだった。

  • 生活環境や経済状態は様々だが、退職や離婚によって人生の岐路に立った中高年者の戸惑い、悩み、そして苦しみを描いた5編が収載されている。現実の厳しさを直視し、中途半端な希望を抱かせずに読者を突き放すような書き方が潔い。いつも近くにいてくれる人に優しくしようと思わせる読後感も好ましい。

  • ドラマ放映中。中高年に売れてます。

  • 「限りなく透明に~」や「トパーズ」のイメージでおよそ自分が共感できる何かを書く作家さんではないと決めつけてたけど、すごく地味な目線を丁寧に書いていて良かった。共感できる部分がチョコチョコあった。

  • 実はニ十数年前の村上龍作品は好きではなかった。もうちょっと正確に言うと、トパーズという作品を読んで嫌になった。希望が感じられない小説だったから。それがこの小説では、辛いながらも希望が詰まっている。これなら、人に勧めたい。

  •  転換期の人生を、悩みながらも一生懸命生きる主人公たちに共感した。
     人生に一生懸命向き合っていれば、何かのきっかけで「人生頑張ろう」と思える瞬間が来るもんだ!そんな気にさせてくれた。
     村上龍って、もっとやんちゃな作家だとイメージしていた。とても視線が優しかった。これを機に読み直してみようかしら?
     

  • 人生いろいろ

  • なんてこった!
    自分の老後のこととか考えてしまった。

    ますます高齢者の層には、暮らし難い社会がやってくる。
    リタイアした者は大人しく死ね、ってわけにはいかないもんね。

    貯金しちょかにゃ。

    あまりドラゴンっぽくなく、読みやすい感じやった。

  • 熟年離婚、高齢者の再就職、夫婦の会話、子供の頃の同級生の現状、高齢者の恋心・・・そんなこんなの短編が5編。
    若い頃に読んでいれば、そういう感じの五十路代の人もいるんだろうな、なんて人ごとのようにしか思えなかったかもしれないが、現在の自分と重ねて読んでいるとすごく心に響いてくる話ばかり。
    超高齢化社会でこんな思いを持っている人がゴロゴロいるんだろうな、って思うといい歳の取り方をしたいものだとあらためて思った作品。6月からNHKでドラマ化されるみたいだし、映像でどう表現されるのか楽しみ。

  • 26.4.某日
    私にとっては大して代わり映えもしない毎日だけど、今日も世界のどこかでドラマが生まれてるんだろうし、視点を変えればあたしだって、それなりにドラマみたいな毎日を生きてるんだろう。

  • ハッピーエンドじゃないところが良かった。悲しいけど優しい気持ちになれた

  • 定年後の生活もままならないようだ。

  • 50代後半から60代を主人公にした中編小説集。日本が高齢化社会になってきているのでこのような小説が成り立つのかもしれない。社会生活をそろそろリタイアする年代、最後のターニングポイントである。 長生きになっている日本では一昔前のようにリタイアすれば後は「余生」というものではない。それから先が結構長い。この先どのように生きていけばいいのか人それぞれに悩む。この年代のいろいろな立場の人たちを取り上げている。長い人生を生きてきただけ会って一様ではない。様々なドラマが展開していく。どの話も実際に起こりそうなものばかりだ。そしてどれもが辛い話の展開をしていく。このまま悲劇として結末を迎えるのかと思わせながら、どの物語も仄かに明るい明日を感じさせる終わり方をしている。私はそれに救われた。
    特に印象に残ったのはホームレスを扱った「空を飛ぶ夢をもう一度」だ。物語の半分近くまで暗く、辛く読むのを辞めてしまおうかと思ったのだが、主人公と友人が小さな旅のような移動をしていくあたりから、「これからこの二人はいったいどうなるのだろう」とハラハラしながら、先を読まずにはいられなかった。一気に最後まで読んでしまった。最後には涙さえ流しそうになった。主人公の友情、彼自身の今の立場等と対比させながら人間の「善」を感じさせる作品だ。

  • 電車の中やスタバで読んだのが間違い。自分と重なってしまい、顔をあげられなくなってしまいました。第2話「俺は素晴らしい友人に恵まれた。それだけで生きた甲斐があった」最後にそんなことを言えるだろうか。自分の今のままでは、後悔しか口に出来ないと思う。第4話は電車の中で。ペットを失った寂しさではなく夫婦の暖かさが沁みた。これも自分を振り返っての憧れ。

  • 解説を読むまで「ハローワーク」だと思い込んでました(笑)
    ちょっと希望もってもいいかなと思える話

  • ちょっと枯れた小説かなと思い手に取るのに躊躇したが、結構面白かった。今の55歳の現実を、よく表した小説だと思う。決して読後が暗くならないのが良い。中編の5編、「空飛ぶ夢をもう一度」「ペットロス」が良かった。

  • 2014/04/28読了

  • 様々な熟年夫婦が抱える問題を描いた作品。ハローワークと思っていたら、よく読んだらハローライフ。たしかに死や終末を意識するような年代。人生をもう一度という意味なのだろうか。
    ペットロスという話が一番グッと来たな。

全181件中 141 - 160件を表示

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×