ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 240
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421882

感想・レビュー・書評

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  • やがて哀しい女の子が1番好きだった。少女から大人になるまでの2人の女性の心の機微が表現されていて、少し切ないけどそれが自然な形なんだな、と感じた。

  • 富山県出身で地元では有名な作家の方。
    5年ほど前は、いろんなところで姿を見たような気もするが、一時期よりは少し落ち着いたかな。
    この本が出たのが10年前なので、ずいぶん経ってから読んだことになる。

    最近、山内マリコさんの文章を見ることがあって、ジェンダーに関する意見も多い。
    そんなこともあり、この本をこの前、古本市で見つけたので読んでみた。

    8つの話が組み合わさった短編集。
    どの話も基本的には主人公が地方都市で暮らす女性だ。
    で、読み進めるとある人物が共通で出てくることに気づく。
    そして、最後まで読んでやっと気付いたが、時間軸としては、過去に戻っていく流れになっている。
    私が気付いたのは二つだが、同じエピソードが別の話で出てくる。
    もっとちゃんと読めばさらに出てくるかもしれない。

    内容は、完全に富山をモデルにしたと思える描写がいくつも出てくる。
    雪の降る感じ、ロシア人が歩いているとか、明らかに当時の時代背景を表している。

    よくこの本の解説で地方の閉塞感みたいなことが書かれているが、そういうことは自分が住んでいるからか、そこまでは思わなかった。
    ただ刺激が少ない、知った顔が周りに多い、と言ったところで、皆都会に憧れるのだという現実がひたすら描かれている。

    終わりに行くにつれて、より性的な話題が濃くなってくるが、最初に世間の注目を集めたのは一番最後の短編のようだ。
    それがあって、実際にはそこから時を進めたのではないかとも思える。

    他の作品も読んでみたくなった。

  • 山内マリコさんのエッセイは読んだことあったけど、小説は初めて。
    地方に住む女の子たち(男子も時々)が、なんにもない地元の田舎で、つまんなそうに生きている、というか、どこかに向かいたくて、自分の意思で歩きたくてしょうがないのに、どうしたらいいのかわからん!とイライラ、モンモンしてる様子が描かれている。一見退屈そうな話なのに、私も地元のビミョーに田舎に住んでるので、光景が目に浮かんでくるし、著者の山内マリコさんと同世代でもあるので、登場人物たちの時代をまさに生きてきた!こともあり、過去との邂逅では?(そんな大層なことはないけど)と思うくらい懐かしく感じた。
    話が現代?から過去にさかのぼっていく展開も面白くて、同じ田舎の町に住む主人公たち(短編の集まりだけど)がそれぞれの視点から見ている様子がより本の中に存在する田舎町をリアルに立体的に浮かび上がらせる。
    なんやろ、退屈なんやけど、読んでて楽しかった。

    ちなみに、地方の田舎町というと、家の周りは田んぼや山ばっかりを想像されるけど、道路沿いには、マクドナルドもケンタッキーもモスバーガーもあるし、ニトリやゲオやユニクロもあるし、洋服の青山もあれば、ヤマダ電機やジョーシンがあって、、、生活するには困らないくらいお店はある。ただし車がないと不便なことこの上ない!

    若い頃は、「こんな田舎~」と思っていたけど、今はこの田舎でのびのび生きることができている、それが幸せだ。

  • 街並みや独特の息苦しさなど、地方都市の描写がリアルでした
    仕事や交友関係など少ない選択の中で生活する閉塞感はなかなか伝わりづらいものだと思いますが、8人の女の子達を通してヒリヒリと伝わってきました

    “ここは退屈迎えに来て”と思ってもそう簡単に王子様は迎えに来ない
    ここでも何処かでも、道は自分で切り開くしかないのだと思いました

    みんなの共通点「椎名くん」が今度はどこで登場するか、ワクワクしながら読みました

  • 地方ガール小説、というらしい。
    そこまで田舎出身でもなかったし、田舎大好きなのであまり共感できず。

  • 30歳、26歳、23歳…それぞれの歳の、ファミレスで通り過ぎた人は知り合いか確かめる視線、ゲーセンや教習所やスタバくらいしかなく実家で暮らす田舎の閉塞感と孤独。一見バラバラだけど「椎名」という中学生くらいはちょっと人気者だった(でも今はおじさん)男の子が各短編を結んでいることで、だんだん時代が遡ってることがわかります。でも同じ田舎の閉塞感でも、18歳の女子高生よりも30歳の(都内から)出戻りの女性の方が、「ここは退屈迎えに来て」の息がつまりそうなぬるま湯の閉塞感が強くて読んでて辛い。結局白馬の王子様は来ないから、ずっとこのままなんだろうなと思いました。

    「成就しなかった過去の片想いを引っ張り出し、昔のときめきをちびちび舐めて命をつないでいる。若い女の子だけが持つ、恋愛に向けるべき豊富なエネルギーが空焚きされ、時間だけが無為に過ぎていく。」

  • すらすらと一気に読むことができました。
    ファスト風土という言葉、初めて知った。

    完全な共感ではなかったですが、作中での田舎のリアリティを身近に感じました。

    私自身、生まれも育ちも田舎ですが、あまり似た感情を抱いた覚えがない、、。東京にも地元にも全然執着がない笑

    東京へは通えるから、地元に戻ってきたところで都落ちしたという感覚はないし、実家から都内通ってる人が多いからかもしれない

    地元で大学や就職先を選ぶのは作中の椎名くん的存在の人(地元に満足している人)でもしないと思う。どちらかというと大学や、仕事内容を見て東京に出ているような感じ。

    作品からはずれてるけど、自分軸があるかないか、だけで都会にしろ田舎にしろ見え方は全然違うと思った。

    でも、そういった選択肢や価値観がが狭まってしまうのが田舎なのかな


    そういえば
    田舎の高校に通ってた時は、なんでこの学校にしたの?(笑)って同じ学校を選んだ子の中でよく話題が出てたけど

    都内の大学いった時はその大学を選んだことを誰も疑わなかったなあ、、
    あれなんだったんだろう



    メモ
    ・やりたくない仕事を続けてると、自分がなりたくなかったような人間に本当になっちゃうよ
     人間なんてあっという間に環境に染まるから(p.101)

    ・いくらでも遠藤につっかかって、痴話喧嘩みたいな言い合いをすることもできる。
     ーーー
    もしこれが椎名だったら、些細な誤解やすれ違いを、必死になって埋めようと言葉を尽くす。けど、遠藤にはそんな気もおきない。どうだっていい人に、分かってもらおうとは思わない。  

  • なんとなくそうなっていくんだろうな、と分かっていながらも普段は目を逸らしている部分が限り無く地に足のついた状態でリアルに見せられる。
    夢見心地のところに水を刺された感じがするのに、読了後悲観的にはならず、「ともあれ『ここは退屈迎えに来て』よ」と思えるのがこの本のすごさだなと思った。

  • 地方都市における10代〜30代の女性を描く。
    短編集で何人か取り上げつつ、心情がリアルに描かれている。
    立場は違うけれど、共感する考え方が多かった。

  • 同郷の作家が、都会から見た田舎について描いていると知り読んでみた。
    田舎の閉塞感のリアリティがよかった印象。
    同作者の他の作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山内マリコの作品

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