アズミ・ハルコは行方不明 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344424050

作品紹介・あらすじ

地方のキャバクラで働く愛菜は、同級生のユキオと再会。ユキオは意気投合した学と共にストリートアートに夢中だ。三人は、一ヶ月前から行方不明になっている安曇春子を、グラフィティを使って遊び半分で捜し始める。男性を襲う謎のグループ、通称"少女ギャング団"も横行する街で、彼女はどこに消えたのか?現代女性の心を勇気づける快作。

感想・レビュー・書評

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  • 話が二転三転してたというか、結構論点がふらついてたように思えましたが。
    男尊女卑文化って本当に苛つくなと思いました。
    でも男女お互いそれを利用してるところがあるのも事実だよなと。
    でも、女は強いぞってのを最後感じました。

    地方ならではの人間関係や青春が忠実に描かれているところが好きです。
    それは本当に第三者から見たらバカらしい。
    山内さんはそれをだれよりも馬鹿らしいと思っていられるからこんなに上手にそれをかけるんだなと思いました。
    山内さんはきっと若い頃感情のままに、今が楽しけりゃそれでいい!みたいな向上心のない周りの同級生に侮辱の心を抱いていたんだろうなと、ひしひしと感じられます。
    それに同意できるから、この人の作品がとても好き。

  • 地方都市の悲哀を感じる。世界が狭すぎて、恋愛と言っていいのかどうかわからない人との関係。その人に頼りたい訳でもないのにその人しかいない。狭すぎる。ある時自分でもその狭さに驚き、絶望し、ここからもう逃げてしまいたい、いなくなりたいと思う。
    バラバラとした話の中で、アズミ・ハルコはふわっと現れて、特段深刻な、暗い影を負わず、知らない間に話と話をつないでいる。
    最後にはすこしだけ、女性の強さとしぶとさが光り、希望が見える。
    この作家はそういう終わりが好きなのかな。

  • 山内マリコは一貫して、田舎のくすぶってる欲求不満の若者、やるせない倦怠感、反逆する女の人を、あくまでキャッチーに書いてくれる。少女ギャング団、アズミ・ハルコ、どちらの語感も発想も好き。

    なんとなく、松田青子の「持続可能な魂の利用」を彷彿させた。時代遅れな固定観念をもつ男性や暴力や性的な男性集団を排除して、女性のみで楽園をつくる。女子高生とおじさんの相性ってバツグンに悪いよな!


    いつまでも思春期恋愛を引きずるのは心地いい。自分の青春が、まだ終わっていないような気になるから。恋愛だけじゃなくて、自分の可能性が丸々残されているような気さえするから。(p119)

     

  • はちゃめちゃな展開のようで、女性たちの抱えてる問題や、男たちの身勝手な慣習たちはとても現実的で、実は簡単に起こり得るような出来事なのかもしれないと思ったり。

    人物の設定、絶妙なセリフ、展開の気持ちよさなどなど、とても好き。

  • だってそうでなきゃ、悲しすぎるでしょ?

  • 物語のラストシーンは優しく、女子高生達のラストシーンは痛快。全ての女の子達へ。

  • おれらじゃん

  • 初、山内マリコ!

    かっこいい、なんだこの作品!
    純文学っぽくとんとん話が進んで、でも鋭くてどうしようもなくてぶっ飛んでてかっこよかった!
    とりあえずバンクシーのイグジットスルーザギフトショップ見なきゃ。
    相変わらず田舎の人間の描き方えぐい。くるものがある。私も徳島に残ってたらこういう気持ちになってたかもしれない。
    実家で暮らし恋人もなくストレスフルな薄給OLの春子は、幼なじみの蘇我氏にも相手にされなく?て、、


    最後がいい。力合わせて生きていこうぜ!!みたいな。ガハハ!って感じのあんまり出てこない今井さん大好きになった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765042

    心に幼さを抱えたまま大人になってしまった男女の群像劇。
    時に事件性を感じながらも進む彼女たちの日常は鬱屈しており、
    読んでいる間はやるせない気持ちを抱くことも…。
    それでも最後に元気を与えてくれた結末が好きです。

  • 「ここは退屈迎えに来て」も良かったけど私はこっちの方が好きかな。

    登場人物のそれぞれが持っている焦燥感や閉塞感は、私も若かりし頃、常に思っていた感情で、何かをしたいけど何していいのか分からなかったり、何かができそうでも何もできなかったりと、あの頃の行き場のない感情をまた思い出してしまった。

    何もできず大人になってしまった私にはもう残された時間を淡々と過ごすことしかできないけれど、未来ある少女たちにはハルコや愛菜のように迷いながらでも前へ進んで行ってほしいな。と思いながら読んだ一冊でした。

    装丁もかわいいですね。

  • 偶然見かけた行方不明者「アズミハルコ」のグラフィティを中心に、地方に住む"必要とされたい"人たちそれぞれを描いた話。

    愛菜たちと春子たちの2つのパートがあったが、年齢が近いこともあり、私は春子の気持ちにとても共感した。
    曽我氏との、あったかなかったかわからないような関係性が切れた時の無力感、そして無力感から来る喪失感。社会人になると、学生ほど良くも悪くも距離が近くなりづらい。普段はさほど気にならないが、ふとした拍子にすごく大きなダメージを与える。そんな普段言いえない気持ちがとても明確に描かれていたように思う。

    愛菜と春子は全然違う性格だが、言葉を選ばずにいえば男に必要とされたいという点で共通していて、最終的に今井さんも含め女性たちで力強く生きていく描写が良かった。
    また、最後の愛菜のセリフ「行方不明の女の子たちが、辛い目にあっているのではなく、ムカつく現実から逃げて、ヘラヘラ楽しく生きていることを祈った」というのが前向きな結びとなっていて、作者からのエールというか、この作品の核のメッセージじゃないかなと思った。

    山内マリコさんの作品はこれで二作目だが、具体的な名称(「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」など)の使用、特に繊細な女性の心理描写、いわゆる"地方"に生きる人達の描写がすごくリアリティがあり、ページをめくる手が止まらなかった。

  • 記録

  • 何がどう人に伝わるのかわからないもんだなぁ。

  • これは爽快!
    ほんとにみんなみんな、元気で楽しく生きていてほしい。

    山内マリコさんとは同世代なので、「あの時あの時代のあの感じ」みたいなのやフェミニズムに対する考え方の変遷みたいなのが、他の著作を読んでてもよーく分かる!!という感じなんだよなー

  • やっぱり山内マリコの本は読後感がいい。
    大好きな作家さん。
    映画も見てみたい。

  • 曽我氏みたいな自分が傷つかないポジション取りをして会話する人いるよね…
    春子がそれに屈しなかったときはスカッとしたけど、春子は恋人がいるというカードを手に入れるために曽我氏とデートするようになってしまうし、きっとそんなことも見透かされていて春子の方が立場が下。

    最後のシスターフッド的な展開は、いや現実だとそんなうまくいくかなあとも思ったけど、それでも山内マリコさんは徹底的にわたしたちの味方なんだと思えて嬉しい。

    少女ギャング団も可愛かったな。女子高生ってだけで楽しかったよね。普段は喋らないタイプの子ともなんでか一緒に遊ぶみたいなイベントがときどき発生して、普段は喋らないのに、なぜかそういうときは一致団結できちゃって、そういうことがまた楽しかったんだよなあ。

  • 山内マリコさん作品記録7

    読み終わった後、
    何となくスカッとした気分になれる作品。
    山内マリコさんの作品はありふれた日常の
    シーン一つひとつがとてもセンチメンタルに
    描かれていて入り込んでしまう。

    個人的には春子と曽我氏が好き。

    登場人物たちのその後も見てみたい。

  • ジャンプとマガジンとpspで育った人間が、決して逃れられないセンスのようなものが、いつのまにか自分の中に染み付いて、呪いのようにそこから出られない。

    春子の話なんて誰も聞かない。春子が言わないから。

    小さな毒を摂取してやりたくなったのだ。

    あの日々は何だったんだろう。
    あの人は誰だったんだろう。

    似たり寄ったりな方向性のまちづくりや村おこしによって再び画一化されていく皮肉な展開




    どの女の子も居場所がなくて寂しがって、どうしようもなくなってたけど、最後に女同士でつよく手を握り合ってた。

    ーーーー
    アズミ・ハルコの表情は、昨日の夜と打って変わって、全然寂しそうじゃなかった。それどころかむしろ、キリッとして力強い、ちょっと生意気そうな顔に見えた。嫌なことを言われたら『うるせー』って言い返せる、タフな女の子に見えた。
    ーーーー

    これは、最後の3人の晴れやかな心なんだろう。

    山内さんの小説は、気怠い感じが漂うけど、一変して最後は清々しくなるものが多い。
    テンプレートとして、弱者にされがちな女子を、全然そんなんじゃなくていいと引っ張りあげてくれるようだ。

    男性が幼く描かれているのも、特徴なのかなぁ。

  • 読もうと思った理由
    著者の描かれる世界が面白いため

    地方で青春をすごし、都会で生活している著者から描かれる若者特に女性の閉塞感、心情、たくましさが生き生きとして面白くワクワクしながら読みました。

  • 優雅な生活が最高の復讐である

  • 女の子は強い

  • 序盤の視点がコロコロ変わるのは、テンポが良くて面白かった。

  • とりあえず、山内マリ子作品を読み漁ってみるキャンペーン中。
    これ映画化もされてるらしい。
    うーーーん、あんま好きじゃない感じ。
    なんていうか、展開とか描きかたとかが雑に感じるし、登場人物の誰にも魅力感じず愛せなかった。

  • 退屈な日常をなんとかしたくて、キャバ嬢の世界に飛び込んだ愛菜。名古屋ではやりたいことに行き詰まり地元にかえってきたユキオ。誰ともうまくまじわれなかったけど絵心だけはあった学。ユキオが影響を受けたバンクシーのDVDをきっかけに、ユキオと学が接近して、街中に、行方不明者のポスターから適当にもってきたアズミ・ハルコのグラフィティを描きまくり。何かになれる、退屈な日常がぶちやぶれると思ったのに、地方の町おこしの芸術祭で一躍スターかと思いきや、こんなはずじゃなかったという苦い思いを胸に…。反面、アズミ・ハルコが失踪するまでも、地方の閉塞感、ちいさな会社のどこへも行けなさ感、日常の人間関係の行き詰まりと八方塞がりだったけれど、最後は、自分を必要としてくれるところが見つかり、ひとすじの希望がさして…と。個人的には、山内マリコワールド、しっくり来るなあ、という思い/DVD イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ,リチャード・ハーレイ「Tonight The Streets Are Ours」/

  • アイナの気持ちがよくわかる。誰からにも相手にされないと自分には価値がないんじゃないかと思えてくる。他者からの評価が自分の評価だと思い込んでしまってるがゆえに彼女は誰かに依存し続けなければならない。でもなぜそういう思考になったのか?私にはわかる。小学生低学年まで私たちは人間として扱われてきた。しかし、中学にあがると自分がどういう人であるかの前に女という目で見られる。親も先生も周囲の人たちも女としての行動を少女たちに求めるようになる。そうしていくうちに女としての評価がイコール自分の評価なのでは?と思う。少女向けの本にだって モテるにはさすが〜!すごいね〜!ってオーバーリアクションで言うと記載されてる。ティーン向けの雑誌だって男ウケが良いメイクはこうって特集が組まれている。はぁ〜私たちはやっぱり女として評価されてこそ生きてる価値があるんだって思い込むのも当たり前な気がする。ラストは現実味がないけど世界の少女たちに「あなたたちは生きているだけで価値があるし美しいよ」って言ってるみたいで好き。

  • 山内マリコさんなので購入。今まではそんな印象なかったけど、舞城王太郎ぽさを感じた。福井と富山、北陸という共通点のせいもあるかも。あと文体と展開の非現実感。

    すごく感銘を受けたとか、展開がどうとか、そういう感想はあまりないけど、好き。文章を読んでて楽しい。
    女の子をエンカレッジしてくれるというか、女の子が強い。

    山内マリコさんの作品、残りは単行本。買おうかどうしようか。

  • 最初に出てきた女の子が主人公なのかと思いきや、主要人物ではあるけれど、なんだか冷静に突き放した描写で、リアルさに震えた。健気に頑張ればハッピー!路線ってなんで思ったんだろうか、自分。健気に頑張ればハッピー!って思っているんだろうか。自分の浅はかさを知る。
    ポジティブに言えば、青い春にエネルギーを注いだひと夏の花火のような現象をめぐる生きづらい女子の活動記録。ひたすらリアルな青い春描写の中で、ときおりの幻想的な少女ギャング団の登場に、全ては夢なのかしらと思わせる。
    不思議な物語だったけど、面白くてあっという間に読んでしまったし、読後感は、女子として何か生きることを応援してもらった気がした。

  • 映画より本の方が面白い

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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