- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344433069
感想・レビュー・書評
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読書後、原田マハさんの魔法にかけられてしまったような心地でした。
ゴッホの生前に売れた作品の数はなんと1枚。
驚きます。
そのエピソードからしても、ゴッホは苦悩がいつも隣にあった人というイメージでした。激しすぎる色彩と独特すぎるマチエールはその現れのようで。
なので実は苦手でした。
たとえ傑作とされる作品であっても。
というのが、「リボルバー」に出会う前の私です。
主人公の高遠冴はゴッホとゴーギャンのプロ。
彼女の研究は彼らの心情に注目し、そこから2人の関係性を読み解いてゆくというもの。
ある日、勤務先にゴッホを撃ち抜いたという拳銃が持ち込まれ、冴は調査を担当します。
徐々に由来は明らかになり、ゴッホとゴーギャンの驚くべき関係性が見えて来ます。
そこが一番の読みどころでした。
又、冴には常々抱いていた思いがありました。
「ゴッホは幸せだったと思いたい」
史実的に本当はどうだったのか気になってしまったので、ちょっと調べてみました。
実際にゴッホが書いたという手紙が残っているようなので、一部抜粋。
「ゴーギャンが来ればゴーギャン用にする部屋には、白い壁の上に大きな黄色い向日葵の装飾画がかかっているだろう。自分にないものをゴーギャンから学ぶつもりだ」
前向きな気持ちが溢れていてなんだか眩しい位です。
ひまわりはその時描かれたようです。
ひまわりの黄色は狂気…と思っていましたが、実は期待で輝く黄色でした。
ほんの2ヶ月間だけだったようですが、憧れのゴーギャンから指導を受けて共に創作活動ができた時間は不幸だったとは思えません。
きっとかけがえの無い時間を過ごしていたのだと思います。
今までの私は確かにゴッホが苦手だったのですが、気がつけばいつの間にか変わっていました。
以前はサラッとしか見なかったのに、今は目を皿のようにして作品を見ています。
どこかにゴーギャンがいるような気がしてしまって。
逆にゴーギャンの中にはゴッホを。
マハさんにかけられた魔法は当分解けそうにありません。
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パリのオークション会社に持ち込まれたリボルバー。
ゴッホが自殺した時に関係する銃だという。
ゴッホとゴーギャン、ゴッホの弟のテオ、その時どんな事があったのか。
持ち込んだ女性との関係は。
謎に包まれたゴッホの死を紐解いていく。
さすがマハさん。
ゴッホとゴーギャンがどんな関係だったのか、主人公が資料を集め読み漁り、自分が研究してきた事も踏まえて、あらゆる角度から表現している。
特に終盤の、リボルバーを持ち込んだ女性の母の話と、ゴーギャン目線の話は、グイグイ引き込まれて話の中に自分が入ってしまう感覚だった。
ゴッホとゴーギャンが最後に見た麦畑。
寂しい風が吹きつつも、私もその風を感じてみたいと思った。
そこに行ったらどんな事を感じるだろうか。
2人がそこで安らかに眠っていると良いなと思う。 -
史実では、自殺したと言われているゴッホ。
高遠冴が勤務するパリのオークション会社へ、女性が錆びついたリボルバーをオークションにかけてくれと持ち込む。
それは、ゴッホの自殺に使われたものだと。
果たして本物なのか偽物なのか。
ゴッホとゴーギャンの研究家でもある高遠冴は、関連する人物やゴッホの終焉の地を訪ね歩く。
リボルバーはゴーギャンのもので、ゴッホは彼に殺された?
ゴッホとゴーギャンとの本当の関係は?
ゴーギャンの妻や愛人、その娘、様々な告白が次々と明かされる。
史実とフィクションとを巧みに織り交ぜ、キュレーターの資格がある著者が、ゴッホの死に迫る。
史実に果敢に挑戦したアートミステリー。 -
相変わらず、終わり方が上手い。
ゴッホとゴーギャンの関係から、ゴッホの自殺に迫っていくのだけど、切なくなる。
『リボルバー』から入った人は、『たゆたえども沈まず』に進んでみると、また違った視点からゴッホを読めるのかなと思う。
世界を表現する力が、自分の存在を追い詰めていく感覚、私には分かりようがないけれど。
ゴッホとゴーギャンは、正反対ながらも、分かってもらえないことを分かり合える、唯一無二の相手であったのだろうか。
空白を想像で補いながら、私たちは私たちなりに、納得をしていく。
ただ、それだけ。解釈の可能性が一つあるだけ。
でも、それは誰かにとってかけがえのない物語になるのだと思う。 -
またもマハさんの世界観に没入してしまいました。
実際の史実とマハさんの世界観。
どこまでが本当でどこまでがフィクションなのか。
主人公の冴と同じように、その場所にいるかのようなリアル感に引き込まれました。
以前に「たゆたえども沈まず」を読んでいたのもあり、さらにリアルにゴッホとゴーギャンの関係性を感じて感動。
ゴッホとゴーギャンのタブローを途中途中で観たくなり、検索しながら読んでいました。
見極め目も、絵心も全く無い自分ですが、読む前と読んだ後では作品への見方も変わり、本物のタブローに会いたくなりました。
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Googlemapと並行しながら読むと倍楽しい。
舞台がヨーロッパ(主にフランス)で、絵画にまつわる美術館や図書館、ゴッホが生前歩んだ地が多数でてくる。地図で場所を検索しながら読み進めると一緒にゴッホの聖地を巡礼してるようで楽しい。
あぁ、絵画を今すぐこの目で見たい。
という気持ちが沸き起こるため 読み終えた頃には
『近場・美術館・イベント』と検索をかけているだろう。そのくらい 絵画に無知な自分でも 名画の虜になるような表現を詳細にかく筆者の巧技に魅了される作品だった。
さぁ、次は 原田マハの モネの世界観に浸ってみよう。
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自殺か他殺か?ゴッホの自殺に使われたと言われるリボルバーの持ち込みをキッカケに展開するアートミステリ。
真相に辿り着くまでの流れは多少ご都合主義的な感じもあったが、その後からの展開は最後までガッツリ引き込まれた。史実とフィクションが混ざり合う事で妙なリアリティがあり、ゴッホやゴーギャンも生の人間だったんだと身近に感じられ、彼らの絵画を改めて観てみたくなった。 -
史実に基づいたフィクション。
物語後半、ゴッホとゴーギャンの真実が
だんだん明らかになっていく過程に
ページをめくる手が止まらなかった。
美術にも全然詳しくないし
絵画を見ても月並みな感想しか
出てこないけど
原田マハさんの小説を読んでいると
ゴッホやゴーギャンのような
巨匠と呼ばれる画家たちが
親しみやすく身近に感じてきて
読んだ後は美術館に行きたくなる -
やっぱり原田マハさんの美術小説最高です。
「たゆたえども沈まず」や「美しき愚かものたちのタブロー」などゴッホやテオ、ゴーギャン
など激動の時代を精一杯生きた芸術家たちの
ストーリーは、毎回、一瞬にして私を夢中にさせ、あっという間に読んでしまいます。
そして
読むたび、美術館に足を運び、彼らを思い浮かべながら作品にひたる…。これがまた本当に最高です。
今回は、なんといっても、
ゴッホの自殺説をゴーギャンによる他殺になんて、
冴子の言う小説家にしかできないストーリーにすっかり魅了されてしまいました。
ゴッホやゴーギャンの絵に対する産みの苦しみの中で孤独と闘いながらけれどどこかで
相手を思いやるその心の葛藤を
熱く激しく生き抜いた彼らにすっかり夢中になってしまいました。
マハさんの作品本当に大好きです。 -
『たゆたえども沈まず』とはまた違った側面からゴッホを見ることが出来ました。
沈黙を貫く名作は他にもありそうな気がします。
「作り話もたいがいにしてくださいよ、社長。」