日本の難点 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
3.60
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本棚登録 : 1621
レビュー : 161
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981218

作品紹介・あらすじ

現代とは「社会の底が抜けた時代」である。相対主義の時代が終わり、すべての境界線があやふやで恣意的な時代となっている。そのデタラメさを自覚した上で、なぜ社会と現実へコミットメント(深い関わり)していかなければならないのか。本書は、最先端の人文知の成果を総動員して、生きていくのに必要な「評価の物差し」を指し示すべく、「現状→背景→処方箋」の3段ステップで完全解説した「宮台版・日本の論点」である。

感想・レビュー・書評

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  • 社会学の知識がほとんどない自分にとっては、かなり読み応えがあり、とくに著者の主張については難解な内容も多い1冊でした。それでも何とか読み切れたのは、著者の考えのベースにある、「底の抜けた社会」を感じていたからかもしれません。

    自分にとって、依るべきコミュニティは存在しません。家庭も、地域も、家族も、会社も、ネット社会も、自分がなすべき役割を演じる場、つまりロールプレイの舞台でしかなく、「素の自分」を受け入れてくれるコミュニティにはなりえないといえます。
    結局どこに行ってもうわべの付き合いしかできていないし、それゆえに友達や師と仰ぐ人物に出会うこともありません。とはいえ、現代社会がうわべの付き合いしか許さない社会だと理解しているので、私はそこで生きていくしかないと割り切っています。
    実際には、うわべではない、心からの付き合いというのが、現代社会にも残っているのかもしれません。自分もそれを見つけられれば、本当の意味での友人や師を得ることができ、人間的にももう一段二段と成長できるのかもしれませんが、そうだと信じるにはまだ時間がかかりそうです。

    さて、この書籍は、米国でオバマ大統領が就任した直後、日本で民主党が政権を奪う前に書かれたものです。政治的な見解については、日本の民主党の政策に重なる部分があるのですが、著者がその後どのように考えているのか、興味を持ちました。これはもっと新しい著書に書かれているのだと思いますが。
    底の抜けた社会、自分の感覚ではコミュニティが存在しなくなった社会で、声の大きな人間が皿に声を張り上げるようになっています。社会の歯止めが利かなくなっているんですね。著者の宮台氏は、基本的にそのようなクレームを一切真に受けない、声の大きなものに決して迎合しないという態度を取っていますが、それだけ自分の発言に自信と責任を持っているのだろうと感じました。

    ただ、正しいというのとは違う。政治も社会も教育も同じですが、人の判断は「必ず」誤る、そして「判断しないこと」も判断だという立場にいます。だから誤ることを前提とした社会の構築が必要であり、現代の日本社会に決定的に欠けているのが、誤り前提の視点だということです。この考え方は自分の中にはなかったし、非常に印象深く受け取りました。
    社会自体が誤りを受け入れていないから、目の前の問題を解決すればよくなるか、それでダメなら社会全体をひっくり返すしかないと考えてしまい、結局何ら手が打てなくなる袋小路にはまっています。
    それをどうすればいいのか、自分にはわかりません。宮台氏も何かを伝えようとしているのですが、自分には難解で理解しきれませんでした。

    最後に、
    「周囲に『感染』を繰り広げる本当にスゴイやつは、なぜか必ず利他的です」。
    このフレーズは、すごくわかる。リーダー論でもあり、自分が師を見つけられない理由にもつながってくるのではないかと思うのです。

  • 現代の日本が直面しているさまざまな問題に対して、著者が解決の道筋をクリアに示した本です。

    著者には、一問一答式でさまざまな問題に答えを示した『これが答えだ!』(朝日文庫)という本もありますが、本書はそれよりももう少し説明が詳しく、とくにパーソンズやルーマン、ギデンスといった社会学者たちの考えを現実の問題に当てはめる著者の「手つき」を見て学ぶことができるという意味で、たいへんおもしろい本だと思います。

    「生活世界」が自明視され、便利な「システム」を利用すると素朴に信じられていた時代が「モダン」(近代)であるとすれば、「システム」が生活世界の全域を覆ってしまい、社会の「底が抜けた」感覚が広がるのが「ポストモダン」です。ポストモダンでは、人びとは共同体のくびきから解き放たれて、あらゆることが再帰的な自己決定の対象となります。正統化の危機に直面するポストモダンにおいても、社会が回り続けるためには「みんな」への「価値コミットメント」が必要です。そして、ミードとパーソンズに始まる現代社会学は、「如何にして「みんな」への「コミットメント」は可能か」という問いを追求してきたのだと著者は述べます。

    その上で著者は、ロマン主義的な「生活世界」への回帰を唱える「馬鹿保守」を批判し、「システム」の全域化というポストモダンの現状を認めた上で、「生活世界」を再構築することに向けての再帰的なコミットメントを主張し、「社会の自立」と「社会的包摂」が急務だと論じています。

  • 20130328読了。
    わかる人はわかってくれ、という印象で、内容はさておき、その姿勢に共感できない。
    肝心の内容だが『確かに確かに』とうなずきながら読めるところもあるが、『で、結局何が言いたい?』となることが多かった。簡単なことを小難しく表現しているので、正直分かり難い。
    2009年時点での問題はわかったけど、読み終えて自分の中に何も残らなかった。

  • 2009/4/28

  •  私は宮台の本をたくさん読んでいるわけではないのだが、読んだうちでいちばん面白かったのが『これが答えだ!』(飛鳥新社→朝日文庫)であった。読者から寄せられた100の質問(実際は編集者が考えたらしいが)に一問一答形式で答えていくもので、どんな難問にも見開き2ページでズバリと答えを出す歯切れのよさが痛快だった。

     で、「この『日本の難点』は『これが答えだ!』の21世紀版なのかな?」と思って手を伸ばしてみたのだが、読んでみたらまったく違った。『これが答えだ!』が“ミヤダイ流人生相談”であったのに対し、こちらは“ミヤダイ流『日本改造計画』”ともいうべき内容だったのだ。

     基本コンセプトは、文春が毎年出している『日本の論点』を、宮台一人で全部やってしまおう、というもの。現在の日本社会が抱えるさまざまな問題について、それぞれ「現状→背景→処方箋」の3ステップで宮台流の解決策を提示しようとするものなのだ。

     章立ては次のようになっている――。

    第1章 人間関係はどうなるのか―コミュニケーション論・メディア論(若者のコミュニケーションはフラット化したか、ケータイ小説的―コンテンツ消費はどのように変わったのか ほか)
    第2章 教育をどうするのか―若者論・教育論(「いじめ」は本当に決してなくせないのか、「ネットいじめ」「学校裏サイト」から子どもを守れるか ほか)
    第3章 「幸福」とは、どういうことなのか―幸福論(「自分だけ幸せならそれでいい」のか、自己決定論の現在―「宮台真司」の主張は以前と今で矛盾しているか ほか)
    第4章 アメリカはどうなっているのか―米国論(オバマ大統領の演説は一体どこがすごいのか、どうして、アメリカは大統領制なのか ほか)
    第5章 日本をどうするのか―日本論(後期高齢者医療制度は現代の「うば捨て山」か、裁判員制度―司法の民主化か、新しい動員体制か ほか)

     これほど幅広いテーマについてそれぞれ独自の処方箋を提示できるのだから、それだけでもすごいものである。
     とはいえ、あらゆる問題の専門家であり得る人などいないから、宮台といえども分野によって得手不得手はあるようだ。目からウロコの卓見がちりばめられているかわりに、「意外に陳腐なこと言ってやがるなあ」と感じる部分もある。

     私が感心した卓見の例を挙げる。

    《米国で四年に一度行なわれる大統領選挙は、一八六一年七月から六五年四月までのおおよそ四年間にわたって戦われた南北戦争における「分裂」と「再統合」の模擬再演です。各州の選挙人に予備選挙が勝者総取り方式で州ごとに陣営が決まっていくというプロセスを含めて、まさに模擬再演なのです。
    (中略)
     南北戦争の再現を行なう理由。それは「分裂」から「再統合」へというプロセスを四年ごとに辿ることで、統合の再確認と共に建国の理念(ないし憲法意思)の再確認を行なうためです。なぜそんなことをするのか。理由は、米国が再帰的な人工国家だからだ、ということに尽きます。》

     総じて面白くてためになる本だが、ちょっと鼻につくのは、「社会科学の専門知を研究してきた立場から言うと」というふうに、自らがもつ「専門知」の正しさに自信満々で、しかも終始一貫“上から目線”なところ。
     「世の中すべてが『社会科学の専門知』で割り切れるわけではあるまいに……。アンタは世界一の賢者にでもなったつもりか」と、読んでいてしばしばウンザリさせられた。

  • 1

  • Amazonなんかのレビューを読むと、なんでわざわざこんな分かりにくい言い回しをするんだ!と非難轟々のようです。
    確かに、オリジナルな用語を注釈なしで使っている場面も目立つし、分かりやすい章節と分かりくい章節が混在している印象は受ける。
    全体にスノッブ臭が漂っているのも確か。
    けど、全体を通読すると、言いたいことは明瞭で至極シンプルなんじゃないかと思います。
    (ちなみに自分は宮台氏の著作を読むのは初めてです。)
    現代国語の問題解くわけじゃないんだから、あんまり一字一句全てを理解しようと思わなくてもいいなじゃないか…と思ってしまうのですが。

    コミュニケーション、教育、政治、宗教、安全保障、農業…とテーマは幅広いですが、日本の社会から包摂性が失われてしまったことがすべての根底にあり、それを取り戻すための処方箋が必要だ、という問題意識はいたって明確。

    個人的には、本来の新自由主義においては「小さな政府」と「大きな社会」を両立する考えであったという話と、日本の裁判員制度への批判を展開した部分に、深く感銘を受けました。

  • 1.どの話が印象に残ったか?それはなぜか?
    ・関係の履歴からシーンの羅列へ(p27)
    →人間関係をわかりやすく表現している
    ・重武装化に賛成してくれるなら謝罪は何回してもかまわない(p37)
    →戦略あれば手段は選ばず
    ・人間はなぜか利他的な人間の「本気」に「感染」する(p52)
    →感染させられる人間になりたい
    ・コミュニケーションの2重かによる疑心暗鬼(p59)
    →ネット普及の功罪?
    ・早期教育に駆られる親は子供から見て「スゴイ奴」からほど遠い(p93)
    → 早期教育気になってましたが、やめます。
    ・完璧なゾーニングは「多様な者たちの共生」の原則に反する(p143)
    → お受験もゾーニング?
    ・大統領選挙は「分裂」と「再統合」の模擬再演(p157)
    → だからあの盛り上がりかと納得
    ・安全保障とは総合パッケージ(p180)
    → 国を俯瞰することが重要。国の危機は軍事的行動だけではない
    ・議院内閣制は2権分立(p183)
    → はっきり言ってもらえてこれまでの違和感解消
    ・誰かなんとかいってやれよ問題(p240)
    → 自分で考えることを教えられていない結果
    ・わかっているけど仕方ない(p274)
    →日本人全体の悪い癖。自分も時々出てくる。 

    2.本から得た事をどう生かすか?
    ・若者論・教育論
    子供の教育に活かしたい。子供から見て「スゴイ奴」と思われる親になるために「利他的」を実践。
     たくさんのものを見せて経験させる。

    3.突っ込みどころ
    ・全体的に、わざわざ難しい言葉を使ってないか?

  • 2010/06/05

  • 敵ではないことはわかる。

    しかし、内容はかなり難しい。専門性を問われる。解説的なものではないというか、おれが正しいのだから、俺以外のやつはみんな間違っているがごとく。そういうところは、賢いとはとても思えない。少なからず人としては浅い。

    個人的は、批判だけならだれでもできると思う。
    それは、最終章だけば少しヒントになるかもしれない。

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著者プロフィール

1959年、仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(社会学)。首都大学東京教授。専門は社会システム論。著書に『民主主義が一度もなかった国・日本』『日本の難点』『14歳からの社会学』『私たちはどこからきて、どこへ行くのか』など。

「2019年 『民主主義は不可能なのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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