自動車保険金は出ないのがフツー (幻冬舎新書 か 13-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981799

作品紹介・あらすじ

交通事故の被害に遭ったら、治療費や休業損害は、相手の自動車保険金からすんなり出ると誰もが思っている。しかし、現実には出ない。バイク転到で両脚を切断しても、「故意」に起こしたとして、損保は支払いを拒む。保険金の支出を彼らは「損失」と呼ぶ。支払いを渋り、利益追求に腐心する損保。泣かされる被害者。その不払いの実態と狡猾な手口とは?正当な賠償金を獲得するにはどうすべきか?経験豊富な交通弁護士が、保険金を出させる方法を超実戦的に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 2010年発行の著作なので、そこから10年立っている現在では状況は変わっているとは思うが、自分に良くしてくれるとは限らないというところか。

  • 一部参考になる部分はあったが、保険会社側代理人経験がなさそうなので、論拠がふわっとしてる感あり。この辺は両方やってる(た)弁護士に書いてもらった方がいいのではなかろうか。

  • 保険金裁判をめぐる損保会社と弁護士の仁義なき戦い。

    こうした多くの裁判を担当した弁護士である著者が語るのは、損保会社はあらゆる手段を使って火災保険や盗難保険を不払いしようと試むということ。しかも、その不払事由は不条理で非常識なものばかりだ。

    火事で被災した家屋は持主の放火が原因。台風で倒壊した建物は保険契約前からすでに破損していた。強盗による被害は内部犯行の仕業。損保会社はそんな大胆な意見をロクな証拠がないまま言い放つが、そんな言いっぱなしで裁判に勝てるはずがないことも重々承知。目的は裁判をひたすら長引かせて原告にあきらめさせることと、社内向けの努力アピールだ。

    しかも、このやり方は東京海上日動など業界トップで浸透しているのだから、損保会社からの保険金は出ないのがフツーのようだ。

    と、損保会社のエゲツなさはよくわかった。じゃ、その対策となると著者のような弁護士に依頼して長い裁判に耐えるしかない。結局、儲かるのは弁護士という結論はなんとかならないのか。

  • お金

  • 加茂先生は懲戒を受けている。一方の立場を記したものとしてはわかる。少し表現がえげつないと思うが、これは幻冬舎の編集の影響と理解したい。

  • 損保の不払いとそれへの対応を事例的に紹介。暇なときの読み物。

  • 気分悪くなるねえ。
    ぼくのような小額の事故相手だと、然程ではないのだろうが。保険屋は、保険料を集めて、保険金を出さないのが仕事だってのは、良く判るよ。

  •  テレビを観ていると、保険会社がスポンサーになっていない番組が一日でもあっただろうか、と思うくらいよく宣伝しているが、果たしてどこまで彼らは自分を守ってくれるのだろうか。この先何かあったときのための転ばぬ先の杖となってくれることを期待して、手に取った本。
     タイトルでも触れているように、自動車保険金は利用者が満足するような保険金が出ない、その理由を本書で説明している。

     第一章は実際の裁判例を持ち出して、いかに保険会社が保険金を出し渋るかを説明している。
     一つ目の事例:前方を走っていた車のスペアタイヤが外れて飛んできたために自分の車(ベンツ)と衝突、アメリカ系の損保の車両保険を使おうとするも「はずれたタイヤは道路上に寝ていた、そのタイヤにあなたが乗り上げたために壊れたので前方不注視の過失だ」と払おうとしない。専門家に衝突痕を診てもらい鑑定書(タイヤによりついた傷の写真など)を突きつけるも「そちらの鑑定書を信用していない、もともとあった傷でしょう」とシラをきる、保険約款を常識では考えられない都合の良い解釈をして出し渋る(上から下へ落ちてきた物による故障は払うが、バウンドしてから下から上に上がる最中の事故は払わない)、しかもその両者の判断は「ケースバイケース」(どう区別するか答えようとしない)という始末である(これは一審のやり取りであり、さらに控訴して高裁へと続いた。当然相手の負け)。
     二つ目の事例:会社が所有する車が盗難されたので、車両保険を使って支払いを求めたところ「偽装盗難だ」とし支払いを拒否したというものである(なお、割賦代金を払い終えていなかったので、車の所有権は購入先の自動車販売会社にある)。
     今日では被害者の故意・重大な過失によるものとして車両保険の支払いを拒否するためには、損保側で立証する必要があるが、この当時はそうでなかったので被害者側で立証する必要があった(「偶然性の立証」)。最終的に被害者側が勝ったものの、損保は支払いを渋るために1.被害者(被保険者)の借金(ローン)の存在、2.経済的苦境(会社の経営難など)、3.そのために保険金詐欺を企てたと、都合の良いストーリーを作るのだという。
     これらの他に、バイクが転倒したために両脚を切断するも「わざとだろ」と決め付けられ支払いを拒否された事例、日本の損害賠償の実務では西洋医学を重視し東洋医学(接骨院など)を軽視する傾向にあり、「これ以上治療を続けるなら施術費を払えない」と半ば脅しの形で「中止」をさせて、その時点までの費用しか払わない(最終的に症状固定までの費用を支払う形となった)、会社経営・役員は「役員報酬があるのだから休業損害は出せない」と、零細企業の社長であっても払おうとしない、被害者の無知を利用して、任意保険・弁護士会基準の慰謝料よりも安い自賠責保険で払おうとする(弁護士が代理人として介入、第三者示談斡旋機関を申し立てられた時には払う)など、えげつない話で埋めつくされている。

     第二章では損保と被保険者双方の問題について述べている。
     損保が支払いを拒む背景には、1998年の保険の自由化により保険料の科料が自由化されたことで値下げ合戦が始まり、結果として支払いを削って利益を出そうとしているそうである。あまりに担当者に抗議する被保険者に対しては「弁護士委任案件」とすることで攻撃の矛先を弁護士に向け、さらに抗議が来たときには被保険者を相手に「債務不存在確認訴訟」を起こし、抗議を封じ裁判所でケリをつけなければならなくなるそうである(通常、被保険者が治療中の場合賠償金額がまだ確定しないので起こさない。黙らせるためだけに使う)。
     しかし被保険者側に非があるケースもあるようで、確定申告をしておらず(脱税目的?)裏付け資料も無いのに休業損害や逸失利益を支払わせようとする、「バレー・ルー症候群」などに見られる不定愁訴で治療費を払わせ続けようとする、故障した車の時価よりも高い修理費を支払わせようとする、あろうことか愛用のサングラスが恐怖を感じた(!?)ので慰謝料を貰いたいという、断られても仕方がないケースもあるようである。

     第三章は保険金が支払われる境目の説明である。
     1.追突事故などでむち打ち症になった場合、一ヶ月・三ヶ月・六ヶ月を治療期間の目安とし、それ以上治療を続けようとすると、医療機関から照会を得るためと「同意書」をとりつけて調査会社の人間を医師のもとへ差し向け、患者の立場を考えて曖昧に発せられた治療期間を「症状固定」までの期間と勝手に書く(損保の担当者に気に入られるため)。
     2.主婦(家事労働)の休業損害は厚生労働省による「賃金センサス」をもとに、一日一万円弱貰える(H20)はずだが、任意保険の額ではなく自賠責の基準額である5700円で提示してくることが多いという(保険の仕組みを知らないことを悪用している)。
     3.入通院(傷害)慰謝料は弁護士会基準を請求しても問題ないのだが、損保は保険金を払いたくないがために任意保険基準か自賠責基準で提案してくるという。
     4.後遺障害慰謝料は弁護士会基準においては、一番軽い14級でも110万円、さらに逸失利益として年収に応じた金額が得られることを考えると160万円以上は貰える(自賠責の75万円も含む)。しかし無知につけ込んで逸失利益と慰謝料を無視した75万円を提案されることがある(本章では、本来1000万以上貰えるはずの費用が500万円弱しか支払われていない事例が載っている)。
     5.車が故障したために発生した評価額の減損を評価損といい、新車登録後3年未満のケース以外ではなかなか認められない。
     6.ペットの死は物損として取り扱われ、買値に加えて飼い主への慰謝料程度が支払われる。
     すんなりと支払われる保険金の種類には1.搭乗者傷害保険、2.自損事故保険、3.人身傷害保険がある(ただし、あくまでケースバイケース)。何にせよ、どういう場合に保険金が「出ないのか」を記した約款:免責規定に目を通す事を忘れてはならない(章の終わりでは「契約を結んだ相手にのみ保険約款を見せる」という意味不明な損保が紹介されている)。

     第四章は損保にきちんと支払ってもらうためのノウハウについてである。
     言うまでもなく、損保は専門知識(専任弁護士)と経済力、そして有利に進めるための戦略(例:強引に治療費を切り医師をも追い詰め《自由診療として治療費を得られなくなる》「症状固定」にすることで等級を決め示談交渉に進めようとする)を用いて被保険者を圧倒してくる。弁護士を見つけようとしても、自動車保険の仕組みと損保の内部事情をも知り尽くした弁護士は少なく、かつ加害者側につく弁護士が地方には比較的多く断られることがあるという事情が重なってしまうことがあるという。
     弁護士をつける時には自分の保険に「弁護士費用担保特約」がついているとここから費用を捻出できる(ただし、悪徳な損保では存在を謳っているだけで利用させないこともあるという)。
     示談交渉が決裂した場合、第三者による示談の斡旋をしてくれる交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターを通じて対応できるが、前者は損保相手では審査に回すことで強制力が働くが、進行が遅く相手が共済の場合は決裂することがある。後者は、進行が早く共済相手なら強制力があるが、損保が相手だと強制力がきかず、三回以内に示談が成立しなければ決裂となる。
     民事調停という手段もあるが、これは加害者から「損害賠償額確定調停」を申し立てられることや、調停委員に交通問題の知識があるか分からないという問題を含んでいる。

     第五章は損保側からの提示額に不満をもつ人へのアドバイスと、裁判の進み方を事例を織りまぜながら解説している。
     死亡事故や重度の後遺障害事案では、自賠責保険金を先に受け取るか、受け取らないかで「遅延損害金」に大きな差が開き、和解の場合でも近年では遅延損害金の約50%が「調整金」として加算されることがあるという。ただし、経済的に逼迫している時は、生活の事を考えると先に受け取ったほうが良いと筆者は考えている。そしてもし、自賠責保険金をあえて受け取らない時は、その請求権が時効に引っかからないように「時効中断診断書」を二通自賠責保険会社に提出し、承認印が押された一通を返却してもらう必要があるという。
     逸失利益の考え方には、事故によって現実にどれだけ収入に差が生じて差額を補填しようとする「差額説」と、実際の減収でなく障害を負ったことにより、労働能力が事故以前よりも失われていること自体を損害としてとらえて補填する「労働能力喪失説」がある。
     逸失利益の考え方はケースによって異なり、主夫の逸失利益は「女子労働者の全年齢平均賃金」をベースにしている。女子年少者の逸失利益は、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金額を基に算出するため、男子よりも低くなってしまう傾向があるという(今日では全労働者の全年齢平均賃金を基に算出しているが、それでも低くなってしまっている)。
     一方、顔の傷における損害賠償では女性が後遺障害等級が最大で七級であるのに対し、男性は大きな傷でも十二級どまりだという。原則的に顔の傷では逸失利益は発生しないが、職業によっては例外が発生した事例があるそうだ。
     損保側には専任の医師がついており、意向に沿う意見書を書き立てられる。これに対抗するには自分の主訴を真摯に受け止めてくれる医師を見つけて、残存している症状を漏らさず記入してもらうようにする事が大切だというアドバイスが載っている(日常の治療行為で疲弊して雑に書かれることもある。診断書に書かれなかった症状・障害は「存在しないもの」と損保に判断される)。
     損保側には税理士もついており、提出された書類に目を通して「被害者の所得をできるだけ低く認定しようとする」という、普通の税理士とは真逆の行為をされることがあり、休業損害の減額を正当化しようとするという。
     交通訴訟の7割強は「和解」により解決しているが、死亡事故の場合は支払われる金額がより大きい「判決」のほうが良いと筆者は述べている(ただし、金額よりも一日も早く解決を望んでいる時はその限りではない)。この時、原告側が損害として計上しなかった(出来なかった)損害を既払い金に組み入れると損保側の思うつぼであるので、照合に気を払う必要があるという。
     最後の章は、弁護士の世界の小話である。損保側にも良識のある、というか分をわきまえた弁護士が一応いるという下りは、少しは気も休まるのではないだろうか。

     とても長いまとめになったが、「保険に加入しているのだから安心だ」という気持ちでいてはいけないと知るのには良い本だと思う。
     ところで、四章の「弁護士の見つけ方」において、「インターネットで交通事故を専門にしている弁護士を検索し、良さそうな人にアクセスする」という方法が載っていた。
     インターネット時代なのだからもっともな話だが、筆者の名前を検索すると、気がかりなウェブページが何件かヒットする。この本自体は良さそうな本だが、果たして筆者本人は良さそうな弁護士と素直に考えて良いのだろうか。

  • これはオモシロイ。確かに損保会社が死にそうになっているのは理解しているのだけど、大手でここまでえげつなく心無い対応を取るのかと思うと悲しくなるね。
    確かにカミさんが釜掘られた時の慰謝料は一日4200円だったわ。あまり気にしなかったけど、そうやって無知な契約者からこっそりせしめてる訳ね。大きな事故じゃなかったから揉めなかったけど、ある程度の額になると途端に揉めそうだ。カミさんにもちゃんと言っとかないと。僕が事故に巻き込まれた時の対策をある程度想定してもらわないといけないから。

  • 少し偏った視点から著されている。自分のようなペーペーがいうのも僭越ではあるが、弁護士なら相手方の視点からも事案を眺めてみることも必要ではないか?

    ただ、説明は丁寧になされているところもあり、依頼人にどう説明するのか参考になるところもあった。

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著者プロフィール

●著者紹介
加茂隆康(かも・たかやす)弁護士・作家。2008年リーガル・サスペンス『死刑基準』(幻冬舎文庫)で作家デビュー。他に『審理炎上』(幻冬舎文庫)、エッセイ集『弁護士カモ君のちょっと休廷』(角川書店)、同『弁護士カモ君の事件グルメ』(ぎょうせい)、新書は『交通事故賠償』(中公新書)、『交通事故紛争』(文春新書)、『自動車保険金は出ないのがフツー』(幻冬舎新書)などある。デビュー作『死刑基準』は、2011年、WOWOWでドラマ化され、東映ビデオよりDVDとしてリリースされた。『審理炎上』は、ブックファーストの2016年「絶対読得宣言!」のイチオシ本「PUSH!1st.」に選定された。東京・汐留で加茂隆康法律事務所を経営。交通事故の専門家として、テレビ、ラジオの報道番組にたびたび出演、新聞でのコメントも多い。一方、刑事事件にも情熱を注ぎ、これまでに、強盗殺人や放火の事件など、100件近い弁護を手がける。


「2022年 『密告の件、Mへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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