真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 (幻冬舎新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984394

感想・レビュー・書評

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  • 仏教学者とゴリゴリの物理学者の対話。
    ビッグバン理論などで宇宙の始まりは「無」だった(宇宙の誕生は偶然だった)、という考え方が浸透してきた。こうした理解と、「超越者の存在を認めず、現象世界を法則性によって説明する」(P.144)原始仏教は実は似たところがある、と。

    とは言え、「仏陀は量子論を知っていた」というような説は二人とも強く否定する。個人的には、宇宙とは何だろうと考えているときに、最新の物理の知見がない人も偶然に似たような世界観を思い描くこと自体面白い気もするが、学者二人はそれを以って「仏教と現代物理学は矛盾しない」などといったことは言わない。

    西洋が、科学の発展とともに「宇宙に意味がなく、人間にはあらかじめ目的が与えられていないことを明らかに(なった)」(P.33)ことに思い悩む中、仏教はもともとそういう設定がなく、「苦」そのものである人生において「修行によって自分を変えていくプロセスそのものが、自分の生き甲斐になると考える」(同)という点が興味深かった。

  • 超弦理論の大栗博司氏と仏教学者の対談本。
    対極の分野だが共通点も多い。

    ・ミクロの理論からマクロの在り方がわかる(万物の理論)
    ・時間と空間は絶対的なものではない。
    ・正しい、正しくないの二元論ではなく90%正しそう、50%正しそうといういくつもわけて判断する
    ・確率評価は都度変動する
    ・世界を認識する方法はいくつもあり、適切な切り口の理論や考え方を使えばいい。その理論は間違っていたら改めることが重要。

  •  対談でもあり、お二人の話、とても分かりやすく刺激的でした。超弦理論も始めて、分かったような気にさせてくれました。佐々木閑先生を存じ上げず、釈迦から大乗仏教へ至る歴史的な経過は、ただ驚くばかりでした。大乗仏教が、壮大なイリュージョンなのではとすると、妙に納得できました。超弦理論で、ラマルジャンの数式が紹介され、驚きとともに再度興味が掻き立てられました。

  • 初期仏教の圧倒的な真っ当さに感銘。

  • 仏教学者佐々木閑と物理学者大栗博司とのトークセッションをまとめた対談本である。お二人の対談や特別講義を通じて仏教学と物理学とが交錯し、大栗の指摘に応答しながら理系出身でもある佐々木の仏陀像が明らかにされていく。仏陀は超越者の存在を認めず現象世界を法則性(縁起)によって説明しようとし、その結果、世界には始まりも終わりもなく諸要素が法則に従って永遠に集合離散を繰り返していると考える。そこには本来意味も目的もない。先ずはこのような世界を正しく深く理解すること、その上で仏陀は「苦」からの解脱を求めたのだった。佐々木はこのような仏陀の姿勢を忖度して更に輪廻や死後の世界も否定した上で、「苦」からの解放を説く仏陀に帰依する。その意味で佐々木は「仏教者」なのだ。それにしても、「仮説と検証」という近代科学の方法論によることなく、思索のみによってこのような世界観に到達した仏陀には驚嘆するばかりだ。仏陀がもし現代世界に生まれていたら、間違いなく仏教者ではなく物理学者としてこの世界の真理の探究に専念していたことだろう。

  • 『強い力弱い力』、『重力とは何か』
    でおなじみの大栗さんと
    仏教研究者の佐々木さんの対談を
    書籍化したもの

    大栗さんの本を読んだことのある人なら仏教のこと
    佐々木さんの本を読んだことがある人なら物理のこと
    がわかるいい本だと思う

    ただ理系の自分としては、まず最初にあげた二冊をお勧めしたい
    企画としては面白いが、二人が話したことによる相乗効果的なものはあまりなかったように感じた
    それぞれの本を一冊読んだ方がいいかなと

    理系の人がわかりやすい、読みやすい形で仏教について知れる機会としてとてもよかった
    それが相乗効果といえば相乗効果かな
    釈迦の説いた仏教と、現在の日本の大乗仏教がいかに違うか
    そして、釈迦の仏教が”真理の探究”として
    物理と接点を持つ様子がよくわかる

  • 仏教学の佐々木さんと、超弦理論の大栗さんの対談本です。個人的には、ここ数年ヨガにはまっていることもあり、仏教の伝播の仕方とかその中での変容とか、古代インドから連なる流れを知れたのは本当によかったです。読了後もやっぱり仏教と超弦理論がどう繋がるかは実はよく分かってないですが、宇宙がすごく薄っぺらいとか、まだまだ知らないことがありますw(2017.3月読了)

  • いただいた本。

    先日、松原隆彦『目に見える世界は幻想か』という物理学の本を読んだのだけど、大栗博司の話は難しいけど似た所に触れられていると感じた。

    面白かったのは『「よく生きる」とはどういうことか』というテーマの対談。
    なんで仏教×物理学?というところが、なるほど、に変わるから面白い。
    神という絶対的(超越した)存在を外すことによって、なんなら自分という存在を世界の中心から降ろすことによって見えてくる世界について、どちらの側からも歩めるんだなぁ……。
    仏教の、生老病死の苦しみの話や、南無阿弥陀仏の意味なども、知っているようで知らなくて、すごいなぁとちょっと感動したのだった。

    岡潔は無明の話をよくしていた。
    情緒を育てることの大切さに、物理学的な発展の仕方は合わないように感じていた。
    けれど、この本を読むと、立っている場所が同じで、外を解明していくのか、内を解明していくのかという部分の違いのようにも思えた。
    まぁ、安易な対比論だけど。。。

    生きていることが苦しいとしたら、その苦しみを取り払うために自分自身はどうするか。
    生きる意味がない中で、自分は一体何を見つめて死への確実な歩み寄りを続けていくのか。
    佐々木静は「向上」という言葉を目的に位置させたけれど、苦しみがなくなっていく修行の成果は、「向上」という言葉とは厳密に同義でないようにも思う。

    いただきものでなければ、手に取らなかった本との出会いだった。
    こういうのも、いいなー。

  • すごく頭のいい人は、読者のレベルにあわせて面白くなるように語ることができることの確認ができる。対談より特別講義部分の方が面白かった。

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著者プロフィール

1956年福井県生まれ。花園大学文学部仏教学科教授。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。同大学大学院文学研究科博士課程満期退学。カリフォルニア大学バークレー校留学をへて現職。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。著書に『宗教の本性』(NHK出版新書、2021)、『「NHK100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば』(NHK出版、2012)、『科学するブッダ』(角川ソフィア文庫、2013)ほか多数。訳書に鈴木大拙著『大乗仏教概論』(岩波文庫、2016)などがある。

「2021年 『エッセンシャル仏教 教理・歴史・多様化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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