勉強の価値 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
3.71
  • (65)
  • (100)
  • (86)
  • (17)
  • (8)
本棚登録 : 1743
感想 : 120
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344986091

作品紹介・あらすじ

勉強が楽しいはずない。特に子供が勉強しないのは「勉強は楽しい」という大人の偽善を見透かしているからである。まず教育者は誤魔化さずこれを認識すべきだ。でなければ子供が教師の演技を馬鹿馬鹿しく思い両者の信頼関係が損なわれる。僕は子供の頃あまりに美化された「勉強」に人生の大事な時間を捧げる必要があるか疑った。が、現在(正確には21歳から)は人は基本的に勉強すべきだと考える。そう至ったのは何故か? 人に勝つため、社会的な成功者になるためではない。ただ一点「個人的な願望」からそう考える理由を、本書で開陳する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 神田の三省堂書店神保町本店で、配っていた冊子『夏新書』からの一冊。


    たくさんメモはとりましたが、書き写すのが大変なので、第7章の結論のみ書きます。
    メモしたことは、自分が既に体験としてわかっていたことが多かったです。
    わかっていたことをまとめて本にしてくれたような本でした。



    第7章本当の勉強はとんでもなく楽しい

    ○自分が何をしたいのかを知らない人は、自分で楽しみを作れない。
    どこかにあるはずだと探し続けるうちに、宣伝に引っ掛かり、釣り上げられる。そこで、ちょっとした楽しみに高額を支払い、それが人生の楽しみだと思い込んでしまう。本当の楽しみを知っている者から見ると、なんともったいない話。
    自分の楽しみを見つけることが「勉強」といえる。
    これが本来の「勉強」である。

    ○何を勉強したら良いのか、どんな方法が良いのか、という疑問を他者にぶつけないようにしてもらいたい。それを考えることが勉強の第一歩。
    学校の勉強、競争のための勉強、人と同じ勉強、教えてもらう勉強では、その一歩を飛ばしてしまうから本来の楽しさは失われる。

    ○そして教育とは、大人が楽しく勉強しているところを子供たちに見せつけることなのだ。

    • 傍らに珈琲を。さん
      そうか、まことさんも確認されたかったのですね。
      それでいいんだよと言って貰えているようで、まことさんのレビューを読んだだけで満たされてしまい...
      そうか、まことさんも確認されたかったのですね。
      それでいいんだよと言って貰えているようで、まことさんのレビューを読んだだけで満たされてしまいました 笑

      楽しんで書かれていると仰ってくださったのがとても嬉しいです。
      有難う御座います!
      ホント、皆さん楽しく積極的に学んでいらっしゃいますよね。
      だからブクログのこの空間が好きです。
      最近、資格試験で大学構内を訪れる機会がありまして、
      こんなに素晴らしい環境が用意されていたのに、当時の私は分かってなかったなーとつくづく感じてしまいました。
      そんな時に、まことさんのレビューで先程の文章が目に留まったのです。
      私の楽しみは第一に、音楽鑑賞+読書、第二に美術館巡りでしょうか。
      第三も第四も…と沢山あるので、もう節操ないですね 笑
      2023/09/14
    • まことさん
      傍らに珈琲を。さん、おはようございます♪

      傍らに珈琲を。さんはたくさん楽しみがあられるのですね!
      資格試験も受けられたのですね!
      ...
      傍らに珈琲を。さん、おはようございます♪

      傍らに珈琲を。さんはたくさん楽しみがあられるのですね!
      資格試験も受けられたのですね!
      私もたくさんありましたが、最近は読書と短歌が中心です。
      最近はピアノも弾いてないし、映画や美術館も行ってないです(コロナのせいもあるのですが)。
      でも、傍らに珈琲を。さんと、お聞きする限りでは趣味が似ているような気がします。
      これからもよろしくお願いいたします!
      2023/09/14
    • 傍らに珈琲を。さん
      まことさん、こんにちは

      ピアノ!素敵~!
      音楽は聴くこと専門で何も奏でられないので、憧れます~♪

      ホントだ~似てますね
      こちらこそ宜しく...
      まことさん、こんにちは

      ピアノ!素敵~!
      音楽は聴くこと専門で何も奏でられないので、憧れます~♪

      ホントだ~似てますね
      こちらこそ宜しくお願いします!
      2023/09/14
  • 読み初めに、勉強のノウハウとか具体的なことは書いていないよ、との著者が書いていて、おやおやそうなの?と読み進める。
    勉強は楽しいはずがない、まあそうだよね。というところから世の中で言ってる勉強は、本当の勉強ではない的な話になって行き、最後は本当の勉強は楽しいで終わる。
    著者の子供の頃の話から研究者、教育者、作家になるまでの話しは他の著作で読んだので飛ばしながら読んだ。
    色々感想はあるが、やはり森博嗣に外れは無い(少ない)なあと。
    そうだよなあ、とクスッとしたところ:
    老人になっても頭を使うことの基本は、やはり自分が「楽しい」と感じる対象を素直に実行することだ。矍鑠とした人ほど死ぬ話をする。逆にTVを見るだけという老人、特に趣味が無く、なにも楽しみがない、という老人は、病気になることを恐れていて病院には頻繁に通っている。死ぬのが怖い、とおっしゃるのである。死を連想させるような話になると「縁起でもない」と眉を顰められる。

    Amazonより:
    勉強が楽しいはずない。特に子供が勉強しないのは「勉強は楽しい」という大人の偽善を見透かしているからである。まず教育者は誤魔化さずこれを認識すべきだ。でなければ子供が教師の演技を馬鹿馬鹿しく思い両者の信頼関係が損なわれる。僕は子供の頃あまりに美化された「勉強」に人生の大事な時間を捧げる必要があるか疑った。が、現在(正確には21歳から)は人は基本的に勉強すべきだと考える。そう至ったのは何故か? 人に勝つため、社会的な成功者になるためではない。ただ一点「個人的な願望」からそう考える理由を、本書で開陳する。

  • 『勉強の価値』

    1.著者 森博嗣さん
    名古屋大学、大学院、博士、助教授を務め、47歳で独立、作家へ。

    2.著書目的
    勉強とは?どんな意味、価値があるのか?

    3.著者の原体験
    大学四年生の卒業論文で、初めて勉強が楽しいと感じる。
    なぜならば、誰もが知らない、残っている謎を特定し、研究をすることに出会えたから。

    4.著書、著者のスタンス
    ①大人が子供に勉強しなさいというのは?
    大人が勉強を楽しんでいない、義務のような捉え方をしているから。
    ②勉強する、勉強しないは個人の勝手
    著者は気にならないし、著者の課題ではない。
    ③知りたいが先にある
    迷うは機会である。迷うから解決する術を見つけようとする。そこが、勉強の始まり。
    ④質問は、理解して初めてできる
    大学で学生にはテスト、レポートを課さなかった。
    質問を課した。
    なぜならば、理解しなければ、質問は出来ないから。
    ⑤知識自体は即効性で意味あるものではない。
    ただ、生きるという長いスパンにおいて、知っておいて良かったという資産のような役割を果たす。

    5.読み終えて
    「初めての機会、環境」に直面した場合、知りたいから勉強をする。
    「あー、そのような考え方あるよね。」と自身と比較して納得した。
    そう、知りたい分野が先に存在していて、読みたくなる、調べてみたくなる。そして、まとめて、棚卸し/比較しでみたくなる。
    身体、技能、そしてこころの全ての領域における、知りたいこと。
    いずれの分野においても、「迷いつづけて良い」のだという「勇気」を教えてもらえた。


  • 本書の『教わる方よりも教える方が勉強している』と『学生は黒板を写経しているだけ』いう点に賛同しました。

    著者の森氏が言うように、昔は受動的に学びをインプットする「写経」のような授業が多かったと思います。 
    本書では特に記載がなかったのですが、最近では生徒同士で議論して自分の意見を述べる授業が増えているので、日本の教育は改善されつつあると思います。

    「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」を見てると、能動的に学び・思考を整理し・相手に伝わるようにアウトプットする大切さに気付かされます。
    教える側になれるくらい深く勉強し、将来を支える子どもたちがいつか社会に出た時に、自らの答えを導き出せるように育って欲しいと思います。

  • 森博嗣さんの本初めて読みました。
    大学で教鞭をとられて、10年位作家とかけもち
    今は田舎(長野?)で作家専業。
    さすがに面白くて、ためになりました。
    三つ紹介します。

    まず〈勉強は釘を打つ練習である〉
    釘を打つのが楽しい人もいれば
    「将来役に立つ」「上手に打てればみんなが注目する」
    「コンテストで勝つために努力しましょう」もあるかも?
    でもそれより〈自分の作りたいものがまずあって
    そのためにはどうしても釘を打たなければならない
    だから釘の打ち方を勉強したい
    そうなって初めて、その勉強に意味が浮上し
    価値が生じるのである〉
    同感!

    二つ目。〈講義では質問をさせていた〉
    これは自分にとって新しい見解です。
    〈良い質問をするためには、講義の内容を理解し、
    それまでの知識が頭の中で整理されている必要がある〉
    確かに、自分たまに質問しますが、
    それによって流れが中断するので皆に迷惑だし
    バカな質問すると先生ががっかりするだろうなと思うから
    質問するためには自分が勉強していることが必須。
    言われるまで気づかなかったなぁ。

    三つ目。
    〈「わからない」と悶々としている間に、頭は考えている。
    必死になって、探しているのだ。
    それは言葉にはならない活動だから当然ながら説明ができない。
    問題を解いたときにも、ただ幸運だった、と感じてしまう。
    だが、これが人の能力であることはまちがいない。
    神さまが助けたわけでもなく、まだ幸運でもない。
    なにしろ、数学ができる子供は、だいたいいつも良い点を取る。
    つまり、何度も幸運を呼び寄せる能力を持っているのだ。
    そして、この「わからない」という時間を経験すること以外に、
    その能力を高める方法はない。
    いろいろテクニック的なことを教える向きもあるけれど、
    それは一部のお決まりの型に嵌った問題に限られる。
    未知のものを解決する能力は「技術」ではない。
    人間の「発想力」なのである〉
    わからないからと諦めないで、その時間が貴重なのだと理解しました。

    最後に自分の意見です。
    日本の学校教育についていろいろおっしゃっていて
    たとえばコロナで休校のとき中国では端末による在宅授業が行われているのに日本は遅れているなどありました。
    しかし私はこのたびのコロナ自粛を見て
    親たちにとって学校は託児所の意味合いが強いのだなと思いました。

  • 図書館で借りたものだが、買って手元に置いて時折読みたい1冊。大人になった私も、一教育者として、楽しく勉強する姿を子どもに見せていきたい、と思った。

  • 学校でやる勉強はつまらない。楽しくない。
    なぜなら、勉強とは本当に欲しい物・なりたい自分になるための「手段」だから。

    立派な家を建てるために釘を打つ
    その釘打ちの練習をしているのが学校でやる勉強。

    本当の勉強は大人になってからやるもの。
    子供は、まだ自分の得意不得意や好きなものが分からないから。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    勉強は楽しくなくていいんだよ、と冒頭から言ってくれているのでさっぱりと気持ちがいい。
    かといって「やらなくてもいい」とは言わない。
    大人になって楽しく生きるために、やっぱり勉強はやらないといけないものなのだ。

    森博嗣さんの経歴に全く無知だったけど、
    国語が苦手だったなんて驚きだ。
    あんなに頭がいい人でも、苦手な勉強はあったのだ。嫌だったけどやってきたおかげで、小説家という仕事ができる。
    説得力がある。

    森さんのお父さんの「人に勝つな」という教えも面白かった。
    結果、森さんは競争に勝つより自分の好きなことを極めることに魅力を感じるようになる。


    勉強はなんの役に立つのか?
    何から勉強すればいいのか?
    どうやって勉強するのか?

    これらは全て自分で考えるのが勉強の第一歩。
    人から教えられるものではない。
    教えられる勉強は長続きしない。

    それよりも大人が自分の勉強をもっと楽しんでいる姿を見せよう。
    それが1番の教育になる。

    もうド正論。
    その通りです、と平伏しました…

  • “勉強が楽しい”という感覚が芽生えてきている頃にこの本を読めてよかったと思う。

    自分のもつ勉強というものが楽しいというイメージと、周囲の勉強へのイメージとの齟齬が緩和された。非常に鮮やかな文体で解き明かす森博嗣ならではのやり方が好ましい。
    独学を続けることを後押ししてくれる一冊だ。そして、繰り返し読むことで子どもたちに勉強の本質を伝えられる大人でありたい。

  • おお〜、さすが教授。
    ミステリと同じように理路整然としている。
    ほとんど同意できないけど(えへへ)
    いろいろな価値観があるってことさ。

    あ、大学の講義で
    学生に質問を考えさせる授業ってのは
    すごいな!と思いました。
    何を問うかを考えると
    自分の理解度がどこまであるか
    測れるってことですね。

  • 「なんで勉強しなくてはいけないのか」という問いは中高生くらいまでは多くの学生が胸に宿す疑問だと思います。また大学生以降も「こんなの意味あんの?」「んなの将来使わないでしょー」という発言に形を変え、同質の疑問を引きずることもしばしばだと思います。

    そんな、子供に問われて困ってしまうような疑問について、私の人生の中では一番しっくりくる回答を本作で頂いたと感じました。

    ・・・
    その回答は本作のまえがきで早々に出てきました。ちょっと長いですが引用です。

    「さて、(子供が)明確な目的を持つためには、少なからず人生経験が必要だろう。世の中には何があるのか。自分の可能性はどの範囲なのか。そういったことは、二十年くらい生きていないと理解することができない。つまり、夢を見るためには、最低限の基礎的なことを学ぶ必要がある。
     そうしたうえで、自分はこれがしたい、というものを見つける。それからが、本当の勉強の始まりである。もう、そうなれば「楽しさ」というエネルギィによって、たとえ誰かに止められても前進し続けることになるだろう。
     したがって、勉強は大人のためのものである。子供が学校で習っているのは、大人になってから本当に楽しい勉強ができるための基礎体力をつけているようなものだ。
     本書は、子供向けの本ではないし、子供に勉強させたい親が読んでも、ほぼ意味がない。もし子供に勉強させたかったら、まず親が勉強すること。親が勉強に熱中している姿を見せること。そうすれば、「なにか楽しいことがあるのだな」という雰囲気が子供に伝わるはずである。教育とは、本来そういうものではないか、と僕は考えている。(P.31-P.32)

    つまり子供の勉強は基礎体力作り、本当の勉強は自ら興味を持って取り組むもの。自分が好きで勝手にやることこそが勉強、とまあこういうことですね。

    ・・・
    こうして始まった氏の勉強論には、確かにしたりしたりと膝を打つ内容が随所に見られました。

    曰く、勉強というのは人の能力を高めるすべての行為。人それぞれにやり方があり、机の勉強だけが勉強というわけではないこと(1章)。曰く、勉強は勝つためにするのではないし、受け取り手の意欲がない限り成立しないのが教育であるということ(2章)。曰く、勉強の価値とはその内容の獲得ではなく、その過程で自己を知ることができるということ(4章)。曰く、得意不得意は問題ではなく単なる他人との差でしかないこと、また不得意・苦手の名の下で教科を排除するとその方面の可能性を失ってしまうこと(6章)、等々です。

    ・・・
    こうした氏の意見は、近年のハウツー本にあるような嫌な勉強をなるべく効率的に・そして嫌ではないように自己暗示的に言い聞かせる?かのごときメソッドとは対極にあるかもしれません。それらで述べられる勉強の意義とは大抵は実利的・近視眼的であろうと思います。別にそれが悪いわけではありませんし、そもそも目指すところが異なるので比較すること自体間違いかもしれませんが…。

    他方、好きになってしまい自発的に学ぶ行為こそ勉強という方向であることを考えれば、本書の先には読書猿氏のごとき「どのように学ぶか」という独学の地平が開けることと思います。

    ・・・
    ということで元名大教授の勉強論でした。

    語り口が平易で分かりやすく、内容も子供から成人にまで広く関わりのあるものだったと思います。その点では、筆者自身子供向けではないと言及されているものの、勉強が嫌いなお子さんから再度勉強を始めてみたいという大人の方まで、ひろく読書に値する作品であると感じました。

全120件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宇佐見りん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×