齋藤孝のざっくり!世界史

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396613167

感想・レビュー・書評

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  • とても読みやすくてあっさりと読めました。

    初心者向けで丁寧に要約してザックリと解説してくれてます。宗教や資本主義、社会主義などのわかっているようで「なんとなく」がわかる本だと思いました。

  • 分かりやすく、面白いのであっという間に読み終わった。

  • 出来事の羅列ではなく、その背後にある「人間の感情や欲求に関わる五つのパワー」を軸に世界史が語られている。領土拡大の野望について自分がちっとも理解できないのは、環境や教育のせいだけでなく、その野望が男性特有のものだからなのかしら。たしかに「覇」の文字の魅力はよく分からない。社会主義もファシズムも最初は楽園を目指していたはずなのに、大量虐殺という地獄を生んでしまった。コーヒーの話は新鮮で面白かった。眠らない、理性の飲み物。冴えた頭をフル回転させて近代化へ突き進む。参考文献の臼井氏の著書を読みたい。

  • ざっくり読めてざっくり世界が分かった。
    宗教や政治、経済それらが影響しあって今があるのだなと思った。

  • 標題どおり、モダニズム、帝国主義、欲望、モンスター、宗教の五つのテーマでざっくりと世界史をまとめたもの。
    高校などでは確かに記憶主義で教えられ、その背景を疎かにしがちであるだけに、こういった大きな潮流で世界史を読んでいくことには一定の価値はあると思われた。
    しかし読みやすくするためか、あまりにも大まかな捉え方をしているところ(五大テーマはいいとして)が多々見受けられたところは、否めないか。
    まあテーマ通りと言えばその通りなのだから批判もあまりないものであるかもしれない。

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 第1章 西洋近代化のパワー―モダニズムという止まらない列車 (近代化パワーの源流はどこにあるのか;資本主義はキリスト教から生まれた ほか);

    第2章 帝国の野望史―なぜ君主たちは領土を拡げつづけようとするのか(人の野望が生み出した「帝国」という制度;成功する帝国、失敗する帝国 ほか);

    第3章 欲望の世界史―「モノ」と「あこがれ」が歴史を動かす(世界を二分する近代の原動力―コーヒーとお茶;世界史を走らせる両輪―金と鉄 ほか);

    第4章 世界史に現われたモンスターたち―資本主義・社会主義・ファシズムが起こした激震(現代世界を支配する資本主義;社会主義という二十世紀最大の実験 ほか);

    第5章 世界史の中心にはいつも宗教があった―神様たちは本当に世界を救ったのか?(世界史を動かすユダヤ・キリスト・イスラムの宗教三兄弟;暗黒なんかじゃない!見直される中世 ほか)
    ===================

    <b>”近代化パワーの源流はどこにあるのか</b>”

    P13
    なぜ、アメリカやヨーロッパから強い圧力を感じるのでしょう。
    <b>その「パワー」というものがどこから生まれてきているのか、力の源泉はどこか、を考えてみると、「近代化」というものの姿がよく見えてきます。</b>

    P14
     <b>実はヨーロッパの柱とは古代ギリシア・ローマなのです。</b>
    P15<b>((略))(その)地中海文明の特徴は、「加速せずにはいられない」というものでした。</b>

    P17
     <b>古代ギリシアを理解するキーワードは、なんといっても「直接民主制」です。</b>

    (ローマは建国時は、王を頂く部族的な国家だった。が、その王も選挙で選ばれた。が、王を追放した後、共和制となった。その時代が「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」とよばれ、もっとも繁栄した時代となった。その後、専制君主化し、帝国も崩壊する)

    P21
     (ソクラテスが死刑となった)背景にはギリシアの民主主義が崩れ、衆愚政治になってしまったことが挙げられます。

    P22
     <b>(一時は全世界を制覇した)ローマが、392年にキリスト教を国教としたことから、帝国の主が皇帝から神(その代理人としての教皇)へと移っていってしまいます。</b>

    P24 しかも、キリスト教の神は唯一絶対の創造主であるため、人間世界と霊的世界では、霊的な世界の方が上位にあとされ、人間の合理性や明晰性、努力をして何かを生み出す自由な発想といったものが全部押しつぶされてしまうのです。(暗黒の中世)
     ですから、この間の世界史の主役はヨーロッパではありません。(略)イスラム世界であり、アジアのモンゴル帝国なのです。
     この長い中世の沈黙を打ち破るきっかけ、抑圧されたヨーロッパの加速性が爆発するのが、「ルネサンス」であり「宗教改革」です。

    P25
     <b>この事件(「カノッサの屈辱」)が意味しているのは、ローマ皇帝が持つ世俗的権力より、教皇が持つ宗教的権力の方が当時はまさっていた</b>ということです。

    P26
     ルネサンスが花開くことができたのは、<b>古代ギリシア・ローマという「お手本」</b>があったからです。

    P28
     「イスラムがなぜ西欧を嫌うのか」というはなしなのですが、それは、<b>キリスト教と近代がヨーロッパでセットになってしまっているから</b>だというのです。キリスト教は(略)純粋に宗教として広がっているのではなく、近代化というヨーロッパの気質とセットになったものとして広まっています。
     ここに、政教分離の西欧と政祭一致のイスラムという対立構造が生まれます。
     つまり、イスラムが西欧を嫌う根源は、神よりも人間を重視する近代文明に対する反発に起因しているということです。

    P29
     (近代化したからといって、逆に不自由になったのではないか)こうした疑問を唱え、「モダン(近代)には限界があった。人間はもっと自由でいいのではないか」と主張をしたのが、いわゆる「ポストモダン」というものなのです。

    <b>”資本主義はキリスト教から生まれた”</b>

    P31 (中世の)当時の教会は、神の代理人という立場をいいことに<b>「神」を独占</b>していました。なぜそんなことができたのかというと、<b>『聖書』がラテン語で書かれていて、そのままでは一般の人は読むことが出来なかったから</b>です。(それをいいことに贖宥状をうって、金もうけをしていた。ルターはその支配から脱却するために、<b>聖書のドイツ語訳</b>を行った。)
    P33
     私たちは「権力」といったとき、軍隊を持っていたり、資本を握っていたりということを考えますが、本当はそうではないのです。<b>現実には「知を独占すること」が権力そのものなのです。</b>

    P34
     教会はわかっていて、お前たち民衆はわかっていないというのが、教会と人々との関係でした。そこには、対話的な構図も弁証法的な思考のダイナミズムもありません。(一方、古代ギリシアの特にソクラテスが目指した「知」は対話や弁証法的な思考であった)

    P35
     そうした知の独占が教会の偽善的権力構造の温床となっていることを見抜き、<b>民衆に知を取り戻そうとしたのが、ルターの宗教改革の意味だったのです。</b>

    P36
     宗教改革によって神と直接向き合えるようになったはよかったのですが、その一方でこうした<b>神(もしくはイエス)と自分という一対一の厳しさ</b>に耐えられなくて、精神の病にかかる人もたくさんいました。

    P37
     ヴィクトリア朝の時、女性たちのヒステリーがあまりにもひどいので、その原因を同時代の精神分析学者フロイトなどが分析していますが、その原因は厳しすぎる「禁欲」による抑圧だと述べています。

    P40
     それ(マックス・ウェーバーの著作)によれば、近代的資本主義を発展させたのは、プロテスタント、(略)ルターの少し後に登場するカルヴァンの神学を受け入れた国から発展していったといいます。
     (略)ウェーバーはカルヴァンの説いた「予定説」と資本主義が深くかかわっているからだと述べています。

    P41
    (「予定説」では救われるか否かはあらかじめ決まっているとする。)それでも懸命に善行を積むのは「全能の神が善行をなすような人間を救わないわけがない」という神への信頼があるから。つまり、彼らは善行とされること、つまり禁欲的生活をし、善行を積み、一生懸命働くことで、そんな自分は救済されるべき人間だという確信を得ていたということです。

    P42
     良くも悪くも、いまの世界は資本主義がリードしています。
     それがわかっていてもいあだに資本主義が加速させた近代化を受け入れることができない国がたくさんあります。彼らが受け入れないのは、資本主義のシステムというよりも、資本主義を支えてきたまじめで勤勉で、合理主義的な(モダン)マインドです。

    <b>”軽視された近代の「身体」”</b>

    P45 西洋近代では、身体の感覚よりも考えること、つまり身体活動よりも精神活動が重要視されます。デカルトの「我思うゆえに我あり」という言葉にも、そうした「頭でっかち」なものが感じられます。

    <b>”遠近法が近代に入って発明されたのはなぜか”</b>
    P48 近代的な考え方には、キリスト教、特にプロテスタントの禁欲的な教えと繋がるものがあります。つまり、近代の身体軽視もまた、キリスト教的価値観の延長線上に生まれたものです。(ex セックス)
    (略)ところが、この時代に、一つだけ優位になった身体感覚があります。
     それは「視覚」です。
     近代は、感覚的なもの、特に触覚的なものの価値が下がる一方で、視覚だけは優位になっていきます。(略)
     そうして視覚優位の極みとして生み出されたのが、実は「遠近法(パースペクティブ)」なのです。

    P50
     あれも、ルネサンス期における一つの解放なのではないでしょうか。
     なぜなら遠近法は「人間の視点で見たままでいいのだ」という人間視点の肯定でもあるからです。
    <b>
    ”「視線」の支配が権力につながる―フーコー『監獄の誕生』”</b>
     中世において「聖書」という知を支配することが、すべてを支配する権力につながったように、<b>近代においては「視線」を支配することが権力につながっていきます。</b>
     (略)その一つが人工衛星です。
     (略)人工衛星を使って監視すれば、世界中のだれが何をしているか、誰と誰があっているのか、そうしたこともすべてわかってしまいます。そして、そうした情報が手に入るということは、人を支配できるということです。


    <b> ”情報が「支配する目」に取って代わった現代社会”</b>
    P61 現代の様な情報化社会では、<b>より多くの情報を得た人が勝つという図式</b>が出来上がってしまいました。
    P62 <b>近代は(略)「情報を握ること」が、権力の中心になってきている</b>ということです。




    <b>第2章 帝国の野望史</b>
    P68
     <b>独立運動というのは、一言でいえば、「異民族支配で失われた民族の誇りと存在証明(アイデンティティ)の回復」なのです。</b>
    P69  (中国の異民族支配の例を取り)こ<b>の「アイデンティティをめぐる戦い」は、世界の帝国史を読み解く上で、非常に重要な鍵の一つです。</b>

    P70 <b>”帝国の野望の根源は「俺様に跪け!」”</b>

    P74 ”際限のなさによあって自滅する帝国―アレクサンドロス大王というアイドル”
     (子どもの陣地遊びのような)この「行けるところまで行きたい」という男ならだれもが持っている欲が、「俺様に跪け」と一緒になることで帝国を生み出していくのですが、この欲望には際限がないのです。
     <b>そのためほとんどの帝国は、領土を広げること自体が目的化していき、結局はそれが原因で崩壊していきます。</b>

    P79 ”成功する帝国、失敗する帝国”
     ”ギリシア時代から続く「演説」の伝統”
    (アメリカの大統領選でいかに演説が重視されるかについて)古代ギリシア・ローマの社会には、公共の場における発言のパワーの強さによって信任されるという、民主主義の基本的な形があります。それが「演説」という文化を作ったのです。
     それは、せいようはそれだけ<b>「言葉」にたいする信頼がある</b>ということでもあります。

    P83 ”帝国とは何か―エジプト王国とローマ帝国の違い”
    (エジプトも日本も太陽信仰)
     日本の場合は、太陽神の子孫である天皇が、神官として豊穣の神と交わることで、国の安寧が約束されると信じられていましたし、古代エジプトにおけるファラオの場合は、魂の不滅信仰などもありますが、やはり日本の天皇同様、太陽神の化身であると同時に神官でもありました。
     こうした神官が支配するシステムは、統治システムであると同時に信仰の対象でもあるので、人々には一緒に宗教的な事業をしようという一体感が生まれます。この一体感は、「俺が、俺が」と自己主張することを是とする西洋的感覚とは異なるものです。

    P85 こうした(エジプトや日本のような)根底に宗教がある文化と、西洋の民主制、演説のうまいものを選ぶという文化では民衆が求めるものは根本的に違うのです。

     それともう一つ、エジプトとローマで違っていたのは、国土の豊かさです。エジプトは基本的に自国が豊かなので外に行く必要性がありませんでしたが、豊饒な土地を持たないローマは逆にどんどん拡大しています。
     この「外への拡大」こそがローマを「帝国」にしました。
    (略)現在、「帝国」という場合、<b>その定義の最も大きな特徴は、拡大により複数の民族を支配するということ</b>にあります。

    ”ローマ帝国崩壊の理由”
     (もともとローマは信仰の自由が保障されていた)
     ローマの寛容さは、いろいろな神を信仰するそれぞれの信徒間の寛容さでもありました。それに対し、他の神の存在を認めないキリスト教は、神は自分達の信じる神様だけというのですから、それはトラブルのもととなります。
     <b>こうしたキリスト教とローマの不協和音は、帝政末期に皇帝の権力を強化するために肯定を神格化するようになると、さらに大きくなります。</b>これが大規模なキリスト教弾圧につながったのです。
    ところが、その後ローマの態度は一変します。(392年に国教化される)
     弾圧しても弾圧しても精力の衰えないキリスト教を敵に回すのではなく、とりこむことで皇帝の権威を高めようとしたのですが、その目論見とは逆に、このころからローマは本格的に衰退していきます。そして、<b>キリスト教を国教化して間もない395年、帝国は東西に分裂</b>してしまうのです。

    P90 <b>武力で制圧した周辺諸国を俗衆とし、帝国支配に組み込んでいくというのがローマの支配のやり方です。</b>
    P91 <b>周辺の属州は、そうした(政治家が市民権をもつ住民の人気を得るために金をばらまいた、その)中央の浪費を支えるために、より過酷な義務が課せられるようになっていったのです。</b>
    P91 <b>中央と周辺における搾取とメリットのバランスが、帝国支配の明暗を得分けている</b>と言えるでしょう。

    ”「イスラム帝国」の異質さ”
    P92 (イスラム帝国は)<b>帝国の野望に取りつかれた「人」が領土を拡大していくのではなく、イスラム「文化」が広まっていくという特徴</b>がみられます。
    P94 <b>こうした(信徒であれば非アラブ人でも非課税となる)異民族を区別しない平等な税法がこの後のイスラム諸王朝で適用されたからこそ、イスラム教は世界中に拡大し、イスラム帝国の繁栄を支えることになるのです。</b>

    P98 やはり、力だけで征服してもダメなのです。帝国を存続させるには、被征服民にも多少のメリットを感じさせながら、うまく搾取していくシステムが必要だということです。

    P103 <b>”死後も生き続けたかった皇帝たち”</b>
     <b>一族による現世的な利益の分配と、自分の遺伝子による支配という2つが多くの問題を生み出している</b>。

    P106(男には自分の遺伝子を残したいという欲があり、豊臣秀吉やナポレオンなど有能であった人物も、自分の子供に帝国を継がせたいという思い芽生えるにつれて、その人を重んし、結果バランスを崩していく。なので、)
     世襲がうまくいくのは、安定期だけです。

    “現代を牛耳る「見えない帝国」“
     現在日本もグローバリズムという名のもとに、市場開放を迫られていますが、(略)早い話が、俺の餌食に慣れ、俺にお前を食べさせろということなのです。(略)今は武力ではなく、お金の力で侵略する時代なのです。

    <b>第3章 欲望の世界史</b>

    <b>”世界を二分する近代の原動力―コーヒーとお茶”</b>
     
    P114  今も昔も人々は、物に憧れを抱き、流行に左右されることで、生活や世の中まで変えてきました。
     
     (スタイリッシュで少し敷居の高い感じのするイメージを作り出して成功したスタバ)<b>昨今の「グローバリズム」にも似た、一種の圧力</b>を感じてしまいます。

    P116 (スタバが成功したのは)「コーヒー」は近代の持つ「目覚めている」感じと非常に相性がいいからです。

    P124 コーヒーが持つ覚醒的な意識のもと、人と情報が集まるようになり、時代を動かす原動力を生み出す場となっていきます。(略)<b>さらに、コーヒーハウスは集まった情報を取りまとめることで、情報こそが力になっていくという近代的な仕組みをも生み出していきます。</b>

    P159 何十万円もするワインと2000円のワインの区別がつかないのに、後者の人が今日はお祝いだからと)<b>二万円のワインを飲むということは「記号を消費している」ということです。</b>
     人々が「ブランドの持つパワー」を認め、それを好むようになると、記号はそれ自体が実質上の価値をもつようになっていくのです。

    P166 ”世界史の「中心」はどこにある?”
    P168 <b>世界史を大きな流れとして理解する場合、国家の繁栄を「センターの移動」としてとらえていくことはとても大切です。</b>
    P169 <b>近代以降は、経済的センターと文化的センターあはわかれています。</b>(略)
     経済のセンターが移動すると、残された人々はただ斜陽感に包まれますが(ex日本)、文化芸術のセンターだった場所には、(略)文化という遺産が残され、人々はかつての栄光を自らの誇りとして大切にすることができるのです。
    P170 歴史としてみたとき、文化芸術のセンターであったことはブランドとなり、経済のセンターであったことはブランドにはならないというのは、とても面白い現象です。

    <b>”第4章 世界史に現われたモンスターたち”</b>
    ”マルクスが見抜いた資本主義の本質”
    P177 資本主義の問題のヒットは「貧富の差」です。
    P177 (マルクスが『資本論』の中で見抜いた)そのポイントは<b>「資本は自己増殖を行うか知の運動体である」</b>というものでした。

    P179 (さまざまな問題がありながらも残っている資本主義、かたらやそれに対抗しようとした共産主義、社会主義が倒れたことを踏まえ、)資本主義と社会主義には、根本的な違いが一つあります。
     それは、<b>資本主義が人間の本性から出てきたいわば自然なシステムであるのに対し、社会主義は人工的に作り上げられたもの</b>だということです。
    (社会主義は人間の理性を信仰しすぎたのかもしれない。)

    P181 <b>資本主義が止まらないのは、欲望が止まらないからです。</b>

    P184 ”「資本主義の敵は自分の中にある?」”
     資本主義の本質は、常に差異を生み出し、ものごとを差別化していくことで価値を生み出していくということにありました。このため資本主義社会は、モノを消費していく「欲望肯定社会」となっていきます。
     そう考えると、資本主義社会の本当の敵は、社会主義や共産主義といったイデオロギーなどではなく、<b>「欲望の冷え込み」</b>なのかもしれません。

    <b>”社会主義という二十世紀最大の実験”
    ”「マルクス主義が知識人へのリトマス試験紙だった時代」”</b>

     (左翼思想家のブルデューは資本はお金以外にもあり、)<b>「社会関係資本(いわゆる人脈)」は、お金としての資本以上に大きな影響力をもっていると考察しました。</b>
    (彼はまた「文化資本」ということもいっている。趣味さえも階層で差別化され、資本主義によって生み出される階層は金銭面だけではない)

    P199 ”「『資本論』という迷宮から生まれた社会主義という名の宗教」”
     <b>マルクス主義の基礎理論である史的唯物論のポイントは、社会主義に移行するというのは、社会が原始共同体から奴隷制、封建制、資本主義へと進化し、発展してきた結果として必然なのだ、というところにあります。</b>

    P200 確かに、「人は経済的なポジションや収入によって考え方が変わってくる。だから、文化は経済的な基盤によって変わってくる」というのは、なかなかの発見です。
     <b>マルクスがそういうことを言うまでは、人はみな、自分が考える内容は自由だ、自分が選択してそう考えている、社会やものの見方すべてが自由に選びとったものだ、と思っていました。</b>

    P200(フランス革命ではブルジョアは解放されたが、それでもまだ足りない)<b>「まだまだ多くの不自由な人々が残っている。彼らの自由はどうなるのだ」とマルクスは考え、その残された多くの「プロレタリアート」による世界革命の必然性を訴えました。</b>
     プロレタリアートの団結・連帯が歴史を変革するという革命のイメージが、多くの貧しい人の心をつかみ、世界中で大ヒットしたのです。
     (略)
     マルクスが書いた膨大な書物の中から、「プロレタリアートの独裁」としてわかりやすく、理想的な部分だけを示した「マルクス・レーニン主義」がソ連という国の根幹になったのですが、そこには教条的な思い込みが感じられ、何か宗教めいた匂いがします。
     だからこそ、スターリンは既存の宗教を弾圧したのでしょう。そして、自らは科学的な学問という外見で身を包んだことが、よけいに本質を見えにくくしていたのです。

    P201 ”「平等」と「独裁」は紙一重”
     (社会主義の大きな問題点の一つは)<b>平等を目指す社会主義が、なぜ暴力による独裁と結びついてしまうのか</b>

    P202
     内部に絶対的な権力者が生まれ、それに忠実であることが求められ、従わないと「総括」と称して暴力による思想改造が行われる。こうした出来事は、社会主義国の縮図のようなおのでした。

    P203(世界史で、自国民を最も殺したのは?との問いでのトップ3は 毛沢東、スターリン、ポルポト)彼らに共通するものは「社会主義国家または共産主義国家を目指した」という点です。(略)
     彼らのやり方を見ていると、まるで「雑草を抜いている」かのような印象を受けます。
     理想の土地にするために、自然の山の木を一度すべて伐採し、自分たちにとって有用な木だけを植林するような不自然さです。けれども、自然の森の植物を全部引っこ抜いて、一種類の木だけを植え付けようという、<b>社会主義特有の「プランテーション思想」は、人間の釈迦には根本的にあいませんでした。</b>
     最初から不可能なことを無理やり行おうとするから、力による粛清が必要になり、結局はそれが自らの首を絞めることにつながり自滅していったのです。

    P204<b>”「ソ連社会主義の失敗を予言した人物とは」”</b>
     (ロシア革命が成功した当初から、マックス・ウェーバーは)<b>官僚制の必然的な結果として社会主義は滅びる</b>といっています。
     一国社会主義ととして歩み出したソビエトでしたが、その<b>最終的な目標はあくまでも「世界革命」</b>なので、それを実現するためコミンテルン(第3インターナショナル)を設立し、世界各国に働きかけ、共産党を誕生させていきました。(略)こうした社会主義化にさらに拍車がかかるのが、第二次世界大戦後です。ソ連軍の追撃によりナチス・ドイツから解放された東欧諸国で、次々と共産党政権が誕生したからです。(略)社会主義国の拡大を恐れたアメリカは、1947年に反ソ反共政策である「トルーマン・ドクトリン」を発表します。
     (その後、アメリカが中心の「NATO」対ソビエト中心の「ワルシャワ条約機構」が結成し)こうして、20世紀末まで続く「東西冷戦状態」が確立されていったのです。

    P208
     (ウェーバーの)<b>社会主義が歴史の必然なのではなく、官僚制が歴史の必然だった</b>というのは、あまりにも慧眼です。実際、官僚制は時間の経過とともにダメになっていきます。(官僚制は実力ではなく、階級によってポジションが固定化される。固定化され強化された官僚制はみな自分のポストを守ることに汲々とし、務めを果たさない。で、腐敗していく。)
    P209
     資本主義では、事業競争によって、あちこちでつぶれたり業績を伸ばしたりと、つねに変化の中にあるのでバランスが取れます。それが社会主義では、固まる方向に行ってしまう。

    P211
     ウェーバーは、資本主義に官僚制化という内面がないとは言っていません。<b>資本主義だってもちろん官僚制化し、自由を圧迫する面は持っている</b>と述べています。ただ、<b>社会主義では、それがもっとひどいことになるだろう</b>といっているのです。

    P212
     資本主義を資本家による搾取だとして批判して、プロレタリア独裁の理想国家を創ろうとした結果が、資本主義以上のそれどころか史上最大の「搾取の国」を生み出してしまったのですから、まさに皮肉としか言いようがありません。
    P213
     (社会主義がうまくいっているように見え、ソビエトが宇宙開発に邁進できたのは)人々から搾取したものを、民間には還元せず、ひたすら軍事や宇宙開発に捧げたからではないかと思います。これだけの技術を持ちながら、国民の生活はよくなりませんでした。


    ”危機が生んだファシズムという魔物”
    ”「ナチスのファシズムを受け入れた「普通の」人々」”
    P216
     (山口定氏の「ファシズム」では)
     ファシズムの思想は、
    (1)まず第一に、その国民社会が陥った深刻な統合の危機をナショナリズムの激しい紅葉と強烈な「指導者」崇拝によって克服しようとする試みである。
    (2)ただ、ファシズムが単なる保守運動と異なるところは、たんなるナショナリズムと「指導者」の称揚にとどまらず、既成の伝統的支配体制のかなり思い切った―しかし権威主義的な―再編成を求めることにある。そしてその場合の再編成の構想は、マルクス主義的社会運動に対する激しい敵対と規制の伝統的支配層への反発に由来する独特の2面性(もしくは両義性)を示すことになる。
    (3)そしてそうなるのは、ファシズムの思想が、その国の支配層の危機意識ばかりでなく、政治的・社会的没落の危機に印した中間的諸階層の危機意識をも強烈に反映しているからである。
     (最終的には100%の議席を確保するナチ党だが)そのスタート地点において、どこが支持母体になったのかというと、先ほどの山口氏の考察の通り「中間層」といわれる人々でした。

    ”「ファシズムを支える何でも反対の精神」”
    P220 <b>そのファシズムの特徴は何かというと、一言でいうと「反対」なのです。</b>
    (社会主義にも、資本主義にも、国際協調にもなんにでも。だけど)
     なぜ反対なのかという明確な理由はありません。
    P221 では、そんなファシズムがなぜ指示されたのでしょう。その理由として、山口氏は次のように続けます。
    ?心情、感性、直感、行動、暴力の理性に対する優位を説く「生の哲学」と、
    ?差別を合理化し「強者の権利」を説く「社会ダーウィン主義」という二つの要素を混合したファシスト特有の人生哲学が、合理主義と啓蒙主義、要するに「フランス革命の精神」に対置される。

    P222 19世紀の後半になると、理性よりも人間本来持っている感情や直感といった能力の優位性を説く、その「生の哲学」が思想界で少しづつ注目を集めるようになり、20世紀にはいると、ポストモダンの潮流と共に人々の間に新しい時代の哲学として支持されていきました。しかし、感情を理性の上に位置付けるというのは、ある意味、人間のもつ暴力性を肯定することにもつながっていったのです。

    ”「「もてるもの」と「持たざるもの」との戦い」”
    P225 ファシズムでは、国民社会が陥った深刻な統合の危機を、強烈な指導者によって克服しようとします。そこにはナショナリズムの激しい紅葉があり、同時にその指導者を崇拝することによって生み出される一体感がありました。
    (ドイツは第一次世界大戦の敗北によって、海外植民地の全面放棄を余儀なくされる。植民地は安価に買いたたける原料地であるとともに、うちるけることができる消費地でもあった)
     帝国主義が世界中を支配していたこの時期、植民地を持たないということは致命的な事でした。そして、第二次世界大戦を引き起こしたドイツ、イタリア、日本に共通していたのが、この「植民地がない」という状況だったのです。
     ですから、第二次世界大戦というのは、実は「ファシズムVS資本主義陣営」の戦いというより、原因から考えれば、帝国主義競争における先行組と遅れた組の戦い、つまり<b>植民地をすでに持っていた国灯っていない国との戦い</b>だったのです。

    <b>”「ヒトラーは世界最高の宣伝マンだった?」”</b>
     (彼の著作「我が闘争」より)
    P228 宣伝はすべて大衆的であるべきであり、その知的水準は、宣伝の対象となるべき人々の中で最低級に位置する人でも理解できる程度に調整すべきである。したがって獲得すべき大衆が多くなればなるほど、純粋の知的水準それだけ低くしなければならない。
    P229 ヒトラーは広告、宣伝、そして大衆というものを、恐るべきことに完璧につかんでいました。

    <b>”「チャラにしたい人のここをと掴んだファシズム」”</b>
     アメリカが一人勝ちする世界の陰で、敗戦国ドイツは精神的にも経済的にもアイデンティティーを奏してうしていきました。そこにヒトラーが国家や民族というアイデンティティをガンとはめ込んだから、人々は一斉にナチスになびいてしまったのです。

    P232 <b>アメリカが一人勝ちし、最も夫妻の大きかったドイツをこれ以上にないほどの窮地に追い込んだからこそ、ファシズムのようなモンスターが誕生してしまった</b>のです。
     大恐慌とインフレと債務超過によって苦しみすぎたドイツ人は、簡単に言うと、全部「チャラ」にしたい、今までのことを全部なしにしたいと思うようになっていきます。(略)当時のドイツ国民にとってナチスを支持し、参加することは、まさにすべてをチャラにする人生のリセットボタンを押すようなものだったのです。

    <b>”「世界はほんとうにファシズムを倒したのか」”</b>
     <b>ヒトラーはもともとドイツ国民の中にあったユダヤ人に対する差別意識を拡大する事によって、仮想敵を作り出し、それを排除することで、優等民族の高揚感を作り出すとともに、団結力を高めていった</b>ということです。(仮想敵を作り出し、団結を図ろうとする姿はどこにでも今も見られる)
    ============================
    第5章 世界史の中心にはいつも宗教があった

    P242
    ”世界史を動かすユダヤ・キリスト・イスラムの宗教三兄弟”
     キリスト教は、「愛」の宗教であるにもかかわらず、このように帝国の野望と一体化し、イスラム教は、寛容な側面もありながら、一方で紛争の火種になっています。
     そもそも、キリスト教もイスラム教も、ルーツはユダヤ教徒いう一神教になります。
     (略)<b>ですから、この3つの宗教が説く「神」は、実は同じ神なのです。</b>

    P243
     さすがの征服者たちも、単に武力で制圧し、殺してしまうのではまずいと考えたのでしょう。彼らはキリスト教を広めることで、未開の人々に「神の救い」をもたらしたのだと、征服の大義名分にキリスト教を使ったのです。

    ”「世界の神話に共通する「人知を超えたもの」の存在」”
    P249 宗教からの脱却を図ら朗としたのが近代なら、<b>現代は、その揺り戻しとして、目に見えない力を、中世のような盲目的な信仰とはまた違ったkたちで受け入れようと試みている時代</b>だといえます。
     その試みのひとつが、自分の心の内部に人知を超えたものを発見した精神分析学です。

    ”「宗教の時代よりも神話の時代に帰れ」”
     キャンベルが言うように、神話世界が人間に共通する欲求の表れであり、それが神と人が共生する穏やかな世界であるなら、今、宗教への欲求が高まりつつある私たちが目指すべき世界は、キリスト教やイスラム教のような一神教的世界ではなく、多くの神々を擁する神話の世界にあるのだと思います。

    ”「存在の耐えられない不安が宗教をよみがえらせている」”
     一時期人類は、自分たちで作り出した「科学」が「神」に変わって自分たちを安定させてくれるのではないかと希望を抱きましたが、最近になって、その科学が自分たちの住む地球環境をおびやかすという、新たな不安材料を生み出してしまったことに気づきました。その結果、科学や理性に対する信仰が揺らいでしまったのです。

    <b>”暗黒なんかじゃない!見直される中世”</b>
    ”「身体を支配して人間を管理した中世キリスト教会」”
     (セックスに関することはおろか、立ち居振る舞いまで細かく規定して)<b>このように身体を支配するということは、実は心を支配する近道なのです。</b>

    <b>”「誤解されたルネサンス」”</b>
    P268 (ルネサンスは12世紀から起こった、とホイジンガはした。)最大に理由は「十字軍」です。(略)(それにより)<b>ヨーロッパにアラビアの文化がどっと入ってきた。これがルネサンスのきっかけになったというのです。</b>

    P274
    <b> 教会の支配がまだまだ盤石な12世紀ごろから、ヨーロッパでは十字軍を通してアラビア文化が流入し始め、それによって実際には、中世ヨーロッパの各地で、ルネサンス的な動きが少しずつ芽生えていったのです。</b>

    <b>”「ムスリムは世界中どこにいても家族」”</b>
     キリスト教は、聖と俗にわかれた聖の部分だけを受け持ち、俗の部分、つまり経済活動や政治活動は別の権力が担当します。(略)
     でも、イスラムは違います。
     ムスリムに載ってのイスラム教は、精神を救うという意味での「宗教」にとどまらず、共同体そのものなのです。(略)そのその聖と俗を分けるという発想自体が存在しないのです。

  • ★神なるものが支配していた中世。神よりも人間を重視する近代。イスラムが西欧を嫌うのはこの世俗対宗教の構図がある。という話はなるほどと思った。

  • さを兼ねる⁉らしら

  • マルクス

  • 世界史の本を読むきっかけになた本
    世界史を形作るテーマ
    西洋の近代化のながれ
     古代ローマの理性的な立憲制~中世キリスト教を端とした停滞期~ルネサンス・フランス革命・産業革命による世界の席巻、帝国主義(植民地支配、コーヒーやお茶の栽培)~戦争とファシズム~近代
    宗教と国家
     ユダヤ教からはじまる、キリスト教・イスラム教。インドブルジョアから始まる仏教
    資本主義と社会主義
     社会主義の没落は、官僚主義にある。資本主義は、選択されずにただ残っただけ、コントロールしないものだから続いている感覚。
    世界氏の語る上で重要なポイントが、結構いくつも出てきておもしろい

  • 2014/9/7図書館から借りてきた。

  • 彼の文体は読みやすいから好き。
    けど、彼の歴史感には疑問が残る。
    国語科教育者で売れっ子作家の限界か?

    池上彰の文体より読みやすいので、
    本に慣れていない人にオススメ。

  • *イスラムが西欧を嫌う根源は、神よりも人間を重視する近代文明に反発している。
    *知を独占することが、権力そのものである。
    *プロテスタントは仕事を天職ととらえ、一生懸命働くことが神への奉仕に繋がると考え、稼ぐことに没頭する一方、禁欲的に消費を抑え、お金はひたすら貯まり、投資へとそのお金を使うから、一層事業が拡大する。
    *相手が跪く快感、魅力は絶大。男は征服欲。女は独占欲。
    *合理化の終着駅が官僚制ピラミッドの巨大な迷路であり、「未来の隷属の容器」が人間の自由を抑圧し、不自由を増大せずにはいられないという悲観的な見通しである。
    *社会主義は一度はまると二度と這い上がれない「蟻地獄」のようなもの。なぜ這いあげれないかというと、それが「正論」だからです。
    *第二次世界大戦とは「「ファシズムVS資本主義陣営」の戦いというより、植民地をすでに持っていた国と持っていない国との戦いだった。持たざる者の不満が、ファシズムの温床となっていたのである。

  • 世界がどのような影響で変容していくのか、動いていくのかを考える材料になる。ただし起きたことは結果であって、その原因は一つの見方であることを忘れずに。

  • この本の前書きに書いてある通り、高校時代に世界史を勉強した人は少ないのではないでしょうか。更に受験で選択した人は更に少ないと思います、というのも私がその一人であり、私も世界史の知識が殆どありません。

    社会人となった今、世界史を改めて学びたいと思うのですがどのように手を付けてよいのかわからない状態でした。そんな私にとって、歴史を動かす「5つのパワー:モダニズム、帝国主義、欲望、モンスター、宗教」に着目して、ざっくりと世界史を解説してくれたこの本に出逢えてよかったです。

    世界史とは異なるかもしれませんが、緑茶・ウーロン茶・プーアル茶・紅茶も、もともと同じ「茶の木」から作られていて、製法が異なる(p129)というのは初めて知りました。

    また、正統な方法で100%の議席を獲得したナチ党の支持母体が、第一次世界大戦前までは良い暮らしを続けていた「中流層」であった(p219)のを知って、ナチスが急激に成長した理由を初めて知りました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ヨーロッパの柱とは、古代エジプトを含むギリシア・ローマ、つまり地中海文明が原点である(p14)

    ・ローマが、392年にキリスト教を国教としたことから、帝国の主が皇帝から神(その代理人としての教皇)に移ってしまった、これにより分離されていた宗教と政治が深くかかわることになる(p22)

    ・宗教改革が起きた当時の欧州では、教会が神を独占していた、聖書がラテン語で書いてあり、そのままでは一般人が読めなかったから(p31)

    ・現実には「知を独占すること」が権力、民衆に知を取り戻そうとしたのがルターの宗教改革である(p35)

    ・近代的資本主義を発展させたのは、プロテスタント、それもルターの後に登場する「カルヴァン派」の強い、オランダ・イギリス・アメリカである、ドイツはルター主義が強く、プロテスタントでも遅れ、カトリック国(イタリア、スペイン)も同様、プロテスタントにおいて、世俗の職業は神が各人に与えたミッション(使命)であり、労働することが「神の栄光を増す」ことにつながる(p40)

    ・グルメブームは味覚と嗅覚、アロマテラピーは嗅覚と触覚、リフレクソロジーは触覚的なものというように、近代化が進む過程で人間がないがしろにしてしまった身体の感覚(視覚以外)を取り戻そうとしているのかも(p64)

    ・公衆の面前での表現力や演説力がリーダーを決めていくというのは、ギリシア・ローマ時代から続く西洋の伝統(p79)

    ・ピラミッドは、奴隷に強制的に作らせたものではなく、ナイルの氾濫で農業ができない時期に民衆を救済するために行われた一種の公共事業のようなもの(p85)

    ・帝国は、異民族を征服によってどんどん自国に取り入れ支配するのがポイント(p86)

    ・ローマがキリスト教に対して大規模な弾圧を行った最大の理由は、それまでのローマの多神教文化に対して、キリスト教が他の神の存在を認めない一神教であったから(p88)

    ・ローマは紀元前167年、中央の市民だけ直接税を免除した、無産市民は投票権を盾に働かずに暮らせるので退廃していった、それとは逆に属州には中央の浪費を支えるために過酷な義務が発生した(p91)

    ・ヨーロッパ諸国は植民地でのコーヒー栽培を始める、1700年にオランダがジャワで、1723年にはフランスがカリブ西インド諸島から南米にて。原住民が激減したので、アフリカに住む黒人が奴隷として西インド諸島へ運ばれた、1500万人運ばれて18世紀末には300万しか残らなかった(p127)

    ・中国茶、日本茶、紅茶も、もとはおなじ「茶の木」から作られる、違いは製法からくる、緑茶は加熱処理して未発酵、ウーロンやプーアル茶は発酵途中で茶葉を加熱、紅茶は乾燥して完全発酵(p129

    ・スペインは新大陸で金脈探しをし、労働力としてインディオを使った、過酷労働とスペイン人の持ち込んだ病原菌で人口激減、するとアフリカから黒人を奴隷として送り込んだ(p139)

    ・イギリスは自国の雑貨や銃器を西アフリカの黒人奴隷貿易業者に売りつけ、そこで得た奴隷を新大陸に連れて行って高く打った、大陸の砂糖やタバコをイギリスへ持ち帰った(p145)

    ・資本主義社会の本当の敵は、イデオロギー(社会・共産主義)ではなく、「欲望の冷え込み」である(p184)

    ・ドイツナチスの支持母体は、中間層である、中流の人達は生活は下層に落ちても「自分たちは底辺の人々とは違う」という強い階層知識を持ち続けいて、下層と団結することで社会主義革命でなく、いい暮らしをすべきと思っていた。それをうまく利用したのがヒトラー(p219)

    ・第二次世界大戦とは、植民地をすでに持っていた国と持っていない国との闘い、植民地とは、原料と市場の両方を確保しているということ(p226)

    2013年6月1日作成

  • ・ヨーロッパの柱は古代ギリシア・ローマ
    古代ギリシアのポイントは直接民主政

    投票により共同体の意思決定をしていく議会制民主主義を
    生み出したことは、当時としては驚異的
    民主主義はローマに継承される

    ローマは共和制となり繁栄するが、
    専制君主化して崩壊していく

    古代国家の多くは王国
    武力と宗教的権威を持つ王を中心とした君主政
    アジアでは最後まで民主主義は自然発生しなかった

    日本では民主主義=近代社会と思われるが、
    ルーツは古代ギリシアにあった

    ・近代化の源流
    古代ギリシアでは論理性・合理性を重視し、
    後の近代化につながる源流となる

    しかし、中世に入るとこの考えが抑圧されてしまう
    ローマがキリスト教を国教としたことから、
    帝国の主が皇帝から神(教皇)へと移ってしまう

    中世では神がすべてを創造するものであり、
    その僕である人間の創造的な活動・考えは取り締まられた。

    ・ルネサンス
    教会が重くのしかかっていた中世から脱する転換期の運動のこと
    古代ギリシア・ローマの時代をお手本として、
    人間の自由な命の輝きや生き生きとした創造力を重視

    中世の芸術は動きが少なく、のっぺりとした印象だが、
    ルネサンスを経て躍動的な人間美が描かれるようになる

    大きな意味ではこの流れは現在のイスラムとの対立につながる
    キリスト教と近代化がセットになり、神よりも人間が重視される
    神は絶対的に人間よりも上位にあるとするイスラムとは相いれない

    ・資本主義はキリスト教(プロテスタント)から生まれた
    近代化の波は古代ギリシアに端を発し、
    ルネサンス、宗教改革を経て世界中に広まっていく
    宗教改革は近代化に大きな影響を与えている

    当時の教会は神の代理人として、神を独占していた
    聖書がラテン語で書かれていて、聖職者にしか読むことができず、
    読み聞かせてくれる司祭の言葉を信じるしかなかった

    ルターは偽善的な教会支配から脱するために、聖書のドイツ語訳を試みた
    "知識を独占すること"が権力であるということ
    ルターは民衆に知を取り戻そうとした、それが宗教改革の意味である

    キリスト教は基本的には禁欲を説いているが、ゆるいきまり
    プロテスタントではゆるさが失われ、厳格な規律が求められた
    資本主義はこうしたプロテスタント世界から広がってきた

    カルヴァンの神学が強いオランダ・イギリス・アメリカなどで資本主義が発達
    ルター主義のドイツや、イタリア・スペインなどのカトリックでは出遅れた

    全能な神が善行をなす人間を救わないわけがない
    プロテスタントは厳格に、世俗の職業は神が人に与えたミッションであり、
    働くことが"神の栄光を増す"ことにつながると考え、熱心に働いた

  • 全体を通して知識のコピペ感が否めない。

  • モダニズム、帝国主義、欲望、モンスター、宗教。5つの切り口で、世界史をざっくり掴む。大きな視野で、世界史の流れを捉えると、細かい出来事の意味も見えてくる。カノッサの屈辱は、何故、屈辱だったのか?

  • テーマに沿って大ざっぱに復習が出来、読み物として楽しめた。特に第1章3節の軽視された近代の「身体」では、頭で考えることが大切な現代でも「視覚」は常に優位に立つという下りが読んでいて納得出来た。第3章でのブランドを自分に自信がないから身に付けるという一文にはドキっとした。

  • ざっくり。でも時系列ごとではなくテーマごとにまとまっている。

    ざっくり過ぎてやっぱり背景とか伝わらないから、ちょっと物足りないやも。

  • ざっくりだけど、モダニズム・帝国主義・欲望・モンスター・宗教という5つの視点からの世界史は新鮮で読みやすかった。

  • 世界史はカタカナの多さに閉口してしまい高校の時に挫折。しかしこの”ざっくり--”著者が斎藤孝氏ということで買ってみました。まだ途中ですがエッセンスたっぷりで引き込まれます。
    ---------

    読み終わって、
    とても充実感があります。

    「ざっくり!世界史」のタイトルのだが、実際にはざっくりというより世界史の流れ全体が、かたまりとして頭に入ってくるイメージでした。
    この本を読んでから世界史を学習すれば、機械的に記憶するのではなく、有機的に理解が進むだろうなと、次のステップへの「ワクワク」を呼び覚まされた感じがします。
     もちろん、この本を読んだからといって急に世界史に詳しくなったわけではないけれど、今世界で起こっている事件、戦争、その他いろいろなトピックへの見方が変わるきっかけになりそうです。

    次の「ざっくりシリーズ」も読んでみようかな

  • *寄付

  • 齋藤孝先生による世界史の開設・ならびに入門書です。本当に大まかなものなんですが、要所要所はキチンと押さえてあって、非常に読み応えがあるものになっております。

    この本は先日読み終えたものです。ざっくりとは言いながらも、世界史の要点はしっかりと抑えてあって、入門書としては非常にすばらしいものになっております。僕は高校時代に世界史を挫折しておりますがここ最近の国際的な事件をきっかけに以前紹介した、山川出版の世界史の教科書も読んでいましたけれど、大まかな流れを知るためにはこっちのほうがいいですね。僕が読んでいて好きだったのは、世界を二分する飲み物とされる、コーヒーとお茶についての考察でした。

    僕はどちらかというと紅茶よりもコーヒーが好きで、20代の最初の三年間は相場の世界に身をおいていたことがあって、今でもコーヒーの先物価格はチェックしているんですけれど、まぁ最近は高いですね。それはさておいて、コーヒーがもたらす覚醒作用がもたらした人類の推進力と、コーヒーを供給する側の今でも形を変えて存在する貧しい、もしくは奴隷労働の存在。それに衝撃を受けました。

    前にフェアトレードを扱ったドキュメンタリー映画
    「おいしいコーヒーの淹れかた」
    というものにも取り上げられていましたけれど、こういう中にも今の今まで続く南北の問題が横たわっていることや、世界三大宗教といわれるユダヤ教、イスラム教、そしてキリスト教がなぜあそこまでいがみ、憎しみ、また殺し合っているのか?それは聖地であるエルサレムの攻防を巡る話通して、非常に平易に語っておられました。

    いま、世界中で起こっていることは、みんな過去につながっている。その過去を知ってこそ、未来をある程度予測できる。それを知ることができるきっかけとして、本書をぜひオススメします。

  • さて、世界史も読んでみた。
    相変わらずわかりやすかった。とっつきやすかった。

    面白いなーと思ったのは、
    男性には支配欲があるって話と、コーヒーと紅茶の話。

    支配欲ってよくわかんないよね。
    世界を征服したいんだ!って思っちゃう当の本人たちにも
    きっとよくわかってなかったような気がする。
    だけどむくむくと沸き上がってくる、全部を支配下に置きたい気持ち。
    支配欲で大きくなって、大きくなりすぎて自滅する。
    それがちゃんと歴史の中で起こってて面白かった。

    あとコーヒーと紅茶。
    よく考えりゃ不思議ですよね。
    飲みものが世界を動かしてるなんて。

    でも確かに世界史勉強してる中で、よく出てきたなぁと。
    事件とかに関わってたなぁと。
    どうしてコーヒーやら紅茶やらが
    歴史のおっきい部分に関わってくるのか、とか。
    そういうの考えるとまた楽しいですね。

    コーヒーの発祥とかも説明してくれてるので、
    なるほどなーって思って読みました。

  • 世界史の概説本だと思って借りたら、教科書の表面的な年表からはわからない、行間を読み解くための興味深いパースペクティブを提示するエッセイであった。でも勉強は教科書でしなきゃダメね…

  • 思った以上にざっくりした内容だったが、大きな流れを学び直すには役立った。

    モダニズム
    西欧が政教分離であるのに対して、イスラムは祭政一致であることが対立の理由。
    近代の管理社会を脱して自由になることを目指したのがポストモダン。
    知を独占することが権力そのもの。聖書をドイツ語に翻訳したことがルターの宗教改革。
    資本主義は、カルヴァンの神学を受け入れたオランダ、イギリス、アメリカで先行した。

    欲望の世界史
    コーヒーが普及する前のヨーロッパにおけるビールの消費量は、一人当たり一日3リットル(コーヒーが廻り世界史が廻る)。
    コーヒーの植民地での栽培は、1700年にジャワで、1723年に西インド諸島で始まった。
    11世紀にヨーロッパで水車を利用した製鉄が始まり、鉄製農具が広がったことで農業が発展した。18世紀のコークスの利用と蒸気機関の発明により、産業革命につながった。

    モンスターたち
    世界史で自国民を最も多く殺戮したトップ3は、毛沢東、スターリン、ポル・ポト。
    第二次世界大戦は、植民地をすでに持っていた国と持っていない国との戦い。

    宗教
    征服行為は西洋近代が生んだ帝国主義とキリスト教が一緒になって推し進められた。

  • 歴史に興味はあったけど、学生時代にまともに勉強してませんでした。
    そんなときにこのタイトルに惹かれて購入。

    この本が斉藤孝氏を好きになるきっかけの本でした。

    ウィットに富んだ表現と軽い毒っぷり。

    ざっくりですが大局はつかめてて面白い。

  • 斎藤孝は高校のときに『読書力』とか『三色ボールペン』とかを読んでてなんだか面白い人だなあと思った記憶しかないけど、この本を読んで憧れに似た何かを抱くことになるとは思わなかった。
    何だか変なタイトルで、面白そうだなーって感じで立ち読みして、気がついたら買ってた。

    年代を覚えることが歴史の勉強ではない。「流れ」を押さえるんだ!

    こんなことは受験時代から何度も言われてきた。耳タコ。
    歴史の勉強とは、すべて現代を深く知るためにするのであって、重箱の隅をつつくような知識や、整理されていない「流れ」なんてものをいくら並べられても、身に付かないし、そもそも楽しくない。

    斎藤センセイに、古代から続く世界史の「文脈」のなかに現代を置いて話されると、灰色だった教科書の出来事達は、鮮やかな色を持って輝きだすから不思議だ。

    モダニズム、帝国主義、欲望、「モンスター」、宗教。

    世界史を動かし続けてきた「パワー」を解き明かし、一つの視点を与えてくれる。


    彼の見方が必ずしも正しいかどうかは人にもよるだろうが、その思考力には憧れるものがある。そういう風に、世界を見られるようになりたい。参考文献の引用の仕方も何だかオシャレ。わかりやすい文章で、世界史を毛嫌いしていた人に勧めたい。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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