- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396616489
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
今年は明治維新150年。
私も感じていたのですが、ここ2、3年は「反薩長史観」的な本がやたらと大宣伝で売られだし、いまや反薩長は一種のブームとなっているかのよう。
半藤一利さんはそのずっと前から反薩長の本を出していた作家です。
なので、彼のもとにその手の本をだした若い作家との対談の企画がいくつももちこまれました。
あっさりお断りされたそうです。うーん、ちょっと残念。
でも出口さんとの対談のお話には二つ返事でOK。
そうしてできたこの本、とても面白くて、たびたび笑いました!
ちょっと悪口多くて、特定の人のファンにはカチンとくることもあるかも。 -
明治維新は薩長土肥による暴力革命というのはその通りですが、軍事政権が発足したわけではありません。新生日本は虎視眈々とした列強と折り合いながら、グランドデザインである近代国家の形成に取り組んでいます。対談で残念だったのは、日本の近代を世界史の観点で位置付けるという視点が希薄なことです。歴史を人ベースで語るのが好きな日本人ですが、それでは読み物としては面白いけど、床屋の隠居談義になってしまいます。
-
奇跡の人材登用が生んだ日本の近代化
〜開国→富国→強兵のグランドデザインと武士階級の自己改革〜
■概要
作家の半藤さんとライフネット生命創業者の出口治明さんの対談。薩長栄光の歴史とされる明治維新を幕末の動乱の時期から、各藩/各人の思惑に焦点を当てることで、明治維新をどう観るかを問いなおす。明治維新を見なおすことは、人間ドラマにとどまらず、人材登用や複雑な利害関係者との交渉など、現代社会にも多くの示唆を与える。
■所感
明治維新をよく理解していなかったが、歴史作家の大家である半藤さんと、歴史と哲学に精通し"啓蒙経営者"と呼べる出口さんの知見から明治維新を学びなおせる。薩長、坂本龍馬、岩倉使節団くらいしか知らなかったが、各人の明治維新において果たした役割を学べた。
ただ歴史をなぞるのではなく、現代の意思決定に学べる要素が大きい。情報収集から情報公開の大切さ、人材配置などはいつの時代も肝になる。
歴史は勝者が作るというのが、明治維新(薩長革命)にも当てはまると痛感。
■詳細メモ
・明治維新(明治政府誕生)は薩長の暴力革命
関ヶ原の戦い以降の200年の禍根を薩長が晴らした、それが明治維新。幕府の開国決定が尊王攘夷につながったものの、攘夷は無理と判断した薩長が尊王倒幕に傾いた。
そもそもの尊王は、家康?が廃止した「幕府が朝廷にお伺いを立てます」を復活させたあたりから始まっていた。攘夷は開国に伴い生まれたが、薩英戦争と下関戦争で海外の実力を知り断念。まず倒幕が作家の目的に。
・ただ人材登用は抜群
たとえ薩長を中心とした西軍(官軍)びいきの人材配置でも、奇跡のピースがピタリとはまった。狭義の明治維新かつ(武家政治終了)は暴力革命でも、広義の明治維新(日本の近代化)は当時の素晴らしい人材とその登用術のおかげ。
・活躍したのは誰か?
- 勝海舟の様に幕府側からも支えた人が。〇〇人に入るのは薩摩人、京都人などが当時の概念だったのに対し、初めて「日本人」を概念にした。幕府と薩長で争っている場合ではない、と一気に人々を啓蒙した。
- 隠れた構想家、阿部正弘。グランドデザイン。出口治明さんが選ぶ功労者第1位。
- 坂本龍馬はアイデアのパクリスト、ただ構想力とコーディネート力が抜群。秀吉やビルゲイツタイプ。
- 大久保利通は阿部正弘の構想(グランドデザイン)を実行に移した、視座が高い。出口治明さんが選ぶ第2位。
- 伊藤博文や山縣有朋は"小粒"。それでも伊藤博文は日露戦争の落とし所をわきまえていた、現状把握ができる人。山縣有朋はシビリアンコントロールを日本から無くした。統帥権の独立が後の大戦の悲劇に
- 徳川慶喜はよく分からない。鳥羽伏見の戦いで錦の御旗を見ただけで撤退したのは謎
- 岩倉具視は謀略家の腹黒(かなり悪く書かれている)。ただ岩倉使節団は明治維新に寄与した。(倒幕後の国家隆盛に欠かせない)
- 西郷隆盛は革命家。毛沢東に近い(詩人であり農本主義、ロマンチスト)。だから革命後の政府で上手く立ち回れなかったが、革命には欠かせない人。
・明治維新の成功の要諦
阿部正弘が「開国→富国→強兵」の順に進めようとしたこと(出口さん)。日本には資源がない、しかも鎖国で海外の情報ない。だからまず開国しないと富国も強兵もできない。
なお、日露戦争以降、日本が誤った道に進んだのは「閉国」路線を歩んだから(司馬史観に近い)。これでは海外の正確な情報つかめず、兵器開発や戦術面でも劣る、だから大和魂と白兵戦法のゴリ押しで大戦では悲劇を生んだ。
開国後の吉田茂は「強兵」をアメリカに任せて、開国と富国に集中。これが戦後復興に寄与した。
・勝海舟、西郷隆盛らの自己改革
武士階級が封建社会と決別しようとしたことも忘れてはならない。自己改革できる覚悟ないと「維新」は成し遂げられない。これも阿部正弘がアヘン戦争の現状を知っていたからこそ、開国やむなしとできた。ただそれを受け入れた幕府側の武士(阿部もその一部だが)の功績、勝海舟こそ立役者。(半藤さん)
-
補足
明治維新の発端=薩長の暴力革命なのだが、阿部正弘(幕府)のグランドデザインを大久保利通(薩摩)が具体化し、実行。そこには勝海舟(幕府)...補足
明治維新の発端=薩長の暴力革命なのだが、阿部正弘(幕府)のグランドデザインを大久保利通(薩摩)が具体化し、実行。そこには勝海舟(幕府)も英国交渉などで絡んでいたことを考えると、明治維新の「全て」=薩長の功績とするのは誤り。半分は幕府の自己改革。2021/12/18
-
-
碩学のお二人の明治維新論 やはりただ者ではない 特に出口氏は圧巻
経済の視点で「数字」で歴史を分析すると見えてくる世界が違う 迫力も
1.統帥権の独立 これは山縣有朋の仕業 言語道断 治安維持法も
強権的国家主義者のようで、結局は自分の権力拡大 ポスト確保
軍国主義をもたらし、結局は国家の滅亡
司馬遼太郎は坂の上の雲で終わらせてはダメ、昭和の大敗戦まで同じストーリー
2.開国のグランドデザイン 阿部正弘 大久保利通
開国-富国-強兵 帝国主義の世界と戦う
勝海舟も同じ認識 西郷を説得し、江戸を守った 焼け野原になったら日本は終わり
国家の危機 人材登用を広く正しく行えば、歴史は変わる
門閥制度→実力主義・実績主義
cfフィンランド国家の危機 1991年破綻
3.1938年近衛声明の阿呆さ 戦争の相手を無視してどう始末するのか
「始末」の大切さが判らなくなってしまう
全く同感 現代のアベノミクスも同じ 始末の考えはない デフレ脱却が欲しいだけ
現政権=現日本の幼児性は共通するものがある 歴史の怖さ -
半藤氏と出口氏の対談本。でかつ日本の幕末に焦点を
絞って語られている内容です。
阿部正弘・横井樟南・勝海舟・大久保利通・坂本龍馬・
西郷隆盛・伊藤博文・山形有朋・吉田松陰・・
2人のそれぞれの人たちに対する評価を読むのは
面白く読めました。
二人の、半藤氏の見方はとても面白いと思いました。 -
幕末維新史は初心者でしたが、これは分かりやすくて面白いです。幕末から太平洋戦争までの、思想的、人脈的な全体の流れが理解できました。
巻末の推薦書を、今度は読んでみよう。 -
もう明治維新150年とか薩長土佐で勝手にやってくれと思っている人たちにとっては当たり前の視点・史観では有るけど、それがこの2名の対談でより明確になっていて大変心地が良い。よく太平洋戦争の総括が不十分である事への指摘が多いが、そもそも日露戦争当時戦争への総括が不十分であり、その実際が広く国民に知らしめられなかった事により、再び「鎖国」となり、それ太平洋戦争へ繋がっているという指摘は重要だし、それは今の我が国の現状にも重なって見える。戦争は外交・政治の一手段である、これは即ち戦争中であろうとその前段階であろうと相手との対話と交渉が必要である事を示している。日中戦争時の近衛内閣の「国民党とは交渉に値せず」は、現状の我が国の北朝鮮政策と重なって見えてきて仕方がない。右手で棍棒で殴り合いながらでも、左手の指一本ぐらいは相手と繋いでおくのが外交であり、政治である。結局戦争は政治の一手段である以上対話でしか終わらないのだ。
-
h10-図書館2018.12.28 期限1/18 読了1/15 返却1/16