- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396635084
感想・レビュー・書評
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凡そ500頁のハードカバー本。
重くて持ちにくくてとにかく扱い辛い・・・なんて愚痴をこぼしていたのも束の間、この分厚い本は読み始めたら止まらない、そんな力のある作品だった。
第二次世界大戦中の欧州の様子は、教科書で読んだくらいの知識しか持っていなかった。
ナチスによるユダヤ人の弾圧や、アウシュビッツの惨劇。
ドイツがとにかく酷い、狂気的。
そんなイメージが大きかった。
ポーランドが幾度も侵略を受け、奪い尽くされた真実も、蜂起して何度も戦った事実も、よく知らなかった。
人間の尊厳をかけて、自由を勝ち取ろうと立ち上がる人々の痛切な思いと生き様が凄まじい。
この熱い余韻をうまく言葉にできないのが、もどかしい。
多くの人に読まれるべき傑作だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
できる限り多くの人がこの本を手に取ってくれることを願うほどに、自分の価値観や物の見方に大きな影響を及ぼした1冊。侵略と裏切りを幾度も経験してきたポーランドを舞台に、国籍とは何か、私とは何者か、信頼とは、友情とは。そんなことを考えさせられた歴史小説は初めて。『ポーランドからみる景色は過酷だが美しい。真実と共にあれ。』という言葉が、重く、まっすぐ心に突き刺さった。ラストは、このタイトルを見るだけで涙が止まらなかった。20代の自分が、世界をもっと知りたいと心から思った。
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「神の棘」の衝撃から6年、なんて煽られたらもう……! と胸を熱くして購入した本書。覚悟はしていたがポーランドがいかに苛烈な道を歩まされてきたのかが容赦なく描かれており、胸が痛いを通り越して息苦しいほどだった。“じぶんは何者なのか”と葛藤する主人公の姿もさることながら、孤立を極めたあの国で何があったのかをほとんど知らずにいたじぶんに声をなくす。涙腺は緩いほうだとわかってはいたが、それでもなんども目の前が霞み、終章では嗚咽が漏れた。あの約束があったからいまがあるというのなら、歴史を学ぶ意味はあると断言できる。
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力作にして快作
第二次大戦のヨーロッパをポーランドから描くというのは、面白い視点だと思うし、見事に描ききったとも思う。
なにより、素直に面白いと思える小説だった。
星は実質4つ半 -
500ページに及んだ物語を読み終え、"パタッ"とこの本を閉じたとき、今までに感じたことのない感情を抱き、「あぁ、また一冊、素敵な本に出会えた」と思いました。
第二次世界大戦を、ポーランド側から知ることができたのは、凄く大きなものでした。こんなにも過酷で、どれだけ歴史に翻弄された国なのかを知りました。
また、自分が正しいと信じたことを迷いなく行えるような生き方というのもおしえてもらいました。
「戦争」を舞台とした物語にもかかわらず、なんて美しく描かれているのだろう。
とてもいい本に出会えて、うれしかったです。 -
恥ずかしながら、これまで殆ど知らなかった、ポーランドの歴史。隣国に何度も侵入され、地図から姿を消してきた美しき平原の国。
虐げられた人々の、隣国への憎悪、そして国に対する誇り。ポーランドの為に身を投じる1人の日本人の視点を通して、刻銘に綴られていて、非常に読み応えのある一冊。
この時代のポーランドの視点で読むので尚更に、ナチス時代におけるドイツという国の非道さ、残酷さが読み手の胸を押し潰す。だけどそれは戦争における一側面でしかない。その後ドイツ軍が弱体化し敗北に向かうに連れて、ドイツでもまた似たような悲劇は起こったのだろうし、同時期に近隣諸国と戦争をしていた日本もまた、どちらの立場にも立ったのだろう。
何が悪で何が正しいのか、答えなどない中で、ただそうするしかなく、もうその流れに逆らうことは出来ず、人々は戦争に走った。その結果に何も残らないことを、人は学んだはずなのに、それでも戦争は無くならない。
二度と戦争などしない。そう思っているのに、気付いたら、戦争へ向かう流れが出来ていて、もう流れに呑み込まれるしかなくなっている。世界がそんな手遅れの状態にならないようにと、祈らずにはいられない。 -
読んでいて胸が苦しくなる、訴えかけてくるものがあった。
教科書には「ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まる」としか記載されていない。その一文の後ろには夥しい数の犠牲と苦しみと怒りと叫びがあったんだろうと思わせる作品だった。
スラブ系の日本人外交官
ドイツ生まれのユダヤ人
アメリカ国籍のポーランド人
その3人が織りなす物語だからこそ、民族とは、国籍とは、外交とはと深く考えさせられた。
外交とは人を信じるところから始まる。誰かに与えた無償の愛は必ず倍になって帰ってくる。
その信念のもと駆け抜ける日本人外交官の真っ直ぐなストーリーです。 -
フィクションとノンフィクションとを見事に融合した傑作で、8.15を間近にして読むにふさわしかった。
かつて、一世紀以上にわたって地図から消えた国、ポーランド。
大使館の一書記生慎(まこと)を主人公に、彼と彼の周囲のポーランド人たちが、第二次大戦下、ドイツと戦う様を描いた500頁に迫る大作。
「ポーランドから見る世界は、過酷かもしれないがきっと美しい。真実とともにあれ。おまえが正しいと信じたことを、迷わず行えるように」
書中、度々綴られる主人公の父の言葉。
父のこの言葉を胸に、慎はポーランドのために行動する。
彼の運命に思いを致すと、題名の『また、桜の国で』が胸に迫ってくる。
実は、ポーランド気質と武士道とは、よく似ているそうだ。
「体面を重んじ、美しいものをこよなく愛し、心の機微にも聡」く、「一見大人しいがそのじつ非常に誇り高く、時にやせ我慢がすぎたり、空回りするところも」
読後、東欧の一小国がとても身近に感じられるようになった。