- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636418
作品紹介・あらすじ
万両店の末弟、鷺之介が齢十一にして悩みがつきない原因とは――。
時代小説の名手が描く、ホロリと泣かせる大江戸謎解き物語。
万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。かしましい三人の姉――お瀬己・お日和・お喜路のお喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。三拍子そろった三姉妹の傍にいるだけで、身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し……。そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。
ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、墓に置き忘れられていた櫛を発見する。その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだった――。
感想・レビュー・書評
-
大好きな西條奈加さん♪
今作は万両店「飛鷹屋」のお話。
一代で財を成した廻船問屋の主人・鳶右衛門
正妻の子・鵜之助
妾達の子・お瀬己、お日和、お喜路の三姉妹
主人公の鷺之助は末っ子の十一歳ながら個性豊かな三姉妹に振り回されて疲れる毎日をぼやきながら送っています。
「姉さん、また事件ですか⁈」の帯にあるようにちょっとした事件を起こしたり、巻き込まれたり…
西條さんらしく読みやすくてテンポ良く暖かい。
三姉妹の個性は大店の娘特有の鼻持ちならない嫌な女達と思いきや、話が進むにつれ好感が持てる。
鷺之助が自分の事を「鷺はね…」なんて言うからもう可愛いです(⑉︎• •⑉︎)
その鷺の出生にまつわるあれこれが後半の事件に繋がりますが、自由奔放な主人・鳶右衛門に一矢報いた?女の強かさに胸がスッとしました。
鵜と鷺が並んで、騒々しい三羽の鳥の諍いをながめている。見上げると、はるか上の空に、鳶が浮かんでいた…
鳥も色々、子供も色々…とりどりみどり
なるほど!上手い!
山田くん座布団一枚‼︎
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公の鷺之介は末っ子らしい素直な性格で、可愛らしいなと思いながら読みすすめた。
対する姉三人はかなり個性的。
江戸時代にしては近代的な発想の持ち主なところは好きなのだけど、問題解決の時にすぐに大金をちらつかせるところがちょっと不快だった。
-
江戸期の人情ミステリー。主人公は大店の5番目の末っ子11歳の鷺之介。1年の殆どを船上で商いをする父親代わりをしっかり者で心優しい長男が担う。鷺之介の目下の悩みは、母違いで個性的な3人の姉達が早く嫁いでくれる事。大店の子供らしい制約がある生活の中で怪しい出来事に遭遇し解決しようとする。兄姉の性格がとてもよく表れていて姉達の喧騒さが聞こえてくる様。最後は西條氏らしくホロリと納得させてくれる。
-
廻船問屋「飛鷹屋」の末っ子、鷺之介は、齢11。
クセが強過ぎる三人の姉たちに振り回される日々を過ごす。
万両店での事情、身分の違い、男女の事情、そして謎解き。
・螺鈿の櫛・・・お瀬己の嫁ぎ先で大事な櫛が行方不明に。
知るのは家の事情と男女の心の行き違い。
・ふういんきり・・・芝居小屋で仲良くなった五百吉は、怪しい
男たちに狙われていた。事件の原因は、封印切!
・箍の災難・・・箍回しを小僧の根津松に教わるが、侍に難癖を
付けられてしまう。根津松の決心とお日和の心情。
・とりかえばや・・・戯作者に弟子入りしたい、お喜路に付き添う。
が、訪ねた一刻蔵は怪我を。誰が?彼の師匠の戯作者は?
・五両の手拭・・・お瀬己が無理矢理五両で買った手拭を、返して
欲しいと懇願された。手拭の注文主の正体を謎解きで暴く。
・鷺と赤い実・・・母の墓前に置かれた櫛は、姉たちのと似ている。
置いた男を探していたが、姉たちの内緒話に衝撃を受け・・・。
・とりどりみどり・・・天地がひっくり返るような自分の秘密。
解き明かされる事実は深い愛に包まれていた。それは今も。
万両店廻船問屋「飛鷹屋」の家族は、豪胆な父、
実直で穏やかな長兄、末っ子の鷺之介。
そして鳥の名の如く囀り、自由に羽搏く三姉妹。
我が世とばかりに振舞う長姉、
おっとりとして毒を吐く次姉、理屈っぽい三姉。
金持ちで自己中な姉たちに連れ回されるのを悩む鷺之介だが、
実は、家族の優しさとたっぷりの愛が注がれている存在です。
話が進行するに、彼女たちの想いや気遣いが分かってきて、
見方が変化してゆきました。
ざわめき飛び回る、鶺鴒、鶸と雉。それを眺める鵜と鷺。
遠く高みから見守るのは鳶。家族自体も、とりどりみどり。 -
<久>
またもこの話題から入る。テヘランで生まれたのは西加奈子?それとも西城奈加?いつまで経ってもこの二人の区別がつかない僕は きっと頭が まなこスポンジ化 してしまっているのだろう。そうだ 今回はこの件についての正解をここには書かないままで読書感想文に移ろう。そうだそうしよう。そうすることになった。
で言えるのは西城奈加の作品の方がかなり面白い!という事。今作も例外ではなく この「とりどりみどり」は秀作の連作短編集。前半の作品は面白ろ可笑しのドタバタ劇+ちょっと謎解きあり,って感じで気を許して ふむふむ面白いな と調子よく読んでいると,最後の編「とりどりみどり」でやられてしまう。僕の場合はあっと云う間に大粒の涙が瞳にあふれ出て来て,しかも間が悪い事に,それが会社の昼休み時間だったので 赤くなった目を取り繕うのに苦労した。いつも使っている目薬をさして事なきを得た(つもり)だが(^^)/ -
主人公の鷺の介(さぎのすけ)は11歳。
日本橋の廻船問屋『飛鷹屋(ひだかや)』の末っ子である。
父親の鳶右衛門(とびえもん)は行商人から成り上がり、一代で身代を築いた。
うなるほど金がある。
さて、鷺之介は三人の姉たちに振り回される毎日にうんざりし、早々に三人とも嫁に出して、静かな生活を送りたいと望んでいる。
彼が尊敬するのは、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」を商人の心得と教えてくれた、長兄の鵜之介(うのすけ)だ。
姉たちに反感を抱くのは、11歳という年齢になって、鷺之介が自分の頭で考えることに目覚めたためかもしれない。
たとえば、金持ちの家に生まれた自分と比べ、そうでない同年代の少年たちが働いていることへの申し訳ないような思い。
十把一絡げに同じ名前で呼ばれる奉公人たちにもそれぞれ1個人として名があるということへの気付き。
姉たちへの反発は自我の目覚めである。
しかし、まだまだ青いなあ〜と感じる。
姉たちは金にあかせてやりたい放題、というふうに鷺之介の目には映るかもしれないが・・・
金で買えないものの一つに男女の性別がある。
彼女らは自分たちが女であるゆえに、思い通りにならないことへの不満を抱えているのだ。
そして抗おうとしている。
時々伝法口調になる、人情に篤い長姉のお瀬己(せき)
おっとりと毒舌を吐く、次姉のお日和(ひわ)
頭の回転が早い三姉のお喜路(きじ)
鷺之介は彼女たちの言動に心の中でいちいちツッコミを入れているが、三人の姉たちは、個性的で魅力的である。
特に、お日和とお喜路が探偵のように事件を解決に導くのが面白い。
驚くべきは、母・お七の行動だった。
女は怖い、と鷺之介が実感するのは何年後のことだろうか。 -
大店の廻船問屋飛鷹屋。その家の次男坊鷺之介には三人の姉がいた。その姉達は傍若無人、わがままで金遣いも荒く、鷺之介にとっては目の上のたんこぶだった。その三人を早く嫁入りさせたいと願うが上手くはいかず、かえって三姉達の振る舞いに振り回されてしまう日々。
そんな三姉と鷺之介に巻き起こる出来事を描いた作品。
とにかく三姉達のパワーが強烈でおもしろい。
賢いけど大人しい鷺之介が姉達に振り回される姿もなんとも可愛い。市井物ともちょっと違うなかなか楽しい一冊。