短篇集 バレンタイン

  • 新書館 (2006年6月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (136ページ) / ISBN・EAN: 9784403210907

みんなの感想まとめ

日常の中に潜む微細な変化や思い出を描いた短編集は、著者の幼少期を過ごした六郷の風景が色濃く反映されています。身近な土地に親しみを感じる読者にとって、作品は心地よい旅のような体験を提供します。各短篇は、...

感想・レビュー・書評

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  • 午前三時の目ざめ方は特権的なのである。
    何なら文学的といってもいい。

  • 夜、眠る前に一章ずつ。
    一度にたくさん読んではいけない。
    戻れなくなるから。

    現実が突然にお隣の別世界へ変わる。
    恐ろしかったり、温かったり、せつなかったりする。

    柴田氏の小説がこんなに不思議に満ち溢れてるなんて!

    ユアグローの飛行機の短編をもっとエッセイ的にした感じ。
    とても好き。

    「妻を直す」「ウェイクフィールドの微笑」が特にお気に入り。
    現実でも小説でも、男性にとって奥さんというのは不思議な生き物なのだろうか。

  • エッセイとも小説とも区別がつかない不思議な短編集でした。
    突飛な話が多くて、でも突飛とも思えなくて。
    平坦な語り口なのに、何だか胸がチリッとするような、そんな1冊です。

    「期限切れ景品点数券再生センター」「書店で」がお気に入り。

  • 短編小説ということだけれど,主人公は著者自身で,
    過去の自分を「君」 と呼んで回想していたり,
    その自分と現在の自分を重ね合わせたりしている。

    過去から最近の出来事を物語にした,エッセイみたいなもので自伝的。

    その語りかたは翻訳家らしいというのか,
    アメリカ文学の翻訳小説みたいな雰囲気を持っているように感じられた。

    翻訳家で,さらには東大教授の柴田元幸さんが普段こんなことを
    考えたり経験していたりするのかと考えたりしながら読めておもしろかった。

  • 『大航海』掲載のエッセイ中心に、書下ろしも掲載。ありえた他の現在を想像する、という筋立てが多い。柴田元幸が現在の彼に満足しているのだな、とわかる。「ウェイクフィールドの微笑」、「映画館」、「卵」あたりが好き

  • 柴田元幸さんが書いた作品が集められている。
    柴田さん自身のエピソードが多く含まれており、柴田さんに興味を持ってこの本を手にした人は充分楽しめるのではないか。そうでない人にとっては物足りないかもしれない。
    自分は、六郷周辺で展開するストーリーが好きです。

  • 翻訳家である柴田さん自らが書いた短編小説14編を収録。(翻訳業から小説家を目指すつもりなのだろうか?)各短編とも、著者自身を反映したかのような、インテリの人物が登場する。当たり前のように読み進めていくと、突然異次元に入り込んでいって足元をすくわれるような感じ。『バレンタイン』という短編から始まって、『ホワイトデー』という作品で終わるところは、著者なりの遊び心か?

  • 残念!残念すぎる!
    柴田さんの翻訳書は大好きだけど、翻訳者と作家は別物だ。彼が優れた翻訳者であったばっかりにこんな、小説としての出版価値には首を傾げざるを得ないような本を出すことになってしまって気の毒でたまらない (皮肉ではなく本当にそう思う)。
    内田樹さんのブログの古い記事にこんな一節がある。
    --
    創造よりも批評に傾く人は、クリエーターとしてはたいした仕事はできない。
    これはほんとうである。
    私自身がそうであるからよくわかる。
    私もまた腐るほどたくさんの小説を読んできて、「これくらいのものなら、俺にだって書ける」と思ったことが何度もある。
    そして、実際には「これくらいのもの」どころか、一頁さえ書き終えることができなかった。
    銀色夏生さんは歌謡曲番組をTVで見て、「これくらいのものなら、私にだって書ける」と思って筆を執り、そのまま一気に100篇の歌詞を書いたそうである。
    「作家的才能」というのはそういうものである。
    努力とか勉強とかでどうこうなるものではない。
    人間の種類が違うのである。
    --
    柴田さんが傲慢だとは思わないし、批評に傾いているとも思わない。
    でも「俺にだってできる」と思ってもできないことってあるんだよねえ。
    いや、残念ながら。

  • 翻訳者として名高い柴田元幸の初の小説集。
    さすが、名翻訳家は文章もうまい。
    翻訳のイメージがあるからか、どことなく外国のこじゃれた(ウィットに富んだ、というやつ)小説のイメージを受けた。
    著者本人を思わせる登場人物がさらりと現れ、まるで「最近自分の身辺にあったこと」のようにありえない出来事をするっと語ってしまう(幼少時の自分と出会ったり、妻が故障してしまったり)感覚がおもしろい。

  • 柴田さん自身は大好きだし、文体も好みだけど、
    中身がエッセイすぎる。小説ではないですよね。
    最後のホワイトデイは、少し面白かった。彼を知るきっかけにはなるかな。

  • 『柴田さんと高橋さんの 小説の読み方、書き方、訳し方』で「小説が書けない」とおっしゃる翻訳家・柴田元幸さんの短編集です。なかなか探せなくて、古書で入手しました。どうも大学の英文学教員であるらしい「私(あるいは君)」の周りで起こるあれこれがつづられています。壮大な舞台ではなく、いつも通る道で出会うような、ちょっとしたできごとから見えてくる、ドッペルゲンガーぎみの物語のオンパレード。個人的には、『妻を直す』の作りこんだ不思議感が好き。サイン会を描いた『書店で』もいいです。どれもやっぱり、柴田さんの翻訳文の持つ空気に似ているようで…でもラスト1段落(くらい)のさばきかたは、土俵のアメ文よりも断然しゃれている(笑)。それに、主人公のそばにいろいろな形で顔を出す、見事にリアリストな「妻」さんの存在がとても気になるー!微妙にイタい小道具も素敵。『蓮』の「豆腐ストロー吸い競争」って…。ホーソーンの作品を引いた『ウェイクフィールドの微笑』はアメ文翻訳家の面目躍如、の1編です。『ウェイクフィールド―』だけではなく、ほとんどの短編になんらかの文学作品がちりばめられており、柴田さんが小説を手がけられないのは、「書けない」んじゃなくて、いろいろ好きなものを読んで発見していくほうがお好みだからじゃないのかな?と感じる面もありました。構成もしゃれていて不思議感満点。ヘンなシチュエーションは多いものの(笑)、どれも品があって押しつけがましい嫌みのない、クリーンな空気感の短編集でした。さらさらっと読んでしまって、薄味に感じるような気もしますが…根本的に柴田さんの文章の洒脱さは大好きなので、この☆の数にしました。

  • 柴田さんの訳が好きなので読んでみました。あと季節的にいいかなとも。タイトルは特に関係なかったけど(笑)エッセイ風、だけど不思議なお話。「ケンブリッジ・サーカス」が好きです。

  • 翻訳家として有名な柴田元幸、初の小説集。死を連想させるこの世界観は氏の訳本をより深く読む足がかりとなる、気がする。

    冒頭1p抜粋------------------------------
    バレンタイン

     路地へ入っていくと、小学生の男の子が目の前を歩いているのが見えて、参ったな、と君は思う。
     参ったな、あれは僕じゃないか、と君は思う。
     バリカンで雑に刈り上げた髪や、いかにも「ゴム靴」という感じの運動靴からしてもそもそもいまどきの子供ではありえないし、道にお金が落ちているんじゃないかと思っているみたいな歩き方はやめなさい、と母親に言われたあの背の丸まり方といい、すり切れた青いジャンパーといい、それに何と言っても、右のポケットに入れたこぶしに見るからに力が入っている様子からして、間違いない、あれはかつての君だった子だ。
    ------------------------------

  • 柴田元幸、初の小説集。「参ったな、あれは僕じゃないか、と君は思う。間違いない、あれはかつての君だった子供だ」―ふっと開く異次元の扉。

  • シンプルで飄々と翻訳をする柴田元幸さんが、自身の小説を書くとどんな風なのかなと、ウキウキしながら読みました。
    二人称で書かれた短編は摩訶不思議な思いを抱かされるし、最後の二・三行で暴かれるどんでんがえしには、星新一テイストを感じました。あと、結構<僕>が死にます。
    タイトルからして本好きの彼にはこの本をチョコレートと一緒に渡したら、面白いかもしれません。

  • 柴田元幸、初の小説集。「参ったな、あれは僕じゃないか、と君は思う。
    間違いない、あれはかつての君だった子供だ」―ふっと開く異次元の扉。

  • 柴田氏の翻訳した小説はもちろん好きだけど、「初の小説集」って・・実際どうなの?と半信半疑で読み始めたけど、やっぱり良かった。
    お値段も嬉しかった。

  • 現代英米文学の名翻訳者、柴田元幸の初小説集。といっても、小説ともエッセイともつかないような短編もある。自由に遊んでみた、という印象。

     現在の自分のまま、少年時代であった昭和の日本にすっと入りこんでいく「バレンタイン」「期限切れ景品点数券再生センター」「ホワイトデー」、自分と妻の関係を描いた「妻を直す」「ウェイクフィールドの微笑」が特によかった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。翻訳家・アメリカ文学研究者。
ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソン、レベッカ・ブラウン、バリー・ユアグロー、トマス・ピンチョン、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドンなど翻訳多数。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、『メイスン&ディクソン』で日本翻訳文化賞、また2017年に早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。
文芸誌『MONKEY』(スイッチ・パブリッシング)責任編集。

「2026年 『私たちがやったこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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