桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408554020

感想・レビュー・書評

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  • 東北に向かう新幹線からつながる連作短編集。
    東北人(福島人)としては馴染みがあって面白かった。

    そして福島の話し。
    震災後、それを書いた小説をいくつか読んだけど、どれも心に響かなかった。
    震災、原発事故をネタにしてる気がして不快だった。
    でもこの本はなんかスーッと入ってきた。

    福島に住んでいると、なんかもう日常で。
    普通に暮らしてるだけなんだよね。
    もちろんすべてが元通りではないんだけど。
    そこの感じをうまく書いてあるなぁ、と、嬉しかった。

    あとがきで知ったけど、著者は東北旅行中に福島で被災していたんですね。
    そのルポルタージュもあるみたいだけど、これはちょっと読む勇気が出ないかな・・・

  • 最後のお話がよかったな。帰れるふるさとはなくても、そんな憧れの場所を自分でつくろう、っていう考え方素敵だと思った。

  • なんとも言えない共感を誘う連作短編集。ふるさとがテーマなのだけれど、ほっこりする生ぬるいものじゃなく、もっとヒリヒリピリピリする剥き身のふるさとってかんじ。
    一筋縄ではいかない。解説にもそんな表現があった。
    ふるさとについてもっと寛容に大胆に考えてもいいんじゃないかと思われせてくれた。

    桜の下で待っている。
    それは誰かが自分を、ではなく、自分が誰かを。
    自分はここにいる。受け入れる。そんな強さを持って入られたらいい。そんな風に思えた作品。

  • 東北新幹線で東京から、1話ずつ異なる主人公を乗せて北へと進んでいく短編集。
    降りた土地で、それぞれが気付きを得ていく様子が柔らかくやさしい。各話から花の香りがしてくるような副題も素敵。

    隣にある暗闇に、たしかに輝くきらきらしたものを見つける「ハクモクレンが砕けるとき」が特に好き。

    それぞれの話で描かれる、身近な暗闇としての死や別れ、その中の明るいなにかが丁寧に拾われていて、感情がほどけた読み味。

  • お気に入りの作家さん。
    言葉の使い方に、なんとなく惹かれる。

    以下、ネタバレ。

    「モッコウバラのワンピース」が良すぎた。
    67歳になる祖母を訪ねて、宇都宮を訪れる孫。
    唐突に恋に落ち、今まで住み慣れた家を離れ、今は一人で暮らす祖母。
    地縁と遺産の云々から、一族の仲にヒビが入っても貫いた祖母の想い。いいなー、と思った。

    「私ら姉弟はいつのまにか、ばあちゃんはもうなにも欲しがんないで、変わらないで、このまま、じいっとみんなの世話をして、きれいに衰えて死んでいくもんだって決めつけてたんだよ。」

    知らない間に、自分が自分に課した役割を、全うすることばかりに目が行くようになっている。
    何になるか、何をするか、小さい頃は無限に思えた選択肢が、急に一つになっていた。
    その一つを、こんなハズじゃなかったとか、もっと良い選択肢に「更新」出来ないかとか、いろいろ回って回って、手離せずにいる。

    でも、祖母の生き方に触れて、智也の母が気付いたように、自分もふと軽くなった。

    「からたち香る」では、彼氏の故郷・福島を訪れる彼女の、複雑な心境を描いている。
    お互いに、なかったことに出来ない「現在」の中で、気遣い合って、窺いあう。

    懐かしくも苦くもある故郷にまつわる短編集。
    なのに、サラッと流れる時間を楽しめた一冊だった。

  • 東北新幹線でゆかりのある場所に向かう5つのストーリー。

    ふるさと、というと一般的には温かいものと連想されがちだけど、それだけではない、
    少し面倒だったり、緊張したり、複雑な思いがあったり、
    そんなところが共感できて良い。

    『モッコウバラのワンピース』と『菜の花の家』が好きだったけど、
    それまでの4つの物語の深みが増す最後の『桜の下で待っている』も良かった。

  • 2.8

  • 表紙のイラストがよくて読んだ
    緩やかで、ページを捲るのが止まらないという感じではなかった
    東北新幹線に乗ってみたくなった

  • 話の内容には関係ないけれど、この前東北旅行に行ったおかげで知った地名や駅名、行った場所がたくさん出てきて、自分の世界が広がったことを実感した。

  • 新幹線に乗る、ことでも
    人それぞれ沢山のドラマがあり
    ふるさとの捉え方もそれぞれで
    面白かったです。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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