- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422210964
作品紹介・あらすじ
トロイアの遺跡、クノッソス宮殿、ミロのヴィーナス…。遺跡・遺物の宝庫であるエーゲ海周辺で繰り広げられた発掘調査の歴史は、国家間の破壊、略奪という負の歴史でもあった。ギリシアの豊かな芸術遺産を巡る国と人との物語。
感想・レビュー・書評
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古代ギリシアを対象とする考古学の歴史をたどる本。豊富な図版とともに、ヨーロッパ各国とギリシアの本国が、近代以降の政治的な変化を背景にしてギリシアの発掘に情熱を傾けてきた歴史、それと同時にヨーロッパ各国による方法論が確立されていない、略奪まがいの発掘や遺物収集が行われてきた歴史が描かれている。
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ディドロはこう言っています。
「廃墟は私のなかに偉大な思想を呼び起こす」
まだ、ギリシアの遺跡が今のように発掘されず、
奇々怪々な土地だったとき、
欧州人にとってその土地は、
新たな発想や思想を呼び起こす聖地だったようです。
今では発掘も復元も進み、
すっかり観光地のギリシア。
いまに至るまでには戦禍も乗り越えてきました。
アクロポリスがオスマンに占領された時の話です。
弾薬が無くなったオスマン占領軍は、
遺跡の列柱を崩し、中の亜鉛で弾薬を作ろうとします。
対するギリシア人は、
「アクロポリスの列柱に手を触れるな。弾丸はこちらから送る」
と訴え、味方を狙う敵方に、本当に弾薬を送ったそうです。
そんな犠牲を払いながら、ギリシアの遺跡群は守られてきたわけです。
しかし、古代ギリシアの輝かしい歴史を語る、
多くの石像やレリーフは他国の先進国にあります。
盗掘や様々な政治背景を経て、そうなったわけですが、
本来それはギリシアにあってしかりのもの。
「あの石像たちは、わずかな空にはがまんできない」
ギリシアの偉大な詩人ヤンニス・リトソスは、ギリシアの現実をこう嘆いたそうです