言語学フォ-エバ-

著者 :
  • 大修館書店
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本棚登録 : 71
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469212747

作品紹介・あらすじ

言語と言語学を愛してやまなかった著者による珠玉の精選エッセイ集。ラーメンの命名論からスラブの文字までことばの面白さと奥深さを語る、目からウロコの17篇に書き下ろし1篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • 言語学をやってると、千野栄一先生の本にはどこかで触れることになる。大学時代、千野先生の文章を何度か読むことがあったが、研究論文ばかりでエッセイはほとんど読んでいなかった。

    本書は、千野先生の主な言語学エッセイの中から選び抜かれた作品を集めたもの。最終章は先生が亡くなる二週間前に病院で執筆された書き下ろしらしく、それまでの17のエッセイを包括するかのような内容になっている。

    序盤の3章は「言葉とは、通訳とは、翻訳とは何か」というテーマ。4章から6章は「名づけ」という観点から言語学の面白さを紐解く。7章から10章は、言語や単語表現がどのように文化やその言語が使われている世界を表すのか、という文化人類学にも関わるような話。11章から17章までは、著者の専門だったスラブ言語について、様々な角度からその奥深さに触れていく。

    軽く読むなら1章から6章ぐらいまでが面白い。言語学をやってる人なら、たぶん4章から10章ぐらいまでが楽しいはず。スラブ言語に特化する11章以降は言語学の素養がない人にはちょっと重いかもしれないが、幸い、著者が軽快に筆を進めてくれているので、それほど立ち止まらず、迷わずに読み進めることができる。

    この著者に限らず、「学者なのに読みやすいエッセイを書ける」というのは、やはり一つの稀有な才能だなぁと思う。おかげで、言語学をとっかかりにして他の学問分野にも目を向けることができる。ありがたい。

  • 米原万里『打ちのめされようなすごい本』でも紹介されている本、正直言語学に関する内容は難しくて読み切れない部分もあるけれど、学問って尊いってことはすごく感じる。最終章で触れている青木晴夫著『滅びゆくことばを追ってーアメリカインディアン文化への挽歌』も読みたくなった。

  • 言語学、特にスラブ系の言語学の説明が後半ではある。しかし、言語学の教科書を具体例で丁寧に説明しているので、言語学の教科書を読むほどではなかったり、少しは言語学に興味がある学生にとっては参考になる本であろう。言語と文化の類推の暴論として、日本語は曖昧言語であるから文化もあいまいであるというようないい加減な論を看破している。
     大学の授業で、ヘリコプターは飛行機かという疑問にいつもは眠っているような学生が議論で発言したというところは面白い。

  • ●言語学にまつわるエピソードを軽妙に語る本書。言語学についての知識がなくてもなるほどと思うところもあった。

  • 同著者の言語学 私のラブストーリーがとても面白かったので、本書を手に取った。言語学 私のラブストーリーと類似した内容も多いが、比較的専門的な内容となっている。しかし、著者自身のエピソードを交えて書いてあるため、とても分かりやすく、また楽しんで読むことができる。著者の言語に対する愛着や純粋な好奇心が文章の節々で感じ取ることができる。それでいて、言語に真摯に向き合い、大きな功績を挙げながらも謙虚で誠実な態度をしているところに尊敬の念を抱く。

  • 言語学エッセイ
    エッセイ…随筆とは筆者の体験などに対する感想や思索なので軽めの読みやすい文章という印象がある
    しかしながら、筆者自体の知的水準が高いと感想、思索が深く、理解が追いつくのもままならない、という事を感じさせてくれた
    著者自身は故人であるが、他の著作を読んで、改めて読み直してみたい

  • 千野先生のさまざまな書きものから作品をピックアップしてまとめた1冊。
    ことばの面白さにやさしく触れられる章から、結構しっかりした言語学の章まで、まさにオムニバスで楽しい1冊。
    40年ほど前に書かれたものとは思われないくらい、全く古いとは思われず、楽しく読めました。いろんなことばのこと、もっと知りたくなりました。

  • 言語学について少し深く知ることができる本。
    前半は、言語について、これが「いかに巧妙なメカニズムから成り立っているかは、絶えず人類の関心の的で」あったというわかりやすい話から、著者の通訳でのおもしろい経験、地名学と言語、各言語の数の数え方(言語により2進法、5進法、二十進法などがある)など、読みやすく興味深い内容であったが、スラブ語の二種類の文字の話あたりからはこれまで聞いたことのない内容なので読む速度が一気に遅くなってしまった。
    最後に、「一つの言語の記述もきちんとできていない人が、たくさんの言語について書いているものは信用できない」という著者の恩師の言葉が紹介されており、様々な言語に興味を持つことはいいが、一つの言語をまず極めよという戒めの言葉として受け止めた。

  • 著者が生前に発表した文章を再編集したもの。没後すぐに刊行されて10年経つが,このような本が文庫になってもっと広く読まれればいいのにと思う。ドイツ語圏で囲まれた小さな地域に,絶滅寸前のスラブ系言語があって,ナチスの時代は必死になって人々がその言葉を守ろうとしたが,圧迫がなくなると却って衰退が進んで,唄や絵本を作って頒布しても全く歯止めがかからない,との一節が心に残る。北海道ではアイヌ語が全く同じ状況だから。その他,千野先生が英語を題材にして書いたショートストーリーなども,すこぶる面白い。まだ手に入るかな。

  • 最近(2008年秋)のマイブームは、千野先生の言語学関係のエッセーです。
    何で今頃、自分の中でブームが来ているのかわかりませんが、図書館で借りていろいろ読んでます。

    <既読>
    <所在:図書館(060200311183)>

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著者プロフィール

千野 栄一(ちの・えいいち):1932-2002年。東京大学言語学科、プラハ・カレル大学スラヴ語学科卒。東京教育大学助教授、東京外国語大学教授、和光大学教授・学長を歴任。主な編著書に『言語学大辞典』(全6巻、共編)『世界文字辞典』(共編)『言語学の散歩』『プラハの古本屋』『外国語上達法』、主な訳書にチャペック『ロボット』、クンデラ『存在の耐えられない軽さ』などがある。

「2022年 『言語学を学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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