- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478000649
感想・レビュー・書評
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(K) シュンペーターは創造的破壊と呼び、ドラッカーがイノベーションと呼んでいる新しいことを創造するプロセスについてまとめた本。イノベーションというと、「当たるも八卦当たらぬも八卦」という博打的な要素が濃いと思いがちであるが、ドラッカーはイノベーションはコントロールできると言い切っている。そのために、何に目をつければ良いのか、どこにイノベーションの芽が隠れているのかを洞察した内容。「予期せぬ成功と失敗」にイノベーションの芽が隠れているらしいが、言われてみれば特に予期せぬ成功はほとんど分析されていないということに気が付く。そういう意味では、我々の組織にはイノベーションを創造する文化が埋め込まれていないのではないかと感じる。
発展途上国が急速に力をつけ、我々をキャッチアップしている現在、我々先進国がやるべきことはイノベーション以外になくなってきている。その危機意識が不足しているというのも恐ろしい事実である。その危機を我々一人ひとりがもっと実感し、何をしなければならないのかを語り合い、そして行動を起こしていくことが重要である。本書はそのディスカッションのきっかけを与えてくれるはずである。
でも、正直言えばなかなか頭に残りにくい本だった。ドラッカー独特の言い回しが文章の意味を広げすぎていてわかりにくくさせているという部分もあるが、何よりも読み手のレベルが追いついていないというのが大きな問題だと感じた。数年後に改めて読み直してみると、別の発見があるのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・予期せぬ成功は最もリスクが小さく、最も成果が大きいイノベーションの機会である
・予期せぬ成功を検討するために特別な時間を割き、分析すし、その利用法を徹底的に検討する仕事を誰かに担わさなければならない
・予期せぬ失敗もイノベーションの機会ととらえる
・アメリカのGEは財務畑の人物によってつくられた。知識のよるイノベーションの多くが、科学者や技術者よりも素人を父にもつ結果になっている
・イノベーションの三つの「べからず」――?凝りすぎてはならない?多角化してはならない?未来のために行ってはならない(現在のために行う)
・既存のものの廃棄は、企業がイノベーションを行うようになるうえで絶対に必要なことである
・イノベーションには予想以上の時間がかかり、予想を超えた努力が必要となる。また、最後の段階になって必ず問題や遅れが出るため、成果の規模を目標の3倍に設定することは初歩的な心得である
・多角化は市場や技術について既存の事業との共通性がない限りうまくいかない -
日本の競争力を回復するため、イノベーションの必要性が官民あげて叫ばれている。とくにIoT、AIを活用した業界を破壊するイノベーションが米国を中心に生まれていることから、彼らの手法に学べとデザイン思考、リーンスタートアップなどが大流行である。
このような流行は2010年ごろからだろうか。
だが20年以上前に、あのドラッカーがイノベーションについて記したのが本書である。
イノベーションを体系的に行う手段として次のような内容が説明されている。
・まず人口、経済、技術など7つの機会を分析する
だがイノベーションは理論的な分析であるとともに知覚的な認識であるとして、
・実際に外に出て、見て、問い、聞く
という左脳と右脳の両方を使うことを強調し、実行する際には
・焦点を絞り単純な構造にする
なぜならば新しいことは何が起こるのか分からないので単純でないと修正がきかないからだ。
表現は違うが、本質的には現代で言われていることと同じではないか。
本書はさらに、イノベーションのための組織、評価基準、ベンチャーの扱いなど多岐にわたって鋭い論考が述べられ、既存企業がイノベーションをうまく利用するための指針となる。
新しい本もよいが、この古典から学べることの方が多いと感じる。 -
避けては通れない古典。今日では色んな人が異口同音に語っていることのエッセンスが本書に散りばめられている。決して読み易くはないけれど、やはり読んでよかったと思う。
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イノベーションと企業家精神。
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最近再びハマっているドラッカー本。
イノベーションとマネジメントについて学ぶならってことで、
ドラッカー本を手に取りました。
相変わらず難しい内容が書いてあり、
全てを理解しきれていないとは思いますが、
当たり前ではあるが実践できていないこと、
イノベーションを実現するにあたって考えないといけないこと
を体系的に学ぶことが出来ます。
事例について多くページを割いているところも良かった。
ただ、難しい内容で事例が多いと眠くなってしまいます。。
「優れたマネジメントは、どこにいっても優れている」
と言われるようなマネジメントが出来るようになりたい。
【勉強になったこと】
・マネジメントが報酬を支払われているのは、
判断力に対してである。
マネジメントは、自らの過誤を認め受け入れる能力に
対しても報酬を支払われている。
・予期せぬ失敗に直面したときは、検討・分析の前に
まずは現場がどうなっているかを見聞きすることが重要。
何がどうなっているかも分からず検討・分析するのでは
全くもって意味が無い。
・ニーズに基づくイノベーションを実現する前提
①完結したプロセスについてのものである
②欠落した部分や欠陥が一箇所だけある
③目的が明確である
④目的達成に必要なものが明確である
⑤もっとよい方法があるはずとの認識が浸透している
特に⑤が無いと顧客に受け入れてもらえない。
・必要な知識のすべてが用意されない限り、
知識によるイノベーションは時期尚早であり、
失敗は必然である。
・知識によるイノベーションを実現しようとするときは、
失敗したときに分析することが効果的である。
分析することによって、欠落している知識を理解する。
・イノベーション3つの「べからず」
凝りすぎない、多角化しない、未来のために行わない
・イノベーションを成功させる3つの条件
集中する、強みを基盤とする、経済や社会を変える
・イノベーションに成功する者は保守的である。
かつ、機会志向である。
・企業家精神を組織内で当たり前のものにするには、
イノベーションの機会に気づく仕組みを作ることが大切。
例えば、報告書には問題・課題だけではなく、
期待や計画を上回った内容についても報告させる。
予期せぬ成功は、イノベーションの機会兆候である。
・優れたマネジメントとは、どこへ行っても優れた
マネジメントである。もちろん仕事の内容ややり方は違う。
だが、考え方や分析の仕方は同じである。
・ベンチャーが成功する4つの原則
①市場に焦点を合わせること
②財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について
計画をもつこと
③トップマネジメントのチームをそれが実際に必要となる
ずっと前から用意しておくこと
④創業者たる企業家自身が自らの役割、責任、位置づけ
について決断すること
特に④が難しいかもしれない。自分が起こした企業でも、
自分が必要ないと感じた場合は身を引く決断を迫られる
という意味だから。
・組織に共通する重要な活動は、
人のマネジメントと資金のマネジメント
・みんなを満足させる=誰も満足させられない
ということ。機能特化が好まれる。 -
イノベーションとはなんなのか、どのような人物か企業家といえるのか、そんなことについて論じた本。僕たちは「イノベーション」とひとくくりにしてしまうけど、ドラッカーはイノベーションをいくつかのタイプに分けて、それぞれについて的確に論じている。企業家については、ニッチ市場の企業家について論じているのが印象的だった。ニッチ市場も決して楽ではないみたい。
ドラッカーの本は分かりやすい。それは例えが適切だからmだと思う。日本人でも「なるほどな」と思える。それが魅力のひとつだよね。 -
複雑に絡み合った事象から繰り出す鋭利な法則。
当たり前に見える風景から切り出す非常識とも思える見識。
普通を普通として受け取らずに、
疑問を疑問のままにせず、
考えて行動し失敗し成功する。
これぞイノベーションと企業家精神、か。
(以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
●外部の予期せぬ変化をイノベーションの機会として利用し成功する条件は、
その機会が自らの事業の知識と能力に合致していることである。
(中略)
自らの事業の性格を変えてはならない。
多角化ではなく展開でなければならない。(P.44)
●1870年に発明されたプロセスそのものが、
これも昔から知られているように基本的に不経済である。
物理の法則に反し、したがって経済の法則に反する。
(中略)
一貫製鉄所では加熱と冷却を四度繰り返す。
(中略)
このような高炉に特有の弱みを緩和するイノベーションを行えば
(中略)
電炉は一度加熱するだけである。(P.48)
○人口の年齢構成に関して、
特に重要な意味をもちかつ確実に予測できる変化が、
最大年齢集団の変化、
すなわち人口の重心移動である。(P.99)
○コップに「半分入っている」と「半分空である」とは、量的には同じである。
だが、意味はまったく違う。とるべき行動も違う。(P.102)
○科学上の新理論が、ほぼ同じリードタイムを要することは偶然ではないと思われる。
トーマス・クーンは、その画期的な書『科学革命の構造』(1962年)において、
科学上の新理論がパラダイムとなり、ほかの科学者によって認められ、
それぞれの研究に組み入れられるには30年を要することを明らかにしている。(P.122)
●1860年代にペレールの銀行が失敗した後、
(中略)
はるか遠くの東京の若者、
日本人として初めてヨーロッパの銀行をその目で見、
パリと、ロンドンのロンバード街で過ごしたことのある渋沢栄一だった。
彼はいわば日本型のユニバーサル・バンクを設立し日本経済の基礎をつくった。(P.125)
○スワンはエジソンと同時期に電球を開発した。
技術的にはむしろ彼の電球のほうが優れていた。
しかしエジソンは技術的なニーズを研究しただけではなく、
その後の戦略についても考えていた。
ガラス球、真空、密閉、フィラメントなどの研究に着手する前から
システム全体の構成を描いていた。
電力会社の電力に合った電球を考え、
利用者に電気を引く権利や、電球の流通システムまで構想した。
スワンは科学者として製品を生み出したが、エジソンは産業を生み出した。(P.134-135)
○成功したイノベーションは驚くほど単純である。
まったくのところ、イノベーションに対する最高の賛辞は、
「なぜ、自分には思いつかなかったか」である。(P.158)
○新しい事業に、担えるはずのない負担を負わせてはならない。
しかし、新しい事業を担当する人たちをしかるべき報酬によって動機づけなければならない。(P.193)
○失敗をほめる必要はなくとも、挑戦に罰を与えてはならない。(P.194)
●何千年も前から、あらゆる宗教の伝道師たちが肉欲に克つべきことを説いてきた。
ところがほとんど成功していない。
飢餓撲滅運動のリーダーは「現在の配給システムが到達しうる地域の子供たちの可能な限り多くが
発育不全にならないだけ食べれるようになれば、われわれの使命は終わる」などといおうものなら、
リーダーの地位を追われるだけである。
目標が最大化にあったのでは決して達成されることがない(P.211)
○新しい顧客を満足させるために新しい性能を加え、
さらに次の顧客を満足させるために次の性能を加える。
こうして単純な機器だったものを複雑きわまりないものにする。
機器の機能を最大化する。
その結果、その機器は誰も満足させられないものになる。
なぜならば、みなを満足させるということは誰も満足されられないということだからである。(P.275)
○ニッチ確保に成功した企業は、たえずその技術の向上につとめなければならないということである。
常に一歩せんじなければならない。
まさに自らの手によって自らを陳腐化していかなければならない。(P.289) -
今のところ一番面白い。
自分の関心が向いているところと重なっているからかもしれない。
要再読。 -
イノベーションを体系的に取り上げたもので、7つの手法があるということ。管理者的立場ではなく、企業家的立場でないとイノベーションを取り扱えないということ。。戦略論では、ポーターの競争の戦略の方が浸透しているのは、やはりドラッカーの提案は分かりにくかったからだろう。