正義の教室 善く生きるための哲学入門

著者 :
  • ダイヤモンド社
4.34
  • (162)
  • (117)
  • (33)
  • (3)
  • (5)
本棚登録 : 1658
感想 : 138
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102572

作品紹介・あらすじ

ソクラテス、プラトン、ベンサム、キルケゴール、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc。人類誕生から続く「正義」を巡る論争の決着とは?私立高校の生徒会を舞台に、異なる「正義」を持つ3人の女子高生のかけ合いから、「正義」の正体があぶり出される。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 哲学という勉強をそういえばしてこなかった
    わかりやすそうな良い本はないかと思っていたところ
    佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)
    「抜群に面白い。サンデル教授の正義論よりもずっとためになる」
    とあるではないか‼︎
    というわけでこちらに決定

    30人の幼児と自分の娘、どちらを助ける?

    ソクラテス、プラトン、ベンサム、
    キルケゴール、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc。

    哲学者たちは「正義」をどう考えたのか

    ---備忘録---

    ★正義の判断基準は3つ
    ①平等
    ②自由
    ③宗教

    ①「平等の正義」
    ・功利主義
    ・幸福を重視せよ
    『全員の幸福度を計算し、その合計値が一番大きくなる行動をしなさい!それが正義だ』
    ・この定義における悪とは…
     正当な理由もなく、人間を差別して平等に扱わない行為

    ○功利主義とは幸福主義
     物事の正しさを幸福の量によって決めよう
    ○『功利主義」創始者ベンサム(イギリスの哲学者、法律家)
    ■ベンサム式幸福の定義
     幸福→快楽が増加or苦痛が減少
     不幸→快楽が減少or苦痛が増加
    ■ベンサムの発明「パノプティコン(刑務所)」
     中心に監視塔をもつ円形の刑務所
     監視塔にはブラインドがあり、囚人側から看守の姿は見えないが、囚人は常に見られているかもしれない…というシステム

    ○「功利主義」の問題点
    ・幸福度を客観的に計算できるのか
    ・身体的な快楽が幸福だと言えるのか
    ・功利主義は強権的になりがちというパターナリズムの問題
    例)強い者が弱い者のためだとして、本人の意思を問わずに干渉や支援をする 他人を抑圧する行為になりかねない 

    共産主義…平等の正義を旨とし全体の幸福度の最大化を目指す→強権的で抑圧的な政治体制になる


    ②「自由の正義」
    ・自由主義
    ・自由を重視せよ
    ・『個人の自由を守る行動をしなさい!それが正義だ』
    ・この定義における悪…
     人間の自由に生きる権利を奪う行為

    ○弱い自由主義(リベラリズム)
    ・自由主義の皮を被った功利主義
     自由はあくまでも幸福度を増大させるための道具、手段に過ぎない 幸福度の減少につながるとしたら自由を制限しようとする
     自由よりも幸福を上位においている

    ○強い自由主義(リバタリアリズム)
    ・幸福は関係なく、基本的権利である『自由』を守ることであり、そこから生じる結果は一切問わない
    ・他人の自由を侵害しない限り、すべて自由

    ○「自由主義」の問題点
    ・富の再配分の停止による格差の拡大、弱者の排除
    ・自己責任、個人主義の横行によるモラルの低下
    ・当人同士の合意による非道徳行為の増加
    例)臓器売買、人身売買、人肉食

    ③「宗教の正義」
    ・直観主義
    ・道徳を重視せよ
    ・『良心に従って道徳的な行為をしなさい!それが正義だ』
    ・この定義における悪
     宗教または伝統的な価値を破壊する行為

    ○相対主義vs絶対主義
    ・相対主義…物事の価値は他との関係性によって決まるのだから絶対的なものはない
    ・絶対主義…絶対的に正しい、絶対的に善い、といったものがこの世に存在する(ソクラテス)
    ○原子論vsイデア論
    ・原子論…モノは分割していくと原子というそれ以上分割できない小さな粒になり、すべてのモノはその小さな粒からできている
     即ち世界は物質の集まりでそれ以上でも以下でもない
     だからそんなものに善いも悪いもない
    ・イデア論…善や正義などの概念(イデア)は、物質を超えた世界に存在している(プラトン)
     人間が存在するより前に、善という概念が宇宙に存在していた
    ○唯名論vs実在論
    ・唯名論…唯の名前だよ論
    ・実在論…実在するんだよ論
     絶対的に正しいと断言できる普遍的な善が実在する
    ○経験主義vs合理主義
    ・経験主義…人間が思い浮かべられる概念はすべて経験から作られたものでそれ以上でも以下でもない
    ・合理主義…合理的に理性を働かせれば、人間は絶対的な正しさに到達できる(デカルト)
     合理的な思索で神の存在を証明できる
     つまり善の証明も同じくできる

    ○ニーチェ「神は死んだ」
    ・実存主義…『真理』『善』『正義』など超越的な存在を否定
     そういったものを信じるから人間は生きる意味を失った
     神や善や道徳を支配者が人間を都合よく大人しくさせるための抑圧の道具に過ぎない
     実存に目を向けた生き方をせよと訴える

    ■善を追求する哲学をソクラテスが始めて、ニーチェがそれを終わらせた

    ○直観主義の問題点
    ・人間に正義を直感なんてできない
    ・人間に完全な正義がわかるわけがない
    ・人間(有限)が正義(無限)を計り知ることはできない

    ★最後の哲学者フーコー
    『監獄の誕生』
    18世紀頃まで…犯罪者は火あぶりなどの公開処刑 
    19世紀以降…監獄や刑務所というシステムが確立
    刑務所のシステム
    「異常者(囚人)』を保護して「正常人(一般人)」に矯正する
     そのためには、囚人を一定の規律に従わせ、その行動を監視する
     →我々の社会は『監視による矯正』という構造で出来上がっている

    現代
    監視カメラ、盗聴器、SNSなどが監視する
    このシステムは中枢がなく破壊ができない
    人間は自分を支配する構造(社会システム)を、自らの意志で変えることも抜け出すこともできない


    ではどうすれば他者の視線に操られることなく、自由で幸福な人生をを送ることができるか
    他人の視線がないときに、どう生きるべきだと思う人間なのか

    ------------------------

    考えさせられた!
    なんか哲学者たちの屁理屈や自己満足と思うところも多々あったりするのだが、いやいや彼らの惜しみない尽力!と感動したり…
    千差万別の価値観を一生懸命分析したり、なんか人間て捨てたもんじゃないよなぁ(笑)

    そして非常にわかりやすく楽しめた
    例えがたくさんあり、導きがあり、そしてわかりやすい登場人物が居てくれたおかげで楽しく読み切れた!
    重いテーマなはずだし、ストーリー中も心を傷める部分もあるが、彼らの若さがカバーしてくれる
    哲学に興味があるが、難しいことはわからない私のような初心者にはとてもオススメだ

    ただねぇ…
    最後のオチ?
    最後のシメ?
    なのか…

    なんじゃこりゃ?

    うーん
    作者としてはたぶん大満足のエンディング、落ちどころなのはわかるが…
    うーん
    どうも納得がいかないのは私だけだろうか…⁇
    うーん
    ここだけが……ねぇ
    うーん

  • 哲学を学ぶハードルを下げて、哲学の面白さにも気付かされる本である。

    哲学は、自分の人生を如何に生きるかを考えさせられる学問であると思った。

    正義の定義が定まらないまま2500年の時がすぎた。
    私自身もこれまで生きてきて、正義に向き合ったことは初めてだ。
    正義を言語化することが怖いから避けていたのかもしれない。

  • 三種の正義
    平等
    平等の正義 功利主義 最大多数の最大幸福 ベンサム 快楽計算

    自由
    自由の正義 自由主義 弱い自由主義と強い自由主義 愚行権 人間には自分の意思で不幸になる権利がある

    弱い自由 自由より幸福 功利主義
    強い自由 幸福より自由

    宗教
    宗教の正義
    直観主義 枠の外側 イデア論 ソクラテスとニーチェ
    ロールズ 無知のベール をかぶると排除される側だったらと想定するよね。
    格差原理 ベール被ると、金持ちだったらの私と貧乏だったらの私を想像する。裕福な暮らし認めるけど、最低保障もしてよね。
    善や正義は枠の外
    直観主義は、直ちに観る 正義の概念を直接的に観る
    相対主義 他と比べて価値が決まる。ゆえに絶対的なものはない
    絶対主義 絶対正しい、善いというものが存在する ソクラテス 善く生きる
    プラトン イデア論 善や正義のイデア 概念は物質を超えた世界に存在してる

  • 善く生きるとは?正義とは何か?トロッコ問題、殺人鬼に家族の居場所を聞かれた時の対応、なにが正義か?
    平等の正義である功利主義、自由の正義である自由主義(弱い、強い)、宗教の正義である直観主義、そして人間がどう考えるかはその人が生きる社会システムによって形作られるというポスト構造主義。
    どれが正解か、これが正しい!と思ったのなら、それはあなたがそう決めつけたことになる。ただ、自分が正しいと思うことはそれが善いと思うからである。自分が善いと思う行動を取らない限り自由で幸福な人生は起こり得ない。
    272冊目読了。

  • 正義は複雑性を孕んでこそあるものの、分解してみると実に三種類のみに分類される。
    功利主義/自由主義/宗教主義。

    功利主義=マクロ幸福論。最大多数の最大幸福を善とする。

    自由主義=強弱はあれど政治、経済体制やイデオロギーの違いを超えて個人の自由と尊厳を重んじる。

    宗教主義=美徳・直観を重んじる。相対的な善でなく絶対的かつ普遍的な善。イデア論。

    本書のテーマ、正義とはなにか。
    その何かを読者自身への問いかけでもあるように思う。
    筆者自身の思いはあれど、それぞれの正義における功罪、評価点と問題を明示している。
    どの正義にも正義たる所以あれば明らかな欠点もあるからこそ、正義とは何か。
    そして、私は何を正しいと信じる人間なのかを考えさせられた。

    「正義なんて人それぞれ」
    「その時々で正しさは違う」

    などと思って生きてきたことは否定できない。
    相対主義。
    のらりくらりと顔色を変える正しさ。
    もちろん、覚悟を持って相対主義を信じ切れるならばそれも正義と言えるのだろう。
    だが、正しさに無関心ではいけないし、まして正しさを考えることを放棄してはいけない。
    正義とは、正しさとは何かを考え続けることが本当の意味で善く生きることなのだろうと感じた。

    本書の結末を見るまでは。

    ビアンカ・フローラ・デボラ、誰と結婚する?
    え?少なくとも僕はルドマンをヒロインとしては見ていなかったよ?
    なに?
    ルドマンをヒロインとして見ていなかったこと自体がすでに凝り固まった価値観に呪われているってこと?
    そこまで見越したからこそ、あの生々しいまでの描写によってそういう価値観があることを訴えかけたのでしょうね。
    どうも、古い価値観の者でした。
    そっちかーい!と思いっきりずっこけた僕は、まだまだ伸び代がありそうです。

  • 自身が起こす行動の裏付けには
    何かの根拠がある。

    果たしてそれがなんなのか。
    自分の中で形成された哲学が
    ソレによるのではないか。
    そんなことを考えながら、
    また正義とはなんぞや?
    というのを知りたくて手に取った本です。

    自分の行動価値観として最も優位にあるのが
    『自分の子どもに自信を持って教えられるか』
    ※現時点で、妻も子どもはおりません笑

    3つの正義
    1.平等 功利主義
    2.自由 自由主義
    3.宗教 直観主義

    自身が最も共感したのは、
    自由主義でした。
    というより考え方が
    私そのものでびっくりしました。

    どんな時も自由主義です。
    個人がそうすべきと考えたのであれば
    その裏付けも分からず、表面だけで判断するのは善くないことだとおもっているからです。

    例えば、
    電車で足の悪そうなおばあちゃんに席を譲る行為も
    おばあちゃん『退院したばかりで少し運動をしたい』
    という考えがあるかもしれないのに、
    私『席を譲ってあげた』という自己満足の押付け。年寄りは席に座りたくてしょうがないという想い込み。

    ホントに立ってるのも苦しくて、
    席を譲って欲しいのであれば、
    優先席へ行って、席を譲ってほしいと
    伝えればいいのです。

    見たまんまや直感だけでは、押し測れない。
    なにより行動起こすのは自分主体であること。
    それが幸せになる大前提だと信じています。
    他人に誘導されてする宿題よりも
    自身が知りたい!という探究心でする勉強の方が捗るでしょう。


    且つ己を律する方法として
    先ほど記載した行動価値観が
    混ぜ合わさっております。

    なので、
    薬物や不倫なんてすべきものではないし
    かといって他人を咎めようという気もない。

    これを書いていて
    僕は冷たい人間なのだろうか。。。
    と不安になったが、
    もちろん自分がしたい!という欲求のまま
    善い行いもする訳ですし、
    自分の正義が言葉で定義されていて
    凄く腑に落ちました。

    新しい自分と出会えて嬉しいです。

    妻や子どもがいれば
    また違った考え方になるのかな?

    愛に飢えてる
    大晦日の断末魔より笑

  • 様々な議論や考えがあり、結論を出すことが難しい、「正義とは何か」という問い。人間はいかに生きるべきなのか、「善く生きる」といはどういうことなのか。
    2500年間の哲学の歴史を紐解きながら、小説仕立てで進んでいきます。

    世の中の「悪」は”不平等”、”不自由”、”反宗教(宗教または伝統的な価値観を破壊する行為)”であるとし、それらの悪を侵さず改善しようとする行為を「正義」として整理するところから、議論がスタートします。
    平等の正義を実現することを目指す功利主義。
    自由の正義を実現することを目指す自由主義。
    宗教の自由を実現することを目指す直観主義。
    それぞれの思想の創始者や考え方の原則、また主張に対する反論などが、登場人物の性格も関連させながら授業形式で開設されており、他の一般的な哲学・思想の入門書よりも(哲学者の主張の細かな部分が正確かどうかはさておき)簡潔に要点がまとめられていてとても分かりいやすかったと思います。

    主人公の「善く生きる」ためには「正義とは○○である」という公式や法則を決めるのではなく、他者に観られているかどうかに限らず、それぞれの場面で「自分にとって善いと考えることをおこなう」ことこそが、この監視社会(相互監視社会)で”自由で幸福な人生を送る”ために必要な事である、という主張には納得ができる部分もあるように感じます。

    功利主義の訴える「最大多数の最大幸福」という考え方もすべてが間違っているとは思いませんし(「幸福」という主観的な要素が”最大幸福”の集計を不可能にしている=「最大幸福」など正確に把握できないという批判はありますが)、自由主義の訴える「他人の自由を脅かさない限り、個人の選択は自由だ」という考えにも同意できる部分は多々あります(一方で、社会的弱者を単純な自由競争の下で切り捨て続けることには、それこそ”倫理的”に賛成できない部分もあります)。
    そして直観主義の、実存を超えた世界に「善」があり、それに従って過ごすべき、という論に対しては、完全に否定することはできないにせよ、いささか独善的な印象も受けます。
    そして、構造主義・ポスト構造主義の哲学思想の主な主張についての解説も明快で、非常に勉強になりましたし、自分なりに考えることができた読書になりました。

    ただ、ラストの”オチ”というか、展開がどうもスッキリしない印象です。もちろん、「既存のシステム(構造)」や、周囲にどうみられるかという価値判断ではなく、悩みながらも自分自身にとっての「善」を突き詰めて考えだした主人公の決定を、受け入れられるかどうかということを読者に突き付けているのだとは思うのですが、「そうだ、主人公の決定は正しい」と声を大にして言うことには少し抵抗を覚えます。
    古くさく、自分の価値判断を独善的に押し付けてしまうことになりますが、あえて「この結末は”倫理的に”どうなのよ」と言いたい。

  • 【星:5.0】
    とある私立高校を舞台に、4人の生徒と1人の先生を中心としたドラマの中で「正義とはなにか」が語られていく。

    「正義」について考えさせられ理解が深まるとともに、「哲学」というものがどんなものなのについても理解が深まった。

    哲学に興味があるが何から学んでいいか分からない、そんな人には是非ともオススメしたい1冊である。

    また、「哲学」というテーマを抜きにしても、1つのドラマ単体としても十分に面白い。

  • 正義とは何か、倫理の授業を通して考えを深める生徒会メンバー達の青春ストーリー。
    哲学を大枠から説明してくれるので、授業で各論を学ぶ度にここに立ち返ると、理解が深まる。

    ただ、、ラストがちょっと行き過ぎな気がして読後感が多少悪くなってしまった。。

  • ソクラテスやプラトンが唱えた哲学における正義ちついてを学校生活の送る正義という主人公と3人の女子高生とのやり取りを通じて書いた一冊。

    抽象的な概念としてある正義という概念を平等の功利主義、自由主義、宗教の直観主義という3つを個性的なキャラクターと倫理の授業を通して学ぶことができて非常に勉強になりました。
    それぞれにおいて判断基準が違うことや監視と正義についてなど学園生活や倫理の授業を通して人間として生きる上での正義について色々と考えさせられました。
    また、学園内が監視されているパノプティコンシステムと学生たちの葛藤が私たちの現代の生活にも繋がっている描写も非常に考えさせられるものがありました。

    答えの出ない正義について哲学として考えた場合の解釈や問題点を本書で知ることができ勉強になりました。
    本書で感じた思いや学んだことを日常においても意識していくことによって多様な考えも受け入れることにつながると感じた一冊でした。

全138件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東北大学大学院修了。会社経営者。哲学や科学などハードルの高いジャンルの知識を、楽しくわかりやすく解説したブログを立ち上げ人気となる。著書に『史上最強の哲学入門』『14歳からの哲学入門』などがある。

「2020年 『「最強!」のニーチェ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

飲茶の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×