- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478113271
作品紹介・あらすじ
人体の構造は、非常によくできている。汚い例になってしまうが、私たちが「おなら」が できるのは、肛門に降りてきた物質が固体か液体か気体かを瞬時に見分けて、「気体の場合のみ気体だけを排出する」というすごい芸当ができるからである。
著者は、学生時代の解剖学実習で思わず仰天したことがある。脚が1本あたり 10kg 以上も あり、持ち運ぶのに信じられないほど苦労したのだ。ちなみに腕も1本4~5kg あり、意外なほどにずっしり重い。私たちは、身の回りにあるものの重さを、実際に手にしなくと もある程度正確に推測できるが、大変不思議なことに、自分の体の「部品」だけは、日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらずその重さを全く感じない。これは、自分の腕や脚 は自分の体に最も密着していて、かつ肩(三角筋)や背中(広背筋)、臀部(臀筋、腸腰 筋)などかなり大きな筋肉で支える仕組みになっているからだ。
このような人体のしくみを探求する学問、それが医学である。医学は自然科学の一分野であり、物理学、化学、地学、数学、生物学・・・と並び称される学問として、人体の構造や機能、疾病について研究を積み重ねている。医学や人体に関する知識は、身近であるにもかかわらずあまり学ぶ機会がない。学校でも、 ごく一部が理科の授業で扱われる程度で、多くの人が「医学や人体の最も面白い部分」を学ぶことがない。
本書は、外科医けいゆうとして、ブログ累計 1000 万 PV超、twitter(外科医けいゆう)アカウント8万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介していく。健康情報として医学を取り上げるのではなく、サイエンス書、教養書として、人体の面白さ、医学の奥深さを伝え、読者の知的好奇心を満たす一冊。
感想・レビュー・書評
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ベストセラーのようなので気になりまして…
ただ病院が苦手で医療現場のテレビ番組さえ見れない身としては想像力を抑え込むのがなかなか大変であった(笑)
■はじめに…
いきなり人体の偉大さを以下で教えてくださる
〜私たちが「おならができる」のは、肛門に近づいてきた物体が固体か液体か気体かを瞬時に見分け、「気体であるときのみ排出する」という機能を持っている
私たちの肛門はおならと大便を瞬時に識別できる
当たり前に思っていたがよく考えたら凄い仕組みだ
さらに肛門は直腸に溜まった便をせき止めておき、好きな時に排出できる(下痢の時は無理)という機能さえも持ち合わせる
→まさに精密機器さながらだ
人工肛門ではこうはいかない
性的に肛門を使う方々は本当に要注意である
■肘をぶつけるとしびれるのは薬指と小指だけ⁉︎
「尺骨神経」によるため
これは薬指と小指の感覚を司っているのだ
→今度意識してみなくては!
■がん三大治療
「手術」、「化学療法」、「放射線治療」
これに加え「免疫チェックポイント阻害薬」が第四のがんの治療と呼ばれるに至る
ある作用によりT細胞ががん細胞への攻撃をやめてしまう…このブレーキを解除する薬が誕生した
副作用が当然ある
「体のある機能を強化すれば、別のある機能に必ず隙が現れる」
「健康」という状態は極めて微妙なバランスで成り立っているのだ
→がんに限らず人の身体は絶妙なバランスで保たれ、生かされている
何かの治療に特化し過ぎれば当然他に支障をきたすのはよくわかる
というわけでついつい病院と薬を避けて生きている
■人は何が原因で命を落とすのか
時代とともに変化する
かつては感染症、現代はがん
感染症は抗菌薬やワクチンなどの著しい進歩と衛生環境改善により減少へ
がんは高齢化による
(がんは使い古した体で起こりやすく昔はがんになる前に他の病気などで死んでいたから)
→わかりやすい時代の変化だ
■細菌とウイルスは全く異なる
・ウイルスは細菌の約100分の1
・細菌は自力で増殖できるがウイルスはできない
・ウイルスは他の生物の細胞に自己のDNAやRNAを送り込み、複製システムを乗っ取るとこで増える
→コロナになりずいぶんウイルスの仕組みと恐ろしさを目の当たりにすることができた
当たり前に打てるようになったワクチンだが、どれほど多くの人の命を救ったかと思うと、過去の偉人たちに感謝しかない
しかし今後もウイルスの変化とワクチンのイタチごっこが続くのだろう…
■自分の血液型を知る必要はない
・輸出の際、本人または家族の血液型の申告があったとしても必ず輸出前に血液型の確認を行う
万一、血液型を検査する余裕もない緊急事態の場合でさえ本人の申告を無視してO型の血液製剤を用いる(O型の血清のみA抗原とB抗原があるためだ)
→というわけで、血液型を必ずしも知っておかなくてもいざという時に困らないことがわかった
無論血液型と性格が関連する科学的根拠はない
他にも自然界に存在する猛毒、消毒液は傷の治りを悪くする、全身麻酔のカラクリ、腹腔鏡手術の素晴らしさ、血液はなぜ赤いのか…
など興味深いトピックがたくさんたる
また巻末には「読書案内」があり、個人的に好きな書「若い読者に贈る美しい生物学講義」が紹介されている
またここで著者は
〜何かが「わかった」ときはゴールではない
「無数の問いが生まれる」出発点なのだ
学べば学ぶほど自分の無知に気付かされ、知の世界の奥行きに驚嘆の念を抱くのだ〜
うーん!しびれます(笑)
医学の歴史に触れ(このギリシャのヒポクラテスから始まる医学史がなかなか面白い)、あらゆる人体の部位に触れ分かりやすく導いてくださる
神秘に満ちた人体であるがこうした多くの偉大な方々により飛躍的に進歩を遂げていると改めて実感
とにかく読み易く、知的好奇心を満たしてくれます詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく、体について興味深いことが書かれてた。
体の仕組みについてとか、知らないことや何とも思っていなかったこととか細かく書かれてて自分の知識の無さにビックリ!
これを読まなかったら、不思議にも思わなかったこととかあった。
今、必需品のパルスオキシメーターの発明者さんが、コロナ禍の中亡くなっていたこととか。
1974年に発明されてた。
臓器の個性とか。
知らないことだらけの医療の事も分かりやすく書かれてました。
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人間の身体って上手くできてるよな、という切り口での様々な話。自分の身体の事だけに興味がある内容だし、分かりやすくてどんどん読み進められる。
意識しなくても身体が勝手に動いてくれる。手ブレ補正なんてなくても目は対象を捉えてくれるし、明るさにも暗さにも順応する。歯の表面を溶かす「脱灰」に対し、唾液が再石灰化で修復してくれる。心臓は安静時に毎分約5リットルの血液を送り出す。便とオナラを出し分ける。性器は必要な時だけ必要なモードになる。
他にもアレルギーの話とかワクチン、輸血や体温、医療機器や癌の話など幅広い。勉強になる。病気や老化がなく、健康の心配をせずに生きられるのが一番だなと思うが、健気に無意識的調整をする身体に対して、やってはいけない事をしてしまう人間の意識の矛盾は不思議だ。食べ過ぎたり、飲み過ぎたり、夜中まで付き合い睡眠を削ったり。人体は素晴らしいが、案外、不合理さを求めて自ら衰えていくのが、人間の本能なのかも知れない。 -
現役医師による、人体のしくみ、病気、医学史、健康の常識、教養としての現代医療、の5つのテーマのもとに、それぞれにつき様々なトピックを医学素人にもわかりやすく解説した本。
例えば、腕1本は4キロ、脚は10キロくらいの重さがあるのに、なぜわれわれはそれらの重さを感じないのか?とか、病気と健康の境目は?全身麻酔は日本で生まれた、自分の血液型は知る必要はない、ある日本人が発明した画期的な医療機器等々、知って役に立つことから、役には立たないが面白いトリビア的な話までが、エッセイ風文体で気軽に読める。
ちなみに、上記の画期的な医療機器とはコロナ禍ですっかり有名になった、血中酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」のこと。本書ではそれを「医学史に残る偉業」とまで褒めたたえている。
詳細は本書を読んでいただくとして、初歩的な医学知識が気軽に読める本書は、誰もが今までより一層健康に関心があるこのご時世、うってつけの一冊だと思った。 -
非常に分かりやすくて興味深かった。特に今の医療ができるまでの歴史が印象的で、今は当たり前のことでも少し前までは当たり前じゃなかったんだと改めて気づいて驚く。麻酔がある時代で本当に良かった…。
今ある苦痛も未来ではなくなっているといいな。たとえば無痛分娩も、日本では遅れているけど各国では進んでいるし、当たり前になるのもすぐだろうな。 -
自分の体の中(筋肉、臓器、脳そして心など)に
とても興味を持っている私にとって
知的好奇心を十分満足させてもらえる本でした。
とくに、近々手術に立ち会う予定があるので
それに関する内容が役に立ちました。
たとえば外科医の皆さんは手術後本人やその家族に
切除した臓器を見てもらうことがあり
その人たちは人間の臓器を見るのが初めてでも
目の前の実物は全くもって既視感のある姿をしているので
妙に納得するそうです。
(小腸や大腸が焼肉のホルモンそっくりだから。)
私は実際に臓器を目にしたとき、自分がどう反応するか
ということにとても興味があります。
(子どもの頃興味半分で自殺直後の現場にいって
しばらくトラウマに苦しめられた)
またもう一つタイムリーだったのは、前立腺がんの話。
私は130冊ちかく佐藤優さんの本を読み
たくさんのことを教えていただきました。
その佐藤さんが前立腺がんであると
6日前に公表し、ショックを受けました。
しかしこの本によると
〈実は、亡くなった人の体を解剖すると、
偶然に前立腺がんが見つかることがある。
その割合は、50歳以上の約20%
80歳以上の約60%にも及ぶ。
この前立腺がんは、おそらく不快な症状を起こさず、
命を脅かすものでもなかったため
発見されないまま宿主が死を迎えた。
このようながんを「ラテントがん」という。(略)
これらの多くは、進行が極めて遅いために
「寿命のほうが先に来た」と言い換えることもできるだろう〉
佐藤さんのがんも、別件でみつかったから、
ラテントがんかもしれない。
もしそうなら、私はそんな落ち込まなくてもいいのかもしれないですよね。
ところで研究者による成果がここでたくさん紹介されていますが、いくつかはなかなか認めてもらえず、中には亡くなってから初めて評価されたものもあります。
今こうしている間にもたくさんの方々が研究を重ねていることでしょう。
頑張ってほしいです。
最後にもうひとつ。
〈今の日本人の多くは、がんか生活習慣病か加齢で亡くなる〉
ですが、15歳~39歳までの死因第一位は自殺だそうです。
これ、すごくもったいないですね。
又吉直樹さんが『夜を乗り越える』で紹介していた
中村文則さんの『何もかも憂鬱な夜に』をとりあえず読んでほしい。
私だって何度も「死にたい」と思ったけど、
今回この『すばらしい人体』を読んで
体が奇跡的に素晴らしく作られているということもあるが
せっかく生まれてきたんだから、
こういう面白い事実を
できるだけたくさん知っておきたいなと思います -
ネットでの評判を見て読んでみました。
本の冒頭に記載されている「美しく精巧な人体の仕組み」とありますが、正にその一言に尽きます。
当たり前のように思っている人体の仕組み、病気や怪我をして健康のありがたみを知る、それを読書で知ることのできる一冊でした。 -
人の体ってすごいですよね。ちょっと考えただけでも不思議なことだらけです。
ただ専門的な話をされても全然頭に入ってこないのですが、この本はその凄さを平易に、人間ドラマ交えて描いてくれているのでとても読みやすい。そしてそれが身になったかは僕の頭次第。それもまた人体の不思議。 -
「あなたの体をめぐる知的冒険」と副題にあるように、腕の重さはどれくらいかとか、なぜ肛門がおならと大便を識別できるかとか、誰でもが普段気にしないことに焦点を当てわかりやすく説明しており、ベストセラーになるのも納得できる本書。
体の様々な機能や病気について具体的に解説し、読者の心を掴んだ著者は、医学の歴史に筆を進める。
医学史での発見者たちを似顔絵を添えて紹介するのも彼らを身近に感じわかりやすい。
現代の医療や新薬の開発は、多くの研究者たちの英知が結集して成し遂げられたとの指摘にも、大いに納得させられる。
現代人は、医学の進歩が生んだ奇跡の技術を享受していることに感謝しなければならないと、改めて思う。 -
文章がとても読みやすいうえに、内容も勉強になりました。
体のしくみについてだけではなく、過去の偉人たちのエピソードがたくさん取り上げられていたのも良かった。
パルスオキシメータを開発したのが日本人だったというのも初めて知りました。
続編も出して欲しいです。