言葉の園のお菓子番 見えない花 (だいわ文庫)

  • 大和書房
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本棚登録 : 905
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479308577

感想・レビュー・書評

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  • 勤めていた書店が閉店してしまい、職を失った一葉。実家に帰り、亡くなった祖母の連句のノートを見たことがきっかけで、連句の会に参加するようになる。

    タイトルから連想するよりもお菓子要素が少なくて、ちょっと肩透かしではあった。話の柱は、連句。私は文章を書くのは好きだけど、短歌や俳句は無理かな〜と思っているので、初心者の一葉といっしょにいろいろ覚えていく。いや、覚えていないけど、こんな世界なんだな〜と朧げに感じながら読み進んでいく。なんとなく、連句の世界を堪能できた気がした。

    もう一つの柱は、一葉のゆるやかな成長。話の中で就職はできなかったけど、書店員時代に手がけていたポップが縁で人脈が広がっていく。そして連句の会では、さまざまな年齢、職業の人との交流で世界が広がっていく。きっかけを作ってくれた祖母がすでに亡くなっている現実に、少ししんみりしてしまうこともあるけど、気持ちが前向きになって、顔を上げて歩んでいける、そんな感じで話は終わる。

    続編ありそうな終わり方だったので、シリーズ化するのかな??だったら、楽しみ。

  •  連句を巻いてる皆さん、本当に楽しそうです。趣味を始めるなら、一人じゃなく、他の人と創るものがいいな、と思えるお話でした。とっても楽しく読みました。

     この本には、色々な要素が盛り込まれています。素敵な方々、食べ物や雑貨たちが登場します。まるでスイーツ盛り合わせのセット?みたいな、いろんな視点で楽しめる作品でした。

     主役は、なんといっても「連句」ですね。句を詠むだけだと思っていた「連句」が、座のチーム力で「森羅万象」を詠む、「様式」の世界だったとは、驚きました。

     そして次が、すでに亡くなった方々、特に主人公の一葉(かずは)さんのおばあ様の治子さんが印象的でした。孫娘にも連句を勧めた治子さん、一緒に連句はできなかったのですが、プランBは成功です。連句には人を救う力があるんでしょうね、治子さんはその経験から、孫娘の幸せを願い、連句を勧められたんでしょう。
     治子さん、「朝ドラ」だったら絶対にナレーション担当ですね。

     最後は、自称お菓子番の治子さんが選んだ和菓子たち、ネットで写真を見ながら読みました。おいしそうです。
     それから、パン屋さんの「パンとバイオリン」さんのパンたち。グルテンとか気にせず、おなかいっぱい食べたかったです。

     一葉さんが、元気を取り戻してきて、心配していたお母さんも嬉しそうでした。続編では、さらに元気になって、パワーをもらえることを楽しみにしています。

  • 2024/02/21 読了。

    図書館から。

    新シリーズ。連句。
    知らないことをゆっくり知れるのは楽しいですね。
    物語の中で学んでいくから自然と楽しく覚えられる気がする。

    登場人物がやっぱり優しいですね。
    航人さんはじめ桂子さんや蒼子さんに鈴代さん…。
    治子さん…おばあちゃんが素敵。

    発売されたときに購入するか迷って今回借りたけど、
    いい話だったので、買えばよかったかなぁ…。

  • 装丁が綺麗だったので選んだ本。
    1ページ目を読んで買うことに決めた。
    でも、読み進めていったら想像していた話とは違っていて…

    「連句」初めて聞いた言葉。
    この本を読んでもルールとか作り方とか全然わからない。
    繋がりも。
    でも美しい言葉が並んでいたり、美味しそうなおやつが出てきたり、いろいろ楽しめるものがありました。

    仕事がなくなった一葉。
    でも人との繋がりから仕事が来るようになって…
    人は自分のために、自分は人のために、何か役に立っているんだなと教えてくれた。
    人との出会いは大事。
    私も出会いを大切にしていこうと思います。

    この先のおやつも気になるし、一葉がどうなっていくのかも知りたい。
    続編を読んでみようかな。

  • 書店員をやめて、祖母が通っていた連句の会に通い始め、連句の会とPOP作りを通じて世界を広げていく話。俳句とは違い皆と作り上げる連句の世界。美しい言葉を読みたい人に。

  • ひょんなことから亡くなった祖母が参加していた連句の会に加わった主人公が、連句の会・ひとつばたごをきっかけに世界を広げてゆく話。

    恥ずかしながら連句というものの存在をこの本で知ったレベルで、作中で何度も説明されたルールもいまいち把握できなかったんだけど(自他半とか恋を続けるとか)それでも面白かった。
    これから一葉はポップデザイナーになるのかなあ。
    連句の会も良かったけど、想像がつきやすい分ポップ作りのターンのほうが楽しめた。

  • この作者さん、「三日月堂」「月光荘」「紙屋ふじさき」「ものだま探偵団」と読んできて、また別のシリーズに行ってみる。

    今回の題材は「連句」。
    勤めていた書店の閉店で職を失い実家に戻った一葉が、亡き祖母の遺品から連句のノートを見つける。亡き祖母のことを知らせに連句の席を訪れた一葉は、メンバーに迎え入れられ連句に参加することになる、という出だし。

    なつかしき春の香の菓子並びけり
     のどかに集う言の葉の園

    連句とは全く知らなかった世界だが、最初の句からしてほんのり良かった。
    次々と出て来る連句のルールがさっぱり頭に入らないのは困ったものだが、それでもなかなか興味深くはある。
    『連句を続けていると月と花は別格に思えてくる。月がいつも空にあるのがいいんです』『月は満ち欠けがあるから月単位の時間を感じられるし、花はやっぱり生きているからかな』なんてとてもよく分かるが、年を取ればこそか。

    連句以外にも、おいしそうな季節のお菓子や東京の色々な町の風情が描かれ、パンや苔や雑貨の話になったり、それらのお店を流行らすためのポップづくりの話になったり、飽きずに読める。
    更には、連句のメンバーの年齢・性別・職業などが異なる人たちが、雑談の中では恋や男女の機微について語ったり、世俗的な句に飛んでみたり、そのあたりは森羅万象を描く連句の楽しみ方に似て、ここもまた面白く読めた。

  • 言葉のもつ力の深さに引き込まれました。
    誰かの言葉、誰かの話……観て、聴いて心の内にある想いを掬い上げることが出来たら素敵だな。

  • 連句の存在を初めて知った。
    主人公は、亡くなった祖母が参加していた連句に参加し、自分も句を作るようになっていく。周りの人が作った句から発想を得たり、思い出が蘇ったりする。
    周囲との距離感がとても心地よい。

    思い返せば、小さな頃から私は深く思考していない気がする。反射のように何かの事柄や発言に反応するが、じっくり向き合う時間は作ってこなかった。作文や作品も、いかにすれば「まあまあ」レベルの評価が得られるか、のほうが気になってしまったり。

    物語に出てくる物を考える人に憧れる。

  • 優しい言葉で綴られる、連句の世界。難しい決まり事があるようですが、主人公の言葉を通してそれがするすると頭に入ってきました。句会を重ねるごとに、主人公と一緒に連句の世界へ少しずつ入り込んでいくような感覚がとても心地好い。連句を通して、生きることとは、歳を重ねることとは、そして死とは……人生について色々と考えさせられて、胸がじんわりし、時折涙が滲みます。読むと誰かに会いたくなるような、そんな作品でした。続編もあるようなので、読んでみようと思います。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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