本屋さんで待ち合わせ

著者 :
  • 大和書房
3.39
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479681724

感想・レビュー・書評

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  • 『一日の大半を本や漫画を読んで過ごしております。こんにちは。』

    という三浦しをんさん。なんだかちょっと羨ましくなるその生活ですが、そこに至るご苦労は数々のエッセイで拝見しております。恐れいります。さて、三浦さんというとエッセイ!です。もう、やいのやいのと、ハイになる気持ちを抑えられないその世界は一度ハマると抜け出せなくなるドッボーンな世界です。でも、ややや、この作品は、ちょちょっと違うようです。テンションまっくすー!でいこうかと思いましたが、これは三浦さんが読んでこられた数多の本の『書評集』です。まあご本人がおっしゃるには『ちゃんとした評論ではなく、「好きだー!」「おもしろいっ」という咆哮になっちゃっているので、お気軽に』ということですが、まんまエッセイではないので、今日の私はテンション控え目で参りたいと思います。狂った さてさてを楽しみにしていらした皆さんには許してチョンマゲでごじゃるが、それ以上に面白かったでごじゃるので、早速進めてまいりましょう!

    ということで、この作品は、全部で135作品以上の本、本、本!を、色んな角度から取り上げた書評集です。「キュリアス・マインド(ジョン・ブロックマン)」、「江戸の下半身事情(永井義男)」、「双調 平家物語(橋本治)」、「魚偏漢字の話(加納喜光)」などなど、国内も国外も、過去も現代も、そしてジャンルの垣根などなく極めて多彩です。ちなみに、私が読んだことがあるのは『八日目の蝉(角田光代)』、一冊しかなかったぁ orz orz orz という残念!無念な事実。それにしても凄いなあ。この本の山。では、ちょっと見てみましょう。

    まずは、エッセイの体裁の中に本の紹介が登場するタイプ。〈読むと猛然と腹が減る〉というエッセイの一節からは、三浦さんの普段の日常生活が窺えます。『一人で食事するときは、たいていなにかを読みながら食べる』という三浦さん。なるほどぉ。確かに一人で食事してる時って、視線のやり場に困りますよね。カウンターに座って店員さんと目があっても罰の悪い思いをするだけだし、料理をじっと見つめていてもアブナイ人だし。なので『食事と読書はセット』という三浦さん。『片手でページをめくりやすいことを基準に、外食のメニューを選ぶ』ということで、『フォークとナイフを使う洋食』も『茶碗やらお碗を持ち替える和食』も避けるので『酒のつまみと酒ばかり』になったという結果論。う〜ん、それでいいのかぁ?という気もしますがご本人が良いならそれでいいのでしょう。また、本の内容も『登場人物がつらすぎる目に遭ってたりすると、「呑気に食べててすみません」という気分になっていけない』。なるほど。『性描写が濃厚すぎると、食事そっちのけで読みふけってしまう』。な、なるほど。だから『悲しすぎず、生々しすぎぬものが、食事時には向くようだ』というなるほどなお話。そして、そんな食事向きな一冊ということで選ばれたのが「ロッパの悲食記 (古川緑波)」という1959年に出版された随筆。『おいしいご飯をブラックホールのごとく無尽蔵に吸いつくす強靭な胃袋』、『いくら食べても腹が減ってしまう生き物の哀しみと不毛に、無謀にして悲愴な戦いを挑んでいるかのよう』というその内容に感心する三浦さん。そしてそんな本を読んだ読後は『食事時でもないのに猛然と腹が減り、コンビニのたらこスパゲッティ499kcalを食べた、嗚呼』という、これまたなオチの結果論。『罪つくりなロッパ氏であった』とまとめます。60年も前の本に食欲がそそられるって、どんな本なんだろ、ちょっと興味がわきました。

    そして他は、さてさてのレビューでは珍しくダイジェストでまいりましょう。いや、それだけどれもこれもご紹介したくなる面白い本ばかりなんですよ。なので、6つの本を駆け足します。

    ・『著者は「六千人の女性とセックスした」』という記述に『セックスを通して人間関係の機微をひたすら追求しようとするところが素晴らしい』、そして『身近にいる大切なひとと、心と体をより深く楽しく通じあわせるために、ぜひ参考にしたい』という「エリートセックス (加藤鷹)」。
    ・『不倫に破れた「あたし」が、源氏物語を執筆中の紫式部のもとへタイムスリップする物語』では、『平安時代の美男美女が、どう考えても美男美女じゃない』、『おかめの大群!』だと感じる一方で『「美人」の基準は変わっても、男と女、ひととひととのあいだの溝は、千年前から変わらない』という「小袖日記 (柴田よしき)」。
    ・聞き捨てならない『左きき短命説』というものが登場し、その理由が『左ききが戦争時の戦闘場面で命を落としやすい』。それは『武器は多数派である「右きき仕様」になっている』からという「左対右 きき手大研究 (八田武志)』。
    ・三浦さんイチオシの『ボーイズラブ』繋がりで、『イギリスのゲイ(同性愛者)は、活発な消費活動を行っている』、『ゲイ・マネーはなんと、いまや年間十八兆円を超える』、なので日本に沢山呼べば大きな経済効果が期待できると三浦さんが主張する「ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (入江敦彦)」
    ・『著者の「人生の選択」はトイレでおしっこするときに、音消しの水を流さないと決めた』という一節に『私も常に大いなる欺瞞と矛盾を覚え、どうすべきか悩んでいた』が、『笑いとともに決めました。「音消ししない」、と』という「猫座の女の生活と意見 (浅生ハルミ)」。
    ・『小学生のころ、ウン○を食べる話を読んで感銘を受けた』、『谷崎先生のウン○の描写はねっちりしている』という「少将滋幹の母 (谷崎潤一郎)」。などなど。

    また、一章を丸ごと超読み応えのある解説でまとめた『読まずにわかる「東海道四谷怪談」』。これには普段その背景を深く考えたことのなかった『四谷怪談』がこんなに奥深い世界だったのか、ととても驚きました。すごいなぁ、この考察。三浦さんって何者なんだろう。

    ということで、三浦さんの読書の量と幅、そして絶妙な書評の書きっぷりにただただ圧倒されるこの作品。135冊以上の文学作品や漫画について、その読み込みの深さにも圧倒されるこの作品。『子どものころは、「よく本を読んでえらいわね」』と褒められたのが、『本を読むのもいいけど、あんた結婚どうすんの?』に変わってしまって、でも『いま読書中だから、その話はまた今度な』とさらりとかわす三浦さん。『本を読めば人格が磨かれ、知識が深まり、情緒が豊かになるかというと、そうでもないことは我が身で実証済み』という三浦さんは、『読書は、限りある生を、より楽しく深くまっとうするための、ひとつの手段にすぎない』とまとめます。『本は、人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である』という本、そして読書の世界。日々、レビューを書いていて、その本のどういった部分をどうレビューに反映させていくかに悩むことも多いですが、三浦さんの書評を読んで、自身の感情に突き刺さったもの、自分の心に正直に、下手に飾らず自分らしく展開する。結局は、それが読んでくださる皆さんにも心通じる唯一の方法なのかなと思いました。

    私がレビューを書く中で一番心掛けていることは、『読みたい』に登録してくださる方が一人でも多く出るような内容にすること。それこそが、私に感動を与えてくれたその作品に私ができる唯一の恩返しだと思うからです。この作品からは、そんなレビュー作成へのヒントをたくさんいただきました。三浦さん、ありがとうございます。

    他のエッセイ集に見られる振り切れた世界はありませんでしたが、三浦さんならではの鋭い、もしくは奇抜な切り口からバッサバッサと切った書評がたっぷり詰まった充実の一冊。やっぱり三浦しをんさんはいいなぁ、しみじみと感じた、そんな作品でした。

  • 誰かと待ち合わせするなら、ぜったいに本屋さん!

    本好きの友達と待ち合わせて、
    「あの人なら、きっとあの棚のあたりにいるにちがいない!」と
    わくわくして覗き込んだところに、ちゃんと相手がいたときのうれしさ♪
    反対に、「今日の私はひと味違うのよ!こんな本も読んじゃうんだから」と
    いつもの嗜好とは違う場所にいたのに、相手に見つかってしまったときの
    「やられた~!でも、なんかうれしいのはなぜ?」という、複雑な心境。

    そんな気持ちもすんなりわかってくれそうな、しをんちゃんの書評集です。

    強風に飛ばされて崖下に放置され、ふやけてカビが繁殖した本でも
    捨てられず、ポリ袋に密封したあげく観察したり
    ベッドの幅半分を本に浸食されたあげく、就寝中に本の雪崩に遭って
    毛布の上に椅子を載せて寝ていたというキュリー夫人の
    物理学者とは思えない暖のとりかたを疑似体験したり。

    相変わらず本のためなら奇人変人と呼ばれようと厭わない生活を送りながら
    『真綿荘の住人たち』の書評みたいに、研ぎ澄まされた文体で
    読み手の心を鷲掴みにするような掌編を書いてしまうのだから、すごいなぁ!

    古本屋さんは、過去と現在を、現在と未来を、ゆるやかに結び付ける仕事で
    古本屋さんに払うお金は、本と客という時間を超えたお見合いの場を用意してくれた
    仲人への謝礼なのだ、と言い切る潔さ。
    本好きもここまでいけばあっぱれ!と言うしかないしをんちゃんを
    出没するかもしれない本屋さんで、「待ち合わせ」ならぬ「待ち伏せ」をして
    どんなにやけた顔で本とお見合いするのか、
    柱の陰からじーっと観察したくなってしまう、愛に満ちた1冊です。

    • HNGSKさん
      本屋さんで待ち合わせなんかした日にゃあ、「ち、もう来やがったか・・・」って思ってしまう私がいます。(笑)

      「真綿荘の住人たち」と「ランナ...
      本屋さんで待ち合わせなんかした日にゃあ、「ち、もう来やがったか・・・」って思ってしまう私がいます。(笑)

      「真綿荘の住人たち」と「ランナー」は、しをんさんのこの書評を読んで、手にとって見た作品です。どちらも私なりにレビューを書いてみましたが・・「ランナー」の方は、不細工すぎて、ブクログにアップもできませんでした。

       やはりしをんさん、素敵ですねえー。
      2013/01/31
    • まろんさん
      あやこさんたら♪
      でも、「ち、もう来やがったか・・・」にも、しっかり共感してしまう私です(笑)
      娘と一緒に古書店に行くと、「じゃあ4時半にレ...
      あやこさんたら♪
      でも、「ち、もう来やがったか・・・」にも、しっかり共感してしまう私です(笑)
      娘と一緒に古書店に行くと、「じゃあ4時半にレジね~」とか約束しておいて
      いつも時間に間に合わず、「今まだ『は』行の作家までしか探せてないから
      せめてあと15分!おねがい~!」と懇願するのは私のほうなので。

      「真綿荘の住人たち」は、いつもの私なら手にする機会のない本だと思うのですが
      しをんちゃんのあまりに素晴らしいレビューに、読まなければ一生の損になるような気がしてしまって。
      ほんとにすごい作家さんです!
      2013/02/01
  • 三浦しをんの書評&エッセイ集。
    大の本好きのこと、どこがどんなに面白いのか!喜びあふれるいきいきした指摘が楽しい。
    取り上げた本はとても広範囲~読売新聞の書評欄で書いたものが多いから、よけいでしょうか。
    自分の体験も交えて、笑わせてくれるのは、いつものしをんちゃんです。

    『どうしてこんなに本や漫画が大好きなのか。読まずにいられないのか。たまに自分がこわくなる。ほかにすることあるだろ、掃除とか、洗顔とか、ダイエットとか』というのに爆笑。
    洗顔て。
    ベッドに積み上げた本の山が崩れてきて全身を覆われ、重いけど、暖かい‥
    というところで、キュリー夫人が寒さをしのぐために椅子を身体の上に載せたという(子供の頃に読んで強烈に覚えているらしい)のを追体験?したり。

    ひとつのテーマのもとに、複数名の人物の評伝を集めたものを、「星座読み」といっているとか。
    平家物語の登場人物の多さと似た名前ばかりなのに閉口して、あだ名をつけて「愛称読み」しているとか。
    『とくに平家のみなさん、名前の最後になんでもかんでも「盛」の字をつけるのはやめてくださらんか!』って‥
    わかるわ~。「頼」も一家に一人限定にして欲しいぐらいよね!

    職業について書かれた本はたいてい面白く、小説の設定のために調べ始めても読みふけってしまうとか。
    「漢字は日本語である」という本の著者は、小学1年の夏休みの自由研究で自分なりの漢和辞典(ノート2冊分)を作ったという~す、すごいっ。

    読者からの、寛容になれないという手紙にたいして~
    「たったひとつの冴えたやり方」や「絶対貧困」を読んでの感想を紹介し、
    『怒りの大半は「理解できない」「理解されない」がゆえに生じる気がします。「相手を知りたい」「自分を知ってほしい」という願いを諦めてしまったら、怒りすらわかなくなるでしょう。そう考えると、もっと怒ったっていいのかもしれませんね』
    というところへ持っていく。
    なるほど‥こういう気持ちのもちようがすがすがしいですね。
    少女マンガにみゃくみゃくとある正義感が芽吹いている気がします。

    中島敦や太宰治など、有名な作家についても、切り口が面白い。
    萩尾望都原画展で、線がまったく枯れずに瑞々しいのに驚嘆し、その理由を考えるところとか。確かに‥
    (あ、「マージナル」大好き!)
    共感するところもいっぱい。

    読んでみたい本もたくさん!
    ピンと来なかった本は取り上げないという方針には共感します。
    それでも多すぎて、どうしよう~中には、このエッセイの文章が一番面白くて読んでみたらそれほど私好みじゃなかった‥というのもありそうな気がするんだけど、そのへんどうなのか?見抜くのが大変だわ。

    4章では、歌舞伎の東海道四谷怪談についてのエッセイも。
    伊右衛門の悪の魅力。忠臣蔵とのかかわりとか。そういや、なんで東海道なんだろう‥?などと。
    中村勘九郎のお岩について書かれていたのも面白かったです。
    あれもこれも‥本のタイトルをメモしなくちゃ!

  • 読売新聞の読書委員会で「色物担当」のしをんさんらしい書評集。
    さすが色物好きとあって今まで足を踏み入れたことのないジャンルの本が多々あり、お陰で世界が広がった。
    本を暖房代わりにしたり、通い婚の復活を夢見たり、教科書に載っていた中島敦の『山月記』に笑い転げたり、漫画やBL物についてアツく語ったり、と書評だけでなく本に纏わるしをんさんの日常もまた面白い。

    特に共感したのは、子供の頃に本を読んでいると誉められたのに、大人になって本ばかり読んでいると煙たがれるエピソード。
    私もしをんさんと同じで不思議な現象だと思っていたし、しをんさんとの共通点が見つかってなんだか嬉しい。

    しをんさん曰く
    「本は、人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である」
    「本は、求めるものの呼びかけに必ず応えてくれる」
    たっぷり笑わせくれるのに最後は必ず素敵な言葉できっちり締めるしをんさんにまたお逢いしたい。
    待ちあわせ場所はもちろん本屋さんで決まりでしょう。

  • 一言で言えば、
    「ブックガイド」
    三浦さん自身も、そう紹介されています。

    目次では70冊ちょっとしか挙がってないが触れられている本は100冊以上。

    文学、歴史、社会問題、芸能、風俗・・。

    様々なジャンルが散りばめられている。

    僕が直感的に読みたいなと思った本は、
    ・『BESTっす!』ゲッツ板谷
    ・『潤一』井上荒野
    ・『なほになほなほ 私の履歴書』竹本住太夫
    ・『圏外へ』吉田篤弘

    フォロワーさんは、三浦さんの、
    「お友だちからお願いします」
    を話題にされていて、こちらの方も読んでみたいなと感じました。

    三浦さんは、
    本に埋もれるような、本を中心とした、食事どきでさえ本と向き合う人生。

    そんな情熱・執着を持ち続けているうちに書いて楽しませる側にも回ったんだ、と感じた。

    まだ読んでいないが、
    『舟を編む』

    気に入って何回も映画を観た作品なので、
    いつか彼女の原作を読んでみたい。

    きっと素晴らしい作品なのだろうと思う。

    • goya626さん
      shukawabestさん
      映画は見ていないのですが、本の方の「舟を編む」はよかったですよ。ほほう、と思うことが多かったです。「本屋さんで...
      shukawabestさん
      映画は見ていないのですが、本の方の「舟を編む」はよかったですよ。ほほう、と思うことが多かったです。「本屋さんで待ち合わせ」も随分以前に読んだので、内容を忘れてしまっていますが、面白かった記憶があります。
      2022/03/26
    • shukawabestさん
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      この本も読まれてましたか。すごいですね、読書量が。

      「舟を編む」
      原作いいでしょうね。...
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      この本も読まれてましたか。すごいですね、読書量が。

      「舟を編む」
      原作いいでしょうね。映画でさえ大変気に入ったので。映像化のための脚色が抜かれ、言葉そのものに向き合う職人たちの姿勢がもっとダイレクトに伝わってきそうな気がします。この前、図書館で女子大生風の子が小脇に抱えていたのですが、「その本、こっちに貸してくれ〜」お願いしそうになりました。
      2022/03/26
    • goya626さん
      shukawabestさん
      「舟を編む」借りれるといいですね。
      shukawabestさん
      「舟を編む」借りれるといいですね。
      2022/03/27
  • 単純に読むためのものではなく、装丁を眺める楽しみも付加されている。
    その考え抜かれた作り方に先ずは脱帽。
    (しをんさん風に言えば『シャッポを脱いだ』かな)
    『お友だちからお願いします』と2冊並べて所蔵するべき本である。
    などといいつつ2冊とも図書館で借りてるけど(爆)。

    『はじめに』を読んだ時点で既に面白い。
    『ピンとこなかったものは黙して語らない』というくだりに勝手に頷いたり
    淀川長治さん風と書かれてる部分、実は水野晴郎氏とミックスじゃん! と突っ込んだり
    『ほかにするべきことあるだろ、』のくだりでは一緒にどんよりしたり。
    前書きだけでこんなに面白かったらどうなっちゃうんだろう、と思ってたら
    期待に違わず面白かったし、書評なのに読み応えがあった。

    何よりも取り上げられた本の内容の振り幅に目を見張る。
    これはしをんさんに関して言えば今に始まったことではないのだけれど
    流石に源氏物語と四谷怪談と太宰治と加藤鷹とボーイズラブを同じ土俵に上げて
    しかも同じ目線で評する姿勢には度肝を抜かれた。
    例によってしをんさんの書評を読んで読みたくなった本がたくさんあるのだが
    その中に手に取るのに勇気が要る本が含まれるのが可笑しくもあり
    その辺りがしをんさんの書評たる所以なのかも、と思った。

    何はともあれ、しをんさんの書評には本とそれを書いた人に対する愛情がダダ洩れしている。
    こういう人の書評を読むとさらに読みたくなるし、
    本好きとしては同類を見つけたという安心感を感じるとともに
    なんとなく赦されたような気がして(何に?)嬉しくなるのであった。

    • kwosaさん
      こんにちは。

      めぇーさんの的確なレビューと突っ込みに、最初から最後まで「うんうん」と頷き過ぎて首が痛いです。
      しをんさんの振り幅には本当に...
      こんにちは。

      めぇーさんの的確なレビューと突っ込みに、最初から最後まで「うんうん」と頷き過ぎて首が痛いです。
      しをんさんの振り幅には本当に目を見張りますよね。
      自分のレビューでもそのことを伝えたくて、若干の気後れを感じながら引合いに出した加藤鷹。
      めぇーさんのレビューを読んで、源氏や太宰と本のチョイスは違っても「やっぱりそこははずせないのね」と笑ってしまいました。
      僕もなんとなく赦されたような気がして嬉しくなっています(笑)
      2013/07/06
    • ぶっかけさん
      断然この書評が読みたくなってきました!
      プラス、「2冊並べて所蔵するべき」もう1冊も。
      断然この書評が読みたくなってきました!
      プラス、「2冊並べて所蔵するべき」もう1冊も。
      2013/07/08
  • 本好き、マンガ好きで知られる三浦しをんさんの書評集。
    といっても、語り口が軽く、ひとつひとつが短いのですんなり読める。
    ところどころで、しをん節の笑い炸裂もあり、真正面から真面目に書いているのもあり、(当然だが)なかなか味のある本である。
    彼女はいろいろな本を読んでいるのだなあ、とあらためて感心させられる。
    最後のおまけとして、最近読んだマンガなどもあり、そこには、私も好きな東村アキコ「主に泣いてます」があって、少しうれしかった(笑)
    私はこのマンガをTSUTAYAのコミックレンタルコーナーで発見した時、“主に”を“おもに”ではなく、“しゅに”と勘違いし、クリスチャンの女性が主人公かと思ったものだ。
    話は本筋と逸れるが、このマンガは、かなり面白いです。笑えます。

    様々なジャンルの本の書評集というよりは、三浦しをんの文章の味わいを楽しめる一冊である。

  • 本のエッセイ。
    幅広いジャンルで、知らなかった作品と出会える。
    「読まずにわかる『東海道四谷怪談』」では、筆者がどんなところに着目し、楽しんできたのかを追体験できて、面白い。
    新刊も多く、いくつか読みたいリスト入り。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-b153.html

  • 三浦しをんさんの本と漫画への愛がぎっしり詰まった1冊。
    大好きなことについて話している人のキラキラした瞳がとても好き。
    聞いている私まで楽しい気持ちになれるから。
    これは本だから三浦しをんさんの表情は見えないのだけど、目の前に輝く笑顔があるかのようなそんな本だなぁと感じた。

    それにしてもなんて幅広いジャンルの本を読まれているのかと尊敬してしまう。
    自分の選ぶ本の偏り(知っていたけど)から目がそらせなくなった。
    もちろん「好きな本を読みたいのだからいいんだ」と言うことも出来るのだけど、もっと視点を変えればすごく好きになれる世界がまだまだあるのかもしれないなとも思わされて…。
    読みたい本が急増して時間が足りないなぁと途方に暮れてしまう。

  • 羨ましいなあ。本ばっかりの生活。読書の守備範囲もなんて広いんだろう。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

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