公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書 926)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066329

感想・レビュー・書評

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  • とてつもなくモチベーションが高い公務員をスーパー公務員と呼び、そのような公務員が存在しなければ地域社会は良くしていけない。
    今の公務員の人事評価では、モチベーションに上限を設けやすく、そこそこでも組織の中では生きられるというものである。
    公務員がそこそこだと地域にとってそれは損失であり、スーパー公務員を排出できる体制を取っていかなければならないという内容。
    やる気の源は、「自律」「承認」「夢」とあり、自分としては、「夢」がとても大切だと感じた。
    当たり前かもしれないが、夢を大きく持つこと、それによって並外れたモチベーションと行動力を生み出される。
    それも明確な夢を持つこと。これについてこの本で気づくことができた。

  • 公務員革命というタイトルから想像すると、少し異なる印象を受けるかもしれません。

    著書の太田肇教授は、承認欲求やモチベーションという分野の研究をしているかたで、著書も多く、過去に何冊か読ませていただいています。公務員の革命をモチベーションの側面から語っています。

    役所に限らず、日本の組織の特徴を挙げた上で、よりその傾向が顕著な公務員に、いかに「やる気」をださせるかといういくつかの提言がまとめられています。

    現在の法令では難しい面もありますが、今のように大幅な給料アップなどが望めない中でのモチベーション施策はもっと真剣に議論していくべきかもしれません。

    単なる精神論だけにとどまることなく、仕組みとして構築していく必要性を感じました。


    ・やる気が出なくなった要因
    ①目にみえる待遇悪化
    ②マスコミや一部の国民・住民による公務員への厳しい視線・バッシング
    ③公務員のマネジメント
     大部屋主義の日本では個人の成果が評価しにくい、さらに役所の仕事は何が成果なのか明確な基準がない。個人の分担や責任が不明確なままで成果主義を取り入れるのはデメリットが大きい。成果主義ではなく「やる気主義」の蔓延
    ・いまの公務員の働き方、現状のマネジメントの限界
    「住民のために働きたい」という思いの強い人たちも個人的な出費や私生活を犠牲にしてまで頑張ることはできない。上司などの意欲が欠けているときは自分のやる気も失せる。生活を犠牲にしてまで自分を突き動かすものが存在しないから
    ・見えない「やる気の天井」の存在
    ・市民政府行政の時代における自治体の立場と仕事(田村明)
    ①市民に情報を提供し、市民の声を受け止める市民の事務局
    ②将来にわたって必要な「まちづくり」の方向や政策や計画の計画者・提案者
    ③実現に向けて人、組織、資金などの資源を動かし組み合わせる実践的なプロデューサーであり、協働しながら不足を補うプロモーターやコーディネーター
    ④住みよい「まち」をつくるために、地域の資源の保全・活用を組み合わせて目的を果たすために実行してゆく総合的な地域経営者
    ⑤他の主体では実施できない必要な装置やサービスを提供し実行する執行者
    要するに、まちの将来について計画・提案し、問題解決しながら地域を経営する役割が自治体業務の中心になる。これまでの受け身のモチベーションでは通用しない
    ・「やる気」の革命的アップが求められる他の理由
    ①IT化→定型的業務の減少
    ②協働が求められる時代
    ・「行政のプロ」としての公務員像(自発的モチベーション+高度な専門知識)が求められる
    ・やる気の源
    ①働きがいや志。公務員は、奉仕を生きがい・働きがいにしないと務まらない
    ②日常の仕事について内発的動機づけ→報酬(外的報酬)を実力で獲得できないため
    ③承認
    ・問題の核心は、やる気の源泉が分かっているのに、満たす機会が十分に与えられていないこと
    ・「超やる気」の要素分解→自律・承認・夢
    ・自律は「やる気の父」
    ①仕事の自律性
    ②行動の自律性
    ③キャリアの自律性
    ・プロセスの意味の違い
    欧米→成果につながるプロセス、川下でプロセスを評価
    日本→態度や意欲でみる傾向、川上でプロセスを評価

    「やる気の天井」を破る
    ・動機づけ要因を外部に求める
    ・仕事の「見える化」、名前を出す
    ・裁量権、自立性を与える
    ・住民の声のフィードバック
    ・注目されると責任感が増す
    ・キャリアの考え方を広げる、自衛隊型就労
    ・兼業規制を取り払う


    <この本から得られた気づきとアクション>
    ・トップの交代による改革がクローズアップされるが、すべての自治体でそういうことが起こるわけではないため、別の視点からの改革が必要。モチベーションを上げる方法を個人としても、組織としても常に追求していかなければならない。

    <目次>
    第1章 “やる気”を奪った「ポピュリズム型」公務員改革(水面下でむしばまれる“やる気”
    管理主義のワナ)
    第2章 “やる気”に火をつけるものは何か?(やる気の天井
    モチベーションの質が問われる時代に ほか)
    第3章 「公僕」から「主役」へ(僕のやる気と、主のやる気
    「超やる気」の源は“自律”“承認”“夢” ほか)
    第4章 「外部資源」活用で、やる気の天井を破れ!(外部資源で動機づけるという戦略
    役所の外でも認められる機会を ほか)

  • 普通の本だったなあという印象。

  •  近年、マスコミの公務員バッシングが激しさを増している。また、公務員をたたいたりポピュリズム型公務員改革を進めたりすることで世論にすり寄ろうとする政治家もいる。これらは理論的・論理的に考えると、公務員の”やる気”を失わせることにつながる。
     現在公務員は約345万人おり、さらに政府系企業などを加えると約538万人に達し、雇用労働者数(約5462万人)のほぼ10人に1人は「公務員」であるため、公務員をいかにして動機付けるかは日本全体に関わる重要な問題である。

    1.公務員のモチベーションを低下させる要因
    ①目にみえる待遇悪化
     モチベーション理論の一つに、J.S.アダムスらが唱えた「公平理論」がある。人は、自分の仕事に対するインプット(貢献)と仕事をとおして得られるアウトプット(報酬)が、釣り合っていると感じたとき満足する。よって公平とされる基準である人事院や人事委員会の勧告以上に給与等が削減されると、モチベーションが低下し、生産性が低下してしまうおそれがある。
    ②公務員バッシング
     ある社会心理学的研究によると、職業的自尊心と組織的個人的違反には負の相関がある。すなわち、バッシングやクレームにより自尊心が傷つけられてしまうと、違反や不祥事など目に見えないところでのサボタージュが発生する。
    ③成果主義の導入
     行政改革により、公務員にも成果主義が導入されつつある。しかし、先行した民間企業においては、社員の動機付けや生産性向上の面で目立った効果をもたらさなかったうえ、社員の不満や不公平感が大きく、撤回もしくは大幅に見直されている。公務員の場合も客観的な評価は困難であり、評価するとなると、必要のない仕事や会議を行うなど、表面上のやる気をアピールされてしまうだろう。

    2.やる気の根源(下記の①~③)とその増加手段
    ①内発的動機付け(奉仕の精神・夢)
     公務員には、住民のために尽くしたいとか、少しでも地域を発展させたいという思いを持っている人が多い。特に、スーパー公務員と呼ばれる人の中には、自分の生まれ育ったまちを豊かにしたり、地域の人たちを幸せにしたりすることを夢見て、それにまい進している人がいる。

    ②仕事の自律性
     やる気を引き出す上で、責任を伴うが自由度が高い、つまりは自律性が高いことが重要である。しかし、以前と比べ裁量権が小さくなっているようだ。要因の一つとしては、管理職過剰がある。上司は手持ちぶさたの中で、自分の存在感を示そうとするので、部下の仕事に細かく口を出したり、頻繁に相談・報告を求めたりする。
     改善策としてはポストの削減が浮かぶが、承認欲求を満たすためにも、ある程度のポストは必要である。よって、民間企業同様に、課長クラスまではプレイングマネジャーになってもらい、部下の管理を最小限にとどめてもらうのがよいだろう。
     また、仕事の分担を明確化し、その範囲内でできるだけ裁量を持たせる。《ただし、能力に合わせて仕事を割り当てないと、職員間の不公平感が高まるおそれがあると思う。とは言え能力に合わせて仕事を割り当てることは難しい。》

    ③承認欲求
     マズローの欲求五段階説にもあるように、人間には認められたい、ほめられたいという欲求があり、他人から承認されることでやる気が出る。
     よって、上司が具体的な事実や客観的な情報に基づいて部下をほめたり、認めたりするとモチベーションが上がる。
     また、役所の外でも認められる機会が得られるように、公務員に講演やシンポジウム、マスコミでの発言、専門誌への寄稿などを奨励するのもよいだろう。地味な仕事の場合は、ホームページや広報などで紹介する。

  • 『公務員革命』/ちくま新書/★★★★☆/公務員への風当たりが強まる中、主に地方公務員のなかに「スーパー公務員」なる人たちがいることについて解説。どのような制度があれば「スーパー公務員」が育つのか、すなわちどうすれば公務員のやる気を起こすことができるのかについて。地方公務員になる人にも読んでほしい本です。

著者プロフィール

同志社大学政策学部教授

「2022年 『何もしないほうが得な日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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