公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書 926)
- 筑摩書房 (2011年10月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480066329
感想・レビュー・書評
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公務員革命というタイトルから想像すると、少し異なる印象を受けるかもしれません。
著書の太田肇教授は、承認欲求やモチベーションという分野の研究をしているかたで、著書も多く、過去に何冊か読ませていただいています。公務員の革命をモチベーションの側面から語っています。
役所に限らず、日本の組織の特徴を挙げた上で、よりその傾向が顕著な公務員に、いかに「やる気」をださせるかといういくつかの提言がまとめられています。
現在の法令では難しい面もありますが、今のように大幅な給料アップなどが望めない中でのモチベーション施策はもっと真剣に議論していくべきかもしれません。
単なる精神論だけにとどまることなく、仕組みとして構築していく必要性を感じました。
・やる気が出なくなった要因
①目にみえる待遇悪化
②マスコミや一部の国民・住民による公務員への厳しい視線・バッシング
③公務員のマネジメント
大部屋主義の日本では個人の成果が評価しにくい、さらに役所の仕事は何が成果なのか明確な基準がない。個人の分担や責任が不明確なままで成果主義を取り入れるのはデメリットが大きい。成果主義ではなく「やる気主義」の蔓延
・いまの公務員の働き方、現状のマネジメントの限界
「住民のために働きたい」という思いの強い人たちも個人的な出費や私生活を犠牲にしてまで頑張ることはできない。上司などの意欲が欠けているときは自分のやる気も失せる。生活を犠牲にしてまで自分を突き動かすものが存在しないから
・見えない「やる気の天井」の存在
・市民政府行政の時代における自治体の立場と仕事(田村明)
①市民に情報を提供し、市民の声を受け止める市民の事務局
②将来にわたって必要な「まちづくり」の方向や政策や計画の計画者・提案者
③実現に向けて人、組織、資金などの資源を動かし組み合わせる実践的なプロデューサーであり、協働しながら不足を補うプロモーターやコーディネーター
④住みよい「まち」をつくるために、地域の資源の保全・活用を組み合わせて目的を果たすために実行してゆく総合的な地域経営者
⑤他の主体では実施できない必要な装置やサービスを提供し実行する執行者
要するに、まちの将来について計画・提案し、問題解決しながら地域を経営する役割が自治体業務の中心になる。これまでの受け身のモチベーションでは通用しない
・「やる気」の革命的アップが求められる他の理由
①IT化→定型的業務の減少
②協働が求められる時代
・「行政のプロ」としての公務員像(自発的モチベーション+高度な専門知識)が求められる
・やる気の源
①働きがいや志。公務員は、奉仕を生きがい・働きがいにしないと務まらない
②日常の仕事について内発的動機づけ→報酬(外的報酬)を実力で獲得できないため
③承認
・問題の核心は、やる気の源泉が分かっているのに、満たす機会が十分に与えられていないこと
・「超やる気」の要素分解→自律・承認・夢
・自律は「やる気の父」
①仕事の自律性
②行動の自律性
③キャリアの自律性
・プロセスの意味の違い
欧米→成果につながるプロセス、川下でプロセスを評価
日本→態度や意欲でみる傾向、川上でプロセスを評価
「やる気の天井」を破る
・動機づけ要因を外部に求める
・仕事の「見える化」、名前を出す
・裁量権、自立性を与える
・住民の声のフィードバック
・注目されると責任感が増す
・キャリアの考え方を広げる、自衛隊型就労
・兼業規制を取り払う
<この本から得られた気づきとアクション>
・トップの交代による改革がクローズアップされるが、すべての自治体でそういうことが起こるわけではないため、別の視点からの改革が必要。モチベーションを上げる方法を個人としても、組織としても常に追求していかなければならない。
<目次>
第1章 “やる気”を奪った「ポピュリズム型」公務員改革(水面下でむしばまれる“やる気”
管理主義のワナ)
第2章 “やる気”に火をつけるものは何か?(やる気の天井
モチベーションの質が問われる時代に ほか)
第3章 「公僕」から「主役」へ(僕のやる気と、主のやる気
「超やる気」の源は“自律”“承認”“夢” ほか)
第4章 「外部資源」活用で、やる気の天井を破れ!(外部資源で動機づけるという戦略
役所の外でも認められる機会を ほか) -
普通の本だったなあという印象。