ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
4.05
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感想 : 118
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067357

感想・レビュー・書評

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  • 山田詠美さんの「つみびと」を読み、こちらも拝読。
    育児放棄した母親が幼子を餓死させた、と聞くと残忍な事件ですが、その母親の生い立ちや背景を遡っていくことで、問題の本質が見えてくるのだと思います。身近な大人たちがなぜか手を差し伸べない。
    元夫からの養育費がもらえない。母親だけが悪者なのだろうか。色々考えさせられます。

  • 最初の章は、子ども二人が餓死するまでのお母さんの動きを追いかけたもので。もう、なんとも言えない怒りが込み上げるものでした。

    が。

    次章からのそのお母さんの生い立ちを追って行くにつれ、、、、
    このお母さんの悲鳴が本から聞こえてくるんじゃないか、、、と、思うほどに、追い詰められていく声が聞こえてきました。

    誰かホント、気がついてあげて!
    助けてあげて!
    手を差し伸べてあげて!!!

    っていう。

    子ども二人を餓死させたことはホントに痛ましく、、、自分の子どもを思うと信じられないと思うけれど、、、このお母さんの気持ちを考えると、、、このお母さんもとても救われなかったと、、、、もしかしたら、死んでたのはこのお母さん自身だったのかもしれない。とも思えた。

    世にまだまだいるお母さん達の悲鳴。

    少しでも多くのお母さんを救って、子どもたちが救われますように。。。

  • 女性が、いったん母となったが最後、社会からはたくさんの規範が押し付けられる。その規範は、本人の心の中にも内面化されていて、逃れることが困難だ。この本に出てくる人には、生い立ちの影響で社会を全く信じられない状況もあって、最悪の結末となった。

    けれど、読了して思うのは、ここまではいかない母と子の「ヒヤリ・ハッと」はたくさんあり得て、誰でも当事者や家族や友人、同僚などとして関わる可能性があるということだ。

    「ヒヤリ・ハッと」で済まなくなってしまうと、途端に、母が女性労働者であることから、貧困の問題が立ち現れ、その貧困が社会的繋がりの希薄さとマッチポンプ状態で加速する。

    これは、個人の資質や努力を超えた社会の問題で、少しずつ手を変え品を変えながら誰にも降りかかることなのだろう。運の悪さの組み合わせ、いかんによって。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「運の悪さの組み合わせ、いかんによって。」
      それを、どうやったら減らすコトが出来るか?
      子どもが、悲しい目に遭うのを無しにしたい。。。子...
      「運の悪さの組み合わせ、いかんによって。」
      それを、どうやったら減らすコトが出来るか?
      子どもが、悲しい目に遭うのを無しにしたい。。。子どもを産み、守り、育てる二人が時間的・金銭的余裕を持てるような社会にしなきゃ、、、←自分一人ですら四苦八苦していますが。
      2014/04/03
    • ウツさん
      そもそもの、社会のトラップの総数を減らすしかないんだなぁと思っています。女性が男性と同じに稼げるだけでぜんぜん違ってくるのだろうな。
      そもそもの、社会のトラップの総数を減らすしかないんだなぁと思っています。女性が男性と同じに稼げるだけでぜんぜん違ってくるのだろうな。
      2023/04/12
  • 2010年、マンションの一室に二人の幼子を、真夏日に何日も閉じ込めたまま外出し餓死させた事件。このルポに書かれていることが本当なら、母親の周りには、誰一人として、幼い子供たちが現在どういう生活をしているか本気で心配する人がいなかったと思われます。人に頼れずに育った情緒不安定なこの母親は、何か得体の知れないやり切れなさから逃れようとするように、家出をしたり嘘をついたりを繰り返す。そのたびに家族は落胆し翻弄されます。「母親」「妻」「娘」としての期待を裏切った彼女に対して「こんなに面倒をみてやったのに」「こんなに親身になってやったのに」という被害者としての処罰感情を持った人ばかり。お前なんかもう知らん、子供を生んだからには母親なんだから子供の面倒をみるのが当たり前とでも言っているように、「しっかり母親をします」と念書まで書かせて、彼女と子供を大海に放してしまいました。裁判の証言で、家族からは「生活に困っていると言ってくれたら助けたのに」という受動的な発言ばかりで「あの時、自分にも何かできたかもしれない」という発言をする者がいないことに、この事件を知った時の数倍も強いショックを受けました。子供を一人では作れないのと同じで、けっして一人では育てられないです。よく言われる「女手一つで育て上げた」というのは誇張だと思います。なんらかの形で周りが助けてくれてたんですよ。どうかこの事件が、何かの導きをもたらせますようにと祈らずにはいられませんでした。

  • 世間を大きく騒がせた大阪で起きた幼児の置き去り事件。
    起きてしまった結果は悲惨極まりなく、当事者である母親がその罪を償わなければならないことは自明の理だ。だが、母親を責めるだけではこの事件の本質は決して解決しない。

    母子家庭、貧困、虐待、児童相談所、行政の関わり、人と人との関わり、親子関係、生育環境、あらゆる事が少しずつ噛み合わない方へ噛み合わない方へと転がっていってしまった。もしかしたらどこかで救えていたのではないかと、今から見ればそう思えるが、その時はそこになかなか辿りつけなかった事が、この事件をここまで悲惨なものにしてしまった。

    懲役30年が確定したというが、果たしてそれは妥当な量刑なのか。
    彼女だけの責任なのだろうか。
    判決には、虐待の負の病理の検証が不足しているように思えてならない。

    行政であれ、家族や友人であれ、適切な援助で救える命がある。でも、家族や親子というごくごく個人的な関係下での事案なだけに、援助が難しくなる側面が確かにある。
    困難を抱えた人をどうやったら救い出せるか、助けを求める余裕すらない、細い細い隙間へ落ち込んでしまった親子をどうしたら見つけ出せるか。
    今この瞬間にも、ギリギリのところで持ち堪えている親子がいるかもしれない。
    どうやったら彼らを救えるのか。
    できうる限りの手立てを尽くし、なんとか助け出してほしい。
    もう二度、こんな辛い事件は起きてほしくない。

    「助けを必要とする人たちが孤立し、自分に向き合えず、助けを求められなくなることがネグレクトの本質だ」

    • vilureefさん
      こんにちは。

      おっしゃる通りだと思います。
      この事件にしても先日のベビーシッターの事件にしても母親ばかりが責められることに違和感を感...
      こんにちは。

      おっしゃる通りだと思います。
      この事件にしても先日のベビーシッターの事件にしても母親ばかりが責められることに違和感を感じます。
      父親の養育権放棄に関してはメディアもスルーですよね・・・。

      誰もが速やかに行政へ頼る知識と能力を持っているわけではない。いかに周囲がサポートして行くかがこれからの課題ですよね。
      2014/04/03
    • bokemaruさん
      vilureefさん、コメントありがとうございます。
      この問題は、結びつく結果が悲惨なものになりがちなのに、制度や慣習、思惑など、絡む問題...
      vilureefさん、コメントありがとうございます。
      この問題は、結びつく結果が悲惨なものになりがちなのに、制度や慣習、思惑など、絡む問題が複雑すぎて一朝一夕には解決できそうにないところが厄介ですね…。
      辛いニュースを聞かなくなる日は来るのでしょうか。
      2014/04/03
  • なぜこのような事件が起きたのか
    疑問でした。
    そして背景を知ることで、答えが見つかるのではと思いました。

    こどもは社会が守るべきだと強く思いました。
    sosに敏感になること
    心配しすぎることは余計なお世話ではないと言うことです。
    余計なお世話をする人がいたら
    救えた命だったかもしれない。

    余計なお世話を焼く人でありたい。

  • 山田詠美さんの「つみびと」を読んで、実際どういうことだったのかとこの本を手に取りました。
    置き去りにしたことは信じられないこと。
    でも子供たちの父親の無責任さ、義父母の冷たさ、被告人の実父の勘違いな教育?に驚きました。実の子であり可愛い孫なら被告人のことは抜きで保護するんじゃないかと思いました。
    空回りな家族。
    想像力に欠け、慈しみのない人たちとしか思えなかった。
    そういう大人たちの犠牲になったということなんだろうな。

  • 読みやすく分かりやすい。
    ノンフィクション

    おしゃれとは、自分をよく見せようとするのではなくて、自分の隠したいことに被せるためのもの。

    書き手の口調が良い。

    読んで、我が子を死なせてしまった母親はもちろん刑に服すべきだが、背景に奥の奥の物語があり、悲劇が重なって起きたのだと思った。
    でも子どもは二度と戻ってこない。本当に苦しく悲しい事件。
    教育に携わる職の資格なもつ私は、こうした親御さんもいることは知っておいた方が良いと思った。自分にできることはないか、この様なことにならぬよう親を助けられる社会の仕組みを作ることができないだろうか、虐待をする心理を撲滅させることが命を救うのではないだろうか、など浅はかな素人の私は実直に思いました

  • やりきれない。
    彼女の弱さは自分にもある弱さだと身につまされる。
    親をあてにはできないと子どもの頃に刷り込まれると、周囲に助けを求める方法がわからなくなる。

    亡くなった幼い子ども達が可哀想なのは勿論だが、彼女自身もネグレクトの被害者なのに、彼女の父親にその意識は薄く感じた。

    虐待の連鎖の発端は、親自身自覚せずに始まる。
    だが、一度堕ちてしまうとそこから抜け出すこと(抜けさせること)がいかに困難であることか。

    彼女が自分自身の価値を見いだせるようになることを望む。

  • 「虐待」と聞くと親を責めたくなるし、私も本作を読むまではそうでした。

    しかし、本作を読むと親の周りの環境が、こういった残酷な事件に繋がることもあると考えさせられました。

    もちろん「虐待」(今回の場合はネグレクト)はいけないものだと私は考えます。
    ただ、親ばかりが悪いのでは無い。では他の悪はなんなのか?
    こういったことを考えさせられるものになっています。

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