日本の大課題 子どもの貧困: 社会的養護の現場から考える (ちくま新書 1113)
- 筑摩書房 (2015年3月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480068187
感想・レビュー・書評
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児童養護施設問題の入門に。
分かりやすく書かれている。
個々の具体例はあまり出てこないが、それでも読んでいて胸が痛む。
社会全体でこうした子どもたちを支えていくことは、良き納税者を育てるという事。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仕事上の必要から児童養護施設のことを調べているので、関連書籍の中でいちばん刊行年月が新しい本書を読んでみた。
本書はタイトルこそ『子どもの貧困』だが、子どもの貧困全般を扱っているわけではなく、児童養護施設を中心とした「社会的養護」の概説書である。
池上彰・編となっているが、池上は前半の対談に参加し、まえがき・あとがきを寄せている程度。あとは社会的養護の当事者・専門家による本だ。
身もフタもない言い方をすると、「ベストセラー連発の池上彰の本にすれば、売れる」との皮算用から、人寄せパンダとして担ぎ出されたわけだ。
しかし、中身を読んでみれば、「わかりやすく説明するプロ」である池上の起用は成功していると感じる。
本書の前半は丸ごと、池上と高橋利一(立川市などで児童養護施設を長年運営してきた人)の対談なのだが、この対談自体、児童養護施設の歴史と現状を的確にまとめた概説になっている。これは池上の手柄だろう。
アマゾンのカスタマーレビューを見てみたら、この対談について批判しているものがあった。「池上は児童養護施設について何も知らないまま対談に臨んでいて、ケシカラン。ちゃんと準備して仕事しろや」(要旨)と――。
この批判はちょっと的外れだと思うなァ。
本書で池上に与えられた役回りは、むしろ素人目線を保ったまま対談に臨み、読者に代わって「基本のき」から教えを乞うことだろう。池上はその役割を十分果たしているし、対談の進め方はむしろすごくうまいと感じた。
池上彰のネームバリューに寄りかかった企画という側面は否めないにしろ、結果的には児童養護施設に関する優れた概説書になったと思う。
池上は、高橋利一からいい話もたくさん引き出している。たとえば――。
《あるとき、「園長先生、借金あといくら残ってる?」と聞いてくる子がいました。「2億円かな」って答えたら、「今に僕が返すからね」って言ってくれたことがある。「ああ、ありがとう。嬉しいね」って私は答えましたが、子どもたちがそんなことを言ってくれるようになってきたのも、日常の中に何か満たされたものがあるからでしょうね。》
後半は、社会的養護の専門家・当事者による、児童養護施設の現状をめぐる論考2本からなる。これはやや論文臭の強い堅い文章(でも、内容は重要)なので、前半のわかりやすい対談とのバランスがちょうどいい感じだ。 -
子どもの貧困の現状について児童養護施設を中心トピックに添えて入門書的に描いている本書。顕在化されていない問題を、多くの支援者や関わりを持とうとする市民と協力して、問題解決に向けて動いて行きたいと感じさせる本である。
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児童養護施設のこどもたち
不遇な環境状況の子どもたち
そんな子どもたちの境遇からテーマに迫る
前半はジャーナリスト池上彰さんと養護施設関係の専門家高橋利一さんの対談
後半は心理学者池上和子さんと実践者高橋利之さんの論説
勉強になりました。 -
児童養護施設という施設がどういうモノで何をしているのかがよく分かる。
この本と同時進行で「最貧困女子」鈴木大介 著を読んでいたので、子どもの貧困は根が深い上に、親の貧困などいろいろな問題が複雑に関わっていることを思い知らされる。
現実を把握してから、支援策はそれを受ける側が何を望んでいるのかを知ったうえで考えることが必要だろうと思った。
貧困を断ち切る方法として、「教育」の存在は大きいと改めて感じた。
高齢者社会だが、もっとひとり親や貧困層への支援策には予算が割かれてもよいのではないだろうか。
"「貧乏」と「貧困」は違う。”
このことは知っておきたい。 -
児童養護施設の運営者との対談が分かりやすい。よき納税者を育てるために社会全体で子どもを育てる必要がある。
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児童養護施設の現状。捨てられた子には罪がない。自立していない大人が多すぎるのだろうか。
国家予算で何もかもできないのはわかるが高齢者だけでなく、こういった人もどうするのか課題